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Dr.セザキング直伝!
最強の医学英語学習メソッド[Web動画付]

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英語偏差値30台からUSMLE(アメリカの医師国家試験)に最高スコアで合格!?文法や発音、リスニングなどの基礎的な英語力から、医学英文読解や英語診察といった医学英語の最たる領域まで、英語がトコトン苦手だったDr.セザキングだからこそ到達した、最強の勉強方法を伝授!付録には参考書や塾のお役立ち一覧表、USMLE受験モデルスケジュールなどを収載。さらに購入者限定「英語診察フレーズ」WEB動画付き!

※「セザ本update動画」として、2020年10月にCS中止の経緯~OETの申し込み方法・対策方法~将来展望など動画12点、2023年7月にUSMLE最新情報など動画8本を追加

瀬嵜 智之
発行 2020年04月判型:A5頁:264
ISBN 978-4-260-04174-4
定価 3,740円 (本体3,400円+税)

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    2020.07.07

  • 序文
  • 目次
  • 書評
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ハイ! ナイストゥミーチュー! Dr. 瀬嵜ことセザキングです。

いきなりですが,おめでとうございます! あなたは今,人生を変えるかもしれない本を手にしています。「何を突然?」と思われたでしょう。この本はタイトル通りに医学英語の勉強のコツをただ教えるだけの本ではありません。ましてや,僕の医学英語の実績を自慢するための本でもありません。

僕が人生をかけて得た,夢を叶えるためのコツが凝縮された本なのです。

読者の中にはすでに僕のことをご存知の方もいるかと思いますが,「こいつは怪しいぞ! そもそもセザキングって誰やねん?」という方もたくさんいると思いますので,簡単に自己紹介をさせてください。

僕はざきともゆきと申します。精神科医として働く傍ら,USMLEコンサルタントとしてUSMLE受験生の相談に乗ったり,全国で講演会を開催したりと教育活動を行っております。また予備校講師として,全国の医学生に面白くてわかりやすい講義動画を配信しています。医師でありながら診療に従事するだけでなく,他に好きなことを仕事にしてきました。本書では,医学生・医師でありながら「他の何か」を探す方々にとっても大きなヒントが得られるかもしれません。

この文章を読んで,「はて? USMLEとは?」と思われた方も多いのではないでしょうか。日本でもポピュラーな英語試験であるTOEICやTOEFLとは異なり,USMLEの知名度はまだまだ高くありません。USMLEとは“United States Medical Licensing Examination”の頭文字をとったもので,読んで字のごとく,アメリカの医師国家試験のことを指し,アメリカでの臨床留学を目指すには避けて通れない道です。USMLEはSTEP 1,2 CK,2 CS,3の4つのSTEPで構成されており,中でもSTEP 1は重要度が高く,STEP 2 CS は日本人にとって最難関とされています。そんなSTEP 1を僕はなんと最高スコアで合格し,STEP 2 CSに一発で合格してしまいました。

これだけではやはりただの自慢に聞こえてしまうかもしれません。でも,もう少しだけ話を聞いてください。なんとですね,僕はもともと英語が大の大の大の苦手だったんです。勉強自体も決して得意ではありませんでした。
「『英語が苦手だったのに○○合格!』とか,そんな類の本はたくさんあるだろ!」って? おっしゃる通りです。しかし,僕の英語苦手っぷりは右に出るものがほぼないレベルです。いやもう苦手を通り越して,トラウマレベルです。ガチのトラウマ。詳しくは第1章でお話しします。座して待たれよ。

しかし,そんな勉強や英語が苦手だった僕だからこそ,本書で紹介しているような誰でも利用できる勉強方法を生み出すことができたのだと信じています。実際にセザキングメソッドを使って多くの受験生がUSMLEに合格しています。全STEPのマニュアルを作成しましたが,特に日本人にとって最難関のSTEP 2 CSのマニュアルはきわめて実践的な内容になっています。本書にもその内容を盛り込んでいますが,詳しく知りたい方はブログ(https://usmlego.com/)をご参照ください。

今この本を手にとってくださったあなたが,USMLEを受験予定の方なのか,さらにその先の留学を考えている方なのか,はたまた純粋に医学英語を学びたい方なのか,それとも昔の僕と同じように英語がトラウマレベルで苦手な方なのかは,僕にはわかりません。もしかしたら,医学部受験生やそのご家族かもしれません。

