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子宮頸部細胞診運用の実際 第2版
ベセスダシステム2014準拠

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従来のパパニコロウクラス分類(日母分類)にかわり、日本に導入された子宮頸部細胞診の報告様式である“ベセスダシステム”。その2014年版に準拠したアトラス。日本の実状に合わせ、細胞診に携わる方々が疑問に思う部分を端的に捉え、分かりやすく解説している。豊富な写真にきめの細かい説明を加え、多くの初学者にとって改訂された報告様式が平易に理解できる内容となっている。
編集 坂本 穆彦
執筆 坂本 穆彦 / 今野 良 / 小松 京子 / 大塚 重則 / 古田 則行
発行 2017年11月判型:B5頁:232
ISBN 978-4-260-03237-7
定価 8,800円 (本体8,000円+税)

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第2版 序

 子宮頸部細胞診の報告様式であるベセスダシステムは,海外はもとよりわが国においても広く定着し,日常診療や検診業務に用いられています。
 ベセスダシステムは1988年に初めて公にされました。その後改変が加えられ,今日に至っています。2009年には,それまでわが国の標準的な報告様式であった日母分類の作成母体である日本産婦人科医会が,これまでの分類を廃しベセスダシステム2001に準拠した報告様式の採用に踏み切りました。この時点でわが国にベセスダシステムが広く適切に普及するための一助として刊行されたのが,本書の初版である『子宮頸部細胞診ベセスダシステム運用の実際』(2010年刊)です。これまでにもベセスダシステムの米国版アトラスの翻訳書は出版されていましたが,日本の医療現場でいかにベセスダシステムを受け入れ,展開するかという視点からの手引き書はほかにありませんでした。本書の初版が“日本人による日本人のための手引き書”と銘打って刊行された由縁です。幸いにして多くの読者を得ることが出来,大変喜ばしく有難く思っております。
 さらに,2014年にベセスダシステムは新たな改訂がなされ,“ベセスダシステム2014”として発表されました。本書はこの2014年版ベセスダシステムに準拠して,初版をリニューアルしたものです。子宮頸部細胞診の新しい流れを把握していただき,日常の細胞診業務にお役立てくださればと思います。なお,2014年版では新たな領域として肛門細胞診も取り上げられましたが,本書は子宮頸部細胞診に焦点をあててまとめました。
 最後に,本書の出版にあたり医学書院編集部大野智志,制作部の川口純子両氏には色々な面でお手助けをいただきました。執筆者一同を代表して謝意を表します。
 本書が前版と同様に多くの皆様の細胞診業務にお役に立つことができれば,これにまさる喜びはありません。

 2017年11月
 坂本穆彦

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I ベセスダシステムの成り立ちとその要点および運用
  1 ベセスダシステム成立の背景
   a ベセスダとベセスダシステム
   b わが国におけるベセスダシステム以前の細胞診の分類
   c 米国におけるベセスダシステム以前の細胞診
  2 ベセスダシステムの導入
   a ベセスダシステムの特徴
   b 諸外国およびわが国でのベセスダシステムへの対応
   c 「ベセスダシステム1988」の改訂と2001版の公表
   d わが国におけるベセスダシステム受け入れ
   e ベセスダシステム2014の登場
  3 ベセスダシステムの要点
  4 ベセスダシステムと組織分類の関係
  5 ベセスダシステムのわが国での運用

