理学療法ジャーナル Vol.55 No.3
2021年 03月号

ISSN 0915-0552
定価 1,980円 (本体1,800円+税)

お近くの取り扱い書店を探す

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。

  • EOI : essences of the issue
  • 収録内容

開く

重症化予防

 本邦の理学療法は基本的動作能力の改善を図ることが第一の目的であるが,再発せずに活動し社会参加すること,まさに疾患や障害の重症化を予防することも極めて重要な目的である.本特集では,理学療法士が高い頻度で担当する代表的な疾患や障害における重症化のメカニズム,それに対応した重症化予防の要点や取り組み,理学療法の重症化予防へのエビデンス,対象者自身の行動変容(患者の理解と協力),環境調整などを解説していただいた.予防は理学療法の新しい分野でなく,当たり前の分野である.本特集は,理学療法士が重症化予防に大きな責任を有することを理解していただけるように構成されている.

脳卒中の重症化予防 野添匡史,他
 2019年12月に脳卒中・循環器病対策基本法が施行され,脳卒中や心疾患といった循環器病の発症予防や重症化予防が注目されている.脳卒中重症化予防には,再発予防とともに脳卒中者の身体機能障害の要因となるフレイル・サルコペニアの発症・進展予防も重要である.理学療法による脳卒中重症化予防のエビデンスはまだ不足しているが,今後は多彩な症状を呈する脳卒中者の個別性を考慮した対応が重要視される.

変形性関節症の重症化予防 和田 治,他
 変形性関節症は慢性進行性の疾患であり,重症化予防は重要な課題である.変形性関節症の重症化にはさまざまな要因が複合的に作用するが,そのなかで理学療法により改善可能な要因は少ない.本稿においては,変形性膝関節症では大腿四頭筋の機能改善に,変形性股関節症では脊柱のアライメントと柔軟性に着目し解説する.また,近年報告されている関節累積負荷という指標の患者教育への応用についても述べる.

脳性まひ児の重症化予防――環境支援による活動と参加の視点から 榎勢道彦
 脳性まひ児における「重症化」を考えるとき,運動機能障害,筋骨格障害,呼吸障害,そして,認知・社会性・情緒の発達上のリスクに焦点が当てられる.その予防のためには,活動と参加を強調し,運動学的視点とともに,生態学的視点による評価に基づいて,物理的,心理的,社会的環境支援を行うことが重要となる.

フレイルの重症化予防 山田 実
 フレイルの重症化予防,すなわち要介護化の予防は,超高齢社会であるわが国が抱えた喫緊の課題である.フレイル対策として重要視されているのが運動であり,レジスタンス運動を中心に十分な総実施時間の確保を行うことで,各種身体機能の向上および各種有害健康転帰の抑制効果が期待できる.今後は各行政機関とも連携を図りながら,リハビリテーション専門職としてフレイルの重要化予防に貢献していく必要がある.

認知症の重症化予防 國枝洋太,他
 本稿では,認知症重症化のメカニズムをもとに,地域在住高齢者における認知機能低下の早期発見と機能低下予防の具体的な対応の取り組みを紹介する.また認知機能の客観的評価方法,健常高齢者や軽度認知障害(MCI)高齢者における認知機能低下予防のエビデンス,認知症患者における理学療法関連のエビデンスと具体的な対策や接し方などを紹介し,多岐にわたる取り組みについて解説する.

慢性呼吸不全の重症化予防 瀬崎 学
 慢性呼吸不全の重症化を理解するうえでは,“増悪”と呼ばれる疾患が急速に悪化する病態を理解し,それに対する医学的介入を方策することが肝要である.重症化予防に対しての薬物療法・非薬物療法のエビデンスは日々更新されているが,呼吸リハビリテーションは非薬物療法における大きな柱の1つとして位置づけられており,対象者自身のセルフマネジメント教育と合わせた取り組みが注目されている.

慢性心不全の重症化予防 猪熊正美
 心不全は根治することなく,増悪と寛解,入退院を繰り返しながら身体機能,QOLが低下し重症の一途をたどっていく.運動療法を中心とした心臓リハビリテーションは予後やADL,QOLの改善が得られる治療法の1つである.高齢化が進む心不全の管理において,多種多様な機器や手段を利用し,多面的に心不全を管理することは重要である.本稿では,理学療法における慢性心不全の重症化予防のためのさまざまな取り組みについて紹介する.