しかし,これだけは断言できます。あなたが「医学英語を学びたい」,または「何かをがんばりたい」とさえ思っていれば,あなたにとって役立つものをこの本の中で必ず見つけることができるはずです。

そのような理由もあり,この本は医学書としては少々変わった趣をしています。ですので,最初に本書の概要を簡単にご説明します。

まず第1章では,僕のこれまでの英語遍歴をご紹介することで,もともと「ポンコツ」だった僕自身のことを知っていただくとともに,読者の方に医学英語を勉強する「勇気」を持っていただきたいと思います。この本をきっかけに,読者の皆さんが医学英語のみならず,何か新たなことに挑戦したいと思えるようになってもらえたら,僕にとってこの上ない喜びです。

次に第2章では,英語を学ぶ前に「(僕が思う)正しい日本語」の重要性についてお話しします。USMLEコンサルタントとして数多の相談を受けてきた僕だからこそわかる,正しい日本語を使うことの大切さをお伝えします。そのキーワードとなるのは,「自分の言動を客観視すること」,そして「われわれ日本人だからこそ外国語を学ぶときに文法を強く意識すべきだということ」です。断言しますが,「外国語(英語)を学ぶこと」と「日本語を意識し直すこと」は相補的・相乗的に働きます。「自分はUSMLEを受けると決めているんだから早く英語のことを教えてよ!」と鼻息を荒くしたそこのあなたにこそ,大事な章かもしれません。

第3章では,いよいよ本題に入り,英語の勉強方法を解説します。そもそも受験勉強をがんばったのになぜ英語がしゃべれないのか? そして,実際に勉強方法はどうすればよいのか? 僕の経験をもとに説明します。

第4章では,少し角度を変えて,医学英文読解にトライしていただきます。医学英語を学びながら,効率的に医学英文読解をする方法をお伝えします。特に「そんなの自分には関係ない!」と思った医学生のあなた,ぜひここから読んでみてください(笑)。また,すでにUSMLEの勉強を開始している方にとっても目からウロコなセザキング流の効率的な解法を掲載しております。

第5章では,「USMLEこそ最高の医学英語学習ツールである」という僕の持論をもとに,僕がこれまでUSMLEコンサルタントとして培ってきた知識をお伝えします。USMLEは,臨床留学をしたい人だけのものではありません。留学予定はないけど純粋に医学英語を学びたいという方にとっても最高の医学英語学習ツールであると,僕は確信しています。

最後に第6章では,USMLEの各STEPについて,合格の極意を伝授していきます。紙面の都合ですべての情報をここでご紹介することはできませんが,勉強方針の大枠はつかんでいただけると思います。

ですので一口に「医学英語」と言っても,本書では文法・発音・リスニングといった基礎的な英語力から,医学英文問題読解や英語診察という医学英語の最たる領域まで,勉強方法を幅広く解説します。

巻末の付録には第1~6章には収まりきらなかった,便利な一覧表(参考書や塾,USMLEの教材など)や「キミだけのUSMLE受験スケジュール帳」などをつけています。

また,合間にはさみこんだミニコラムではUSMLEとは必ずしも関係ないけど僕がどうしても書きたかったテーマについてお話しします。個人的にはこのコラムこそぜひ読んでいただきたいです(笑)。

長くなってしまいましたが,以上が本書の概要です。
さぁ,奇想天外で唯一無二の「セザ本」の世界のはじまりです。われわれの人生は,たった一人の人,またはたった一冊の本との出会いで激変しうるものです。この本を読み終えたときの「あなた」は,もしかしたら今の「あなた」とは別の「あなた」になっているかもしれません。