II 判定の実際
 A 標本の適・不適の評価
  1 移行帯細胞
  2 不適正検体
   a 扁平上皮細胞の数
   b 不明瞭検体
  3 細胞診検体の標本作製
   a 採取器具について
   b 液状処理法による細胞診
   [1]ThinPrep®
   [2]SurePathTM System
   [3]TACASTM
   [4]CellPrep®
 B 陰性(上皮内病変ではない/悪性ではない)(NILM)
  1 非腫瘍性所見
   a 非腫瘍性細胞変化
   [1]扁平上皮化生
   [2]角化
   [3]内頸部腺細胞(卵管化生を含む)
   [4]萎縮(炎症を伴う/炎症を伴わない)
   [5]妊娠に関連した変化
   b 反応性細胞変化
   [1]炎症に関連するもの(典型的修復を含む)
   c リンパ球性(濾胞性)頸管炎
   [1]放射線照射に関連するもの
   [2]子宮内避妊器具(IUD)に関連するもの
   d 子宮全摘後の腺細胞
  2 微生物
   a 腟トリコモナス
   b 形態的にカンジダに合致する真菌
   c 細菌性腟症を示唆する菌叢の転換
   d 形態的に放線菌に合致する細菌
   e 単純ヘルペスウイルスに合致する細胞変化
  3 子宮内膜細胞:どのようなときに,どのように報告すべきか
 C 扁平上皮細胞異常
  1 異型扁平上皮細胞(ASC)
   a ASCの解釈
   b ASCの所見と注意点
   c ASC-US
   [1]ASC-USとは
   [2]ASC-USとコイロサイトーシス
   [3]ASC-USの臨床的取り扱い
   d ASC-H
   [1]ASC-Hとは
   [2]ASC-Hの臨床的取り扱い
  2 扁平上皮内病変(SIL)
   a 軽度扁平上皮内病変〔LSIL(CIN1)〕
   b 高度扁平上皮内病変〔HSIL(CIN2, 3)〕
   [1]CIN2(中等度異形成)
   [2]CIN3(高度異形成/上皮内癌)
  3 扁平上皮癌(SCC)
   a 角化型扁平上皮癌
   b 非角化型扁平上皮癌
   c 微小浸潤扁平上皮癌
   d 乳頭状扁平上皮癌
   e 類基底細胞癌
   f コンジローマ様癌
   g 疣状癌
   h 扁平移行上皮癌
   i リンパ上皮腫様癌
 D 腺細胞異常
  1 異型腺細胞(AGC)
   a AGCの実際
   b AGCの分類
   [1]異型内頸部細胞
   [2]異型内膜細胞
   c AGCの臨床的取り扱い
  2 内頸部上皮内腺癌(AIS)
   a AISの細胞像
  3 腺癌
   a 腺癌細胞の一般的な特徴
   b 組織型別にみた細胞像
 E その他の上皮性腫瘍および神経内分泌腫瘍
  1 その他の上皮性腫瘍
   a 腺扁平上皮癌
  2 神経内分泌腫瘍
   a 低異型度神経内分泌腫瘍(NET)
   [1]カルチノイド腫瘍・非定型的カルチノイド腫瘍
   b 高異型度神経内分泌癌(NEC)
   [1]小細胞神経内分泌癌(SCNEC)
   [2]大細胞神経内分泌癌(LCNEC)
 F その他の所見
   a 細胞の質的,数的判定の困難な例
   b 腺扁平上皮癌
   c 異型修復
   d 由来不明細胞
 コラム コンピュータ支援による子宮頸部細胞診スクリーニング

III 報告書作成の実際
  1 報告様式の骨子
  2 報告の実際

参考文献
索引

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ベセスダシステムを正しく理解するために最良の書
書評者: 植田 政嗣 (日本臨床細胞学会細胞診専門医会会長/大阪がん循環器病予防センター副所長・婦人科検診部長)
 このたび,坂本穆彦先生の編集による『子宮頸部細胞診運用の実際――ベセスダシステム2014準拠 第2版』が出版された。
 本書は全232ページから成り,2014年に改訂されたベセスダシステムに準拠し,その成立と変遷,判定の実際,各細胞異常,報告書の作成まで,坂本先生をはじめ,細胞診専門医である今野良先生ならびに小松京子氏,大塚重則氏,古田則行氏の3人のベテラン細胞検査士が分担執筆している。ベセスダシステム2014では,肛門や外陰にもHPV関連病変の細胞診の適用範囲が拡大されたが,判定区分などの分類内容については大きな変更はない。本書では子宮頸部細胞診に焦点を当ててまとめられており,日本の実情に合わせた視点から大変わかりやすく解説されている。

