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在宅医療カレッジ

地域共生社会を支える多職種の学び21講

編集:佐々木 淳

  • 判型 A5
  • 頁 264
  • 発行 2018年12月
  • 定価 2,160円 (本体2,000円+税8%)
  • ISBN978-4-260-03823-2
ケアする人を支えるのは学びの場だ
首都圏最大級の在宅医療ネットワーク 医療法人社団悠翔会が提供する、医療・介護の多職種のための学びのプラットフォーム「在宅医療カレッジ」。多方面で活躍するトップランナーが「教授」として登壇し、満員続きの人気講義を精選して再現![2015-2017年開催分] Facebook1万人を超えるメンバー、そして地域包括ケアを実現して患者・当事者と共に生きる社会ではたらき続けたい全国の専門職に贈ります。
“これでいこう”―佐々木先生と在宅医療(佐々木淳×山崎亮対談イベント)
序 文
はじめに 在宅医療カレッジとは

 「在宅医療カレッジ」は、2015年にスタートした医療・介護多職種のための学びのプラットフォームです。
 その「キャンパス」はwebにあります。よりよい在宅医療・ケアを提供していくため、多職種が共有しておくべき知識について、それぞれのフィールドで...
はじめに 在宅医療カレッジとは

 「在宅医療カレッジ」は、2015年にスタートした医療・介護多職種のための学びのプラットフォームです。
 その「キャンパス」はwebにあります。よりよい在宅医療・ケアを提供していくため、多職種が共有しておくべき知識について、それぞれのフィールドで活躍するトップランナーを「教授」に迎えて定期的なセミナーを開催し、Facebook上で登録されている1万人を超えるメンバーに、24時間の学びと交流の機会を提供しているものです。
 その最大の目的は「スムーズな多職種協働を通じて、理想の在宅医療を実現すること」です。

 多職種協働の重要性は介護保険スタート時から叫ばれています。しかし、施行から18年を経過した現在でも、これは大きな課題であり続けています。各地で「顔の見える関係づくり」が行なわれていますが、多職種協働は必ずしもスムーズに進んでいません。
 集合知の結実といえるWikipediaによれば、協働(きょうどう、英:coproduction/cooperation)とは「複数の主体が、何らかの目標を共有し、ともに力を合わせて活動すること」と定義されています(2018年11月1日時点)。仲よくなっただけでは多職種のチームは機能しません。少なくとも「目標の共有」と「チームワーク」の両方が必要なのです。
 専門職は自身の専門性を磨くことに専念する傾向があります。しかし専門性の殻に閉じこもっていては、多職種協働を通じてその専門性を効果的に発揮していくことはできません。専門外領域における課題の広がりと、自分以外の専門職の役割を理解しておく必要があります。また、共有された目標を達成するためには、課題意識の共有、課題解決に向けてのプロセスの共有も必要となります。つまり、単なる「顔の見える関係」だけでは、チームワークは発揮できないのです。在宅医療カレッジは、専門性の枠を越えた合同の学びの場を提供することで、在宅療養支援に必要な知識やスキルの全体像を俯瞰し、より効果的な役割分担、そしてそれぞれの専門職の役割を再定義することをめざしています。そのなかで、専門職は「自分が提供すべき専門性」ではなく「自分が求められている専門性」という視点で、自らの知識とスキルを磨いていくことが重要であると考えています。
 しかし、在宅医療における「学び」には難しさがあります。在宅ではそれぞれの専門職が独立して仕事をしていることが多く、現場で同職種・他職種から学ぶ機会がそもそも少ないのです。自ら意識しなければ最新の知見に触れることが難しく、日々の業務のなかで、専門職としての成長が滞る可能性があります。成長が滞ると、自らの仕事の本来の目的を見失い、業務そのものが目的化してしまう危険もあります。
 また実際の現場では、多職種協働の役割分担のなかで、専門外領域との接触機会そのものが少なく、自分が「知らない」こと自体に気がついていないケースも多いのです。

 だからこそ、在宅医療カレッジは、
① 各専門職に「気づき」を通じて学びのモチベーションを刺激すること。
② 自主的かつ効果的な学びのためのナビゲーションを提供すること。
 この2点にとくに留意してきました。
 そして、各回の講義を担当していただく教授を招聘するにあたっては、単に「優れた専門家」というだけではなく「未来の課題解決のために全力で取り組んでいる情熱的かつ魅力的な専門家」であることを重視してきました。ここで発信されたメッセージによって専門職としての新しい生き方を見出した仲間も少なくありません。
 しかし、このような直接対話型の教育プログラムには、さまざまな物理的制約が存在します。この制約を乗り越えて参加する仲間の多くは、実はすでに高いモチベーションをもっています。そして学びたい人は、自分の力で学ぶことができます。理想の在宅医療・ケアを実現するために本当に必要なのは、現時点で「学び」に対して消極的な人たちのスイッチを入れること。そしてそのための「気づき」のメッセージなのではないでしょうか。
 ライブの現場に集うことができる幸運な100~200人程度が享受している素晴らしい講義を、より多くの人に届けることができれば、そしてそこに込められた教授陣の熱い思いを一点に集約することができれば、多くの消極的な専門職の固定観念と現状維持の固い殻を打ち壊し、成長のためのエネルギーを提供することができるかもしれない――。そんな思いで、これまでの講義のダイジェスト版として、現在と未来に活用できるメッセージに焦点を当てて本書を企画・編集しました。

