RCA根本原因分析法実践マニュアル 第2版
再発防止と医療安全教育への活用
RCAの実践、教育・指導、院内展開など、明るく、楽しくRCAを実施するために
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RCA(Root Cause Analysis)の要であるステップ1~4の実施のポイントをより詳説し、より適切でわかりやすい表現に改めた。また、初版発行以来届けられた読者・研修参加者からの疑問にわかりやすく回答する「RCA実施に関するQ&A」を新たに追加、「RCA指導マニュアル」を新設するなど、より実践に踏み込んだ内容にバージョンアップした。
著 | 石川 雅彦 |
---|---|
発行 | 2012年03月判型:B5頁:230 |
ISBN | 978-4-260-01587-5 |
定価 | 3,520円 (本体3,200円+税) |
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- 序文
- 目次
- 書評
序文
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第2版のまえがき
2007(平成19)年に第1版を上梓させていただいて,これまで,医師・看護師はもとより,医療機関のさまざまな職種の方々,および医療関係の教育機関の教員の方や学生さんにも購読していただいた。また,筆者自身も工夫を加えながら,RCA研修を現在まで述べ2000人以上に実施してきた。2008(平成20)年に公表された世界保健機関(WHO)の「Patient Safety Workshop Learning from Error」のなかに,Root Cause Analysis(RCA)の実施方法が簡便に記載され,システムレベルでの分析の必要性が述べられており,インシデント・アクシデント事例分析として,国際的にもRCAの実施が周知されてきている。
第2版の上梓にあたっては,文章をより適切でわかりやすい表現に改めたり,新規に図を追加するなど,各所に加筆・修正を行なった。RCAの要であるステップ1から4について,その実施のポイントを詳説し,特にステップ3の因果関係図の作成が難しいという意見を多数の研修参加者からいただいたので,作成過程をよりわかりやすく,図を追加して加筆した。さらに,これまでRCA研修で参加者の方々からいただいた疑問にわかりやすく回答する“RCA実施に関するQ&A”を新たに追加した。
特に第2版では,第3章に“RCA指導マニュアル”の項目を新設した。すでに院内で実際にRCAを展開し,あるいは教育現場でRCAを実施している方々が,他の職員や学生さんに“どのようにRCAを指導するか”ということに焦点をあて,これまで筆者が実施してきた指導のポイントを詳細に記載した。これは,自分が理解することと他の人に指導することは次元が違うこととの認識から,RCAを施設内で展開するための実践的な内容に踏み込む必要があると考えたからである。
研修で活用できるトレーニング用事例集には,新規2事例を追加し,実際に患者に影響が及ばなかった事例や臨地実習の学生が関連するという卒前教育の事例も加えて,新しい場面での展開を期待した。
臨床現場ではもちろんのこと,教育現場でも“明るく,楽しく”RCAを実施していただくことに,少しでもお役に立てば幸いである。
2012年1月
石川雅彦
2007(平成19)年に第1版を上梓させていただいて,これまで,医師・看護師はもとより,医療機関のさまざまな職種の方々,および医療関係の教育機関の教員の方や学生さんにも購読していただいた。また,筆者自身も工夫を加えながら,RCA研修を現在まで述べ2000人以上に実施してきた。2008(平成20)年に公表された世界保健機関(WHO)の「Patient Safety Workshop Learning from Error」のなかに,Root Cause Analysis(RCA)の実施方法が簡便に記載され,システムレベルでの分析の必要性が述べられており,インシデント・アクシデント事例分析として,国際的にもRCAの実施が周知されてきている。