 子宮頸癌は,HPV感染が原因となり,前癌病変である子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)を経て癌へと進行することが明らかにされており,早期発見,早期治療により予防し得る疾患である。そのためには検診が最も重要で,特に病巣部の的確な細胞診や組織診が不可欠である。現在,細胞診判定方式としてベセスダシステムは検診や日常臨床の場でほぼ定着しており,細胞診標本の適・不適を判定した上で,標本上に出現する全ての種類の細胞おのおのについて記述的に評価する方式がとられ診断の客観性が図られている。本書は,標本の評価に加えて,異型扁平上皮細胞(ASC)の解釈についても明確に論評されている。ASCは細胞個々に適用するカテゴリーではなく,標本全体を判断するためのカテゴリーであり,ASCの細胞判定は除外診断的な立場からグレーゾーン的な概念で捉えられるべきであると解説されている。これには全く同感であり,細胞判定を厳密にすべきと考えるわが国では,良性の反応性変化を安易にASCと判定すべきではない。これはASC-Hや異型腺細胞(AGC)についてもいえることであり,不要な精検を回避する意味でも重要な示唆を与えている。
 一方,昨今液状化検体細胞診を導入する施設も増加しつつある。本法は,採取した細胞を専用の保存液中に回収し,浮遊した細胞を収集後スライドガラス上へ薄く塗抹し,固定した後染色を行う標本作製方法である。従来法に比べて採取細胞を液状化することで乾燥を防ぐとともに,保存液中で分散することで塗抹細胞の重なりを最小限にすることが可能となり,観察評価に適することが示されている。細胞判定の阻害因子となる粘液,血液なども除去され鏡検性能が向上した反面,個々の細胞の評価には従来法と若干異なる見方も必要になることがあり注意を要する。本書では,検鏡上重要な細胞所見について両者を対比しつつ,細胞観察の要点をわかりやすく解説している。また,種々の液状検体処理法についても紹介されており,理解しやすい。今後,残余検体を用いたHPV-DNA検査などの分子生物学的解析がルーチン化すれば,ますますその重要性が増すものと思われ,本書が役立つであろう。

 このように,本書はこれから細胞診を学ぶ人にとっても,熟練の細胞診専門家にとっても,ベセスダシステムに基づいた子宮頸部細胞診の理解を深めるために必読の書であり,特に細胞診専門医や細胞検査士資格認定試験の受験予定者には自信を持ってお薦めできる教材である。本書が細胞診従事者のみならず,日常臨床に携わる一般婦人科医師にも,価値ある一冊としてぜひとも手元に置いて活用されることを望む次第である。
現場で有用なベセスダシステム2014手引書
書評者: 伊藤 仁 (東海大付属病院・病理検査技術科長/細胞検査士会会長)
 坂本穆彦先生編集の『子宮頸部細胞診運用の実際―ベセスダシステム2014準拠』の第2版が発刊された。執筆は坂本先生をはじめとし,今野良先生,小松京子氏,大塚重則氏,古田則行氏ら細胞診の第一線で活躍するエキスパートである。

 本書は「I.ベセスダシステムの成り立ちとその要点および運用」「II.判定の実際」「III.報告書作成の実際」から構成されている。紙面を多く割いているのは「II.判定の実際」であり,ベセスダシステムの項目に合わせて「A.標本の適・不適の評価」「B.陰性」「C.扁平上皮細胞異常」「D.腺細胞異常」「E.その他の上皮性腫瘍および神経内分泌腫瘍」「F.その他の所見」について多くの写真と詳しい記述が示されている。また,それぞれがさらに小項目に分けられ,代表的な細胞像の所見を箇条書きでリストアップされている。重要なポイントや注意点などは“memo”として適所にわかりやすくまとめられている。また,ASCやAGCなどしばしば遭遇する実際の運用上の問題点などについても,要所要所で丁寧に説明されている。例えば,「ASC-Hは,傍基底型の異型扁平上皮細胞に対して用いられる傾向にある。しかし,萎縮像に対する明確な取り決めがない。現実的には萎縮像における異型扁平上皮細胞が腫瘍による細胞変化なのか,炎症など非腫瘍性の細胞変化なのかを判断することは難しく,非腫瘍性の細胞変化もASC-Hとして評価しなければならない場合もある」(p.90)など,まさに実践向けの手引き書であるといえる。また,日米の判定基準の差についても,米国のCIS判定基準の一つである,「合胞性に出現する細胞像は,わが国でいうところの『異型未熟扁平上皮化生』『異型予備細胞増殖』の像と重複しているところがある」(p.104)など,わが国の細胞診の視点から解説されており,ベセスダシステム2014の理解を深めるために役立つであろう。

 本書では本邦でも近年普及しつつある液状化検体細胞診に関して,いくつかの代表的な方法を取り上げ,その原理や方法についてシェーマ入りで紹介されている。細胞の見方・評価は,従来法と多少異なることがあるため,両者を比較し,丁寧にわかりやすく解説されている。

 本書は既に細胞診に従事している熟練した細胞検査士や細胞診専門医はもとより,これから細胞検査士資格,細胞診専門医資格をめざす諸氏にも,ベセスダシステム2014を理解するためのわかりやすい書としてお薦めしたい“一冊”であり,子宮頸部細胞診の実際の現場に必携したい顕微鏡の傍らに置きたい“一冊”でもある。

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