糖尿病腎症の重症化予防 平木幸治
 透析患者の増加は医療費の高騰につながる.そのため,透析導入の代表的な原因疾患である糖尿病腎症の重症化を予防することはわが国の大きな課題となっている.近年,運動療法による腎機能の重症化予防が期待され,糖尿病腎症患者に対する運動指導に診療報酬が算定できるようになった.本稿では,糖尿病腎症の重症化予防のための治療戦略や運動療法による腎機能低下の抑制効果について述べる.

​​​​​​​包括的高度慢性下肢虚血の重症化予防 榊 聡子
 重症下肢虚血(critical limb ischemia)は,近年糖尿病患者の増加に伴い虚血が軽度であっても肢切断につながることから,包括的高度慢性下肢虚血(chronic limb‒threatening ischemia:CLTI)という概念が提唱された.CLTIの重症化分類や治療方針を考えるうえで,WIfI分類が使用されている.糖尿病による知覚障害や足部変形を有する患者は創傷発生のリスクが高く重症化しやすいため,理学療法介入や装具療法,患者教育といったかかわりが重症化予防と患者の予後改善に期待できる.

開く

医書.jpにて、収録内容の記事単位で購入することも可能です。
価格については医書.jpをご覧ください。

理学療法における重症化予防とは
高橋哲也

脳卒中の重症化予防
野添匡史,他

変形性関節症の重症化予防
和田 治,他

脳性まひ児の重症化予防――環境支援による活動と参加の視点から
榎勢道彦

フレイルの重症化予防
山田 実

認知症の重症化予防
國枝洋太,他

慢性呼吸不全の重症化予防
瀬崎 学

慢性心不全の重症化予防
猪熊正美

糖尿病腎症の重症化予防
平木幸治

包括的高度慢性下肢虚血の重症化予防
榊 聡子


■Close-up 特発性正常圧水頭症を知る
特発性正常圧水頭症の診断と治療
伊達 勲

特発性正常圧水頭症に対するリハビリテーションと諸課題
厚地正道,他

特発性正常圧水頭症の症候と理学療法評価
二階堂泰隆

特発性正常圧水頭症の症候に対する効果的な理学療法
森口八郎,他


●とびら
歩くことで体力が向上する!?
半田秀一

●目で見てわかる 今日から生かせる感染対策・8
AMRを知ろう
森本ゆふ,他

●再考します 臨床の素朴な疑問・3
運動療法によって膝前十字靱帯の再断裂予防は可能か?
今屋 健

●診療参加型臨床実習・3
臨床実習の体験からしか学べないこと
診療参加型臨床実習のコア・コンテンツ
佐藤房郎

●国試から読み解く・15
人工呼吸管理を理解する
正保 哲

●臨床実習サブノート 運動器疾患の術後評価のポイント――これだけは押さえておこう! 最終回
上腕骨近位端骨折
沖田 学,他

●私のターニングポイント
憧れの存在になるためのターニングポイント
鳥居和雄

●NEWS
日本理学療法士協会の「新生涯学習制度」――2022年4月開始に向けて
斉藤秀之,他

●報告
CR型人工膝関節全置換術後の膝関節屈曲可動域と膝蓋骨位置および膝蓋大腿関節裂隙間距離の検討
中井亮佑,他

●症例報告
自己末梢血幹細胞移植と理学療法によって復職に至ったPOEMS症候群の1 症例
望月英樹,他

●症例報告
化学療法中のレジスタンストレーニングにより義足歩行を獲得した大腿切断術後の骨肉腫症例
宮崎輝光,他

●学会印象記
第18回日本神経理学療法学会学術大会――過去から学びを得,次の10 年に向け変化する勇気をもつ
野口美紀

●臨床のコツ 私の裏ワザ
立位の股関節回旋アライメント評価のコツ
飯田 開

●文献抄録
高橋容子・中村絵美・松尾大樹・宮原孝行

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。