第2版の上梓にあたっては,文章をより適切でわかりやすい表現に改めたり,新規に図を追加するなど,各所に加筆・修正を行なった。RCAの要であるステップ1から4について,その実施のポイントを詳説し,特にステップ3の因果関係図の作成が難しいという意見を多数の研修参加者からいただいたので,作成過程をよりわかりやすく,図を追加して加筆した。さらに,これまでRCA研修で参加者の方々からいただいた疑問にわかりやすく回答する“RCA実施に関するQ&A”を新たに追加した。
特に第2版では,第3章に“RCA指導マニュアル”の項目を新設した。すでに院内で実際にRCAを展開し,あるいは教育現場でRCAを実施している方々が,他の職員や学生さんに“どのようにRCAを指導するか”ということに焦点をあて,これまで筆者が実施してきた指導のポイントを詳細に記載した。これは,自分が理解することと他の人に指導することは次元が違うこととの認識から,RCAを施設内で展開するための実践的な内容に踏み込む必要があると考えたからである。
研修で活用できるトレーニング用事例集には,新規2事例を追加し,実際に患者に影響が及ばなかった事例や臨地実習の学生が関連するという卒前教育の事例も加えて,新しい場面での展開を期待した。
臨床現場ではもちろんのこと,教育現場でも“明るく,楽しく”RCAを実施していただくことに,少しでもお役に立てば幸いである。
2012年1月
石川雅彦
目次
開く
第2版のまえがき
初版のまえがき
第1章 基礎編 医療安全トレーニングの目的
医療安全を確保し,質向上をめざすために
〈1〉個人の能力育成とチーム医療を推進するトレーニング法
〈2〉2つのインシデント・アクシデント分析システム
〈3〉ヒューマンエラー
〈4〉再発防止システム
〈5〉未然防止システム
RCA(根本原因分析法)とは
第2章 実践編その1 臨床で実施するRCA
14のプロセスをいつ,誰が,どのように実施するか
スピードが求められる臨床のRCA
プロセス1 インシデント・アクシデント事例の報告
プロセス2 RCAを実施するかどうかを検討(トリアージ)
プロセス3 RCA委員会の招集(メンバーの選択)
メンバーをどのように選択するか
多職種参加のメリットと工夫
固定チームか,“Just-In-Time”チームか
参加することが人材育成に
プロセス4 ステップ1:出来事流れ図作成
分析の4つのステップ
1枚の付箋には1つの出来事を
緊急時の時間短縮の工夫
プロセス5 ステップ2:“なぜ・なぜ”分析
RCAの基本-“なぜ”“なぜ”を繰り返す
“なぜ”がもう出ないか,視点を変えて検討
プロセス6 情報の隙間を埋める①現場調査
なぜ情報の隙間を埋めるのか
現場調査の利点
新たな情報で報告書のフォーマットの改定をする
プロセス7 情報の隙間を埋める②当事者インタビュー
できる限りの配慮を講じて実施する
プロセス8 ステップ2の“なぜ・なぜ”分析を繰り返し,根本原因を追究
プロセス9 ステップ3:因果関係図作成・根本原因確定
因果関係図作成の5ルール(ファイブ・ルール)
プロセス10 ステップ4:対策立案
「7つの留意点」をもとに具体的に検討
対策効果のレベル・チェック
プロセス11 管理者に報告し,対策実施の承認を受ける
管理者の理解と協力を得るために
プロセス12 分析結果のフィードバック(職員,患者・家族など)
プロセス13 関係各部署の責任者に連絡し,対策を実施する
プロセス14 実施した対策を追跡し,評価する
RCAのプロセス完了後にすべきこと
トリガーリストとその活用法
第3章 実践編その2 医療安全教育で実施するRCA
11のプロセスの進め方-目標の選定,教材の準備から評価まで
立場や目的に応じて実施するRCA
プロセス1 研修の目標・対象・方法の選定
(1)到達目標は明確に-期待する結果を具体的にイメージする
(2)対象選定のポイント-ターゲットを絞る
プロセス2 教材の準備(分析に用いる事例の選定)
(1)自施設のインシデント・アクシデント事例を活用する
(2)自施設の事例をもとに,新たに事例を作成する
(3)他施設の事例を参考にして事例を作成する
(4)市販されているDVDなどの映像を利用する
(5)その他((1)~(3)の事例を映像化する)
