Dr.セザキングに聞く

  • 医学

2021.06.21

米国の医師国家試験であるUSMLE(United States Medical Licensing Examination)の全STEPを一発合格し,日本からの受験生を多数指導してきた瀬嵜智之(せざきともゆき)先生に,この夏おすすめの医学英語教材を教えていただきました。

瀬嵜先生の書籍や記事,過去のセミナーの情報はページ下部をご覧ください。


オススメ教材の最新版をご紹介!

セザキング

ハイ!ナイストゥミーチュー、セザキングこと瀬嵜智之と申します。
僕は精神科医として働く傍ら、米国の医師国家試験(USMLE)のコンサルタントとして活動しており、blogやTwitter、さらには2020年に刊行した「セザ本」(医学書院)で、USMLEの情報・試験対策を幅広く発信しています。

今回、基礎英語力を補いたい方、そしてUSMLEやOETを受験予定の方向けに、オススメ教材の最新版をご紹介いたします!

USMLEを受験予定の医師・医学部生の方はもちろん、OETを用いた留学を考えている看護師の方、シンプルに英語力をアップさせたい方は、ぜひぜひご覧ください。
また、周りにそういう方がいらっしゃるという方は、ぜひこのコラムをシェアしてあげてください!
 

「基礎英語力を補いたい方」にオススメの英語参考書

1. 文法

TOEFLのReadingやUSMLEのSTEP1(基礎医学)・2CK(臨床知識)のリーディングはもちろん、英会話力が要求されるSTEP2CS(英語診察)でも、文法はとても重要です。
僕自身、中学時代からずっと英語が大の苦手であったため、USMLE受験時にはなんと「中学英語」から復習を始めました。

ぜひ皆さんも背伸びせず、「自分のレベル」に合った参考書を選んでください。

2. 発音

USMLEのSTEP2CSでは「英会話力」が求められますが、特に発音の要求基準は厳しく、カタカナ英語発音してしまいがちな我々日本人がもっとも苦手とする試験です。

2021年現在、新型コロナウイルス感染拡大の影響でSTEP2CSは中止となり、OETという試験で代替されています。さらには今後、旧STEP2CSの代わりに新たに導入されると噂されている試験でも、結局は純粋な「英会話力」がものをいうでしょう。

発音に関する参考書は世に数多ありますが、本を選ぶ際には
  1. 発音記号がしっかり説明されていて
  2. それぞれの発音がどのような口や舌の動きで発声されているか視覚化されているもの

がオススメです。色々な参考書をご自分の目で見比べてみてください!

3. リスニング

従来のUSMLE STEP2CSやOETでは、試験の性質上、模擬患者の言っていることを正確に聴きとる必要があるため、我々日本人には(ここがネイティブとの違い!)「リスニング力」が要求されます。

(なんと)僕は韓国の教材をオススメしています。リスニングの教材を選ぶポイントは質の高い英文が大量に掲載されていることですが、韓国の教材は日本のそれと比べて非常に質が高く量も多い傾向にあります。

4. スピーキング

STEP2CSやOETでは模擬患者に英語で診察をしますが、こういった初対面の外国人と話すという行為自体、内向的な我々日本人の多くが苦手とするところです……。

スピーキング力アップには例文を丸暗記することがとてもオススメですが、その為にはTOEFLのSpeaking対策が役に立ちます。以下に推薦する参考書を例示しますが、例文が豊富に載っており、ネイティブの音声が付いているという条件さえクリアできていればご自身の好みで選ばれてください。

【オススメスピーキング参考書】

5. 単語力

実は「医学英単語」に特化したバイブル的単語帳はあまりなく、USMLEの勉強に関しては「問題を解きながら、わからない単語に出会うたび、スマホで単語の意味を調べ、単語の構造を意識して覚えるべし!」というのが僕の持論ですが、単語力アップにはTOEFLの勉強も役立ちますので、TOEFL関連のオススメ単語帳をご紹介します。

USMLE受験予定の方にオススメの参考書!

