疾病のなりたちと回復の促進[2]
病態生理学

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本書は、人体の正常な構造と機能を学ぶ『解剖生理学』に対して、その破綻により症状や疾病が引きおこされる経過をしっかりと理解できるように、その病態生理を解説しています。 まず第1章では、症状やその病態生理を理解するうえで必要な「循環障害」「炎症」「腫瘍」などの基礎的な知識を復習できるよう簡潔にまとめています。 第2~13章は、『解剖生理学』とのつながりがわかりやすいように生理機能ごとに章立てし、正常機能をまず簡潔に解説したうえで機能や構造の破綻としての病態生理を解説するよう構成しています。 病態生理を視覚的にイメージしやすいようイラストや図版を豊富に掲載しています。 「胸痛」や「ショック」、「黄疸」などの重要な症候などについては、本文とは別に欄を設けて解説し、効率よく学習できるよう工夫しています。
*「系統看護学講座/系看」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ 系統看護学講座
田中 越郎
発行 2011年02月判型:B5頁:312
ISBN 978-4-260-00906-5
定価 2,530円 (本体2,300円+税)
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はしがき

本書の位置づけ
 ある疾病を持った患者の看護を適切に行うには,看護援助の知識に加え,その患者の身体にどのような異常が生じているのか,またその異常が患者にどのような苦痛や障害を引きおこしているのかを理解しなければならない。
 これらの理解は,最終的には看護に関するさまざまな知識と統合される必要があるが,その学習にあたっては段階をふんでいくほうが修得しやすい。そのため,看護学で必要とされる学習科目は,解剖生理学のような専門基礎分野と成人看護学のような専門分野などに分けて設定されている。病態生理学は,この両分野の知識をつなげる橋渡し的な役目を担う学習科目である。
 私はこれまで,学習科目が専門基礎分野から専門分野に移行したときに,それぞれの知識を統合して理解・習得することに苦労している学生を多々目にしてきた。このような学生の苦労の原因に病態生理学に関する理解不足があると思われる。病態生理学を正しく理解すれば,専門基礎分野で学ぶ解剖生理学などの知識と専門分野で学ぶ看護学の知識とをより円滑に統合して,理解・修得できるようになると考える。その病態生理学をよりわかりやすく学習できるようにとの思いから,本書を上梓することにした。

病態生理学とは
 身体を構成している細胞・組織・器官が正常な形態を保ち,的確に生理機能を果たすことで,私たちは健康な生活を営んでいる。これらの形態や生理機能に異常な変化が生じることで,症状や徴候といった病的な状態が引きおこされる。病的な状態の身体におきている異常な変化を研究し,疾病の原因やなりたち・進展など,疾病の背後にある問題を明らかにする学問が,病理学や病態生理学である。
 たとえば,がんの診断を行う場合,病変部の細胞の形態的変化を顕微鏡で観察し,診断を確定する。これは病理学の範疇に含まれる。
 一方,患者の身体に生じている機能的な変化,すなわち生理機能の異常を探究すると,そこから派生する全身的な生理機能のゆがみのしくみが明らかになる。これが病態生理学である。

病態生理学を学ぶ意義
 したがって,病態生理学を学ぶことで,そこなわれた生理機能を回復したり,失われた機能を補填するにはどうすればよいかを知り,治療や援助にどうつなげるかを考える根拠を知ることができる。このように病態生理学の知識は,疾病の理解だけでなく,患者への援助を行う際の根拠となるため,看護師が病態生理学を理解し,その知識を持つことは非常に重要である。

