こどものリハビリテーション医学 第3版
発達支援と療育
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- 序文
- 目次
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序文
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第3版 序
本書の前身は,「こどものリハビリテーション」(1991年刊),初版にあたる「こどものリハビリテーション医学」(1999年刊)であり,出版以来,理学療法士,作業療法士の養成校のみならず,こどものリハビリテーションや療育に携わる多くの方々に広く好感をもって迎えられてきた。本書はその改訂第3版である。
障害のあるこどものリハビリテーションという視点からプラクティカルな内容を目指すという編集方針については継続して変更はない。しかし,第2版よりすでに9年の月日が経過し,対象となるこどもの状況は,重度な知的障害を合併しない肢体不自由児が減る一方で,ハイリスク児や重複障害が増え,精神系では発達障害児が著しく増加した。本書はこのような背景を踏まえ,新たな編集者として半澤直美先生,高橋秀寿先生,橋本圭司先生に参画していただき,臨床現場の視点に立って目次や執筆者の構成,全体の分量について大幅な改変を加えた。おかげで時代のニーズに適した内容に生まれ変わったと感謝している。
なお,今回の改訂では読みやすさを重視し,できるだけ用語の統一を図った。たとえば「小児」は本書の表題に合わせて「こども」とし,それに対応して「成人」も「大人」で統一した。また,病名や障害名の日本語訳が定着していない発達障害の領域では,DSM-5の日本語版に準拠して表記することとした。
わが国における少子化の進行は深刻さを増しており,最近になってようやく,こどもに対する手厚い政策が提示されるようになってきた。その中で,こどものリハビリテーションは女性が安心して出産できる環境を整備するという点で,保育や教育の保障と並び,少子化対策として重要な位置を占めるものである。教育の無償化など,単なる経済支援は財源があればすぐにでも可能だが,技術の開発や人材育成は一朝一夕には成しえない。だからこそ,常時の地道な臨床の積み重ねが必要である。こどもは社会の宝だという。そうだ! と未来を思考するなら,生まれてくるこどもを丸ごと保証する必要があり,リハビリテーションの保障は必須の対策と考えるべきではないか。そんな想いを込めて,本書が少しでも役に立てばと願っている。
本書が,私たちの理想とする「こどものリハビリテーション」を一望できる実践的な成書となることを祈念するとともに,出版にあたり,ご執筆いただいた多くの先生方と医学書院の塩田高明・成廣美里の両氏に心より御礼申し上げる。
2017年10月
監修者
本書の前身は,「こどものリハビリテーション」(1991年刊),初版にあたる「こどものリハビリテーション医学」(1999年刊)であり,出版以来,理学療法士,作業療法士の養成校のみならず,こどものリハビリテーションや療育に携わる多くの方々に広く好感をもって迎えられてきた。本書はその改訂第3版である。
障害のあるこどものリハビリテーションという視点からプラクティカルな内容を目指すという編集方針については継続して変更はない。しかし,第2版よりすでに9年の月日が経過し,対象となるこどもの状況は,重度な知的障害を合併しない肢体不自由児が減る一方で,ハイリスク児や重複障害が増え,精神系では発達障害児が著しく増加した。本書はこのような背景を踏まえ,新たな編集者として半澤直美先生,高橋秀寿先生,橋本圭司先生に参画していただき,臨床現場の視点に立って目次や執筆者の構成,全体の分量について大幅な改変を加えた。おかげで時代のニーズに適した内容に生まれ変わったと感謝している。
なお,今回の改訂では読みやすさを重視し,できるだけ用語の統一を図った。たとえば「小児」は本書の表題に合わせて「こども」とし,それに対応して「成人」も「大人」で統一した。また,病名や障害名の日本語訳が定着していない発達障害の領域では,DSM-5の日本語版に準拠して表記することとした。
