理学療法学概説

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理学療法士養成課程における講義のうち、理学療法学の「概論」のテキストとして使用するのに最適の1冊。通年での講義を考慮に入れ、章の構成は全15章としている。また『標準理学療法学』のシリーズ他巻の参照ページを適宜示し、学習効果をより高める工夫をしている。初学者の学生が理学療法の全体像を様々な角度から理解できるよう工夫を凝らすとともに、最新の理学療法の動向にも随所で触れた、理学療法の「今」がわかる1冊。
*「標準理学療法学」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ 標準理学療法学 専門分野
シリーズ監修 奈良 勲
編集 内山 靖
発行 2014年12月判型:B5頁:368
ISBN 978-4-260-01336-9
定価 5,940円 (本体5,400円+税)

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 世界理学療法連盟(WCPT)学会が1999年にわが国で開催されたことも1つの契機となり,「標準理学療法学専門分野」シリーズが発案された.当初の企画編集会議で種々の議論を経て,理学療法概論に類する内容は取り扱わないことが決定された.2001年には,理学療法研究法を皮切りとして8冊が刊行され,その後,基礎,地域理学療法学が加わり,2014年には骨関節,内部障害,神経理学療法学,病態運動学を加えた14冊で構成されている.
 この間のわが国の理学療法を取り巻く環境の変化は著しく,理学療法士養成課程の学校施設数は2倍以上,総定員数は3倍以上に拡大している.このようななかで,理学療法学のもっとも基本となる概論に類する内容が本シリーズに収載されていない現状を改めて協議し,監修者の決断によって『理学療法学概説』として新たに企画編集されることとなった.
 概論・概説は,ともに全体のあらましを説明することを意味するが,原論としての理学療法学の本質を含む構成とすることが編集者の思いであった.理学療法学概論・概説・原論は,基本的には1年生で始めに学ぶ講義である.その際に,理学療法の対象や範囲について概観することは大切であるが,同時に,理学療法学とは何か,理学療法の目指すものや本質を理解することが,その後の教科目の学習や主体的な学びに大きな影響を与えることは明らかである.13,000人を超える学生が,それぞれのキャリアパスを明確にし,自己実現を果たす職業観の成熟や,自己に合致した職域を選択できるような枠組みを提供することは高等教育の大きな使命でもある.
 そこで,第1章を理学療法学序説として,理学療法の概念とともに,専門職としての倫理や学問的な基盤を示し,リハビリテーションとの関係や違いにも言及した.第2章以降は,歴史,法規,保険制度,管理・チーム医療,教育内容,研究,職能学術団体の国内組織,世界の理学療法について示し,第10章以降は理学療法の領域と広がりについて学問的ならびに臨床実践的な視点から詳細に示した.また,随所にさまざまな領域で活躍している理学療法学を学んだ先達の思いを掲載した.
 理学療法学を学ぶ環境は,学校の形態や修学期間を含めてさまざまである.自然科学に基づくエビデンスを探究する姿勢ととともに,公衆衛生や人文科学を含めた理学療法のサイエンス(Science)とアート(Art)を総体として理解することが求められる.初学者は,しばしば専門的な技術に目を奪われやすいが,卒業後には教養教育と共通基礎科目が重要であったと実感される先達は多い.本書の一部に高度な内容が含まれている点は,社会からみた理学療法への期待は大きく,ここに書かれた内容と水準を目指して理学療法学を修得してほしいという,先輩理学療法士からのメッセージとして受け取っていただければ幸いである.