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  • まえがき
  • 第1章 なぜ英語偏差値30台だった僕がUSMLEに合格できたのか?
    • 1 僕の英語遍歴
    • 2 勉強のススメ―勉強すればするほど幸せになれる
  • 第2章 英語を学ぶ前にまずは日本語から!
    • 1 正しい日本語が使えない人は英語の勉強も苦労する?
    • 2 でもまず,「正しい日本語」ってなに?
    • 3 常に読み手を意識せよ!
  • 第3章 医学英語の勉強方法,どうすればよい?
    • 1 受験勉強をがんばったのに英語がしゃべれない!?
    • 2 医学英単語,どう覚えるべき?
    • 3 英語の教科書の中身が頭に入ってこない!
    • 4 セザキング流 英語参考書の選び方!
    • 5 セザキング流 英語塾の選び方!
    • 6 セザキング流 英語試験の活用法!
  • 第4章 医学英文を読み解くコツ,教えます!
    • 1 医学英文問題を解いてみよう!
    • 2 先読みして「テーマ」をとらえる
  • 第5章 USMLEは最高の医学英語学習ツール
    • 1 USMLEって何? おいしいの?
    • 2 USMLEのメリットは留学だけじゃない!
    • 3 勉強する気になってきた! まずは何から始めればいい?
    • 4 FAへの書き込み方がわからない……
    • 5 STEP 2 CSで「型」が身につく英語診察
      •   おまけ 英語診察フレーズ動画集!
    • 6 STEP 2 CSで「型」が身につく英語発音
    • 7 STEP 2 CSで「型」が身につく英語カルテ作成
    • 8 「通訳理論」をご存知ですか?
  • 第6章 USMLE合格の極意
    • 1 STEP 1合格の極意!
    • 2 STEP 2 CK合格の極意!
    • 3 STEP 2 CS合格の極意!
    • 4 STEP 3合格の極意!
  • あとがき
  • 付録
    • ① お役立ちWebサイト・スマホアプリなど
    • ② 英語参考書・塾のまとめ
    • ③ USMLE参考書・模試など
    • ④ コピーして使える問診票
    • ⑤ キミだけのUSMLE受験スケジュール帳
    • ⑥ 本書の参考文献
  • ミニコラム
    • 「恥じ」のすゝめ
    • とにかく手を動かせ!
    • お金のハナシ
    • 国試のおもひで
    • 僕の人生を変えた本
    • 努力は「次の努力」につながる!
    • ペンは細いものを使え!
    • ドレーピングのハナシ
    • ありがとう,LAのおじさん! @スタバ
    • 「アンマッチ」も不幸とは限らない
    • 眠れぬ夜は誰のせい?
    • 卒業旅行中でも勉強三昧!?
    • ソーシャルワーカー万能説!?

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「最強」級に丁寧な筆致の「最弱」だった著者からの応援本
書評者:押味 貴之(国際医療福祉大医学教育統括センター准教授)

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英語の対策本は数多くあり,その中には本書のように「最強」をうたっているものも少なくない。そのため「最強」といううたい文句に眉をひそめる方も多いことだろう。しかし本書は「最強」の英語強者によってではなく,「最弱」の英語弱者であった著者によって丁寧に書かれた医学英語学習の解説本である。そしてその丁寧さのレベルはこれまでに出版された医学英語関連の書籍では間違いなく「最強」といえる。

著者は医師として働きながら米国医師国家試験(USMLE)のコンサルタントとしてこれまでに1000人以上の医学生・医師の指導に従事し,数多くのUSMLE合格者を生み出してきたUSMLE受験対策の専門家である。こう聞くと「最強」の英語強者を想像すると思うが,著者は学生時代,英語が「トラウマレベルで苦手」な英語弱者であった。本書はそんな「最弱」であった著者が,USMLEの試験を高得点で合格するまでの体験とあまたの指導経験から得られた医学英語学習方法を,文字通り「最強」レベルで丁寧に解説している。

どのくらい丁寧かというと「英語を学ぶ前にまずは日本語から」というテーマで1つの章を使うくらいである。外国語学習において,「母国語を正しく使うという姿勢」は軽視されがちである。しかし,「テンポラールにツモールを認めます」のような「医師のルー大柴化」は英語学習においては非常に問題であり,正しい英語を使える日本人医師はこのような日本語を使うことはない。この章で紹介されているさまざまな具体例を通して「医師として日本語を正しく使う」という意識を持つだけで英語力が向上する読者も数多くいることだろう。

また,文法や読解といったこれまでの医学英語教材では見過ごされがちだったテーマにも本書は正面から向き合っている。そして,そこに徹底されているのは英語が「最弱」であった著者の学習者としての視点だ。英語塾の選び方や英語試験の対策方法に至るまで,著者は「自分が医学生時代に知りたかった」という情報を厳選し,「最弱」であった過去の自分を想定し,導くような語り口で丁寧に解説している。

