リスクアセスメント力が身につく
実践的医療安全トレーニング

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医療事故を未然に防ぐための「リスクアセスメント力」育成を図るため、「参加型」「具体的事例を活用」「職種横断的」トレーニングの24の具体例を掲載。実習前の準備から、MITT、HFMEAまで、医療安全の基本から実践まで幅広くカバー。そのまま研修、教育に活用でき、自分で読む形式でも医療安全のエッセンスが理解できる。実際に起きた事例をもとにした実践的内容。本書収載のパワーポイントのダウンロードサービス付。
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石川 雅彦 / 斉藤 奈緒美
発行 2016年11月判型:B5頁:288
ISBN 978-4-260-03012-0
定価 3,520円 (本体3,200円+税)
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  • 序文
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まえがき

 臨床現場では医療安全管理者を中心として,参加型研修の取り組みが実施されており,看護基礎教育における医療安全教育でも具体的事例の活用が検討されていると思われる。しかし,多くの担当者から,思うような成果が得られない,担当者の負担が大きい,発想の限界があるなど,多くの課題があるとも聞いている。こうした状況を鑑み,著者らがこれまで,さまざまな機会にかかわってきた実践的医療安全トレーニングを参考に,臨床現場の職員のみならず,卒前教育にも効果的に活用可能な医療安全教育・研修の企画例を,2014年より雑誌 『看護教育』「“医療安全力”を育むリスクアセスメントトレーニング」と題した連載 (以下,当連載)で提案してきた。
 同誌では,2008年から1年間にわたり,著者の一人の石川が「看護基礎教育における実践的医療安全トレーニング」という連載を掲載したが,当連載では,看護学生のための医療安全教育の企画や,新人看護職員のための医療安全教育の企画など,臨床および看護基礎教育どちらにも適応可能な企画を,各回でそのねらいと目標設定から展開方法と留意点,評価まで,さらに具体的展開方法を含めて,実践可能な企画例を提案した。
 本書は,臨床および看護基礎教育の現場で教育の担当者に活用していただくこと,あるいは医療安全に興味をもたれた方々が医療安全の学習に活用していただくことをねらいとし,「リスクアセスメント力を,手っ取り早く身につけたい」「医療安全教育を,院内で,カンタンに企画・実施したい」「医療安全を,明るく,楽しく学んでみたい」ということを思っている方々をイメージして,内容を展開した。雑誌連載で提案した企画例を整理するとともに,連載では掲載しきれなかった展開方法,図表,および解説例なども新たに加え,ボリュームアップした内容で,どこからでも読めて,そのまま活用できるように,できるだけ図を中心に,読者の方がイメージしやすく,わかりやすい内容を意識して展開した。
 2015年10月より医療事故調査制度も開始され,医療機関における医療安全教育の重要性はますます高まっている現在,これまで,あるいはこれから医療安全教育を担当する医療安全管理者,各部署のリスクマネジャー,および医育機関における卒前・卒後医療安全教育の担当者などの方々はもちろん,医療に携わるさまざまな職種・職位の方々にも手にとっていただいて,いろいろな場面で,ぜひ活用していただき,組織の医療安全力のアップにつながることになれば,望外の喜びである。
 最後に,本書の上梓にあたっては,株式会社医学書院看護出版部課長の早田智宏氏,および同出版部の番匠遼介氏に大変お世話になった。ここで,改めて感謝の意を表する次第である。

 石川雅彦 斉藤奈緒美

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まえがき
本書の使用方法

第1章 医療安全の“実践力”を磨く
 -知ること・関心をもつことから始まるリスクアセスメント
  トレーニング1 マニュアル遵守を促すトレーニング
  トレーニング2 “対話力”育成トレーニング
  トレーニング3 “病院の言葉”でコミュニケーションエラー未然防止トレーニング
  トレーニング4 “SBAR”活用による報告時の“アセスメント力”“提案力”育成トレーニング
  トレーニング5 “気づき力”を磨く新人看護職員“医療安全探検隊”トレーニング
  トレーニング6 “対応力”を高める医療安全オリエンテーリングトレーニング
  トレーニング7 インシデントレポート活用“リスクアセスメント力”トレーニング
  トレーニング8 多職種参加型“チーム力”発揮トレーニング
  トレーニング9 “発想力”を育む研修企画トレーニング
  トレーニング10 双方向リスクアセスメントトレーニング
           -基礎教育と臨床のコラボレーション

