疾病のなりたちと回復の促進[2]
病態生理学 第2版

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・本書は、人体の正常な構造と機能を学ぶ「解剖生理学」に対して、その破綻により症状や疾病が引きおこされる経過をしっかりと理解し、臨床に活用するためのテキストです。
・改訂においては、以下の主要な症状の病態生理について、内容を充実させました。 意識障害/ショック/高体温・低体温/脱水/黄疸/頭痛/咳嗽・喀痰/吐血・喀血/チアノーゼ/呼吸困難/胸痛/不整脈/腹痛・腹部膨満/嘔気・嘔吐/下痢/便秘/下血/乏尿・無尿・頻尿/浮腫/貧血/睡眠障害/感覚の異常/運動の異常(麻痺・失調)/けいれん)
・​​​​​​​第1章では、循環障害や炎症など、症状や疾病の病態生理を理解するうえで必要な知識を簡潔にまとめてあります。
・​​​​​​​第2~13章は、生理機能ごとに章立てし、正常機能を簡単に復習したうえで、機能や構造が破綻することによりおこる症状や疾病について解説しています。
・​​​​​​​分かりやすい本文とともに模式図を多用し、正常機能が破綻して異常となるまでの過程が、段階を追って理解できるよう、工夫しました。

*「系統看護学講座/系看」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ 系統看護学講座-専門基礎分野
田中 越郎
発行 2016年01月判型:B5頁:312
ISBN 978-4-260-02183-8
定価 2,530円 (本体2,300円+税)

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はしがき

本書の位置づけ
 ある疾病を持った患者の看護を適切に行うには,看護援助の知識に加え,その患者の身体にどのような異常が生じているのか,またその異常が患者にどのような苦痛や障害を引きおこしているのかを理解しなければならない。
 これらの理解は,最終的には看護に関するさまざまな知識と統合される必要があるが,その学習にあたっては段階をふんでいくほうが習得しやすい。そのため,看護学で必要とされる学習科目は,解剖生理学のような専門基礎分野と成人看護学のような専門分野などに分けて設定されている。病態生理学は,この両分野の知識をつなげる橋渡し的な役目を担う学習科目である。
 私はこれまで,学習科目が専門基礎分野から専門分野に移行したときに,それぞれの知識を統合して理解・習得することに苦労している学生を多々目にしてきた。このような学生の苦労の原因に病態生理学に関する理解不足があると思われる。病態生理学を正しく理解すれば,専門基礎分野で学ぶ解剖生理学などの知識と専門分野で学ぶ看護学の知識とをより円滑に統合して,理解・習得できるようになると考える。その病態生理学をよりわかりやすく学習できるようにとの思いから,本書の初版を2011年に上梓した。

病態生理学とは
 身体を構成している細胞・組織・器官が正常な形態を保ち,的確に生理機能を果たすことで,私たちは健康な生活を営んでいる。これらの形態や生理機能に異常な変化が生じることで,症状や徴候といった病的な状態が引きおこされる。病的な状態の身体におきている異常な変化を研究し,疾病の原因やなりたち・進展など,疾病の背後にある問題を明らかにする学問が,病理学や病態生理学である。
 たとえば,がんの診断を行う場合,病変部の細胞の形態的変化を顕微鏡で観察し,診断を確定する。これは病理学の範疇に含まれる。
 一方,患者の身体に生じている機能的な変化,すなわち生理機能の異常を探究すると,そこから派生する全身的な生理機能のゆがみのしくみが明らかになる。これが病態生理学である。

病態生理学を学ぶ意義
 したがって,病態生理学を学ぶことで,そこなわれた生理機能を回復したり,失われた機能を補填するにはどうすればよいかを知り,治療や援助にどうつなげるかを考える根拠を知ることができる。このように病態生理学の知識は,疾病の理解だけでなく,患者への援助を行う際の根拠となるため,看護師が病態生理学を理解し,その知識を持つことは非常に重要である。