わが国における少子化の進行は深刻さを増しており,最近になってようやく,こどもに対する手厚い政策が提示されるようになってきた。その中で,こどものリハビリテーションは女性が安心して出産できる環境を整備するという点で,保育や教育の保障と並び,少子化対策として重要な位置を占めるものである。教育の無償化など,単なる経済支援は財源があればすぐにでも可能だが,技術の開発や人材育成は一朝一夕には成しえない。だからこそ,常時の地道な臨床の積み重ねが必要である。こどもは社会の宝だという。そうだ! と未来を思考するなら,生まれてくるこどもを丸ごと保証する必要があり,リハビリテーションの保障は必須の対策と考えるべきではないか。そんな想いを込めて,本書が少しでも役に立てばと願っている。
本書が,私たちの理想とする「こどものリハビリテーション」を一望できる実践的な成書となることを祈念するとともに,出版にあたり,ご執筆いただいた多くの先生方と医学書院の塩田高明・成廣美里の両氏に心より御礼申し上げる。
2017年10月
監修者
目次
開く
第1章 序論
[1]こどもの「障害学」
[2]障害児をめぐる情勢
[3]地域療育
[4]特別支援教育
[5]家族支援
[6]社会資源の活用
第2章 発達の診断・評価・療育
[1]NICUからの診断・評価
[2]運動発達
[3]精神発達
[4]言語発達
[5]新生児リハビリテーション
[6]早期リハビリテーション
[7]理学療法
[8]作業療法
[9]言語聴覚療法
[10]心理療法
第3章 運動発達の障害
[1]運動障害の療育-総論
[2]脳性麻痺
A 診断と評価
B 医療・合併症管理
C 成人期の問題
[3]二分脊椎症
A 診断と評価
B 医療と合併症管理
1 脳神経外科
2 整形外科
3 泌尿器科
[4]神経筋疾患
A 筋ジストロフィー
B 脊髄性筋萎縮症(SMA)
C シャルコー・マリー・トゥース病(CMT)
[5]骨関連疾患
A 先天性多発性関節拘縮症(AMC)
B 若年性特発性関節炎(若年性関節リウマチ,JIA)
C 骨形成不全症(OI)
[6]先天性四肢形成不全と切断
第4章 精神発達の障害
[1]神経発達障害の概念(総論)
[2]知的障害(精神遅滞)
[3]自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害
[4]注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害
[5]学習障害(限局性学習症/限局性学習障害)
[6]高次脳機能障害
[7]発達性協調運動症/発達性協調運動障害
第5章 重度障害・重複障害
[1]診断・評価
[2]医療的ケア
[3]療育の特徴と留意点
第6章 感覚障害
[1]視覚障害
[2]聴覚障害
第7章 内部障害
[1]呼吸障害
[2]循環器障害
[3]代謝・内分泌障害
[4]小児がん
[5]臓器移植
第8章 その他のリハビリテーション対象疾患
[1]先天異常(概説)
[2]ダウン症候群(21トリソミー症候群)
[3]脳炎・脳症
[4]てんかん
[5]熱傷
[6]口蓋裂
第9章 摂食機能障害
[1]摂食指導
[2]口腔ケア
第10章 補装具・環境整備
[1]義肢と装具
[2]姿勢保持と移動支援
[3]福祉用具と住環境
第11章 関連知識
[1]日常生活活動
[2]児童虐待
[3]ペアレント・トレーニング
[4]遺伝カウンセリング
[5]障害児のスポーツ参加
索引
[1]こどもの「障害学」
[2]障害児をめぐる情勢
[3]地域療育
[4]特別支援教育
[5]家族支援
[6]社会資源の活用
第2章 発達の診断・評価・療育
[1]NICUからの診断・評価
[2]運動発達
[3]精神発達
[4]言語発達
[5]新生児リハビリテーション
[6]早期リハビリテーション
[7]理学療法
[8]作業療法
[9]言語聴覚療法
[10]心理療法
第3章 運動発達の障害
[1]運動障害の療育-総論
[2]脳性麻痺
A 診断と評価
B 医療・合併症管理
C 成人期の問題
[3]二分脊椎症
A 診断と評価
B 医療と合併症管理
1 脳神経外科
2 整形外科
3 泌尿器科
[4]神経筋疾患
A 筋ジストロフィー
B 脊髄性筋萎縮症(SMA)
C シャルコー・マリー・トゥース病(CMT)
[5]骨関連疾患
A 先天性多発性関節拘縮症(AMC)
B 若年性特発性関節炎(若年性関節リウマチ,JIA)
C 骨形成不全症(OI)
[6]先天性四肢形成不全と切断
第4章 精神発達の障害
[1]神経発達障害の概念(総論)
[2]知的障害(精神遅滞)