もちろん英語が得意な医学生や医師にとっても本書は宝の山といえる。特に後半のUSMLE対策は著者が最も得意とする領域であり,日本において本書ほど丁寧にUSMLE対策を解説している書籍は存在しない。試験情報や勉強方法はもちろん,合格に至るまでのさまざまな状況をシミュレーションして丁寧に解説している。USMLE受験を考えている医学生・医師にとって,本書は必携の書といえる。

ただ,本書の読後感は医学英語学習の解説本のそれではない。「最弱」であったコンプレックスを大きな力に変えた著者から,英語を苦手とする日本人医学生に贈られた「温かい応援本」というのが本書の本質であり,英語を使って新たなことに挑戦したくなる,そんな一冊である。

USMLE合格への筋道が本書一冊に!
書評者:清澤 宝(メディックメディア講師)

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“USMLE”と聞いて,憧れをもちつつも,ハードルが高いように感じて挑戦するに至らなかった学生も少なくないはず。「そもそもUSMLEって何から手をつけるの?」「英語力はどれくらい必要なの?」「自分でも合格できる可能性はあるの?」といったさまざまな疑問によって,やがては「やっぱりやめときますわ!」に落ち着いてしまう。そんな学生にとって,本書は必読の書籍ではないかと感じた。まさに英語力ゼロに近い状態からUSMLE最高得点を叩き出したDr.セザキングの医学英語学習メソッドは,英語に苦手意識を持つ学生に夢や希望を与える。

第1章から第4章では「なぜ英語力に乏しかったDr.セザキングがUSMLEに合格できたか?」「USMLE合格という目的を達成するために,どのように英語を勉強するべきか?」ということが具体的に書かれており,USMLEをゼロから勉強するための事前準備が明確になるであろう。また医学英語を勉強する上で非常に役立つ知識や考え方がユーモアたっぷりに書かれているので,USMLEを受験しない医学生にとっても医学英語を勉強するきっかけになるに違いない。

第5章からはいよいよ本格的にUSMLEの試験内容や勉強法が書かれており,「USMLEに合格するためには,このように問題集をこなしていけばよいのか!」ということが明確になる。そして最終章である第6章はDr.セザキングによる『USMLE合格の極意』! USMLEの各ステップにおける対策が書かれており,どれくらいの期間でどの問題集を終わらせて,いつ模試を受けるべきか,また“合格するための条件”が惜しげもなく確かに記されている。書評で具体的な内容まで書けないのが残念なところなのだが,USMLEに興味のある方は,まず『Dr.セザキング直伝! 最強の医学英語学習メソッド』を手にすればよいであろう。USMLE合格への筋道,その答えがこの一冊の中に!

USMLE指南書の仮面をかぶった「人生の手引書」
書評者:北中 千史(山形大学医学部腫瘍分子医科学講座・教授)

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本書に関心を持たれた方の多くは,程度の差こそあれ,今の自分に納得できていなくて「医学英語を含めもっと勉強ができるようになれないかなあ……」とのフラストレーションを抱えているのではないだろうか。でもその一方で,「自分程度の才能じゃ,あまり高望みはできないかな……」とどこか諦めの気持ちもあるのでは,と想像する。そんな方々がこの本にふと心惹かれたのなら,その直感は正しい。確かにこの本には才能の限界を超えて人生のアクセルジャンプを飛ぶためのノウハウが詰まっているからである。と言っても,「どうせ“たまたま”うまくいった自分の経験談を,さも方法論があるかのように見せてるだけじゃね?」という疑問をもたれる向きもあるだろう。そんな心配が無用であることを納得していただくため,評者のよく知る人物でこの本のメソッドを実践して人生のクワッドアクセルを飛んでしまったK君を紹介したい。