プロセス3 参加者のグループ分け
プロセス4 研修場所の確保
プロセス5 研修時間の確保
プロセス6 必要物品の準備
プロセス7 分析に入る前のミニレクチャー(RCAの概要と演習の進め方)
研修プログラム
プロセス8 RCA実施の4つのステップ
ステップ1:出来事流れ図の作成
ステップ2:“なぜ・なぜ”分析
ステップ3:因果関係図作成・根本原因確定
ステップ4:対策立案
本例で立案された対策
プロセス9 発表
どのような発表にするか
プロセス10 講評・まとめ
プロセス11 研修の評価
RCA実施中の指導
スムーズな進行のための関わり方
RCA指導マニュアル
事例作成と整理のポイント
「ステップ1:出来事流れ図作成」における指導のポイント
「ステップ2:“なぜ・なぜ”分析」指導のポイント
「答え」の幅を広げる指導
例題を用いた指導トレーニング
“なぜ・なぜ”分析指導におけるトリガーリスト活用法
「ステップ3:因果関係図作成・根本原因確定」指導のポイント
「ステップ4:対策立案」指導のポイント
3つのRCA
〈1〉RCA(根本原因分析法)
〈2〉RRCA(Rapid RCA:迅速根本原因分析法)
〈3〉SRCA(Simplified RCA:簡易根本原因分析法)
RCAの展望
〈1〉トップマネジメントが最初に参画
〈2〉医学・看護教育などへの導入
医学教育への導入
看護教育への導入
導入に際して
第4章 応用編 ケースで学びスキルアップ
SACマトリックスを活用したトリアージ
RCAを実施するスコア
ケース1:転倒
ケース2:カフのはずし忘れ
ケース3:誤薬
ケース4:手術部位の間違い
“なぜ・なぜ”分析の例
事例「気胸」
研修で活用できるトレーニング用事例集
1)転倒1
2)誤薬
3)手術における部位間違い
4)食事の間違い
5)苦情・クレーム
6)重複するエラーの可能性
7)転倒2
RCA実施に関するQ&A
参考文献
あとがき
索引
附録 トリガーリスト・トリガーリスト(簡易版)
初版のまえがき
第1章 基礎編 医療安全トレーニングの目的
医療安全を確保し,質向上をめざすために
〈1〉個人の能力育成とチーム医療を推進するトレーニング法
〈2〉2つのインシデント・アクシデント分析システム
〈3〉ヒューマンエラー
〈4〉再発防止システム
〈5〉未然防止システム
RCA(根本原因分析法)とは
第2章 実践編その1 臨床で実施するRCA
14のプロセスをいつ,誰が,どのように実施するか
スピードが求められる臨床のRCA
プロセス1 インシデント・アクシデント事例の報告
プロセス2 RCAを実施するかどうかを検討(トリアージ)
プロセス3 RCA委員会の招集(メンバーの選択)
メンバーをどのように選択するか
多職種参加のメリットと工夫
固定チームか,“Just-In-Time”チームか
参加することが人材育成に
プロセス4 ステップ1:出来事流れ図作成
分析の4つのステップ
1枚の付箋には1つの出来事を
緊急時の時間短縮の工夫
プロセス5 ステップ2:“なぜ・なぜ”分析
RCAの基本-“なぜ”“なぜ”を繰り返す
“なぜ”がもう出ないか,視点を変えて検討
プロセス6 情報の隙間を埋める①現場調査
なぜ情報の隙間を埋めるのか
現場調査の利点
新たな情報で報告書のフォーマットの改定をする
プロセス7 情報の隙間を埋める②当事者インタビュー
できる限りの配慮を講じて実施する
プロセス8 ステップ2の“なぜ・なぜ”分析を繰り返し,根本原因を追究
プロセス9 ステップ3:因果関係図作成・根本原因確定
因果関係図作成の5ルール(ファイブ・ルール)
プロセス10 ステップ4:対策立案
「7つの留意点」をもとに具体的に検討
対策効果のレベル・チェック
プロセス11 管理者に報告し,対策実施の承認を受ける
管理者の理解と協力を得るために
プロセス12 分析結果のフィードバック(職員,患者・家族など)
プロセス13 関係各部署の責任者に連絡し,対策を実施する
プロセス14 実施した対策を追跡し,評価する
RCAのプロセス完了後にすべきこと
トリガーリストとその活用法
第3章 実践編その2 医療安全教育で実施するRCA
11のプロセスの進め方-目標の選定,教材の準備から評価まで
