看護学生が身につけたい
論理的に書く・読むスキル

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本書は論理的に考える基本スキルを身につけたうえで、論理的に読むこと・書くことを丁寧に解説している。主張/結論を根拠とともに提示し論証すること、接続詞を適切に用いて複数の文章の関係性を明確に示すこと、この2つができれば、レポートがグレードアップするはず。また、論拠を意識することで、相手との議論がかみ合わない原因に気づき建設的な議論に改善することもできる。さらに考え方・捉え方も発展する可能性あり。
福澤 一吉
執筆協力 山本 容子
発行 2018年10月判型:B5頁:176
ISBN 978-4-260-03640-5
定価 2,420円 (本体2,200円+税)

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『看護学生が身につけたい 論理的に書く・読むスキル』を授業もしくは研修でご利用中、もしくはご利用をお考えの講師の方々へ

本書を授業もしくは研修で使っていただくにあたり、どこに力点を置いて教えればよいのだろう、どのような説明が適切なのだろう、と悩まれることはないでしょうか。
本書の著者である福澤一吉先生が看護学部で論理的思考を教えるためのコツをお伝えします。

研修依頼の条件
対面でご希望の場合は、東京から日帰りが可能な距離であること。
ZOOM形式での講義も可能。

研修料金
無料
※対面の場合、交通費のみご負担をお願いします。

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お申し込みの際には、ご氏名、ご所属をはじめ、連絡先(メールアドレス、電話番号)やご希望内容の詳細・条件(受講場所・受講人数・時間帯など)をご明記ください。

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はじめに

そもそも,なぜ論理的に読んだり,書いたりする必要があるのか?
 論理的に書く必要のある場面を想定してみます。たとえば,レポートを,なんとなく,思いつきのまま感覚的に書いて,それを推敲もせずに終える。そして,最終的に出した主張や結論が「まあまあいい感じ」に仕上がっていると,「すべてそれでよし」と思って,提出する。ところが,あなたの文章を読んだ人(例:先生など)から「あなたの結論はどうしてこのようになったのですか?」という質問が出され,それにあなたが答えるような場面です。論理が必要になる状況がこれです。
 その人は「あなたの出した結論だけを読んでも,どうしてその結論に辿り着いたかわかりません。ちゃんと説明してほしい」と言っているわけです。この質問には書いた人の責任上,答える必要があります。論理に関して考えず,推敲されないまま出された結論や主張だとこの質問には答えられません。さあ,どうすれば答えられるでしょう?
 この質問に答えるには,結論/主張を単独に呈示せず,その理由となる根拠(主張を支える事実)も合わせて呈示することを知っている必要があります。結論/主張を根拠とともに出すことを論証といいます。すなわち,先ほどの質問に答えるには,論証について知っている必要があるということです。なぜなら,結論/主張を単独で呈示しても,それだけでは自らその正しさを示すことはできないからです。たとえば,「私はAが正しいと思います。なぜなら,Aが正しいと思うからです」という主張をしたところで,なんらAの正しさを示したことにはなりません。
 論証は文章を読む場合にも同じように使います。すなわち,書かれているものに含まれている論証(どれが根拠でどれが結論か)を取り出しながら読むことが「論理的に読む」ことになります。書かれているものを漫然と読むのではなく,「この筆者の主張はどれなのか。その主張をバックアップしている根拠はどこに書かれているのか」に注意しながら読んでいくことが必要なのです。これが,そもそもなぜ論理的に読んだり,書いたりする必要があるのかの答えです。

論理とは論証のことである
 本書全体を貫く考え方,それは「文章語っている内容」を,「文章語る言葉」に置き換えるという考え方です。具体的には次のようなことです。たとえば,「(1)今日は天気がいい。だから,(2)散歩に出かけよう」と文章が語っている場合は,(1)を根拠,(2)を結論という文章を語る言葉にそれぞれ置き換えていくことを指します。つまり,「根拠。だから,結論」という,文章を語る言葉に換えることです。根拠,結論はともに「文章を語る言葉」の例です。そうすることで文章の内容に煩わされずに,文章の構造に注目して読み書きするスキルを身につけることができます。
 先ほど,結論/主張を根拠とともに出すことを論証と呼ぶと述べました。言い換えるなら,論証は根拠と主張の間の関係を扱っていることになります。たとえば,先ほどの,「(1)今日は天気がいい。だから,(2)散歩に出かけよう」という例であれば,(1)と(2)が「だから」によって帰結の関係にあることがわかるのです。このように,関係性を扱うことを一般に論理といいます。本書では論理と論証は同じ意味で使います。