オススメUSMLE問題集(紙・オンライン)

択一形式であるUSMLEのSTEP1,2CK,3(MCQ)では、とにかく問題を多くこなすことが合格への近道です。それぞれオススメの問題集を紹介してきます。

STEP1

  • First Aid Q&A(紙)
  • 初学者はまずこれで慣れましょう!値段も比較的お手頃です。ただし、最近なかなか改訂されていません……。

  • USMLE-Rx(オンライン)
  • First Aidを作っている会社が提供している問題集です。ほとんどの問題がFirst Aidと対応しているので、初学者にも勉強しやすいのが特徴です。

  • UWorld(オンライン)
  • STEP1最重要問題集です。思考力を問う問題が多く、本番の再現性も高いように感じます。上記Rxが終わったら、これを完璧に理解できるまで何周も解きましょう!

  • Amboss(オンライン)
  • 難易度が高いのが特徴で、ハイスコア狙いのアメリカの医学生が利用する傾向にあります。

STEP2CK

  • First Aid Q&A(紙)
  • STEP2CKも、まずはやっぱりQ&Aから解き始めるのがオススメです。STEP1に合格されている方は最初からオンライン問題集でも大丈夫です。

  • USMLE-Rx(オンライン)
  • STEP2CKではUWorldが圧倒的に重要な問題集であるため、STEP1と比べるとRxの利用者は少ないです。STEP2CKから受験を開始される方であれば、最初のオンライン問題集としてやる価値はあると思います。

  • UWorld(オンライン)
  • STEP2CKでも超重要問題集です。完璧に理解できるまで繰り返し解きなおしましょう。

  • Amboss(オンライン
  • ハイスコア狙いの方はUWorldを完走した後に解くのがオススメです。

STEP3

  • UWorld(オンライン)
  • STEP3でも、もちろん最重要問題集です。合格狙いであればこれ一本でもよいでしょう。

  • Amboss(オンライン)
  • ついにリリースされました!STEP3でもハイスコアを狙いたい方は試す価値があるかと思います。

オススメUSMLE動画

最近は日本の国試対策も動画教材がメジャーになりつつありますが、USMLEでもその傾向があります。また、日本人受験生にとってはリスニングの勉強にもなります。

  • Boards and Beyond
  • アメリカの医学生の中で最近流行りの動画教材です。問題集も付いているので、動画で網羅的に学び、問題を解いてアウトプットする勉強方法が効率的です。問題集だけで勉強するよりも体系的に学ぶことができます。ただ字幕がないのである程度のリスニング力が求められます。

  • Osmosis(YouTube)
  • 基礎医学や疾患など、テーマごとの短い動画で勉強できます。しかも、YouTubeなのでもちろん無料です。

  • Dirty Medicine (YouTube)
  • これもUSMLE受験生の中で話題のYouTubeチャンネルです。USMLEに関連した知識のみならず、レジデンシーに関する情報など多彩なコンテンツの動画を配信しています。

    最後に、手前味噌で恐縮ですが(笑)、僕自身も「Drセザキングchannel」というUSMLE関連の情報を網羅したチャンネル動画を配信しています。最近ではUSMLEの情報のみならず、マッチングやお金に関する情報も配信しています。ぜひ、チャンネル登録よろしくお願いします!

オススメOET教材

OETはオーストラリアで留学を希望する医療従事者向けの英語試験で、従来は留学志望の看護師の方や、一部オーストラリアやイギリス、ニュージーランドに臨床留学したい医師の方が受験されていました。

ところが、新型コロナウイルス感染拡大の影響でUSMLE STEP2CSが中止になり、このOETが代替試験として導入されることになり、非常に注目を集めています。近い将来新たな試験の導入が検討されているとの噂もありますが現時点では未確定なので当面はOETで代用されそうです。