立場や目的に応じて実施するRCA
プロセス1 研修の目標・対象・方法の選定
(1)到達目標は明確に-期待する結果を具体的にイメージする
(2)対象選定のポイント-ターゲットを絞る
プロセス2 教材の準備(分析に用いる事例の選定)
(1)自施設のインシデント・アクシデント事例を活用する
(2)自施設の事例をもとに,新たに事例を作成する
(3)他施設の事例を参考にして事例を作成する
(4)市販されているDVDなどの映像を利用する
(5)その他((1)~(3)の事例を映像化する)
プロセス3 参加者のグループ分け
プロセス4 研修場所の確保
プロセス5 研修時間の確保
プロセス6 必要物品の準備
プロセス7 分析に入る前のミニレクチャー(RCAの概要と演習の進め方)
研修プログラム
プロセス8 RCA実施の4つのステップ
ステップ1:出来事流れ図の作成
ステップ2:“なぜ・なぜ”分析
ステップ3:因果関係図作成・根本原因確定
ステップ4:対策立案
本例で立案された対策
プロセス9 発表
どのような発表にするか
プロセス10 講評・まとめ
プロセス11 研修の評価
RCA実施中の指導
スムーズな進行のための関わり方
RCA指導マニュアル
事例作成と整理のポイント
「ステップ1:出来事流れ図作成」における指導のポイント
「ステップ2:“なぜ・なぜ”分析」指導のポイント
「答え」の幅を広げる指導
例題を用いた指導トレーニング
“なぜ・なぜ”分析指導におけるトリガーリスト活用法
「ステップ3:因果関係図作成・根本原因確定」指導のポイント
「ステップ4:対策立案」指導のポイント
3つのRCA
〈1〉RCA(根本原因分析法)
〈2〉RRCA(Rapid RCA:迅速根本原因分析法)
〈3〉SRCA(Simplified RCA:簡易根本原因分析法)
RCAの展望
〈1〉トップマネジメントが最初に参画
〈2〉医学・看護教育などへの導入
医学教育への導入
看護教育への導入
導入に際して
第4章 応用編 ケースで学びスキルアップ
SACマトリックスを活用したトリアージ
RCAを実施するスコア
ケース1:転倒
ケース2:カフのはずし忘れ
ケース3:誤薬
ケース4:手術部位の間違い
“なぜ・なぜ”分析の例
事例「気胸」
研修で活用できるトレーニング用事例集
1)転倒1
2)誤薬
3)手術における部位間違い
4)食事の間違い
5)苦情・クレーム
6)重複するエラーの可能性
7)転倒2
RCA実施に関するQ&A
参考文献
あとがき
索引
附録 トリガーリスト・トリガーリスト(簡易版)
書評
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看護師のすべての活動に関わる医療安全の基準「書」 (雑誌『看護教育』より)
書評者: 稲葉 一人 (中京大学法科大学院教授・久留米大学医学部客員教授・元大阪地方裁判所判事)
著者は,この約10年間,国立保健医療科学院等では,医療安全をわが国に根付かせる原動力者であった。また,今後もその最適任者である。その著者は,2007年の初版以降,医療安全の重要な基礎である原因分析の手法としてRCAを紹介し,すでに旧著は日本の医療安全の基準「書」となっている。今般第2版が上梓され,さらにわかりやすく,図版を添えて,読者にフレンドリーになっている。医療安全に関わるものとしては,喜ばしい限りである。手にとってみれば,著者の伝えたいという思いに基づく工夫が,あちらこちらに見える。ところで,評者は,医療安全に関わるが,主として,法律家として事故対応に,コミュニケーションの専門家として患者家族と医療者間のクレーム対応等に関わっているので,その観点から,本書の意味づけをコメントしたい。
1.医療安全・患者家族対応の基礎は,原因分析であるということである。患者家族対応は,コミュニケーションの問題という指摘もあるが,まず,「原因分析」が先行する作業である。原因を分析して,その問題を把握しない限り,患者家族への適切な対応はできない。したがって,非常に早く原因分析をしなければならない。そのような場合の注意点等を押さえている(24,29頁)。
