総合診療 Vol.32 No.7
2022年 07月号

ISSN 2188-8051
定価 2,750円 (本体2,500円+税)

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肥満とは何か?

小澤 労(国立病院機構 栃木医療センター 内科)

 白状するが、この特集を組むまでは本当に肥満診療が苦手であった。
 外来でどんどん血糖降下薬を追加しても血糖が下がらず、体重さえ減ればきっと薬も減らせるのに…と思い、患者と一生懸命取り組んではみるものの、なかなか減量にはつながらず、つい陰性感情をもってしまうことがあった。そんな感情があっても診療には何もいいことがないと押し殺して、「患者さん自身の身体のことだから、仕方がないよね」と減量指導を避けてしまうこともあった。レジデントから肥満症患者について相談されても、あまりプラクティカルなことは言えず、もやもやした気持ちをずっともっていた。
 本特集は、「肥満」との向き合い方に強い苦手意識をもっている、そんな私自身が一番読みたいような内容を目指した。自身の減量指導について「このままでいいんだろうか?」と疑問をもっている方、「もう減量指導なんて無理だ」と諦めてしまっていた方が、少しでもまた向き合ってみようと思えるように、なるべくプラクティカルな内容を、職種を問わずさまざまなエキスパートの先生方にご執筆をお願いした。
 また、現代社会において肥満は、生物医学的側面からだけではとらえられない複雑な側面ももつ。多様な価値観のなかで、今改めて「肥満とは何か」を考える機会になればと思い、人類学・倫理学のエキスパートの先生方にも執筆していただいた(p.820・825)。
 本特集が多くの方に読まれ、1人でも多くの医療者が「肥満」ともう一度向き合おうと立ち上がってくれることを願うばかりである。


矢吹 拓(国立病院機構 栃木医療センター 内科)

 WHO(世界保健機関)はBMIが30を超えた場合を「肥満」、25を超えた場合を「太りすぎ」と定義した。少しデータは古いが2016年には、18歳以上の成人のうち19億人以上が「太りすぎ」、6億5000万人以上が「肥満」とされている。世界人口約80億人の3割強が該当する、全世界的問題が「肥満」なのである。
 …という流れで、「肥満診療に取り組もう!」というスローガンに基づき、シンプルに肥満を“病気”と考えることに違和感は少ないように思う。巷には、ダイエットに関連する広告や書籍、サービスに溢れ、「肥満はよくない」「肥満を予防・治療しよう」というステレオタイプな情報が一般的だろう。「健康」というアウトカムに基づいた時、「肥満」はたしかに大きな課題と言える。
 一方で、「肥満」を取り巻く状況は、それほど単純ではない。背景因子としての心理・社会的要因(p.805・820・845)やルッキズム(p.820・825)などの文化的な問題、さらにはスティグマ(p.825・802・807)などの倫理的問題など、必ずしも「肥満=治療すべき課題」として医療的解決を目指すことだけが正しいとは言えないのである。
 本特集では、「肥満」について“全方位的”に考えるため、さまざまな視点で医療者および医療者以外の諸先生方にご執筆いただいた。それぞれの原稿を拝読しながら、私自身が「肥満」についてこれほどさまざまな角度からスポットを当てて考えたことはなかったなと、改めて反省しきりである。読者のみなさまにとって、1つでも新たな気づきがあればと願っている。

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医書.jpにて、収録内容の記事単位で購入することも可能です。
価格については医書.jpをご覧ください。

特集 どうせやせない!? やせなきゃいけない!? 「肥満」との向き合い方講座

■総論 「健康問題」としての肥満
①なぜ「やせましょう」だけではうまくいかないのか?
小澤 労

②肥満の疫学と社会的決定要因
“下流”における「公衆衛生」実践のススメ
本間陽一郎

③肥満って、ホントに健康に悪いの? 疾患リスク因子としての肥満
柴﨑俊一

④「内分泌器官」としての脂肪細胞 
肥満に関する基礎研究最前線
山口哲志│和田 淳

■肥満は「病気」か?
①医療人類学の視点から 肥満は単に「生物医学的」な問題か?
美馬達哉

②肥満をめぐる倫理的問題 
医師は「スティグマ」にどう向き合うべきか?
玉手慎太郎

■実践編 忙しい外来でもできる! エビデンスに基づく肥満診療
①外来でできる多面的な「栄養指導」
“リバウンド症例”へのアプローチ
長井直子

②外来でできる「運動療法」 肥満治療における運動の意義と勧め方
勝川史憲

③外来でできる「動機づけ面接」 “チェンジトーク”を引き出そう
大杉 満

④「小児」の肥満問題と具体的なアプローチ
德永 修

⑤内科医が押さえておきたい 「減量・代謝改善手術」の適応と種類、特有の合併症
春田英律│齋藤 心│細谷好則

【コラム】「減量・代謝改善手術」体験記
花岡亮輔

■トピックス
①「抗肥満薬」の位置づけと治療戦略
司馬 熙│玉井道裕

②肥満に対する“民間アプローチ”のエビデンス
藤川裕恭

③肥満対策における「ナッジ」の可能性
竹林正樹


●Editorial
肥満とは何か?
小澤 労|矢吹 拓

●What’s your diagnosis?|235
大成功! 感動大作戦
伊藤裕司

●アスクレピオスの杖|想い出の診療録|27
主治医交代
玉井道裕

●フィジカル・ラウンド・オンライン|4
下肢の浮腫は何のせい?
松山 拓|矢吹 拓|平島 修

●オール沖縄! カンファレンス Ver.2.0|レジデントの対応と指導医の考え|66
3年前から歩行困難を訴える58歳女性
徳田暁拓|本村和久|徳田安春(監修)

●高齢者診療スピードアップ塾|効率も質も高める超・時短術|7
「転院」は15分で終わらせろ!
増井伸高

●上田剛士のエビデンス実践レクチャー!|医学と日常の狭間で|患者さんからの素朴な質問にどう答える?|28
爪の成長速度から学ぶこと
上田剛士

●臨床小説|後悔しない医者|今と未来をつなぐもの|27
“なんとなく”を解する医者
國松淳和

●投稿 総合診療病棟
外科的肺生検により特発性多中心性Castleman病と診断した1例
西山和宏|村田直彦|松野真佑美|竹中大喜|河合将尉|山川英夫|平松佑斗|鈴木博貴|岡田暁人|若山尚士

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