理学療法ジャーナル Vol.55 No.4
2021年 04月号

ISSN 0915-0552
定価 1,980円 (本体1,800円+税)

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皮神経滑走と運動療法の新知見

 皮膚は機械受容器で受ける信号をさまざまな体性感覚として受け止めるが,さらに治療者の体性感覚はさまざまな評価のために用いられている.人の身体に触れるときには,両者の機械受容器からの信号が両者の神経を介している.Protective adipofascial system(PAFS)とlubricant adipofascial system(LAFS),神経絞扼とハイドロリリース,軟部組織の滑走は皮神経にも影響を与え疼痛に関係している.また理学療法士は身体に触れることで種々の臨床効果を自らの体性感覚を通じて理解してきている.皮神経,皮下組織,機械受容器と理学療法のかかわりについて解説する.

PAFSとLAFS 今西宣晶
 皮下や筋骨格間は,線維組織と脂肪組織からなる結合織で充塡されている.この結合組織をわれわれは機能的観点から分類しPAFS,LAFSと命名している.PAFSは防御的役割,LAFSは潤滑的役割を果たすが,PAFS,LAFSの構成および分布は身体各部位の機能的要求に従って変化している.神経は基本的にLAFSに囲まれているがその潤滑性もさまざまであり,そのため神経の滑走性にも違いが生じると考える.

皮膚は脳の外側にある Diane Jacobs
 われわれ理学療法士は,人の身体における感覚入力の主要な器官としての皮膚をほとんど無視してきた.より簡単に動くために新しい刺激を利用する人間の神経系機能を考慮すると,人々,特に痛みを伴う人々を傷つけることなく支援する,創造的で革新的な科学に基づいた戦略を開発することができる.

皮膚――過小評価された感覚システムとKinesiology tapeで疼痛緩和を図る最適な患者への入力 Esther de Ru
 私たちは最大の感覚器官である皮膚にこれまであまり注意を払ってこなかった.伸縮性テープの治療的使用は疼痛の理解に役立つ.文献レビューでは,多くの変数が,疼痛に対処するためのKinesiology tapeに関する研究の解釈を困難にしている.システマティックレビューは過大評価されている.すべての条件を考慮に入れないと,新たな発展を見逃してしまうことにならないだろうか.テープを用いた皮膚伸張に関する症例報告や研究結果は,皮膚刺激で疼痛に対処する際に,臨床家にとって大変重要になる可能性を有している.皮膚は私たちの最高のガイドである.患者の脳は,テープ貼付と刺激がよいかどうかを知っている.患者が積極的に参加する,エビデンスに基づく実践が重要である.

ペインクリニックからみた神経絞扼 北野正悟,他
 ペインクリニック外来において広義の絞扼性疼痛によると考えられる痛みを診る機会は多く,診断的治療として神経ブロックやハイドロリリースなどが行われている.絞扼を解除するのみであっても有効な症例を認めるが,一時的なリリースでは再度絞扼されてしまうことが考えられる.どのように維持していくかが重要であり,絞扼解除後に運動療法を行うことで従来の方法より低侵襲に疼痛コントロールができるものと期待される.

組織学的軟部組織の滑走 杉浦史郎,他
 「組織学的軟部組織の滑走」の障害は,組織間の滑走不全による障害と滑走頻度の増加(滑走過多)による障害に分けられる.前者は,皮膚,筋膜,脂肪,神経の癒着による滑走不全による障害であり,後者は,腱鞘炎の発生機序である腱鞘内での腱の滑走過多による障害である.本稿では,滑走過多による障害の狭窄性腱鞘炎を基礎研究から超音波診断装置による病態の確認,そしてそれらに基づいた治療について紹介する.

触圧覚刺激と脊髄運動神経機能の関連性 鈴木俊明,他
 健常者を対象に短母指外転筋への触圧覚刺激が脊髄運動神経機能の興奮性に及ぼす影響をF波にて検討した.結果は,短母指外転筋への触圧刺激では脊髄運動神経機能の興奮性の指標であるF波出現頻度と振幅F/M比は刺激前と比較して刺激後に低下する傾向があった.F波出現頻度,振幅F/M比は筋緊張の程度とも相関するため,理学療法では筋への触圧覚刺激で筋緊張を抑制できる可能性が示唆された.