[3]自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害
[4]注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害
[5]学習障害(限局性学習症/限局性学習障害)
[6]高次脳機能障害
[7]発達性協調運動症/発達性協調運動障害
第5章 重度障害・重複障害
[1]診断・評価
[2]医療的ケア
[3]療育の特徴と留意点
第6章 感覚障害
[1]視覚障害
[2]聴覚障害
第7章 内部障害
[1]呼吸障害
[2]循環器障害
[3]代謝・内分泌障害
[4]小児がん
[5]臓器移植
第8章 その他のリハビリテーション対象疾患
[1]先天異常(概説)
[2]ダウン症候群(21トリソミー症候群)
[3]脳炎・脳症
[4]てんかん
[5]熱傷
[6]口蓋裂
第9章 摂食機能障害
[1]摂食指導
[2]口腔ケア
第10章 補装具・環境整備
[1]義肢と装具
[2]姿勢保持と移動支援
[3]福祉用具と住環境
第11章 関連知識
[1]日常生活活動
[2]児童虐待
[3]ペアレント・トレーニング
[4]遺伝カウンセリング
[5]障害児のスポーツ参加
索引
書評
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こどものリハにかかわる多くの職種にとって有意義なテキスト
書評者: 安保 雅博 (慈恵医大教授・リハビリテーション医学)
日進月歩で成長を続ける医療水準を背景に,少子高齢化が進んでいます。このことは,要するに「障害を持った人が増える」ということになります。しかもこの世の中,今後さらに情報化社会が進み,価値観の相違や権利意識,個別化,自己主張はより強くなるでしょう。また,必要な時期に必要なサービスを受けられる環境を求められるでしょう。
例えば,おとなの場合,地域包括ケアシステムを構築できる資質と環境があり,高度急性期医療や急性期医療,包括病棟,回復期リハビリテーション後の在宅施設,サービスを周辺に整備することによりチームケアや情報の共有が可能となり,住み慣れた地域においてノンストップで最期まで安心して任せることが可能になるところに,全てが集約されていくことになるでしょう。まさに,これからは医療と介護がしっかりと手を取り1人の人を最期までサポートできる体制づくりが必須となるでしょう。
この本の対象になる「こども」の構成も時代の流れで大きく変わってきています。私が病院で拝見する「こども」は,近年,肢体不自由児が減少し,その代わりハイリスクのこどもや重複障害を持つこどもが増加していること,特に精神系発達障害を持つこどもが増加していることを強く感じます。医療関係者の方々も同じように感じられる人が多いのではないでしょうか。このようなこともあって,この『こどものリハビリテーション医学 第3版』は,第2版に比べ,ページ数を大幅に削減しながら,カラーを多く使い,多くの項目をコンパクトにまとめています。しかも,こどもの対象構造の変化を加味し,DSM-5を踏まえ,第4章「精神発達の障害」の章の割合を増やし充実を図っている特色がみられます。
「こども」を診察するうえで重要なことは,通常の身体的診察や精神運動発達評価に基づき,一般的な治療やリハビリテーション治療を行うことによって,運動機能や精神機能の改善を図ることをするのは言うまでもありませんが,発達段階に応じての日常生活や社会参加状況を含めた包括的な評価を行うことで,社会参加の可能な環境を整備することも当然しなければなりません。また,もちろんそこには福祉制度に関する幅広い柔軟な知識も必要になってきます。
まさに本書は,この辺りを幅広く理解しやすいように配慮している教科書といえると思います。よって,こどものリハビリテーションにかかわる多くの領域の医師,理学療法士,作業療法士,言語聴覚士,看護師,社会福祉士など,関連する多職種の方々にとって,とても有意義なものになることは間違いないと感じます。
こどもの成長を支える,愛に満ちた本
書評者: 中村 春基 (日本作業療法士協会会長)
このたび,伊藤利之先生監修の下,小池純子・半澤直美・高橋秀寿・橋本圭司の4氏を編者に配した『こどものリハビリテーション医学―発達支援と療育 第3版』が医学書院より上梓された。表紙は淡いピンクを基調に,大きさの異なるさまざまな立方体が並んでおり,こどものリハビリテーションの個別性・多様性を表現しているかのようだ。