論理とは接続関係のことである
 論理とは文と文の関係性を扱うことです。さらに言い換えるなら,複数の文がどんな関係にあるのかを考えるときに論証・論理が現れるのです。文と文の関係を表現するために接続詞(または,より広く接続語句)が使われることは,みなさんご存知のとおりです。つまり,接続詞を使うという行為はすでに論理的であることになるのです。
 接続詞は言葉の意味と意味の関係をつなげるための論理的リンクの道具です。
 ですから,その道具を的確に使うには,まずは,自分で書いた一文一文の意味するところを自覚しなくてはなりません。隣り合わせの文の意味がどんな接続関係にあるのかを考えながら書くということが,論理的に書くということになります。

本書の目的と構成
 ここで本書のねらいと構成を簡単にお話しします。本書はレポートを読んだり,書いたりするときに必要な基礎力をつけることを目的としています。その目的を果たすために論証を中心にした論理的な思考についてトレーニングをしてもらいます。レポートを読んだり,書いたりする前の段階で,どんな対象の読み書きであっても共通に使える思考上の道具を身につけていただくことがねらいです。
 第1部 基礎編では,論理・論証を中心にお話をします。ここで読み書きするための基礎体力をつけます。そして第2部 応用編では基礎編で身につけたスキルを使って,論理的にレポートを書く,読むことを体験していただくようになっています。
 書籍を読んだだけで,文章の読み書きスキルを身につけることはできません。とにかく場数を踏むしかありません。歯切れが悪いのですが,それしかないのです。場数を踏むために,各章において解説の後,そこで学習したことを練習問題で確認できるようにしてあります。その問題を解きながら,自分の論理的思考力,読み書きの力を鍛えてください。
 章立ての概略は次のようになっています。第1章では「論理・論証とは何か」について,基礎的なお話をします。論理,論証という言葉から何か堅苦しい印象を受けるかもしれませんが,実際に中身を知るとさほど難しいものではありません。ご安心ください。この章で本書の中心的テーマをつかんでいただきます。
 第2章では,接続詞についてお話しします。「接続詞などは初等教育で習ったから,もういい」という読者の声が聞こえてきそうです。そう思う場合でも,接続詞を改めて学んでみると,意外にちゃんと使えていないことに気がつきます。論理とはざっくり言えば言葉と言葉,文と文の関係性について敏感になることです。ですから,接続詞を使って文章を書くことは論理的であることの根幹といえます。
 第3章では,帰納的論証を取り上げ深くお話しします。なぜなら,私たちが見聞きし,実際に使用する論証のほとんどが帰納的論証だからです。みなさんがお読みになる文章のほとんどは帰納的論証を使っているのです。そのため,文章を読み,書き,理解するには,この帰納的論証についてよく知っておく必要があります。
 第4章では,論証図についてお話しします。論証には,根拠から結論/主張がどのように導出されているのかによって,3つのタイプがあります。これらを論証図にすることで,論証全体の構造を見渡せるようにします。この4章までが本書の前半です。ここまでで論理的に思考するための道具を紹介することになります。
 第2部の応用編は第5章(論理的に書く)と第6章(論理的に読む)の2つの章からなっています。第1部の基礎編で学習したこと,身につけた思考上の道具を使って,ここから論理的に書く,読むことを実際に始めます。第5章ではパラグラフ構造という書き方を中心に紹介します。この書き方は論証したものを表現するのに最適な書き方です。読むことについてお話しする前に,書くことについて学習することにより,「論理的に読む」ことの重要性をお話しします。第6章では第5章でトレーニングした内容を使って論理的に読むことをします。
 さあ,概略はこのくらいにして,さっそく,論理的思考をつけるための基礎トレーニングを開始することにしましょう。

