皮膚科診断トレーニング
専門医が覚えておきたい100疾患

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雑誌「臨床皮膚科」で好評連載中の症例クイズ「Clinical Exercise」が待望の書籍化。皮膚科医なら必ず知っておかなければならない基本的な問題から、ベテランでも思わず頭を悩ますような難問まで、難易度別に厳選100問。理解を助ける手引きとして、監修者が新たにコメントを書きおろした。専門医試験の受験や、診断力向上の腕試しに役立つ1冊!
監修 石河 晃
編集 「臨床皮膚科」編集委員会
発行 2017年06月判型:B5頁:216
ISBN 978-4-260-03198-1
定価 9,900円 (本体9,000円+税)

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 皮膚科専門医制度は,全診療科のなかでも歴史ある制度であり,専門医試験合格率は80%前後の難関である。日本専門医機構による新専門医制度が始まろうとしており,今後は漏れのない幅広い知識と技能を習得する過程が重要視されるようになる。“on the job training”は専門医研修の根幹をなすが,自らなかなか経験できないような疾患が山のようにあるのが皮膚科学の特徴である。これらの稀少疾患や,非典型例に対応するには“off the job training”が必要不可欠である。皮疹の視診から何を考えるか,臨床診断能力を磨く機会をもつことはきわめて重要であるが,それをかなえてくれる書籍は少ない。

 本書は,医学書院発行の月刊誌「臨床皮膚科」の巻頭で毎月連載されている「Clinical Exercise」の症例を集めたものである。2007年9月号からリニューアルしたこの連載は,もともと雑誌に投稿いただいた論文のなかから,本誌編集委員が特に教育的な症例を選び,各執筆者にクイズ形式に書き直していただいたものである。すなわち,すべての症例は論文化された秀逸なものである。

 編集にあたっては,臨床現場の初診患者を診ている場面を想定し,専門医が知っておきたい症例を選択したうえで,かなりの改訂を施した。多くの皮膚病アトラスにみられる疾患別の配列をやめ,皮疹の性状別に並べることにより,バイアスがない状態で臨床写真を見られるように工夫した。単純な書式の整理・統一だけではなく,古い原稿については最新の皮膚科の現状に即した修正を行い,各症例を理解するための手引きとして,監修者が新たにコメントを書き加えた。
 また症例の難易度を,:専門医取得前に知っておくべきレベル,★★:専門医を取得した指導医が知っておくべきレベル,★★★:チャレンジ問題といった具合に,マークで示した。チャレンジ問題は必ずしも正解が1つに絞れないとご批判を受けるものもあるかもしれないが,結果としてどう診断されたか,という観点でAnswerをお読みいただきたい。
 さらに深く学びたい場合には,原著の論文をお読みいただければ理解が深まる。出典は巻末に記載されているので,「臨床皮膚科」誌のバックナンバーにアクセスできる方はぜひご参照いただきたい。これから専門医を目指す皮膚科初学者の日々の学習からエキスパートの臨床診断力の向上まで,幅広くトレーニングにご活用いただければ,監修者として望外の喜びである。

 最後に,このようなバラエティに富んだ珠玉の症例集になったのは,ひとえに本誌を愛読し,症例を投稿してくださる読者の皆さまのおかげである。「臨床皮膚科」誌では,本欄の連載が続いている。是非こちらもご覧いただくとともに,貴重な症例をおもちの先生方は,雑誌への論文投稿もご検討いただければ幸いである。

 2017年4月
 石河 晃

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第1章 浮腫性紅斑・浸潤性紅斑
第2章 落屑性紅斑・角化性紅斑
第3章 その他の紅斑
第4章 紫斑
第5章 紫紅色斑・褐色斑
第6章 丘疹
第7章 結節
第8章 腫瘤
第9章 潰瘍
第10章 水疱
第11章 膿疱
第12章 色素斑
第13章 色素沈着
第14章 浮腫・硬化

執筆者・提示症例出典一覧
索引

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クイズ形式で楽しみながら症例を経験
書評者: 佐山 浩二 (愛媛大教授・皮膚科学)
 皮膚科診断のトレーニング本が刊行された。本書には,専門医が覚えておきたい100疾患が網羅されている。雑誌『臨床皮膚科』に掲載されている連載「Clinical Exercise」をまとめて編集し直したものなので,内容的にも十分吟味された症例がそろっている。

 本書の特徴として,ページ構成の工夫が挙げられる。ページの表が「Question」で,裏ページの「Answer」からなるクイズ形式で構成されている。表ページの「Question」には臨床写真,病歴が簡潔にまとめられており,それだけで鑑別診断を考えていくことができる。その際に,裏ページの「Answer」の解説が“うっかり”目に入らないので安心である。まさに診断トレーニングにうってつけである。必ず鑑別診断をいくつか考えてから「Answer」を読むようにしたい。あらかじめ答えを知って症例を診るのとでは,診断力の付き方が大きく違ってくる。自分でいくつか考えた鑑別診断の中に「Answer」の診断名が入っていれば,まずは「当たり」である。大きく方向性がずれていないことが重要である。楽しみながら読んでいただきたい。