軟部組織滑走性と疼痛 土持宏之
 組織間の滑走性が制限されることで関節可動域制限や神経絞扼が生じ,それらが疼痛につながると考えられる.これら組織間の滑走を促すには,対象部位のみを動かすというよりは,それぞれの組織を本来の位置関係に修正したうえでの関節運動が必要である.本稿では筆者が行っている軟部組織滑走性の促し方について,具体例を交えアプローチ前後比較を例示しながら述べる.

皮膚刺激と身体反応 財前知典
 皮膚にはさまざまな受容器が存在し,種々の刺激に対して反応を示すようにプログラミングされている.臨床で用いる皮膚刺激は主に,皮膚を「引っ張る」,「上方(頭側)に誘導」,「下方(尾側)に誘導」,「同方向からの圧迫」,「剪断力を加えるように圧迫」であり,それぞれの皮膚刺激に対する身体反応は異なる.その皮膚刺激による規則性を知ることによって身体アライメントを自在に誘導することが可能であり,理学療法や評価に役立てることができる.

軟部組織と腰痛 成田崇矢
 腰痛の原因となる軟部組織(脂肪組織,筋)について,評価,介入方法を解説した.脂肪組織は,浅筋膜層より上部と下部に分け,評価,介入を行う.また,筋,筋膜由来の腰痛は,滑走障害,緊張型と分け,評価,介入を行う.筋緊張型の場合,圧痛,問診,長軸圧痛テスト,四つ這い位上下肢抵抗テストを用いて評価するとよい.

足部の末梢神経と内在筋に対する運動療法 上田泰久,他
 内側・外側足底神経は足根管内を走行するため絞扼性神経障害が生じやすい.内側・外側足底神経は足底感覚や足部内在筋を支配するため,絞扼性神経障害により足底感覚や足部内在筋の筋出力に影響を及ぼすと考えられる.足底感覚や足部内在筋は立位姿勢・歩行と関係も深い.そこで本稿では,内側・外側足底神経と足部内在筋に対して,機能解剖と姿勢・動作分析の視点を取り入れた運動療法について紹介する.

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エディトリアル
皮神経の展望
福井 勉

PAFSとLAFS
今西宣晶

皮膚は脳の外側にある
Diane Jacobs(抄訳:福井 勉)

皮膚――過小評価された感覚システムとkinesiology tapeで疼痛緩和を図る最適な患者への入力
Esther de Ru(抄訳:福井 勉)

ペインクリニックからみた神経絞扼
北野正悟,他

組織学的軟部組織の滑走
杉浦史郎,他

触圧覚刺激と脊髄運動神経機能の関連性
鈴木俊明,他

軟部組織滑走性と疼痛
土持宏之

皮膚刺激と身体反応
財前知典

軟部組織と腰痛
成田崇矢

足部の末梢神経と内在筋に対する運動療法
上田泰久,他


■Close-up ロボット
生活機能支援ロボット――現状と展望
本間敬子,他

産学官連携によるロボット開発――現状と展望
山田和範

ロボットと理学療法――現状と展望
田中敏明,他


●とびら
無理~も悪くない
篠原晶子

●目で見てわかる 今日から生かせる感染対策・9
正しいマスクの装着方法を今一度確認しましょう
高橋哲也,他

●再考します 臨床の素朴な疑問・4
最近,腎臓リハビリテーションが人気です.
腎臓が悪くても運動していいの?
田村由馬

●診療参加型臨床実習・4
診療参加型臨床実習参加までに修得すべき学生の学習課題
診療参加型臨床実習を効果的に行うための学内教育・支援
藤澤宏幸

●国試から読み解く・16
姿勢保持練習で強化できる筋を特定する
福井 勉

●臨床実習サブノート 診療参加型臨床実習――「ただ見ているだけ」にならないように!・1
人工股関節全置換術
岡 智大

●私のターニングポイント
「自分らしく」生きていくことを選択
北山哲也

●症例報告
コンピュータ制御膝継手(Genium)を使用した片脚大腿切断患者に対する昇段練習の工夫
尾﨑友香,他

●紹介
ホンジュラスのリハビリテーションの状況
濵田光佑,他

●文献抄録
澤 龍一・春山幸志郎・焼谷由梨・大石優利亜

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