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はじめに

第1部 基礎編
 第1章 論理・論証とは何か?
  1-1 論理の反対語って何?
  1-2 思考すること(考えるということ)=論証すること=論理的であること
  1-3 論証とは前提となる根拠から何らかの結論を導出すること
  1-4 論証は飛躍の産物
  1章のまとめ
 第2章 接続表現─文と文の関係を明確にする
  2-1 文と文を接続させるということ
  2-2 接続詞を使って論理的に文章を書く・読む
   2-2-1 順接の接続
   2-2-2 逆接の接続
  2章のまとめ
 第3章 論理的に考える方法─帰納的論証
  3-1 根拠と結論と導出の関係
  3-2 根拠の信頼性と導出の妥当性を区別する
  3-3 根拠はその信頼性を,導出はその妥当性をチェックする
  3-4 「事実 vs 考え」と「推測 vs 意見」を定義する
  3-5 事実の正しさのチェック手続き
   COLUMN 1 帰納─事実にまつわる導出 vs 演繹─言葉の意味にまつわる導出
  3-6 飛躍ゼロの導出と飛躍ありの導出
  3-7 飛躍のある導出はいいことである
  3-8 論拠を考える─飛躍は必要ではあるが……
  3-9 トゥールミンの論証モデル─根拠と結論と論拠について
  3-10 帰納的論証における論拠(仮定)の役割
  3-11 相手の理解と暗黙の了解
  3-12 一般的会話からよりフォーマルな議論へ
   COLUMN 2 論証や議論における論拠の重要性
  3章のまとめ
 第4章 論証を図で示す
  4-1 論証のタイプ─単純論証,結合論証,合流論証
   4-1-1 単純論証
   4-1-2 結合論証
   4-1-3 合流論証
  4-2 論証間の関係を明確にする
   4-2-1 単純論証と結合論証の組み合わせ
   4-2-2 単純論証と合流論証の組み合わせ
   4-2-3 結合論証と合流論証の組み合わせ
    COLUMN 3 必要条件,十分条件
   4-2-4 単純・結合・合流論証をすべて組み合わせる
  4-3 論証図を書いて見えてくること
  4章のまとめ

第2部 応用編
 第5章 論理的に書く─一文一義とパラグラフ構造の理解
  5-1 一文一義で書くということ
  5-2 一文一義で書いて,文と文を論理的に関係づける
  5-3 一文一義で書かれていない事例とその書き直しから見えてくること
  5-4 論証した内容をパラグラフ構造で表現する
   5-4-1 パラグラフを構成する文の種類
   5-4-2 パラグラフの構成文とその配置
  5-5 パラグラフ構造で書くためのネタを探す
   5-5-1 パラグラフの骨格を作るための簡単なブレイン・ストーミング
   5-5-2 「現状の医療システムの信頼性問題」例をパラグラフ構造で書く
   5-5-3 パラグラフ構造で書かれた論証を論証図にしてみる
  5-6 事例から論証内容のわかりやすさを再確認する
  5-7 サポーティング・ポイントを考える
  5-8 パラグラフ間の論理的関連性とパラグラフの移行の合図
   5-8-1 パラグラフ間の移行合図の表現
   5-8-2 実際のレポート例でパラグラフ内,パラグラフ間の関係を検討する
   5-8-3 パラグラフ間の論理的・意味的関係性をチェックする
   5-8-4 取り出したTS間の論理的関係性をつける
   5-8-5 パラグラフ内,パラグラフ間に論理性をもたせて本文を書き直す
    COLUMN 4 パラグラフを基礎単位とするレポート構成の基礎
  5章のまとめ
 第6章 論理的に読む
  6-1 「論理的に読む」に必要な4つのステップと5つのポイント
  6-2 「論理的に読む」を実践する
   6-2-1 論理的に読むための4つのステップと5つのポイントを使う
   6-2-2 文章を論証単位に分解してわかること
   6-2-3 パラグラフの削除と配置替え
   6-2-4 「グローバル社会における看護」の最終版
  6-3 「論理的に読む」から本格的に始めるべきこと
  6章のまとめ

引用・参考文献
おわりに
索引

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トゥールミンの論証モデルを使って論理的に記述する
書評者: 安部 陽子 (日赤看護大教授・看護管理学)
 小学一年生になる息子の国語の教科書に興味深い物語1)が載っていた。くまは何かが入っている袋を見つけた。袋の中身が何かをりすに聞きに行った。ところが,袋には穴が開いていて何もなかった。暖かい風が吹きはじめたら花の一本道ができた。これがその物語である。袋には穴が開いていたので,くまがりすに会いに行く間に中身がすべてこぼれてしまったこと,そのためりすに中身が何かを聞くことはできなかったこと,穴の開いた袋の中身が花の種であったこと,りすに会いに行く間にこぼれた種が春になって芽吹き花が咲いたことはどこにも記述されていない。読者がこれらを仮定して物語を読み取るのである。

 小学一年生を対象とした物語では複数の事柄が綿密につながっていなくてもよい。しかし,高等教育の論文・レポートや専門雑誌の記事では論理的に書くこと,そのために論理的に読むことが求められる。