 まずは、読者それぞれが惹かれる冒頭のことば key message に目をとめていただけたら嬉しいです。
 本書を通じて、1人でも多くの仲間が、理想の在宅医療・ケアを実現し、よりよい未来を創るためのチームの一員となってもらえることを願っています。
書 評
  • 未知の学びへと誘われる在宅医療の出会いの書
    書評者:藤沼 康樹(医療福祉生協連家庭医療学開発センター)

     現代はフィルターバブルの時代である。インターネットの発達と検索テクノロジーの進歩により,知りたいことがあれば「何でも」調べられるようになった。何でも検索できるということは,実は「知りたいこと」以外の情報には接する機会が減っていると言えるだろう。自身が見たくない情報からは「居心地の良い泡で包まれたよ...
    未知の学びへと誘われる在宅医療の出会いの書
    書評者:藤沼 康樹(医療福祉生協連家庭医療学開発センター)

     現代はフィルターバブルの時代である。インターネットの発達と検索テクノロジーの進歩により,知りたいことがあれば「何でも」調べられるようになった。何でも検索できるということは,実は「知りたいこと」以外の情報には接する機会が減っていると言えるだろう。自身が見たくない情報からは「居心地の良い泡で包まれたように遮断」されたまま暮らしているわけである。そんな中,かつて幅広い情報源であった雑誌,特に総合誌と呼ばれるメディアは,衰退の一途をたどっている。評者が雑誌を購入する目的は特定の(お目当ての)記事であることが多かったが,パラパラとめくっていると,これまでまったく触れる機会のなかった情報や世界に出会うことがあり,新しい知への出会いが生じることがあった。それが魅力でもあった。かつての雑誌編集者は,自身の持つ哲学や思想,考え方を,多様な記事に通底させていたように思う。

     さて,わが国の重要な課題である在宅医療の世界で現在,現場での実践と社会への提言を両立させており,最も注目すべきプレイヤーの一人である佐々木淳医師の編集による本書は,そうしたかつての雑誌・総合誌の最良の部分――読者がこれまで知らなかった世界やフィールドと出会える場を演出する力学を持っている。つまり,ある特定の専門領域のノウハウを提供するというつくりではなく,認知症ケア,高齢者の介護技術といった専門医が疎いジャンルから,哲学や倫理のテーマに踏み込む当事者の語りなどまで包摂したバラエティに富んだ講師による多種多様なテーマに出会うことができる。

     とすると,編者がどのようなコンセプトに基づき,この本を編集したのかということに興味が出たのだが,それは編者自身が「はじめに」で述べているように,在宅医療にかかわる多職種と当事者たちが,学びのモチベーションを得て,成人教育・学習のキーである「自己決定型学習」がドライブされることをめざしているところにある。

     ここで留意すべきなのは,フィルターバブルの時代においては,自分で課題設定し,自分で調べて学ぶという自己決定型学習がかえって学びを狭める可能性があるということだと思う。つまり,そもそも問題設定が自らの関心事のみに制限されやすくなっている時代においては,思いもよらぬ問題や話題との「遭遇」が生じにくくなっているのではないかということである。編者が本書を「カレッジ=幅広い学問を提供する小さな大学」と名付けていることが非常に興味深い。つまり,編者から読者(学び手)へ,従来まで関心のないテーマであったり名前を知らない講師であったりしたとしても,それでもぜひ触れてほしい,知ってほしいという願いが感じられ,そして,その好奇心こそ多職種連携の基盤となる共通言語になり得るという通底するメッセージが,この「カレッジ」というタイトルに込められていると思うのだ。

     本書を手にとった方には当面の関心事の記事だけでなく,ぜひ他領域の記事もパラパラと読んでほしい。きっと,あなたにとって新しい,未来につながる「問い」や「課題」に出会うことができると思う。
  • 在宅医療の現在が見通せる小さな窓のような本
    書評者:高橋 昌克(釜石のぞみ病院医師)

     本書の編者は,東京を中心として在宅医療ネットワークを提供する医療法人社団のリーダーであり,かつウェブ上で全国の在宅ケアに関わる多種多様な人たちとの学びと意見交換の場「在宅医療カレッジ」を主催・提供している奇特人である。

     その一連の講義シリーズの内容をダイジェスト版として編集されたのが,この...
    在宅医療の現在が見通せる小さな窓のような本
    書評者:高橋 昌克(釜石のぞみ病院医師)

