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こどもの整形外科疾患の診かた
診断・治療から患者家族への説明まで

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一般整形外科医・研修医をはじめ小児整形外科医を目指す方々に向けた小児整形外科のテキスト。日常遭遇しやすい疾患ごとに、患者家族がもつ不安や疑問の実例を挙げ、それに対する適切な回答例、診断上の留意点、専門医へ紹介するタイミングを提示。また治療の解説箇所では、フローチャートを用いた流れも示している。小児整形外科のトピックスや執筆陣が勧める診断や治療の方法も併せて紹介。
編集 亀ヶ谷 真琴
編集協力 西須 孝
発行 2011年12月判型:B5頁:264
ISBN 978-4-260-01377-2
定価 9,900円 (本体9,000円+税)

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 このたび,一般整形外科医から研修医の方々に向けた小児整形外科のテキストを刊行することとなりました.本書は以前,雑誌『臨床整形外科』(医学書院)に2年余りにわたり連載していた「小児の整形外科疾患をどう診るか?-実際にあった家族からの相談事例に答えて」がもととなっています.この連載では,筆者が所属していた千葉県こども病院のホームページに寄せていただいた患者家族からの実際の相談事例をもとに,それに対する回答と解説を施すといった内容から構成されていました.相談の内容は,「担当医が疾患について説明してくれない」「このままの治療でいいのか疑心暗鬼になる」「こどもの将来にどう影響するのか心配」などであり,その多くの疾患は,以前(30~40年前)であれば整形外科の代表的な疾患ばかりでした.当時の整形外科医には,この現状はとても想像できなかったでしょう.
 昭和40年代半ばから60年代にかけて,小児に対する専門的・集学的医療の提供を目的として,全国に小児病院が設立されました.しかし,その多くは地方自治体立であり,縦割り行政の弊害からか,その地域の大学病院や中核病院との有機的な関係は残念ながら構築されませんでした.整形外科研修医が,小児整形外科を研修する機会をつくることが非常に難しい状況になっています.それでも,現在の少子高齢化の下では,整形外科専門医資格を取得後もそれほど問題なく日常診療をこなすことが可能となっています.そのような状況が,今回対象とした「患者家族からの相談事例」の背景になっているものと思われます.
 本書では,患者家族が持つ不安や疑問の実例を挙げ,それに対する説明例を掲載しました.そして,その根拠となる各疾患の基本的な知識を「専門医へ紹介するタイミング」を含めて記載しています.治療に関しては,現在最もスタンダードと考えられる方法について,フローチャートを用いてその流れを示しました.また,小児整形外科に興味を持たれている,あるいはある程度専門としている先生方にも参考となる「最近の話題」を加えています.本書が,日常診療のなかで少しでも患者家族の不安や疑問を払拭する手立てとなり,またすべての整形外科医にとって小児を診療する際の手助けとなることを切に願っています.
 編集作業中,いつしか仲間の先生方が本書のことを「亀ジャン」と呼ぶように
なりました.おそらく小児整形外科の聖書とも言われるMihran O. Tachdjian著“Tachdjian's Pediatric Orthopedics”(日本ではタヒジャンの教科書と呼ばれています)からきているのだと思います.とても比較の対象にもなりませんが,恥ずかしながらあえて加えさせていただきました.その理由には,本書を「亀ジャン 1st edition」と位置付け,今後みなさまからご意見をいただきながら,より充実した「亀ジャン 2nd edition」「亀ジャン 3rd edition」の出版を将来の目標としたいがためです.
 最後に,本書を出版するにあたっては,千葉県こども病院整形外科と千葉大学整形外科学教室に多大なご協力をいただきました.この場を借りて御礼申し上げます.また,各疾患を担当していただいた先生方へも心から感謝申し上げます.併せて,刊行にご尽力いただいた医学書院編集担当の方々にも深い謝意を表します.

 2011年10月
 亀ヶ谷真琴

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 こどもを診るために―小児整形外科概論

A 下肢にみられる疾患
 1 先天性内反足
 2 先天性股関節脱臼
 3 ペルテス病
 4 先天性膝関節脱臼
 5 単純性股関節炎
 6 先天性下肢奇形(脚長差)
 7 大腿骨頭すべり症
 8 外反扁平足
 9 特発性つま先歩行
 10 化膿性股関節炎
 11 片側肥大症(脚長差)
 12 先天性下腿偽関節症
 13 反張膝
 14 先天性内転足

B 上肢にみられる疾患
 15 先天性上肢障害(上肢奇形)
 16 上腕骨顆上骨折
 17 上腕骨外側顆骨折
 18 モンテジア骨折(陳旧例を含む)
 19 肘内障

