総合診療 Vol.31 No.8
2021年 08月号

ISSN 2188-8051
定価 2,750円 (本体2,500円+税)

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メンタルヘルスの時代と「リアルワールド」

藤沼 康樹(医療福祉生協連家庭医療学開発センター)

 2019年の米国のシンガーソングライターであるビリー・アイリッシュの大ブレイクが引き金となって、若者のメンタルヘルスの問題が大きくクローズアップされた。彼女のメッセージは、つらいときは「つらい」と声を出して助けを求めよう、助けを求めることはあなたが弱いことを意味するわけでない、ということだった。また、英国の批評家マーク・フィッシャーは、その著書『資本主義リアリズム』で強調しているように、資本主義や新自由主義のオルタナティブが構想できない中で、自己実現や成長を強いられ、結果は自己責任とされてしまうことが、西欧諸国で若者の精神疾患の罹患率の増加に結びついているはずと主張した。そして、若者のメンタルヘルスの悪化こそ、これ以上に完成されたシステムはないとされる資本主義が実は穴だらけの、不完全な構造物であることの証明であると記し、話題となった。メンタルヘルスの問題は、わたしたちが生きているこの現代社会の現在と未来に、重要な議論を投げかけている。
 本特集を組むにあたって、普段カルチャー、音楽、文学などについていつも新鮮な刺激をいただいている、精神科医・塚原先生の全面的な協力を得ることができた。総合診療や家庭医療におけるメンタルヘルス問題に造詣が深い共同編集(企画)者を得たことで、読み応えのあるよい特集になったと思う。


塚原 美穂子(精神科医)

 今回、藤沼康樹先生にお声かけいただき、メンタルヘルス特集の企画に携わらせていただきました。ここ20年程でメンタルヘルスについては広く認知され、DSMなどの操作的診断基準が導入され、精神疾患はかなり明瞭な輪郭を持ったものとなりましたが、「リアルワールド」のメンタルヘルスの問題はあらゆるカテゴリ化の試みをまたいで超えていきます。医療機関や医療外で市井のメンタルヘルスに関わってきた“野良”精神科医として、心の関わるさまざまな問題に医療ができうること、できないことについて、サブタイトルの「ぶっちゃけ」感を意識しながら筆を運びました。辿りついた結論は、曖昧だったり妥協的だったりもしますが、一筋縄ではいかない「リアルワールド」のメンタルヘルス問題への対応は、理想と現実との折り合いの繰り返しの中で、たまに思いがけない光がさすようなものです。精神科医も日々悩み、失敗しており、本特集は執筆者がそれぞれの道から現在辿り着いている地点からの視点が反映されています。
 知識による予測や対策、対応は、患者・医療者の心を共に楽にしてくれますが、最後は「春雨じゃ、濡れてまいろう」的な鷹揚さで臨むことがよいかもしれません。さまざまな健康や社会的問題の持ち込まれる総合診療領域において、先生方の日常診療におけるメンタルヘルス問題への対応のヒントが、少しでも本特集の中で見つかることができましたら幸甚に思います。

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医書.jpにて、収録内容の記事単位で購入することも可能です。
価格については医書.jpをご覧ください。

■総論1
現代社会において、なぜ心の健康(メンタルヘルス)が注目されているのか?
森屋淳子

■総論2
精神科の診断を再考する――精神疾患の「力動的モデル」とは?
西依 康

■各論1
精神科で対応するのが困難な各科からの精神科紹介事例集
塚原美穂子

■各論2 総合診療医から精神科医への“ぶっちゃけ”相談集

なんとなく精神疾患かな? でも、どこがどういうふうに違和感があるのか、うまく表現できないです。正常と異常の区別がよくわからないです。「なんとなく違和感がある」をどう表現し、どうアプローチしたらよいでしょうか?
今村弥生