かつてテニスをこよなく愛する少年だったK君,勉強もさることながら宿題がことのほか大嫌いで,小学生のころの将来の夢は「文部大臣になって全国から宿題をなくす」ことだった。案の定,当時の成績は「医学部行きたい」なんて言おうものなら,「正気か?」と言われかねない程度であった。そんなK少年が地元(東北地方)の中学に入り心から尊敬できる英語・数学の先生に巡り合う。そして迎えた中学1年,初の中間試験,先生に認められたい一心で英語・数学満点を狙い,珍しく真面目に勉強した。結果,英語はかろうじて学年平均超え,数学に至っては平均にも届かない60点台であった。見事な惨敗である(しかも答案返却の瞬間まで満点を確信していた筋金入りのどアホである)。この時,K少年は「あんなに一生懸命勉強してもやっぱりボクはこの程度か……」と自分の無能さを目の当たりにして絶望したが,英語の返却答案に記されていた14文字の魔法の赤ペンに一筋の希望の光を見出した。そして英語の先生の期待に応えたい一心で英検4級にチャレンジを決意,無事合格する。たかが4級と侮ることなかれ,K少年はこの合格で「“正しく”やれば,できる」との成功体験を得て,中学生のうちに3,2,1級とホップ・ステップ・ジャンプしてしまうのである。さらにその成功体験を数学に展開,優秀な同級生に恵まれ切磋琢磨する中で中学2年のうちから雑誌『大学への数学』(東京出版)の「宿題」正解者に名を連ねるようになる。中学3年時には英語と数学で全国トップクラスの高校生・既卒生としのぎを削り,平均7割で合格できる灘高の入試を(合格目的でなく力試しのつもりで受けたので特別な対策は何もしていないが)ほぼ9割の得点で断トツ合格してしまった。その間,塾も行かず学校の先生にも授業以外は教わっていない。また,強豪校として知られたテニス部のキャプテンとなり,卒業までに彼女もできる(笑)など,何一つ犠牲にしない超充実ライフであった。かくもK君は中学入学時と卒業時で「筋肉」と「脳」くらい別人になっていたわけである(ご存じのように同じ人の筋肉と脳は,遺伝子は同じで働き方が違うだけである)。

その後,高校では「理三も入るだけなら高1で,トップ狙うなら高2で十分」とややモチベを失いながら医学部に進み,卒業後脳外科医となってあらためて人生の目標を取り戻し(正しくは「初めて“本来”の人生の目標を見つけ出し」),専門医となった後ひょんなことがキッカケで基礎医学研究者へと転身し悪性脳腫瘍治療法開発をライフワークとするようになった。縁あって地元近くの医学部に講座を持つ機会に恵まれ,現在は悪性脳腫瘍だけでなく治療が最も難しいいわゆる“難治がん”の根治療法を開発するという夢を追いかけて充実した日々を送っている。ところでそんなK教授(かつてポンコツだった“少年”はついに“教授”になった!),自分のキャリアを振り返ってあることに気が付いた。話を単純化して仮にヒトの能力を規定する“才能遺伝子群”というものがあるとしよう。当然各遺伝子には個人差,つまり生まれつきの良し悪しが多少ある。しかし,そもそも遺伝子はオン(発現)にならないと働かないわけで,いわゆる“神童”の多くはたまたま多くの才能遺伝子がオンの状態で生まれてきただけである。故に悲しいかな,彼らはオフをオンにする術も知らなければ,「できない人がなぜできないか」もわからない(彼らにとっては「遺伝子オン状態」が当たり前・前提なのだ)。翻って休眠遺伝子の束を軒並みオンにしてきたポンコツ(=K君)はオフ遺伝子をオンにする術,つまり能力開発の秘技を誰よりも知っているではないか(遺伝子自体が変わることはないが,そのオン・オフが環境変化や外的刺激の影響を受けることは生命科学の常識である)。ならばこれを自分の教え子に伝えれば人生のトリプルアクセルを飛ばせてあげられるのでは,という仮説をK教授は立て「その時」を待った。そこに飛び込んできたのが英語偏差値30台の「彼」であった。さあ,壮大な仮説検証実験の始まりだ……。本書を一読すれば,読者はK君と「彼」のあまりの相似形に驚きを禁じ得ないことであろう。