 「Answer」の解説だけで満足できない場合は,本書の症例は全て論文化されていることから元の論文に当たることもできる。このあたりも類書にない特徴である。本書を基本として,疾患の幅を広げていくとよいと思う。

 本書には皮膚科専門医が知っておくべき基本的な疾患が掲載されているが,使い方としては,最初から通して読む必要はなく,自分の苦手なところや興味のあるところから読み始めてよい。問題の難易度も示してあり,タイトルにあるように診断のトレーニングに向いている本である。専門医をめざして勉強している専攻医だけではなく,既に皮膚科専門医資格を持っているベテラン医師のブラッシュアップにもお薦めである。

 皮膚科の特性として,他科と比べて圧倒的に疾患数が多いことが挙げられる。それを全て経験するのは難しいが,今までに経験したことのないようなまれな症例でも的確に診断できることこそが,皮膚科専門医の真骨頂でもある。皮膚科の学会でも症例報告が重視されているのは,症例報告を聴講することにより,まれな症例を疑似体験できるからである。本書にはまれな疾患や非典型的な症例も含まれており,ぜひこれらを書籍上で疑似体験し,診断のトレーニングをしていただきたい。

 不確実で断片的な情報から,その時点での最適の解を見つけるのが医師の仕事だと思っている。そういう分野において人工知能(AI)は当分追いつけないと思っていたが,囲碁の世界では人間を超える存在になってしまった。皮膚科のように形態認識の分野ではより難しいかと思いきや,既にAIが臨床写真から一部の皮膚がんを識別できるという研究報告もあるようだ。しかし,AIが人間のような複合的な診断力を身につけるのは当分先であろうし,AIに対しても常に教える立場で,有用な技術として使いこなせるよう,自らの“経験値”を高めていただきたい。
忙しい皮膚科医に最適! 診断力向上クイズ
書評者: 田中 勝 (女子医大東医療センター教授・皮膚科)
◆どんな本か?
 本書はひとことで言うと,既に雑誌『臨床皮膚科』に論文としてきちんとまとめられた症例の中から,特に重要と考えられる疾患100症例を抜粋し,クイズ形式でまとめたものである。
 100症例は,皮疹から14の章に分けられ,各問には,難易度を表す★ が1~3個付けられている。各症例,表に臨床写真を中心とした問題,ページをめくると裏に組織所見と解説というパターンで構成されている。
 写真と図がメインで文字が少ないという,読者にとって読みやすくうれしい構成である。

◆誰が読むべきか?
 はっきり言って,皮膚科医全員が読むべきである。
 特に,皮膚科専門医として診断能力を高めたい人と,皮膚科専門医受験前の人には必修である。皮膚科医にとって診断力の向上ほど大切なものはない。
 このような本のありがたみは計り知れない。時間のないわれわれ医師にとって,簡潔にまとめられたクイズ形式の症例集というのは,時間を節約しながら知識の吸収に最大限の効果をもたらすものだ。次の100問が第2集として出版されるのが楽しみでならない。

◆どのように読むべきか?
 読み方は人それぞれかもしれない。もちろん,端から一気に読むという方法もあるが,私は興味があるところ,気になるところから読み,途中から加速して一気に読み終わるという方法を一つ提案する。
 まず,裏表紙に10×10のマス目を書き,1~100の番号を入れる。目次を見て,最も気になる皮膚症状の項目を選んで,そのページに進む。難易度の★を確認し,初学者は★の問題,診断に自信のある人は★★★の問題を選んで読むのである。1問読み終わったら裏表紙に戻って該当するマス目に斜線を入れる。これを繰り返すうちに,大部分のマス目が斜線で埋まることになり,全部埋めるのが楽しみとなって,最後は学習が加速すること間違いなしである。せっかくの良い本も途中でやめたらもったいない!

◆お薦めの理由
 本書をお薦めする第1の理由は,“日常診療で遭遇しにくいか,遭遇しても知らなければ診断できないような重要疾患をそろえている”という点である。日常的に頻繁に接する疾患は誰でも診断に迷うことはないが,たまにしか遭遇しない病気というのはよほど日常的に意識していたり,論文を読んだり,学会に参加したりしていないと,頭に浮かばないものである。しかしながら,多くの先生方は日常が極めて多忙であるため,論文を読む時間は圧迫され,次第に減少しているに違いない。だからこそ,本書を利用することで,短時間に効率良く,たくさんの論文を読むことに匹敵する知識が得られるのではないだろうか?
 第2に,写真がきれいで文字が少なめである,という点もありがたい。回答と解説が簡潔で明快である。
 要するに,皮膚科専門医にとって大事な疾患をとても勉強しやすい!ということだ。

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