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上部消化管内視鏡診断マル秘ノート

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著者らが10年かけて集めた「内視鏡診断のポイント」=「モテpoint!」を楽しい語り口調で軽快に解説! さらに、雑誌『胃と腸』(電子版)の秀逸な論文をQRコード付きで紹介することで、入門者も経験者も効率よく診断力をレベルアップできる、必読の1冊。本書を持てば、内視鏡マスターへの最短ルートが見えてくる! web袋とじ(付録)付き!

野中 康一 / 濱本 英剛 / 田沼 徳真 / 市原 真
発行 2016年11月判型:A5頁:256
ISBN 978-4-260-02848-6
定価 4,950円 (本体4,500円+税)

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  • 序文
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はじめに

 深達度診断をはじめとした上部消化管内視鏡診断学は,先人の内視鏡医の知識とデータに裏打ちされた,極めて奥の深い診断学です.100%自信を持って診断できることなんて永遠にないと思いながらも日々勉強を行っています.では,経験の浅い内視鏡医に深達度診断はできないのでしょうか? 私は,基本的な知識さえあれば100%とはいかなくても90%くらいの確率で診断できるのではないかと思っています.
 ここ数年,若手医師を集めて,週に一度内視鏡読影の勉強会を行っています.例えば,初めての参加者に0-Ⅰ型の食道表在癌の深達度診断を読影してもらうと“うーん”と悩んで口ごもってしまいます.食道の0-Ⅰ型,0-Ⅲ型の表在癌は,約9割が粘膜下浸潤を来しているという先人が築きあげたデータがあるわけです.だからまずはこのデータを教えてあげるだけでよいのではないでしょうか.その後に粘膜内病変である可能性を考えていけばよいと思います.
 われわれの勉強会ではここで終わらないようにしています.“では,食道の0-Ⅱa型,0-Ⅰ型は丈の高さがどれくらいで分けていますか?” また皆口ごもってしまいます.「食道癌取扱い規約第11版」には,0-Ⅱa型の高さの目安は約1mm程度までとする,と記載されているので,それを教えてあげればよいのです.さらに,“では,胃の0-Ⅱa型はどうですか?”と質問してみます.もちろん最初は答えられません.「胃癌取扱い規約第14版」には,2~3mmまでのものを0-Ⅱa型とし,それを超えるものを0-Ⅰ型とするのが一般的である,と記載されていることを教えてあげればよいのです.このように,診断を考えるうえで必ず知っておくべき基本事項やデータに関する質問を何度も何度も繰り返してあげます.そうすれば皆が確実に覚えていきます.
 今までどうやって若手内視鏡医が深達度診断を行ってきたのか,疑問に思うことがあります.勉強会の参加メンバーに尋ねてみると,“なんとなく…”あるいは“上の先生が粘膜内癌と言ってたから…”という回答が返ってきます.これが若手内視鏡医の現実なのです.
 私は10年前から自分のマル秘ノートに内視鏡所見を縮小カラーコピーしたものを貼り,自分なりのアトラスを作って繰り返し復習して勉強してきました.上部消化管内視鏡診断がある程度自信を持ってできるようになったのはここ2,3年だと思います.NBIが普及し,上部消化管内視鏡の診断能は飛躍的に進歩しました.自分自身もNBIと出合い,上部消化管内視鏡診断において少しだけブレイクスルーできたと思っています.すばらしい指導医や病理の先生方に拡大所見と病理についての指導を受けることができたお陰でもあります.
 NBI拡大観察所見を理解しようとすると,病理の知識なしでは対応できなくなってきます.私自身もプレパラートを持ち,車を走らせて遠方の病理の先生のところへ指導を受けにいったものです.しかし,同じことを今の若手内視鏡医に強制することは酷であり,現実的に無理でしょう.今,若手内視鏡医はとても忙しいのです.私が10年かけて集めた,内視鏡診断(特に深達度診断)に関する豆知識を短時間で習得していただければ,大切な時間をもっと有効に使えるのではないかと思っています.
 そんな思いで勉強会を行ってきましたが,今では自施設以外の先生方やあまりお若くない先生方も参加されるようになり,その中で,多くの先生方から,この内容をこのままの感じで読みやすい本にすれば,若手内視鏡医がもっと上部消化管内視鏡診断を好きなるのではないか,というありがたいお言葉をいただきました.このことが,私がともに勉強し尊敬している若手内視鏡医・病理医数名でそれにお応えできる簡単な本を作りたいと思うようになったきっかけです.
 誤解しないでいただきたいのは,若い内視鏡医が自分の私見を述べただけの本ではないということです.あくまで日本人内視鏡医・病理医が作り上げてきた日本のデータ(エビデンス)に基づいた内容となっています.とはいえ,決して内視鏡診断学に精通した方は手に取らないでください.本書は恥ずかしくて質問できない若手内視鏡医のためのハンドブックです.
 この成書のキーワードでもあり,頻回に登場することになる「モテる」という言葉ですが,私の活力であり,すべてのモチベーションを意味しています.誤解しないでください.異性にモテたいということだけではありません(笑).カンファレンスでモテたい(説得力を持ちたい),部下にモテたい(尊敬されたい),上司にモテたい(一目置かれたい),内視鏡医としてモテたい(患者に信頼されたい).そういうすべての思いを含んでいます.
 若くても,人の何倍も努力すれば,きっとモテるときが来る.そう信じて日々勉強しています.今日この本を手に取ってくださった内視鏡を始めたばかりの先生方が少しでも簡単に「モテる」ための一助になればと思っております.