ちなみに「彼」もK教授からUSMLE対策はもちろんのこと,医学英語の「い」の字も教わっておらず,勉強の仕方は全て自分で開発したものである。そして今,本書を通じて一人でも多くの医学生にそのノウハウを伝えようとしている。が,初学者向けに医学英語やUSMLEのハウツー(各論)を伝えることが最重要ミッションの本書では,自己能力開発法のエッセンスは意外に見えにくくなっているかもしれない。それでも本書を傍に置いて隅から隅まで,著者の熱い思いをしっかりと感じながら読み進めれば,見えてくるものがあるに違いない。それでも見えてこなければ,セザキングと医学書院にお願いして,続編を期待しよう。いずれにしても,本書を手にした方が充実した人生へとつながる「革命的自己開発」の入り口に間違いなく立っていることを評者は保証する。また,本の帯に「必ずまえがきを読んでから購入して!」と書いてあるが,本書の「まえがき」に偽りなし,とも断言しておこう。なお,この点については他の書評を参考にしていただきたいが,本書はUSMLE導入マニュアルとしてだけでも十分購入の価値があることを念のため私からも申し添えておく。最後に一言でまとめるならば,評者はこれほど医学生・若手医師の人生に揺さぶりをかける書籍に出合った記憶がない。

予想の斜め上を行く新スタイルの医学英語学習本
書評者:山本 健人(京大大学院消化管外科学)

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 『Dr.セザキング直伝! 最強の医学英語学習メソッド[Web動画付]』は,USMLEコンサルタントである「セザキング」こと瀬嵜智之医師が書き下ろした医学英語学習の教科書である。瀬嵜氏は学生時代にUSMLEのSTEP 1に最高スコアで合格し,その後も最難関とされるSTEP 2 CSを含め全STEPに一発合格。現在はUSMLEに特化したオンラインサロンを主宰し,指導した人数は1000人を超える。

さて,ここまで読んだ方は,まさに才能あふれる超人的な男の遍歴を聞いた気になるかもしれない。だが実は「そうではない」ところが本書の最大の特徴であり,傑出した点である。まず,瀬嵜氏が「トラウマレベル」と語るほど英語が苦手だった過去を披露するところから本書は始まる。むろん,優秀な人物はすべからく謙遜が得意だ。ところが,彼の語る英語遍歴は確かに,想像以上である。高校3年生時の英語の偏差値は30台,現役時代のセンター英語は58%と6割を下回っており,二次試験にわざわざ英語の“ない”医学部を選んだ,という有様なのである。

つまり本書に貫かれているのは,「英語を得意としない人が,米国で日常臨床を行えるレベルの英語力に到達するまでに一体どのような策を講じるべきか」を徹底的に追求する姿勢である。

優秀な業績を持つ人に高みに至るまでのコツを問うても,凡人には容易に真似できない回答が返ってきて思わず頭を抱える,というのはよくあることだ。しかし瀬嵜氏はむしろ「凡人がどのような努力をすべきか」というノウハウを極めて具体的に語るのである。

また,こうした観点から英語学習指南のアプローチも新しく,上記の英語遍歴に引き続き「日本語学習の重要性」が語られるのもユニークである。私も過去に6年間,塾講師として大学受験生に英語を教えた経験があるが,瀬嵜氏と同様に「日本語ができない人は英語もできない」という感覚を持っている。だが彼はこのことを非常にユニークな手法で解説しており,これには誰もが度肝を抜かれるであろうと思う。ネタバレになるのであえてここでは書かないが,ぜひ本書を手に取り,内容を確認していただきたい。むろん,この軽妙な語り口が説得力を持って読者の心をつかむのは,他でもない瀬嵜氏の「日本語力」の高さ故である。

また,当然ながら本書はUSMLE受験を想定した英語学習のための教科書と銘打っている以上,具体的な学習ノウハウに全体の約半分を費やしている。TOEFLの受験テクニックから,USMELのSTEPごとの具体的な対策まで,非常に明快に,かつ具体的に解説される。

だがここでも「英語が得意でない人が難関を前に“どう立ち回るか”」というコンセプトが貫かれている点は秀抜だ。

私が瀬嵜氏に初めて会った時,彼が話したことが印象に残っている。「僕は本を出版することを目標に掲げ,その目標に向けて学生時代から手を打ってきました。だから計画通りです」。本書は,目標に向けて綿密な計画を立て,一つひとつ歩みを進めてきた彼のノウハウを余すことなく知ることができる,貴重な一冊なのである。

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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    2020.07.07