C 体幹にみられる疾患
 20 筋性斜頚
 21 環軸関節回旋位固定(外傷性斜頚・炎症性斜頚)
 22 ブラント病
 23 脊柱側弯症
 24 腰椎分離症

D スポーツ障害
 25 オスグッド・シュラッター病
 26 疲労骨折
 27 半月板損傷
 28 野球肘,野球肩

E 成長に伴う問題
 29 成長痛
 30 内股歩行
 31 生理的 O・X脚

F 腫瘍性疾患
 32 骨嚢腫(単純性骨嚢腫)
 33 類骨骨腫
 34 好酸球性肉芽腫
 35 骨肉腫

G 全身性疾患
 36 骨形成不全症
 37 多発性関節拘縮症
 38 シャルコー・マリー・トゥース病
 39 脳性麻痺
 40 二分脊椎

 索引

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小児の運動器の痛みや不自由から解放するための指針書
書評者: 金 郁喆 (京府医大大学院准教授・運動器機能再生外科学)
 亀ヶ谷真琴先生が編集された『こどもの整形外科疾患の診かた――診断・治療から患者家族への説明まで』は,その制作段階で既に仲間うちで『亀ジャン』と呼ばれていた。この愛称は世界的に有名な小児整形外科の成書『Tachdjian(タヒジャン)』をもじったものである。今日まで日本では小児整形外科疾患を単独に扱った書籍は少なく,多くは整形外科体系の一部門として記載されているにすぎない。そのため,一般整形外科医を対象とした小児整形外科疾患の解説書は少ない。

 今日,Evidence Based Medicine(EBM)を基に診療ガイドラインを作成することが推奨され,その方向に小児整形外科も進んでいるが,残念ながら疾患の性格上,成績評価には長期間を要するため,高いエビデンスを持った診断・治療指針はまだみられない。本書は小児整形外科医が日常診療で出会う40の小児整形外科疾患について,遭遇しやすい疾患ごとに,その病態,診断法,治療法の選択および治療時期をチャート形式で記載している。また,実例を挙げその疾患の診断上の留意点,治療の解説,専門医へ紹介するタイミング等を提示しているため,若い医師や一般整形外科医,開業医にも有用な書籍である。さらに疾患の病態,治療法,予後に関してQ&A形式で記載されている点も明快である。

 本書は亀ヶ谷先生の長年の経験と,国内外の多くの知見を基に,患者や家族とともに悩んできた個々の疾患の問題点とその解決法を集大成したものであり,よく消化されている。どの疾患の治療法も決してラディカルではなく,患児の治癒能力を念頭に置いた治療法である点で評者も安心できる。運動器疾患を持った患児は悪性腫瘍などの重篤な疾患と異なり,長い生涯を生きなければならない。運動器の痛みや機能障害を持って一生を終えるのか,あるいは痛みや不自由さから解放されて,自由な生活を送ることができるのかは整形外科医の適切な診断と治療にかかっており,患児の将来を考えると責任は重大である。

 あえて愛称で呼ばせていただくが,『亀ジャン』は小児整形外科を専門としている医師にとって診断と治療の指針の一つとなるであろう。また,一般整形外科医や開業医にとっても,小児整形外科疾患の診断や治療に迷うときに,その指針となるだけでなく,専門医に紹介すべき時期をも提示している点で有用である。本書を通じて重篤な障害を残す子どもたちが一人でも少なくなることを期待している。
読みやすく,常に手元に置いておきたい一冊
書評者: 川端 秀彦 (大阪府立母子保健総合医療センター整形外科・主任部長)
 近年の整形外科医の小児整形外科離れを危惧してか,ここ数年で何冊かの小児整形外科に関する教科書が出版されている。この書も同様の趣旨で書かれたものであるが,その内容はそれらと一線を画すものである。編者は長年にわたりこの領域に携わってきた第一人者であり,その下で研修し巣立っていった若手小児整形外科医と千葉グループ医師らの著した各項目を統一感のあるものに仕上げている。装丁は最近のこのたぐいの書籍の例に漏れず軽めで重圧感がなく,抵抗なく読み進めることができるであろう。

 内容は下肢疾患,上肢疾患,体幹の疾患,スポーツ障害,成長に伴う問題,腫瘍性疾患,全身性疾患の7つの章と40の項目に分かれており,比較的頻度の高い疾患を取り上げている。各項目ではその疾患に対する初期対応を中心に,知識に乏しい初期研修医や小児科医などが読んでも容易に理解できるように書かれている。特に書名の副題にもあるとおり,家族が発するであろう質問を想定し,それに対する模範的な回答をすべての項目で記載しているが,これは一般整形外科医がとまどいやすいところであり,日常診療に非常に役立つのではないだろうか。また,ブロックダイアグラムを多用して,診断・治療の流れを視覚的に示しており,多忙な外来診療の現場で簡便に参照することができる。各項目の最後には最近の話題がまとまりよく記載されていて,すでに小児整形外科を専門にしている者にとっても各疾患の現状を知ることができ,知識を整理する意味でも一度手に取ってみて損はない。

 少子化によって一般整形外科医がこどもの整形外科疾患を診る機会が減少していることは間違いないが,外来診療をしている限り,こどもを避けて通ることはできない。

 本書は非常に読みやすく構成されているので,さっと通読しただけで頭に入る内容である。一読した後は外来の机の上に常備しておきたい一冊になるであろう。すべての整形外科医だけでなく,小児科医にも薦めたい。

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