総合診療 Vol.32 No.5
2022年 05月号

ISSN 2188-8051
定価 2,750円 (本体2,500円+税)

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「診断エラー」の未来を予測する
綿貫 聡(東京都立多摩総合医療センター 救急・総合診療センター)

 診断エラー(diagnostic error)は近年、患者安全領域において話題となっており、日本でも幅広い啓蒙活動が行われるようになった。本特集は、診断エラーの最近のトピックスの1つである「situativity(状況性)」を意識して企画した。
 われわれの知識・思考・学習は経験の中に位置づけられると主張する理論的枠組みを「状況性理論(situativity theory)」という。この理論では、「文脈(コンテクスト)」が最も重要であるとされ、知識・思考・学習は文脈から分離できない(文脈に依存する)と主張されている。
 診断は、古典的には“医師のみの頭の中”で行われる情報処理のプロセスであると理解されていた。これに対し、近年の診断エラー領域における研究結果は、診断は“現実の中”で行われ、医療者の認知は医療者自身の身体と環境、他者やシステムとの相互作用によって影響を受けることを示しており、これは「状況性理論」の視点とも一致する。
 診断プロセスは複雑であり、医学的知識が必須である一方で、臨床医の意思決定がより大きな影響を与える(p.548)。意思決定者の個人的特徴や知的・認知的スタイル、環境的・恒常的要因、チーム要因を含む職場環境、疾患・病態の特徴、医療制度、文化や政治などの要因が、臨床医の意思決定には影響を与えるとされる。古典的には医学的知識さえ向上すればよいと考えられてきたが、現代においては医学的知識そのものは診断プロセスの重要な決定要因とはなりがたいとされている。すなわち、診断エラーが疑われる事例が発生した場合には、これらの観点を踏まえ、どのように医療者の認知がその時々の文脈や外的要因に影響されているかを考え、状況改善のためには幅広い視点からの介入が必要だと理解されるべきである。
 そこで本特集では、診断エラーの未来を予測するヒントを得ることを目標とし、個別の状況における「事例(具体)」と、現時点での「最新の知見(抽象)」とを往来できるようにした。総論では、診断エラーの歴史的背景や近年の理論的背景の変遷を、また「救急外来」「入院診療」「一般外来」「在宅診療」の4つのセッティング別に、診断エラーが発生する背景や疫学情報などをオーバービューしていただいた。加えて、各セッティングにおいて高頻度に発生しうる重要な疾患群・医療関連合併症について、各領域のエキスパートに、診断エラーが生じやすい理由、早期診断・発見に至るためのヒント、システム構築の視点もご解説いただいた。
 近年は、患者・医療者の語り・ストーリーから学習を深め、エスノグラフィの観点から状況の改善へとつなげることも模索されている。象徴的なエラー事例と、改善のために現場で活動を続ける執筆者らの語りが、その一助となることを期待している。

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医書.jpにて、収録内容の記事単位で購入することも可能です。
価格については医書.jpをご覧ください。

特集「診断エラー」を科学する! セッティング別 陥りやすい疾患・状況

■総論
「誤診」から「診断エラー」へ
和足孝之

■セッティングⅠ 救急外来
オーバービュー「救急外来」における診断エラー
國友耕太郎│原田 拓

①急性冠症候群/大動脈解離
川上将司

②くも膜下出血/脳梗塞
角替麻里絵│上田雅之

■セッティングⅡ 入院診療
オーバービュー「入院診療」における診断エラー
栗原 健

①院内発症静脈血栓塞栓症
中西俊就│小坂鎮太郎

②医療関連感染症
濵田洋平│青木洋介

③画像診断レポートの確認不足
飯田茂晴

■セッティングⅢ 一般外来
オーバービュー「一般外来」における診断エラー
鋪野紀好

①がん(悪性腫瘍)
下井辰徳

②感染性心内膜炎
西口 翔

③結核
大藤 貴

④HIV感染症
滝澤あゆみ│福島一彰

⑤リウマチ膠原病
吉田常恭

■セッティングⅣ 在宅診療
オーバービュー「在宅診療」における診断エラー
木島庸貴


●Editorial 「診断エラー」の未来を予測する
綿貫 聡

●What’s your diagnosis?|233
高くついた代返
横江正道|吉見祐輔|末松篤樹|久田敦史|宮川 慶|田口雄一郎|小林奈津希|竹内元規

●アスクレピオスの杖|想い出の診療録|25
医局での立ち聞き
板金 広

●オール沖縄! カンファレンス Ver.2.0|レジデントの対応と指導医の考え|64
新型コロナ流行期の呼吸不全は、やっぱり呼吸器疾患!?
上原裕子|仲里信彦|徳田安春(監修)

●Dr.上田剛士のエビデンス実践レクチャー!|医学と日常の狭間で|
患者さんからの素朴な質問にどう答える?|26
食べると眠くなります
上田剛士

●フィジカル・ラウンド・オンライン|3
麻痺はないのに歩けない! 冷たい手足と小声の関係
吉原さつき|矢吹 拓|平島 修

●高齢者診療スピードアップ塾|効率も質も高める超・時短術|5
「転倒」の原因はどこまでどう評価する?
増井伸高

●臨床小説|後悔しない医者|今と未来をつなぐもの|25
未来が見える医者
國松淳和

●投稿 GM Clinical Pictures
血便の原因は?
梶原祐策

小児だけじゃない腹部の疝痛
鈴木 哲|大井利起|木佐健悟

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