本書のねらいと特徴
 2008年に厚生労働省より出された「看護師等養成所の運営に関する指導要領について」によると,病態生理学は解剖生理学や生化学,栄養学,薬理学,病理学などと同じ専門基礎分野にて学習するものとして位置づけられている。
 本書は,同じ専門基礎分野に含まれる解剖生理学で学習する正常な生理機能の知識をふまえて,まずは重要な症状・徴候や疾病の病態生理がわかりやすく理解できることを重視し,人体の生理機能に応じた構成とした。
 まず第1章では,病態生理学を理解するための基礎的な知識として,病理学総論的な内容を簡潔にまとめた。第2章以降には,人体の生理機能ごとに章だてを行った。前半の第2~5章には全身的なことがら,すなわち生体防御にかかわる皮膚・体温調節,免疫防御,体液調節,血液を扱い,そして後半の第6章以降には,循環器,呼吸器,消化器,腎・泌尿器,内分泌・代謝,生殖器,脳・神経・筋肉,感覚器ごとに,機能をまとめた。
 また,各章の内容は,最初に正常な生理機能を簡潔に解説したうえで,次に生理機能の異常を解説するよう構成した。生理機能やそのどこが障害されて病態や症状が生じているのかが理解できるイラストやチャート図を豊富に掲載し,視覚的にも内容を理解できるように工夫を施した。

第2版の改訂の趣旨
 今改訂においては,各章の記述の展開を見直し,正常機能が破綻して症候があらわれるまでの過程がより理解しやすくなるように整理した。また,図や表を改善し,構造と機能が破綻する過程を視覚的にとらえることができるよう工夫した。
 さらに,2014年に改定された看護師国家試験の出題基準をふまえ,脱水や高体温,意識障害などといった主要な症状・徴候については,大幅に加筆を行って内容を充実させた。

本書の活用法
 本書は,まず専門基礎分野で解剖生理学や病理学の学習と並行して活用していただきたい。そして,専門分野の知識を学ぶ過程でも再度読み直して学習することにより,基礎と臨床の知識を統合するために有効に活用いただけるものと確信している。本書が病態生理学のより効果的な学習に役だち,ひいては根拠に基づく看護実践とそれによる看護の質向上に資することを願っている。読者の皆さんの忌憚のないご意見をいただければ幸いである。
 2015年10月
 田中越郎

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第1章 病態生理学を学ぶための基礎知識
 A 正常と病気の状態
 B 循環障害
 C 細胞・組織の障害
 D 感染症
 E 腫瘍
 F 先天異常と遺伝子異常
 G 老化と死
第2章 皮膚・体温調節のしくみと病態生理
 A 皮膚の生体防御のしくみとその障害
 B 体温調節のしくみとその障害
第3章 免疫のしくみと病態生理
 A 免疫のしくみ
 B 免疫反応の低下
 C 免疫反応の過剰
第4章 体液調節のしくみと病態生理
 A 体液・電解質の調節とその異常
 B 酸・塩基平衡のしくみとその異常
第5章 血液のはたらきと病態生理
 A 骨髄の機能とその障害
 B 赤血球の機能とその障害
 C 白血球の機能とその障害
 D 血小板と出血傾向
第6章 循環のしくみとその病態生理
 A 心臓のポンプ機能と病態生理
 B 血圧調節と末梢循環のしくみと病態生理
第7章 呼吸のしくみと病態生理
 A 呼吸器の構造と機能
 B 呼吸困難と呼吸不全
 C 呼吸器系の防御機構の障害
 D 換気の障害
 E ガスの拡散障害
 F 肺循環の障害
 G 呼吸調節の障害
第8章 消化・吸収のしくみと病態生理
 A 消化管の構造と機能
 B 咀嚼・嚥下の障害
 C 胃・腸管の障害
 D 消化・吸収の障害
 E 肝臓・胆嚢の機能とその障害
 F 膵臓の機能とその障害
 G 腹膜腔・腹膜・腸間膜の機能とその障害
第9章 腎・泌尿器のしくみと病態生理
 A 腎臓の構造と機能
 B 腎機能の障害
 C 泌尿器のしくみと病態生理
第10章 内分泌・代謝のしくみと病態生理
 A 内分泌のしくみとその異常
 B 糖代謝とその異常
 C 脂質代謝とその異常
 D 尿酸代謝とその異常
 E カルシウム・リンの代謝とその異常
第11章 生殖のしくみと病態生理
 A 女性生殖器の機能とその異常
 B 男性生殖器の機能とその異常
第12章 脳・神経,筋肉のはたらきと病態生理
 A 脳・神経,筋肉の機能
 B 脳循環のしくみとその障害
 C 髄膜・髄液のはたらきとその障害
 D 脳腫瘍
 E 頭痛
 F 睡眠障害
 G 意識と認知の障害
 H 運動制御のしくみとその障害
 I 筋収縮のしくみとその障害
第13章 感覚器のはたらきと病態生理
 A 視覚器の機能とその異常
 B 聴覚器の機能とその異常
 C 味覚・嗅覚とその異常
 D 皮膚感覚とその異常

索引

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