 2014年10月
 内山 靖

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第1章 理学療法学序説
  A あなたは,なぜ理学療法学を学ぶのか
  B 理学療法とは
  C 理学療法士に求められる能力
  D 倫理
  E 社会からみた理学療法の役割
  F 理学療法の基本モデル
  G クリニカルリーズニング
  H 理学療法の対象と範囲
第2章 理学療法の歴史
  A 医学史の概要
  B 理学療法の歴史・変遷
  C 世界の理学療法(士)の歴史
第3章 理学療法に関連する法規
  A 理学療法士及び作業療法士法
  B 医療関連法規
  C 保健関連法規
  D 福祉関連法規
  E 医療事故,医療過誤訴訟
  F 理学療法診療記録
第4章 理学療法と保険制度
  A わが国の社会保険制度の概要
  B 医療保険制度
  C 介護保険制度
  D 保険制度からみた理学療法(保険制度と理学療法の関係)
第5章 管理運営とチーム医療-関連職種
  A 組織とは
  B 病院組織の概要
  C 理学療法部門の管理・運営
  D チーム医療の実践について学ぶ
  E 関係職種
  F 医療安全
第6章 理学療法士養成課程で学ぶこと
  A 理学療法の教育の変遷
  B 指定規則と教育内容の変遷
  C 臨床実習教育の目的と心構え
  D 理学療法に必要な知・情・意
  E 基本的臨床技能(コミュニケーションを含む)
第7章 理学療法学研究
  A 理学療法研究の必要性
  B 理学療法研究の種類
  C 理学療法研究の実施手順
  D 研究計画立案において留意する点
  E よくデザインされた研究の具体例
  F まとめ
第8章 組織としての日本理学療法士協会-理学療法の課題と展望
  A 日本理学療法士協会の役割
  B 協会の創立と変遷
  C 日本理学療法士協会の学術・教育活動
  D 生涯学習制度
  E 専門・認定理学療法士制度
  F 職能・社会活動
  G 課題と展望
第9章 世界の理学療法
  A 世界の保健制度(医療・保健・福祉の保険制度)と理学療法のかかわり
  B 世界の理学療法の現状と課題
  C 世界の理学療法養成の教育課程(内容)
  D 世界理学療法連盟の歴史・意義・活動
  E アジア地域の理学療法
第10章 理学療法学の主な領域
 I.運動療法学
  A 運動療法の概要
  B 運動療法の基礎と基本的運動療法
  C 主な疾患の運動療法
  D リスク管理と運動療法の課題
 II.物理療法学
  A 物理療法の概要
  B 物理療法の種類と適用
  C 物理療法と運動療法
  D リスク管理と物理療法の課題
 III.義肢・装具学
  A 福祉用具,福祉関連機器の概要
  B 義肢学の概要
  C 装具学の概要
  D 補装具と運動療法の融合
 IV.日常生活活動学
  A ADLの概念
  B ADLの範囲
  C ADLと理学療法
  D ADL評価の目的
  E 代表的なADL評価法
  F ADL評価の留意点
  G ADL指導のあり方
 V.地域理学療法学
  A 地域理学療法の発展してきた背景
  B 生活者としての対象者-地域/医療施設間の理学療法の違い
  C 介護保険制度
  D 介護保険法改正と介護予防
  E 医療施設以外の職場
  F 生活環境の整備
  G 地域理学療法におけるリスク管理
第11章 理学療法学に関連した応用科学
 I.行動科学
  A 行動科学とは
  B 応用行動分析学
  C 応用行動分析学の理学療法への適応
 II.社会学・社会福祉学
  A 社会学とは
  B 社会福祉学とは
 III.死生観・学
  A 文化
  B 宗教
  C 死生観に関する文化的現象
  D これからの課題
 IV.運動学
  A 関節運動学
  B 姿勢と歩行
  C 運動生理学
 V.運動学習理論
  A 運動学習理論が生まれるまで
  B 運動学習理論の理学療法への応用
第12章 理学療法の対象・領域の拡大
 I.保健・福祉
  A 特定健康診査・特定保健指導
  B 通所・訪問
  C 起業
 II.スポーツ理学療法
  A スポーツ医療と理学療法士のかかわり
  B スポーツ医療における理学療法士の役割と業務
  C スポーツ理学療法で必要な事項
  D スポーツ理学療法の課題と展望
 III.精神科領域
  A 精神科領域における理学療法の役割
  B 精神科領域における理学療法の実際
第13章 理学療法の臨床
 I.理学療法の臨床(1)-対象となる主な病態
  A 関節可動域制限
  B 筋力低下(中枢麻痺を含む)
  C 疼痛
  D 持久性低下
  E その他の機能障害
 II.理学療法の臨床(2)-疾患別
  A 疾患別理学療法とは
  B 運動器疾患の理学療法
  C 神経疾患の理学療法
  D 呼吸・循環・代謝疾患の理学療法
  E 複数の疾患をもつ場合のとらえ方
  F 人間の行動にはいくつの臓器が関与するか
  G あらゆる疾患で留意すべきこと
 III.理学療法の臨床(3)-病期別
  A 病期の区分方法とその意義
  B 病期に基づいた理学療法の展開
  C 予防
 IV.理学療法の臨床(4)-ライフステージ別
  A ライフステージと理学療法
  B 各ライフステージにおける理学療法
第14章 実践演習
 I.実践演習課題-小児に関するもの
  A 就学相談を受けた事例
  B 就学にかかわる訴訟事例から学ぶ
 II.コミュニケーションに関するもの
  A 課題と学習の進め方
  B 具体的な質問
  C 追加の情報
  D 学習の視点
  E 学習の進め方の比較
  F コミュニケーションとは-対象者への共感と支援

付録1 診療・介護報酬関係資料-最近の保険点数の抜粋含む
付録2 関連法規
索引

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