本書のねらいと特徴
 2008年に厚生労働省より出された「看護師等養成所の運営に関する指導要領について」によると,病態生理学は解剖生理学や生化学,栄養学,薬理学,病理学などと同じ専門基礎分野にて学習するものとして位置づけられている。
 本書は,同じ専門基礎分野に含まれる解剖生理学で学習する正常な生理機能の知識をふまえて,まずは重要な症状・徴候や疾病の病態生理がわかりやすく理解できることを重視し,人体の生理機能に応じた構成とした。解剖生理学で学んだことを,専門分野で学ぶ症状・徴候や疾病とその看護につなげて理解するには,こうした構成が最もわかりやすいと考えたためである。
 まず第1章では,病態生理学を理解するために必要な知識である病理学総論に関する内容を取り上げた。同講座の『病理学』とも内容が重複するが,病態生理を理解するために必要な基礎的な知識をすぐに確認できるという読者の利便性を考え,簡潔にではあるが本書にも掲載するものとした。
 第2章以降については,人体の生理機能ごとに内容をまとめてある。まずは生体防御にかかわる皮膚・体温調節,免疫防御,体液調節,血液を第2~5章にまとめた。そして第6章以降に,臓器を中心とした器官をその系統ごと,すなわち,循環,呼吸,消化,泌尿器,内分泌・代謝,生殖,脳・神経・筋,感覚器としてまとめた。
 また,各章の内容は,まず正常な生理機能を簡潔に解説したうえで生理機能の異常を解説するよう構成した。生理機能やその異常の解説に合わせて,生理機能やそのどこが障害されて病態や症状が生じているのかが理解できるイラストやチャート図を豊富に掲載し,視覚的にも内容を理解できるように工夫を施した。さらに,各章にまたがるような重要な症候については本文とは別にコラム(NOTE)にまとめている。

本書の活用法
 本書は,まず専門基礎分野で解剖生理学の学習と並行して活用していただきたい。そして,専門分野の知識を学ぶ過程でも再度読み直して学習することにより,基礎と臨床の知識を統合するために有効に活用いただけるものと確信している。本書が病態生理学のより効果的な学習に役だち,ひいては根拠に基づく看護実践とそれによる看護の質向上に資することを願っている。読者の皆さんの忌憚のないご意見をいただければ幸いである。
 2011年1月
 田中越郎

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第1章 病態生理学を学ぶための基礎知識
 A 正常と病気の状態
 B 循環障害
 C 変性
 D 炎症
 E 感染症
 F 腫瘍
 G 先天異常と遺伝子異常
 H 変形・圧迫による障害
 I 老化と死
第2章 皮膚・体温調節のしくみとその異常
 A 皮膚による生体防御機能とその異常
 B 体温調節のしくみとその異常
第3章 免疫による防御のしくみとその異常
 A 免疫による防御の正常性を確保するしくみ
 B 免疫による防御の正常性の破綻
第4章 体液調節のしくみとその異常
 A 体液・電解質の正常性を保つしくみ
 B 体液・電解質の正常性の破綻
 C 酸・塩基平衡の正常性を保つしくみ
 D 酸・塩基平衡の正常性の破綻
第5章 血液のはたらきとその異常
 A 血液の正常性を保つしくみ
 B 血液の正常性の破綻
第6章 循環のしくみとその異常
 A 循環器の正常性を保つしくみ
 B 循環器の正常性の破綻
第7章 呼吸のしくみとその異常
 A 呼吸器の機能の正常性を保つしくみ
 B 呼吸器の機能の正常性の破綻
第8章 消化・吸収のしくみとその異常
 A 消化管の機能の正常性を保つしくみ
 B 消化管の機能の正常性の破綻
 C 肝臓の機能と正常性を保つしくみ
 D 肝臓の機能の正常性の破綻
 E 膵臓の機能とその正常性の破綻
 F 腹膜腔・腹膜・腸間膜の機能とその正常性の破綻
第9章 腎・泌尿器のはたらきとその異常
 A 腎・泌尿器の正常性を保つしくみ
 B 腎機能の正常性の破綻
 C 尿をたくわえ排泄するしくみの破綻
 D 腎・尿路系の悪性腫瘍
第10章 内分泌・代謝のしくみとその異常
 A 内分泌機能の正常性を保つしくみ
 B 内分泌機能の正常性の破綻
 C 代謝機能の正常性を保つしくみ
 D 代謝機能の正常性の破綻
第11章 生殖のしくみとその異常
 A 生殖の正常性を確保するしくみ
 B 女性の生殖機能の正常性の破綻
 C 男性の生殖機能の正常性の破綻
第12章 脳・神経,筋のはたらきとその異常
 A 脳・神経機能の正常性を保つしくみ
 B 脳・神経機能の正常性の破綻
 C 筋収縮の正常性を保つしくみとその破綻
第13章 感覚器のはたらきとその異常
 A 視機能のしくみとその異常
 B 聴覚機能のしくみとその異常

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