すでに精神科に通院中の患者さんを総合診療科で診察する時に留意すべきことを教えてください。特に、統合失調症の患者さんの併存疾患(糖尿病や心不全など)へのケアがあまりうまくいきません。療養指導や生活指導が難しいです…。
田村 修

アルコール依存症だと思うのですが、本人にその自覚がありません。家族は困っているようです。どうしたらよいでしょうか?
小松知己

いわゆるゴミ屋敷に住んでいる患者さんの訪問診療をすることになりました。介護スタッフの話によると、「こだわりの強い」利用者さんとのことです。どのようにアプローチしたらよいでしょうか?
岡﨑公彦

職場の人間関係のストレスで、食欲が低下し、やる気がなくなってしまったとのことで、一応適応障害と診断して傾聴と対症療法を続けて、だいぶよくなったのですが、こういう方の職場復帰は、どういう時期に行ったらよいのでしょうか?
塚原美穂子

外来の初診で「メンタルがやられて眠れないので薬が欲しい」という30代の男性がやってきました。どう考えたらよいでしょうか?
塚原美穂子

いわゆる困った人で、クレーマーっぽくて多弁で、診療に非常に時間がかかって困っています。どうしたらよいでしょうか?
田村 修

他院精神科に通院している方で、外来にかぜ症状で来られたのですが、「今、精神科にかかっているけど、話をあまり聞いてくれず薬だけ出して終わりで、これではかかっていても意味がないと思う。こちらで薬を出してくれないか」とのことでした。精神科の処方薬も非常に多いことがあり、その場合対応が難しく、どうしたらよいのでしょうか?
西依 康

なかなかよくならないメンタル症状の方を診るのはつらいです。つらいから精神科に紹介、というのもつらいです。メンタル症状の方を診る時の自分自身のコントロールの仕方を教えてください。
塚原美穂子

■スペシャル・アーティクル
ルフィのレジリエンスマンガから精神病理学を学ぶ
今村弥生

今月のQuestions


●Editorial
メンタルヘルスの時代と「リアルワールド」
藤沼康樹|塚原美穂子

●What’s your diagnosis?|224
真相は靄の中
中神太志

●アスクレピオスの杖|想い出の診療録|16
医師として、かけがえのない財産
佐野良仁

●『19番目のカルテ』を読んで答える!|あなたの“ドクターG度”検定&深読み解説|5
自分だけのワザ  (『19番目のカルテ――徳重晃の問診』第5話より)
山中克郎

●患者さんには言えない!?|医者のコッソリ養生法|3
不養生の医者、風邪予防のヒケツを伝授される
須田万勢

●研修医Issy & 指導医Hiro & Dr.Sudoの とびだせフィジカル! 聴診音付|8
心臓のフィジカル  Part4
石井大太|中野弘康|須藤 博

●“コミュ力”増強!「医療文書」書きカタログ|14
まるく収まる伝え方!
他院の処方で生じた「薬剤有害反応」の情報共有
天野雅之

●オール沖縄! カンファレンス Ver.2.0|レジデントの対応と指導医の考え|56
その肺炎、COVID-19ですか?  診断の早期閉鎖を回避せよ!
酒井達也|徳田安春(監修)

●Dr.上田剛士のエビデンス実践レクチャー!|医学と日常の狭間で|患者さんからの素朴な質問にどう答える?|17
飲酒すると翌朝むくみます
上田剛士

●“JOY”of the World!|ロールモデル百花繚乱|19
出会いに導かれ「性差医療」から「研究開発」まで
片井みゆき

●155歳からの家庭医療 Season 2|明日から地域で働く技術とエビデンス|39
医師像の変容と総合診療  
Transforming into an Alternative Doctor
藤沼康樹

●臨床小説|後悔しない医者|あの日できなかった決断|17
将来を悩む医者
國松淳和

●投稿 GM Clinical Pictures
巨峰の窒息解除後の呼吸障害
金井宏明|西山 秀|佐藤広樹|武井義親

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