 2016年9月
 野中康一

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Ⅰ.総論
 1.読影の基本
  読影に作法はあるの? モテるためにはルーチンが重要!
    自分の読影ルーチンを決めよう!

 2.腫瘍サイズの推定
  もしかして,勘? 適当??  これくらいできなきゃモテないよ!
    モテるための腫瘍サイズの推測法(計測法)

Ⅱ.食道
 1.食道表在癌(1)
  「畳の目ひだ」って何なの? 分かりやすく教えてよ!
    意外と難しくない? 食道表在癌の深達度診断
    モテる! 自分の診断ルーチンを確立しよう!
    内視鏡治療適応病変か否か?
    問題になるのは0-Ⅱの深達度!
    結局0-Ⅱcの深達度診断を大まかにできないとモテなかった….
     じゃあ,できるようになればいいじゃないか!!

 2.食道表在癌(2)
  NBI観察で「brownish area」は全部癌なの? これは本当なの?!
    brownish areaは全部癌なのか?
    拡大内視鏡による血管分類別の深達度診断でもっと「モテ」る!

 3.食道の深達度診断を間違った症例
  その理由は何なの? 病理の先生教えてよ!
    深達度診断を間違った症例(1)
    深達度診断を間違った症例(2)
    深達度診断を間違った症例(3)
    深達度診断を間違った症例(4)
    深達度診断を間違った症例(5)

 4.Barrett食道,Barrett食道腺癌
  難しそうだけどどうやって診断するの? やり方を教えてよ!
    EGJとは?
    まずはBarrett食道
    いよいよBarrett食道腺癌
    Barrett食道腺癌の深達度診断でもっとモテる!

Ⅲ.胃
 1.H. pylori はいるの?(現感染)
  いたことないの?(未感染) 消えちゃったの?(既感染・除菌後)
    萎縮性変化の有無と範囲の判定をできるようになろう!
    萎縮の程度の判定のコツとは?
    H. pylori 感染状態の判定をできるようになろう!

 2.早期胃癌
  分化型? 未分化型? まずそこを見極めよう!
    分化型の発生
    未分化型の発生
    プチモテpoint! 都市伝説! 信じるか信じないかはあなた次第! パート1

 3.早期胃癌(分化型)
  赤色が強いと深達度は深いの? 分かりやすく教えてよ!
    平坦型:0-Ⅱb型
    陥凹型:0-Ⅲ型
    隆起型:0-Ⅰ型
    隆起型:0-Ⅱa型
    陥凹型:0-Ⅱc型

 4.早期胃癌(未分化型)
  ひだの太まりって何? 太いと深達度は深いといえるの?!
    隆起型:極めてまれ
    陥凹型:0-Ⅱc型
    早期胃癌(分化型癌・未分化型癌)深達度診断のまとめ
     -SM深部浸潤以深で出現する4つの所見

 5.胃幽門前部0-Ⅱcの深達度診断
  胃幽門前部って陥凹していても粘膜内癌のことがあるよね? これは注意!
    食道胃接合部癌について
    ちょっと恥ずかしいけど,すごいぞ! ソフトバルーン法
    モテる! 胃幽門前部における早期胃癌の深達度診断

 6.鑑別診断(胃腺腫と高分化型腺癌)
  胃腺腫と高分化型腺癌はみんなどうやって線引きしてるの? 教えてよ!
    「胃腺腫」「高分化型腺癌」どういう根拠で診断してますか?