 学生が書いた文章を読む。または自分が書いた文章をしばらくしてから読み返す。そのときに,「ここの文で書いてあることと,その後の文で書いてあることがつながっていない」と悩むことがある。文章全体には,前提/根拠と結論/主張があって,その間には前提/根拠から結論/主張を導くこと(導出)がある。しかし,その前提/根拠が単なる推測や意見で事実ではなかったり,導出に読者が考えもつかない仮定が含まれていて飛躍しすぎていたりすると,内容がつながっていない印象を読者に与えてしまう。その結果,文章が「論理的」でないと評価される。論文などでは前提/根拠が事実であること,仮定(論拠)を明示することが求められる。

 本書では,言葉で表す複数の事柄の関係として表れるものが論理であるとし,トゥールミンの論証モデルを枠組みとした,論理的に書いたり読んだりする方法が説明されている。

 本書の良い点は,まず基礎編で論理的に思考するための道具を紹介し,それから応用編でそれらの道具を使って論理的に書く方法と読む方法を説明している点である。特に,基礎編ではトゥールミンの論証モデルを枠組みとして論理的に思考する方法を系統的に説明している。ここで,前提/根拠,結論/主張,導出,仮定,論拠といった用語の詳細な説明が出てくる。応用編では論理的に書くため,論文などを書き始める前に文章の設計図(論証図)を描くこと,一文に一つの意味が含まれるように記述すること,論文などをパラグラフで構成することが説明されている。加えて,文章をいったん分解し,再構成するために読む方法も説明されている。

 本書は,教科書としては,練習問題を行ったり,文章の設計図を描いて実際に論文などを書かせたり,演習に使用できる。より良いレポートや論文を書きたい学部生のみならず大学院生に役立つと思う。さらに,これらの学生を指導する教員,より良い論文を執筆したい研究者にもお薦めである。

1)おかのぶこ.はなのみち.甲斐睦朗,他編.こくご一上 かざぐるま.光村図書出版;2018.pp.32-9.
思考の道具を用い、論理的に書く・読むスキルの向上へと導く書(雑誌『看護教育』より)
書評者: 福岡 公香 (愛知県立総合看護専門学校/愛知県看護研修センター)
 本書のタイトルに「看護学生が身につけたい」とあるが、私は看護教員にもこの本を読んでいただきたいと思う。その理由は、看護教員自身が論理的に読み書きすることを学んでいないという現状があることと、本書には論理的に読み書きするための思考の道具がわかりやすく書かれていることの2点である。

 私は専任教員養成講習会の運営を担当するなかで、受講生である看護教員から「論理的に書くことを学習したことがないので自信がない」という話をよく耳にした。また、「自分の考えが相手に伝わらないが、どこに問題があるのかわからない」「接続詞をどのように使ったらいいのか」といった悩みを聞くことも多かった。このように、書くことに苦手意識をもっている看護教員は多いのではないだろうか。実際、看護教員が論理的に書くことを学ぶ機会は少ないし、おそらく「論理的に書く」ことができると自信をもって言える看護教員は多くないであろう。

 論理的に書くことを学習してきた看護教員が少ない現状をふまえ、愛知県教務主任養成講習会では「論理的思考」という科目名で、本書の著書である福澤一吉先生に講義をしていただいた。福澤先生の講義は「論理」という苦手意識をもちやすい内容を、具体的でわかりやすい説明と演習で理解を深めてくれるものであった。受講した看護教員も頭をフル回転させながらも楽しそうに参加していた。その講義内容がそのまま文字として表現されたのが本書の基礎編である。本書は、基礎編と応用編で構成されている。基礎編には「論理・論証とは何か」「接続表現」「論理的に考える方法」「論証を図で示す」という論理的に思考するための道具について書かれている。応用編には、基礎編での道具を使って「論理的に書く」「論理的に読む」ことが書かれている。本書を読むことで、自分の考えが相手に伝わらないのは、正しい論証でない、論拠が曖昧、複雑な論証図となっている、といった原因があることがわかると思う。また、どの接続詞を使うのが妥当か考えるために、本書が欠かせないことも実感するはずである。

 本書で福澤先生は、論理的に書けるようになる・読めるようになるにはトレーニングが必要である、と言っている。本書を読んだだけで論理的に書くこと・読むことができるようになるわけではない。しかし、論理的に書く・読むために必要な思考の道具が書かれている本書を手にしながら、書くこと・読むことを続けていけば、論理的に書くこと・読むことのスキルが身につくであろう。しかも、本書には章ごとに練習問題がついている。この練習問題を行えば、その章の内容の理解を深めるとともに、トレーニングもできる。看護学生はもちろん看護教員にも、ぜひ手にしていただきたい本である。

(『看護教育』2019年2月号掲載)

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