400ページを超える本書は全11章で構成され,各章はさらに節・項に細分化され,医師を中心に理学療法士,作業療法士,言語聴覚士などを含む62名の執筆陣が各テーマに関する最新の知見を過不足なくコンパクトにまとめている。一読してそのテーマの下に知っておくべきエッセンスを理解することができ,紹介されている成書や文献にも大いに興味をそそられる。
本書の特徴は第1章「序論」から如実に示されている。(1)こどもの「障害学」,(2)障害児をめぐる情勢,(3)地域療育,(4)特別支援教育,(5)家族支援,(6)社会資源の活用,という内容構成からもうかがえるように,こどものリハビリテーション医学は小児疾患の治療にとどまらず,新生児から乳幼児,学童,成人,老年までを見通した人間のライフステージに寄り添い,生まれてくるこどもをその未来に向けて丸ごと保障しようとする姿勢に貫かれている。したがって,病院で完結するようなリハビリテーション医療を想定して本書を読まれたら,ずいぶんと違和感を覚えるかもしれない。
障害別・疾患別の各論では,近年の解釈と整理,疫学,診断,検査・評価(標準的な発達検査の紹介と臨床的な活用,留意点),遺伝子診断の最新活用,臨床上の配慮,家族やこどもの成長への配慮,などが的確に述べられている。この種の書籍では分担執筆者によって知識の幅や深度に差がみられ残念に思うことも少なからずあるが,本書に限って言えば読者を失望させる気遣いはない。むしろその充実した内容に驚くばかりであり,医療従事者たるもの常に学ばなければいけないと焦りすら感じてしまう。執筆された先生方の力量はもちろん,監修の伊藤先生をはじめ,編集に当たられた方々の行き届いた配慮と尽力の賜物であると心より敬意を表したい。
さらに,第11章「関連知識」では,(1)日常生活活動,(2)児童虐待,(3)ペアレント・トレーニング,(4)遺伝カウンセリング,(5)障害児のスポーツ参加,が取り上げられ,この領域の多面的な取り組みの必要性を改めて痛感した。特に児童虐待,ペアレント・トレーニングの内容は,こどものリハビリテーションに携わっていない方にもぜひ読んでいただき,子育てにおける共感や傾聴の重要性を再確認してほしい。そのような意味からも,私なりに本書の感想を一言で述べると,「こどもの成長を支える,愛に満ちた本」であると思う。
監修者が「序」で述べているように,私もまた「本書が私たちの理想とするこどものリハビリテーションを一望できる実践的な成書となること」を祈念する。本書を契機として,この領域の知識・技術がさらに向上・普及し,全てのこどもが幸せに暮らせる社会の実現につながることを願ってやまない。
書評者: 安保 雅博 (慈恵医大教授・リハビリテーション医学)
日進月歩で成長を続ける医療水準を背景に,少子高齢化が進んでいます。このことは,要するに「障害を持った人が増える」ということになります。しかもこの世の中,今後さらに情報化社会が進み,価値観の相違や権利意識,個別化,自己主張はより強くなるでしょう。また,必要な時期に必要なサービスを受けられる環境を求められるでしょう。
例えば,おとなの場合,地域包括ケアシステムを構築できる資質と環境があり,高度急性期医療や急性期医療,包括病棟,回復期リハビリテーション後の在宅施設,サービスを周辺に整備することによりチームケアや情報の共有が可能となり,住み慣れた地域においてノンストップで最期まで安心して任せることが可能になるところに,全てが集約されていくことになるでしょう。まさに,これからは医療と介護がしっかりと手を取り1人の人を最期までサポートできる体制づくりが必須となるでしょう。
この本の対象になる「こども」の構成も時代の流れで大きく変わってきています。私が病院で拝見する「こども」は,近年,肢体不自由児が減少し,その代わりハイリスクのこどもや重複障害を持つこどもが増加していること,特に精神系発達障害を持つこどもが増加していることを強く感じます。医療関係者の方々も同じように感じられる人が多いのではないでしょうか。このようなこともあって,この『こどものリハビリテーション医学 第3版』は,第2版に比べ,ページ数を大幅に削減しながら,カラーを多く使い,多くの項目をコンパクトにまとめています。しかも,こどもの対象構造の変化を加味し,DSM-5を踏まえ,第4章「精神発達の障害」の章の割合を増やし充実を図っている特色がみられます。