     本書の編者は,東京を中心として在宅医療ネットワークを提供する医療法人社団のリーダーであり,かつウェブ上で全国の在宅ケアに関わる多種多様な人たちとの学びと意見交換の場「在宅医療カレッジ」を主催・提供している奇特人である。

     その一連の講義シリーズの内容をダイジェスト版として編集されたのが,この一冊である。刊行と同時にAmazon医書ランキングで2018年の歳末から19年年初のベストセラーとなったので,目に留められた方もおられるだろう。

     本書はIII部構成となっている。第I部「認知症ケアの学び」では,近未来のわが国では高齢者の4割が認知症・軽度認知障害になるというシミュレーションデータ(p.7,木之下徹講義)が大前提として呈示されており,あらためて衝撃を受ける。しかし「認知症になったらおしまい」ではなく,患者が持っている能力を生かして健常者と共に地域の一員として多様な社会をつくる必要と希望があることを,現場の実践家が熱心に説いている。また,疾患当事者(レビー小体型認知症・若年性アルツハイマー型認知症)も本書の講師として,その貴重な体験を語られている。「おまえが忘れても,俺たちが覚えているから」(p.57,丹野智文講義)と地域の友人から励まされたという言葉が,認知症サポーターが進むべき発想の転換を示している。

     第II部「高齢者ケアの学び」では,高齢者のサルコペニア,フレイル,そこから生じる肺炎などの予防も注目を集めるようになった現代の進歩がよくわかる。多くの高齢者がそれぞれに多重併発した疾患の治療を受けるため,ポリファーマシーの問題が生まれていること(秋下雅弘・平井みどり講義)も見過ごせない。さらに栄養指導には口腔ケア,リハビリテーションの併用で,高齢者の笑いのある生活が延びることが各章で述べられている。さらに,長い老後の生活に欠かせない車いすシーティングの可能性(山崎泰広講義)も注目である。医療者にできる新たな思いが湧き上がり,自身も行動したくなる。

     第III部「地域共生社会の学び」では,寿命が延び,長い老いの時間を迎えなければならないこれからの日本人に必須の知識が語られている。これからの高齢者は支援されるだけでなく,自らの持つ能力を地域のために役立て,共に生きる社会をめざすべき存在であること。循環型の在宅ケアを利用しつつ,医療の世話になる疾患が進行したなら入院し,かつ医療者はその方の「人生を遮断」(p.202,宇都宮宏子講義)しないケア提供を目標として退院支援する。死が近づいて来たら,スピリチュアリティを基盤とした在宅ホスピスケアを受けることも視野に入れる――。その先駆的実証例として,夕張市の医療再建が,在宅医療が地域医療の担い手であることを証明したことも述べられている。

     また,本書に地域共生社会の実現に向けてそれぞれ尽力した西村元一と村上智彦,二人の医師の事績が紹介されている。ともにがん当事者となり50代で早逝されたが,最後まで無数のがん患者支援のために,命を削って行動し続けられていた。

     本書は在宅医療を見通す小さな窓のような本である。この窓から,多くの読者に現代の医療者に必要な新たな在宅ケアの気付きを得てほしい。編者に感謝するとともに,続編を切に希望している。
目 次
はじめに 在宅医療カレッジとは

第I部 認知症ケアの学び
 1 認知症の人とともに生きる
 2 認知症プロアクティブアプローチケア
 3 なぜスウェーデンでは認知症が重症化しないのか
 4 “理由を探る”認知症ケア 関わりが180度変わる
 5 内側からみたレビー小体型認知症
 6 当事者の目線で考える認知症 早期発見・早期絶望という現実と

第II部 高齢者ケアの学び
 1 高齢者の薬物療法
  1 ポリファーマシー
  2 ポリファーマシーの是正
 2 車いすシーティングの可能性 シーティングで変わる車いす使用者の未来
 3 最期まで口から食べる 嚥下食の新しい視点と考え方
 4 超高齢社会における栄養ケアの役割
     サルコペニア・フレイルティ・認知症と戦うには
 5 リハビリテーション栄養
 6 口腔ケアと食支援 食べること 生きること 最期まで食べられる街づくり
 7 高齢者の肺炎と口腔機能を考える

第III部
 1 私の死生観 ホスピス医24年の経験を通して
 2 多死社会の処方箋 医療と介護のイノベーション
 3 破綻からの奇蹟 いま夕張市民から学ぶこと
 4 スピリチュアルケア・援助的コミュニケーション
 5 患者の視点で考えるがんの治療と療養支援
 6 退院支援のあり方を考える 病院と在宅の連携とは
 7 これからの地域と医療のカタチ 村上智彦・西村元一からのメッセージ
 8 私たちは在宅医療をどう学び、どう実践していくべきか
 
 学長より 当たり前のことを当たり前に
 おわりに 学び合いの場を広げるために

 付録 教授一覧
     在宅医療カレッジ開催一覧