 7.胃NBI(1)
  NBI拡大観察で見えてる模様は何なの? 分かりやすく教えてよ!
    拡大観察で何を見るの? 何が見えるの?
    NBIとは?
    表面構造から何が分かるの?
    血管構造から何が分かるの?
    非癌粘膜はどう見えるの?
    癌と非癌の見分け方
    プチモテpoint! 都市伝説! 信じるか信じないかはあなた次第! パート2

 8.胃NBI(2)
  組織型ってNBI拡大観察で分かるの? ポイントだけ教えてよ!
    組織型鑑別のカギはネットにある!
    高分化型腺癌のポイントって何なの?
    中分化型腺癌のポイントって何なの?
    低分化腺癌のポイントって何なの?
    column(1) モテるための必要最低限「胃NBI用語」

 9.胃粘膜下腫瘍
  所見はSMTをクリックしてるだけなの? そんなの内視鏡医じゃないよ!
    モテる!胃粘膜下腫瘍の診断ルーチン

 10.胃MALTリンパ腫
  疑わなきゃはじまんないよ! 今日から君は正診率もモテ率も90%だ!
    胃MALTリンパ腫-発生頻度は低いけど,結構遭遇しませんか?
    褪色調陥凹性病変-内視鏡医が絶対に見逃してはいけない所見ですよ!
    モテる! 「胃MALTリンパ腫」のNBI拡大内視鏡観察

 11.胃潰瘍
  この潰瘍は良性? 進行癌? 悪性リンパ腫? 蚕蝕像って何なの?
    良性の潰瘍なのか? 癌が合併している潰瘍なのか? モテる! 鑑別診断のポイント
    良性の潰瘍なのか? 悪性リンパ腫なのか? モテる! 鑑別のポイント
    column(2) 蚕蝕像とは
    column(3) 潰瘍の硬さって何? 軟らかい潰瘍って何?

 12.鑑別診断(胃のびらんと胃潰瘍)
  びらんと潰瘍をちゃんと区別して診断していますか? 所見でちゃんと区別していますか?
   発赤とびらんの鑑別
   びらんの所見
   潰瘍の所見

 13.術後胃観察の注意点
  胃が小さいからって,簡単に終わっていませんか? もしそうなら最悪だ!
    注意してますか?-術後胃吻合部のイモムシ状肥厚粘膜
    残胃新生癌についても知っておこう!
    column(4) 20年後の貴方に
    column(5) モテる内視鏡医を目指して奮闘中の医師から
            これからモテたい内視鏡医へ贈るメッセージ


付録:本書購入者限定! Web袋とじ企画
 濱本先生の「症例発表が待ち遠しくなる! 内視鏡カンファレンス,
  研究会のための内視鏡写真と病理写真『対比』の作り方」

「モテpoint!」のまとめ

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内視鏡診断学の理解を深め,日常臨床のスキルアップを図るために,若手内視鏡医必読の書
書評者: 武藤 学 (京大大学院教授・腫瘍薬物治療学)
 野中康一先生,濱本英剛先生,田沼徳真先生,市原真先生執筆による『上部消化管内視鏡診断マル秘ノート』を楽しく拝読させていただきました。
 きれいな内視鏡画像と病理画像をふんだんに使うとともに,非常にわかりやすいシェーマで解説を加え,著者らが若手内視鏡医に丁寧に教えようとする真心がこもった一冊と感じました。また,所々に「モテPoint!」,コラム,論文解説などが挿入されており,知識の整理と確認には最適の本であるとともに,読者を飽きさせない工夫がなされている凝った作りです。「モテ」という言葉が本書を含めた医学書に必要かどうかは,読者の感性次第と思いますが,著者らが若手内視鏡医の向学のきっかけにと狙った意図は,十分感じ取れ,著者らの遊び心とも言えるでしょう。ただ,モテることがゴールではなく,本書を通読し最良の診断ができるスキルを身につけることが最終的には内視鏡被検者のためにつながることを忘れてはならないですね。