「こども」を診察するうえで重要なことは,通常の身体的診察や精神運動発達評価に基づき,一般的な治療やリハビリテーション治療を行うことによって,運動機能や精神機能の改善を図ることをするのは言うまでもありませんが,発達段階に応じての日常生活や社会参加状況を含めた包括的な評価を行うことで,社会参加の可能な環境を整備することも当然しなければなりません。また,もちろんそこには福祉制度に関する幅広い柔軟な知識も必要になってきます。
まさに本書は,この辺りを幅広く理解しやすいように配慮している教科書といえると思います。よって,こどものリハビリテーションにかかわる多くの領域の医師,理学療法士,作業療法士,言語聴覚士,看護師,社会福祉士など,関連する多職種の方々にとって,とても有意義なものになることは間違いないと感じます。
こどもの成長を支える,愛に満ちた本
書評者: 中村 春基 (日本作業療法士協会会長)
このたび,伊藤利之先生監修の下,小池純子・半澤直美・高橋秀寿・橋本圭司の4氏を編者に配した『こどものリハビリテーション医学―発達支援と療育 第3版』が医学書院より上梓された。表紙は淡いピンクを基調に,大きさの異なるさまざまな立方体が並んでおり,こどものリハビリテーションの個別性・多様性を表現しているかのようだ。
400ページを超える本書は全11章で構成され,各章はさらに節・項に細分化され,医師を中心に理学療法士,作業療法士,言語聴覚士などを含む62名の執筆陣が各テーマに関する最新の知見を過不足なくコンパクトにまとめている。一読してそのテーマの下に知っておくべきエッセンスを理解することができ,紹介されている成書や文献にも大いに興味をそそられる。
本書の特徴は第1章「序論」から如実に示されている。(1)こどもの「障害学」,(2)障害児をめぐる情勢,(3)地域療育,(4)特別支援教育,(5)家族支援,(6)社会資源の活用,という内容構成からもうかがえるように,こどものリハビリテーション医学は小児疾患の治療にとどまらず,新生児から乳幼児,学童,成人,老年までを見通した人間のライフステージに寄り添い,生まれてくるこどもをその未来に向けて丸ごと保障しようとする姿勢に貫かれている。したがって,病院で完結するようなリハビリテーション医療を想定して本書を読まれたら,ずいぶんと違和感を覚えるかもしれない。
障害別・疾患別の各論では,近年の解釈と整理,疫学,診断,検査・評価(標準的な発達検査の紹介と臨床的な活用,留意点),遺伝子診断の最新活用,臨床上の配慮,家族やこどもの成長への配慮,などが的確に述べられている。この種の書籍では分担執筆者によって知識の幅や深度に差がみられ残念に思うことも少なからずあるが,本書に限って言えば読者を失望させる気遣いはない。むしろその充実した内容に驚くばかりであり,医療従事者たるもの常に学ばなければいけないと焦りすら感じてしまう。執筆された先生方の力量はもちろん,監修の伊藤先生をはじめ,編集に当たられた方々の行き届いた配慮と尽力の賜物であると心より敬意を表したい。
さらに,第11章「関連知識」では,(1)日常生活活動,(2)児童虐待,(3)ペアレント・トレーニング,(4)遺伝カウンセリング,(5)障害児のスポーツ参加,が取り上げられ,この領域の多面的な取り組みの必要性を改めて痛感した。特に児童虐待,ペアレント・トレーニングの内容は,こどものリハビリテーションに携わっていない方にもぜひ読んでいただき,子育てにおける共感や傾聴の重要性を再確認してほしい。そのような意味からも,私なりに本書の感想を一言で述べると,「こどもの成長を支える,愛に満ちた本」であると思う。
監修者が「序」で述べているように,私もまた「本書が私たちの理想とするこどものリハビリテーションを一望できる実践的な成書となること」を祈念する。本書を契機として,この領域の知識・技術がさらに向上・普及し,全てのこどもが幸せに暮らせる社会の実現につながることを願ってやまない。
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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。
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