2.原因分析を行うにあたっては,事故関係者ないし事故当事者への「支援」という視点が不可欠である。特に患者に害が発生した場合の,事故当事者の負担は重い。当事者の責任追及であってはならず,また,当事者への配慮が欠かせず,そのための手順を本書はカバーしている(30,39頁)。
3.原因分析は,「論理的に物事」を考える訓練の積み重ねであり,とかく感覚的・全体的にとらえようとする,医療者の「行動」「思考」変容のためには,欠かせないツールである。その手順を本書は具体的に詳細に説明している(特に,41~49頁)。
4.誰か(チーム医療とは関係がない者,院外の者)に頼ることも時には必要であるが,現場のスタッフが,分析・解決力をつけることが,最も基礎的な医療者の戦略であり,RCA分析はそれを支援する。そのためには,現場でも容易に経験できる,参考となる事例が必要であるが,これを本書はカバーしている(188頁以下)。
5.RCAは,医療事故の原因分析だけではなく,患者家族との間や,医療者間でコミュニケーションが円滑でなく,時にクレーム化し,暴言暴力が認められた事例でも広く使うことができ,本書はこれらをカバーしている(215頁など)。
看護教育にとっては,RCAをこのような多様な観点(事故原因分析だけではなく,患者家族対応,思考訓練,コミュニケーション分析)から見ることで,看護師のすべての活動にRCAが関わっていることを理解することができると思う。
(『看護教育』2012年6月号掲載)
書評者: 稲葉 一人 (中京大学法科大学院教授・久留米大学医学部客員教授・元大阪地方裁判所判事)
著者は,この約10年間,国立保健医療科学院等では,医療安全をわが国に根付かせる原動力者であった。また,今後もその最適任者である。その著者は,2007年の初版以降,医療安全の重要な基礎である原因分析の手法としてRCAを紹介し,すでに旧著は日本の医療安全の基準「書」となっている。今般第2版が上梓され,さらにわかりやすく,図版を添えて,読者にフレンドリーになっている。医療安全に関わるものとしては,喜ばしい限りである。手にとってみれば,著者の伝えたいという思いに基づく工夫が,あちらこちらに見える。ところで,評者は,医療安全に関わるが,主として,法律家として事故対応に,コミュニケーションの専門家として患者家族と医療者間のクレーム対応等に関わっているので,その観点から,本書の意味づけをコメントしたい。
1.医療安全・患者家族対応の基礎は,原因分析であるということである。患者家族対応は,コミュニケーションの問題という指摘もあるが,まず,「原因分析」が先行する作業である。原因を分析して,その問題を把握しない限り,患者家族への適切な対応はできない。したがって,非常に早く原因分析をしなければならない。そのような場合の注意点等を押さえている(24,29頁)。
2.原因分析を行うにあたっては,事故関係者ないし事故当事者への「支援」という視点が不可欠である。特に患者に害が発生した場合の,事故当事者の負担は重い。当事者の責任追及であってはならず,また,当事者への配慮が欠かせず,そのための手順を本書はカバーしている(30,39頁)。
3.原因分析は,「論理的に物事」を考える訓練の積み重ねであり,とかく感覚的・全体的にとらえようとする,医療者の「行動」「思考」変容のためには,欠かせないツールである。その手順を本書は具体的に詳細に説明している(特に,41~49頁)。
4.誰か(チーム医療とは関係がない者,院外の者)に頼ることも時には必要であるが,現場のスタッフが,分析・解決力をつけることが,最も基礎的な医療者の戦略であり,RCA分析はそれを支援する。そのためには,現場でも容易に経験できる,参考となる事例が必要であるが,これを本書はカバーしている(188頁以下)。
5.RCAは,医療事故の原因分析だけではなく,患者家族との間や,医療者間でコミュニケーションが円滑でなく,時にクレーム化し,暴言暴力が認められた事例でも広く使うことができ,本書はこれらをカバーしている(215頁など)。
看護教育にとっては,RCAをこのような多様な観点(事故原因分析だけではなく,患者家族対応,思考訓練,コミュニケーション分析)から見ることで,看護師のすべての活動にRCAが関わっていることを理解することができると思う。
(『看護教育』2012年6月号掲載)