総合診療 Vol.32 No.3
2022年 03月号

ISSN 2188-8051
定価 2,750円 (本体2,500円+税)

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未来は僕らの手の中
尾藤 誠司(国立病院機構 東京医療センター 内科医長)

 私は医師になって32年になります。初期臨床研修(当時は任意制度でした)を修了後すぐに「総合診療」の道に入ったので、総合診療医になって30年です。総合診療は、30年やり続けても、とてもワクワクすることが多い診療領域です。そう自信をもって言うことができるのですが、「なぜワクワクが尽きないのか」ということはずっと言語化できずにいました。幅広い診療領域をカバーするから? いえ、違います。エビデンスに基づく診療をするから? いえ、違います。人の心理・社会的側面に配慮した診療をするから? うーん、それもちょっと違う感じ…。
 いったい何が楽しいんだろうねと思いながら臨床医を続けてきた時、「AI時代の医療」というアジェンダに遭遇したのでした。そして、「AI時代になったら、医者の仕事がなくなるんじゃあないか」みたいな危惧感に対して、私は「んなわけないじゃん。だって…」と思っていたのです。この時、この「だって…」にあたるところにこそ、“ワクワク”の正体があるのではないか、と気づいたのです。
 その発見と同期するかのように、AIと共生する時代の人間や社会に関するランドマーク的な書籍が次々に発表されました。1つは、ユヴァル・ノア・ハラリの3部作(『サピエンス全史』『ホモ・デウス』『21Lessons』)であり、マックス・デグマークの『LIFE3.0─人工知能時代に人間であるということ』であり、そして医療のフィールドにおいてはエリック・トポルの『ディープメディスン』でした。そして、この3つに共通して出現するキーワードである「意識=主観的体験」と、前述の「だって…」がつながったのです。
 未来のヘルスケアの景色を描いていく時、まず私たち医療専門職は、自分たちの「知能(=問題解決能力)」をどのように専門能力として使用してきたか、について振り返る必要があるように思います。そのうえで、私たちが今の医療を「シャロー」なものからより「ディープ」なサービスへと変容させていく使命とチャンスをもっていることを喜びたいと思います。本特集は、総合診療に携わる専門家のみなさんが、そんな“ワクワク感”と“使命感”と“喜び”のスイッチを入れるきっかけにしていただければと思い企画しました。

 最後に『ディープメディスン』からの引用です。
 「AIが提供してくれる最大の可能性は、過誤や仕事量を減らすことでもなければ、がんを治すことでもない。(中略)私たちはもっと時間をかけて顔を合わせ、はるかに深く心を通わせ、思いやりを抱くことができるようになる(後略)」

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価格については医書.jpをご覧ください。

特集 AI時代の医師のクリニカル・スキル——君は生き延びることができるか?

■[Ⅰ章]AIの特性と能力
1 AIに「できること」と「できないこと」
石川翔吾

2 医療・ヘルスケアにおける「AI実装」の現状と可能性
川上英良

3 10年後のAIはどこまで「診断」できるようになるか?
古川渉太│木下翔太郎│岸本泰士郎

■[Ⅱ章]AI実装医療における医師のクリニカル・スキル
【総論】“近未来医師”のコンピテンシー 「ポスト問題解決志向」と2つの「思考OS」
尾藤誠司

1 「解決困難な臨床問題」(病名がつかない健康問題など)への関与の技法――複雑な状況を複雑なまま扱うスキル
喜瀬守人

2 臨床において「対話」は何をもたらすか――オープンダイアローグ(開かれた対話)に学ぶ
森川すいめい

3 「意思決定支援」の技法
浅井 篤│大北全俊

4 「病い体験」を“物語”として捉え関与するための技法――NBM(narrative-based medicine)を実践する
小林美亜

5 医療・ヘルスケアにおける「センシング技術」
千葉敏雄

6 「患者-AI-医療者関係」となった環境における医師の役割と責任
田中雅之│松村真司

■[コラム]
1 「がんゲノム医療」と「個別化医療」の今後
髙見澤重賢│小山隆文

2 身体の「サイボーグ化」は何をもたらすか?
粕谷昌宏

3 「ユマニチュード」と“まなざし”を解析するAI
本田美和子

4 「オンライン診療」の普及によって医療のかたちはどう変わるか?
野村章洋

5 AI時代の「医学教育」
赤津晴子

今月のQuestions 
今月の「めざせ!総合診療専門医!」問題


●Editorial
未来は僕らの手の中
尾藤誠司

●ゲストライブ
AI時代のヘルスケアと医師 君たちは“優しいディストピア”を生きるのか?
落合陽一|石山 洸|尾藤誠司

●What’s your diagnosis?|231
ロンドンブーツ1号のほう
佐田竜一|柏原英里子|真辺 諄|田川竣介|明保洋之|三宅啓史|八田和大

●アスクレピオスの杖|想い出の診療録|23
もし自分ではない誰かが診ていたら…
和足孝之

●『19番目のカルテ』を読んで答える!|あなたの“ドクターG度”検定&深読み解説|12|最終回
正しい“心配” (『19番目のカルテ─徳重晃の問診』第12話より)
徳田安春

●“コミュ力”増強!「医療文書」書きカタログ|21|最終回
医療専門職同士の“共創”をサポート! 「CUP/PASTAモデル」を使いこなそう
天野雅之

●オール沖縄! カンファレンス Ver.2.0|レジデントの対応と指導医の考え|62
若年女性の発熱・臀部痛…何を考えるか?
神保智之|清水徹郎|徳田安春(監修)

●高齢者診療スピードアップ塾|効率も質も高める超・時短術|3
「偽痛風」の患者さんを90分早く病棟へあげる方法
増井伸高

●フィジカル・ラウンド・オンライン|2
手足が勝手に動いちゃう!
大澤 悠|矢吹 拓|平島 修

●Dr.上田剛士のエビデンス実践レクチャー!|医学と日常の狭間で|患者さんからの素朴な質問にどう答える?|24
カリウム制限食! 野菜をゆでこぼすだけではダメ?!
上田剛士

●患者さんには言えない!?|医者のコッソリ養生法|10
不養生の医者、「酒を飲んでも呑まれない方法」を授かる 2
須田万勢

●臨床小説|後悔しない医者|あの日できなかった決断|24
後悔しない医者
國松淳和

●投稿 Empirical EYE
なぜ、人はワクチンに過剰反応を示すのか? ワクチン忌嫌(vaccine hesitancy)を巡る議論とその心理的メカニズムの解釈
八巻孝之

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