  • OET公式HP
  • これを「教材」と表現していいのか悩むところですが、公式HPには豊富なサンプル問題が掲載されています。WritingとSpeakingは添削してもらうツテがなければ使用する意味はあまりないですが、本番と同じ質の音源からなるListeningのサンプル問題は超貴重ですので、ぜひ活用すべきです。OETのListeningはオーストラリア訛りが強いため慣れていないと非常に聞き取りにくく、このListeningこそがOET最大の鬼門と感じています。

  • OET公式問題集
  • OETに関する基本的な情報はおおよそこれに掲載されています(USMLEにおけるFirst Aidとくらべると若干ものたりないですが)。初学者は問題慣れのためにまずこの1冊を仕上げるといいでしょう。Speakingの問題自体は掲載されていますが解答例がないので、練習に用いる場合は「評価(採点)」してくれる人が必須です。

  • OET公式YouTubeチャンネル
  • OETに関する様々な動画を観ることができます。特に役に立ったのはSpeakingのサンプル動画で、基本的には公式問題集または公式HPのサンプル問題を題材にしています。個人的にはWarm upのサンプルが観られたことが非常に安心材料になりました。丹念に探すとスクリプトも見つけることができます。

  • Benchmark education solutions
  • 本番と同形式の問題がReading とListeningで各20題ずつあります。USMLEのSTEP1,2CKを突破されている方であればReadingに関しては特別な勉強をする必要はないので、形式と時間配分の確認目的としての利用でいいかと思います。Readingが苦手な方はぜひこの問題を本番と思って解いてみてください。Listeningも本番と同形式ですが、残念ながらtranscriptionsがありません。またWriting対策としてwriting collection serviceというサービスがあり、比較的値段もリーズナブルですので、活用してみてもいいかもしれません。

  • E2 English
  • OETと提携している予備校で、OET公式HPでも紹介されています。本番と同形式の問題を解くことができ、時間が合えばzoomでlectureにも参加ができます。YouTube公式チャンネルもあり、これを聞くだけでもリスニングの練習になります。

  • OET Online
  • 多くの受験生が利用されているオンライン教材で添削がよいと聞きます。

おまけ:お役立ちスマホアプリ

スキマ時間で勉強したり、調べ物をしたりするのに、もはやスマホは必需品です。最後にセザキングオススメのアプリを2点ご紹介します。

  • 英辞郎on the web(Apple)
  • 英辞郎on the web(Google)
  • 収載語がとても充実している英単語スマホアプリです。例文ごとに音声が聞けるので、リスニングにも役立ちます。機能の充実した有料版が絶対オススメです。

  • AnkiMobile Flashcards(Apple)
  • USMLE受験生必須のアプリです。少しお高いですがその価値は十分にあります。受験直前期には自分で問題を作成して、First Aidの内容を丸暗記する際に活用してみてください。


基礎英語力を補いたい方、USMLE受験予定の方にそれぞれオススメの参考書・動画と、おまけでお役立ちアプリをご紹介しました。「もっと詳しく知りたい!」という方は、ぜひ「セザ本」をご覧ください!

 
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合同会社U-Consultant代表

高校時代は偏差値30台と英語が大の苦手であったが、恩師との出会いがきっかけで突然変異。6年生の4月にUSMLEのSTEP1に最高スコア99(当時)で合格し、難関のSTEP2CSも含め、全STEPに一発合格。その大逆転劇から、USMLE業界では「医学界のビリギャル」と称されている。
亀田総合病院、国立国際医療研究センターなど国際性豊かな医療機関での勤務経験を経て、2020年より現職。
blogやTwitterでUSMLEの情報・試験対策を幅広く発信しており、特にSTEP2CSのマニュアルは日本の受験生のバイブルになっている。数々の講演会実績もあり、指導した人数は1,000人超、多くの合格者を世に送り出している。

[医学界新聞連載]
Dr.セザキングのUSMLEセミナー(終了)

[過去のセミナー]
Dr.セザキングpresents!USMLEことはじめand「セザ本」活用術