第2章 “いまさら聞けない”医療安全の基本-振り返りで気づきを深める
  トレーニング11 “気づき力”を育む「医療安全“ウォーリー”を探せ!」トレーニング
  トレーニング12 “なぜ・なぜ”分析リスクアセスメントトレーニング
  トレーニング13 “自ら考える力”を育む“なぜ”を深めるトレーニング
  トレーニング14 実習前“リスクアセスメントマップ”作成トレーニング
  トレーニング15 HFMEA活用リスクアセスメントトレーニング
  トレーニング16 “状況判断力”を育むシミュレーショントレーニング
  トレーニング17 “伝達力”を育むリレープレゼントレーニング
  トレーニング18 未然防止の可能性に気づくリスクアセスメントトレーニング
  トレーニング19 “自ら気づく力”を育む情報管理トレーニング
  トレーニング20 根拠に基づく“リスクアセスメント力”育成トレーニング

第3章 発展的リスクアセスメントトレーニング
  トレーニング21 PRAトレーニング(PRA:Proactive Risk Assessment:
            プロアクティブ・リスクアセスメント)
            PRAトレーニング(1) “状況判断・対応”トレーニング(基礎編)
  トレーニング22 PRAトレーニング(2) “状況判断・対応”トレーニング(上級編)
  トレーニング23 “MITT”を活用したトレーニング
            (Medical Interdisciplinary Team Training:
            医療領域における職種横断的なチームトレーニング法)
            MITTを活用した体験から学ぶチームトレーニング企画(臨床編)
  トレーニング24 MITTを活用した体験から学ぶチームトレーニング企画(基礎編)

あとがき

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著者の豊富な研修経験が体感できる
書評者: 後 信 (九大病院医療安全管理部長/日本医療機能評価機構執行理事)
 医療安全管理の業務は,日々の地道で着実な業務の継続が重要であるが,多忙な医療現場にあって,スタッフの不足や,特に医師の協力が得難い場面もあるなど苦労も多い。わが国には8,000を超える病院があり,その規模や特徴は,地域のニーズなどに応じて実にさまざまである。そこで,医療安全管理の内容も基本的な事項の他に,自施設でさまざまな取り組みが工夫されている。そのような活動を行うためには,全国的な研修による知識や技術の習得,情報交換,人的ネットワークの形成などの支援が有効である。

 著者の石川雅彦先生と斉藤奈緒美先生は,地域医療振興協会地域医療安全推進センターにおいて,“医療安全管理者養成研修”の企画,運営に長く従事されている。研修会では,全国からさまざまな規模,性質の医療機関の医療安全担当者が参加され,実りの多い研修となっている。両先生は,そのような研修を通じ,医療機関のニーズやそれに応える情報の内容,適切な媒体などを長いご経験から熟知されているお二人である。

 そしてこのたび,医療安全の書物を著されたとうかがい早速手にとって拝見した。実践的な書物である。私なりに本書の特徴を挙げてみたい。
 (1)「ルールが守れない,協力が得られない……」といったよくある悩みに答える「マニュアル遵守を促す」(p.3)「“対話力”育成トレーニング」(p.20)という項目が冒頭に記述されている。研修会において把握してこられたニーズを優先順位付けした上で,それに応える内容となっている。
 (2)実際に発生した事例を活用して記述されている。日本医療機能評価機構が運営する医療事故情報収集等事業は,医療機関から法令に基づいて医療事故を報告していただき,分析して背景要因や再発防止策を示している事業である。同事業が公表している事例データベースから教育的な事例を多く見つけ出して活用されている。
 (3)グループワークを目に見えるように学ぶことができる。施設内の医療安全の研修では座学が多くなり,一方向性の研修になりがちである。グループワークによる双方向性の研修を行うことは,職員の意識を高め,関心を呼ぶことにつながる。
 (4)「“なぜ・なぜ”分析」などの事例分析が学べる。石川先生は,根本原因分析をはじめとする事例分析の経験が豊富であり,そのご経験から得た教訓が盛り込まれている。本書を読むと,あたかも研修中のような円滑な流れの中で分析が身につく感覚がわく。
(5)院内で講義,研修をするためのスライドが提供されている。巻末にスライドをダウンロードするための手続きが示されている。本書の内容を職員に浸透させるために,少ないスタッフがスライド作成にかける時間を省くことができる。