 さて,本のサイズと分量も,豊富な内容にも関わらずハンディータイプで本文は250ページ以内に抑えてあり,若手内視鏡医が検査室に気軽に持ち運べるという配慮が憎いですね。これだけの内容をコンパクトにまとめられ,著者らの理解力と解説力がいかに素晴らしいかが垣間見られるだけではなく,若手内視鏡医にとって冗長になりがちな内視鏡診断の解説をわかりやすく端的に説明する基礎力につながると期待されます。内視鏡診断学の理解を深めるとともに,日常臨床のスキルアップのためにも,若手内視鏡医必読の書と思います。
手元に置いて,ぜひとも日常診療に活用していただきたい一冊
書評者: 田尻 久雄 (日本消化器内視鏡学会理事長)
 この度,『上部消化管内視鏡診断マル秘ノート』が,野中康一(埼玉医科大国際医療センター消化器内科准教授),濱本英剛(手稲渓仁会病院消化器内科医長),田沼徳真(手稲渓仁会病院消化器内科主任医長),市原真(札幌厚生病院病理診断科医長)という新進気鋭の4名の著者により,医学書院から刊行された。

 筆頭著者である野中康一先生との初めての出会いは,2015年4月ポルトガルのリスボンで開催された共焦点内視鏡の国際会議である。当時,野中先生は,NTT東日本関東病院に勤務されており,共焦点内視鏡に関する研究成果について,多くの症例経験に基づくエビデンスを根拠に理路整然と流暢な英語で講演されていた。その姿は,度胸の据わった類いまれな優秀な青年医師として光輝いて見えた。その後,個人的にも交友関係が続き,謙虚で真面目な性格ながら,大変ユーモア溢れる親しみやすい先生だと理解してきた。本書でしばしば使用されている「モテる」内視鏡医の模範であろう。

 本書は,野中先生が「はじめに」で記載しているように10年間にわたり,若い先生に行ってきた勉強会や講演の内容のポイントをまとめたものが中心である。10年間にわたり食道と胃の診断について,気になるところを縮小カラーコピーしてノートに貼り付けて診断のポイントを丹念にまとめてきた几帳面さと整理の良さに感心するとともに,たゆまぬ努力に心から敬意を表したい。

 各項目の文章を読みながら,極めて新鮮で驚きさえも覚えたというのが正直な感想である。文章が日常会話であり,実に平易で内視鏡室やカンファレンスでの会話をそのまま再現しているようで,野中先生はじめ著者たちの人柄が随所に表れている。それでいて,内視鏡診断学の本質が文献やデータに基づいて客観的に記述されているとともに,要所に初学者が覚えるべき重要なポイントが整理されている。しかも従来のテキストでは,一言の文章で済まされるような事項「“畳の目ひだ”とは?」「brownish areaは全部癌なのか?」「萎縮の程度の判定のコツとは?」「ひだの太まりとは?」などが初学者に理解できるように丁寧に解説されており,内視鏡研修を始めたばかりの先生が内視鏡を好きになって楽しくなるような構成で仕上がっている。

 さらにWebサイト上の 「胃と腸」電子版 につながるという特典も本書の特徴である。すなわち,「胃と腸」の参考文献を紹介する「モテ文献『胃と腸』」欄に,QRコードというスマホ読み込み用の画像が付いていて,「胃と腸」の要旨までが読めるWebページに飛ぶことができる。日常診療で忙しい若い内視鏡医に気配りした親切な試みであり,これからの書籍のスタイルになるものと思う。

 研修医から実際に内視鏡を指導する立場の先生まで肩肘を張らずに読める本として,手元に置いて,ぜひとも日常診療に活用していただきたいと願っている。

 近い将来,本書の続編が登場することを期待したい。

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●web袋とじ

※閲覧には、消化器にかかわる医療関係者のための情報サイト「gastropedia」の無料会員登録/ログインと「アクセスコード」の入力が必要です。詳しくは本書237-238頁をご覧ください。

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