 このような実践的な資料とも言える本書が,多くの医療安全関係者の手に届くことをとても喜ばしく思う。ぜひ手にとってご覧いただき,日々の実務のお役に立てていただきたい。
日頃の違和感や悩みに向き合えるトレーニングが満載 (雑誌『看護管理』より)
書評者: 稲葉 一人 (中京大学法科大学院教授/元判事)
 私は,裁判官を辞してから医療を大学院で学び,厚生労働省や医療機能評価機構の委員をし現場での医療者の支援をしている。まず本書の一般的な書評をする。特徴的な点は,実践的であるための,さまざまな工夫(からくり)が仕込まれていることにある。

 1つは,具体的であること。とかく抽象的になる演習を具体的な教材を提示し,その運営方法(プロトコール)を示している。2つは,具体的な演習の背景に理論・理屈を示していることであろう。3つは,医療が人間(ヒューマン)によって行われていることを慎重に理解し対応していることにある。

◆負の連鎖を断ち切る具体的なトレーニング

 では,より突っ込んだ書評である。私たちが医療の文化を変えるには,Why(なぜか),What(なにか),How(いかに),そして,Outcome(結果)を明確にしながら行うということが必要である。これを本書から読み取る。

 まず,マニュアル遵守を促すトレーニングである(トレーニング1)。医療現場はマニュアルがあふれ,事故等が起こるとさらにこれが加速される。誰しも「マニュアルはあるのだけれど」という疑問から始まる。患者を取り違えないようマニュアルを作る。当面は守られる。しかし,皆が次第に慣れて忘れ,実施されず,事故が繰り返される(Why)。この負の連鎖を切るためには,「マニュアル遵守を促す」こと(What)が根幹にあり,具体的なトレーニングが提案されている(How)。

◆多職種の参加を促し医療安全・患者家族対応に活かす

 本書に通底する考えは,医療の現状の正確な把握と,私たちの弱さをしっかりと見据えてトレーニングを提案していることにある。本書は,医療安全・患者家族対応で最大の問題である多職種協働に,次のようにアプローチする。

 総合案内で,「昨日の健康診断時の採血後に痛みが発生した」ことについて対応を求める患者の事例を使い,「あなたが受付職員であればどのように対応するか」を問う。

 まとめは,「医療にかかわる事例に対する討議では,事務職員や栄養科職員などの非医療職は,事例の状況をイメージしにくいために,積極的に討議に参加できない可能性もあるが,本事例のような状況では患者・家族の心情に近い思考が期待できる。多職種それぞれの特徴を活かした検討ができるように参加者の関心を高めたい」「臨床で発生する可能性のある,職員である自分が突然対応を求められかねない状況を想定し,多職種が参加した討議をとおしてさまざまな認識の違いを理解することにより,“チーム力”が発揮され,職員だけではなく患者・家族の心情にも気づくことにつながる」と結ぶ(Outcome)。

 以上のコメントはじっくりと味わいたい。医療は今,医療者の視点だけでは解決や適切な処理が難しい場面が増えている。著者らは,早くから医療安全・患者家族対応等について研修を実施し,また多くの臨床現場でその対応に具体的に関わる経験を有している。

 今大切なのは,「いつもこれっていけないと思うけどできていない」ことなど,日頃の違和感や悩みに真っすぐに向き合うことである。そのような,真っすぐなトレーニングリソース(24のトレーニング)が満載な書である。

(『看護管理』2017年3月号掲載)

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