大腸癌診療ポケットガイド

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大腸癌の診療に携わる医師、看護師、薬剤師を読者対象に、診療の基本から、進化する個別化治療の最新情報、ストーマ管理、リハビリテーションの実際まで解説したマニュアル。図表、フローチャート、箇条書き等を多用し、外来で、またベッドサイドで役立てられるよう編集。大腸癌診療に定評のある都立駒込病院大腸グループが総力をあげて編集・執筆。
編集 がん・感染症センター都立駒込病院 大腸グループ
責任編集 高橋 慶一 / 小泉 浩一
発行 2016年10月判型:B6変頁:240
ISBN 978-4-260-02550-8
定価 4,180円 (本体3,800円+税)

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  • 序文
  • 目次
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はじめに

 大腸癌患者は高齢化とともに増加し,最新のがん統計によれば,大腸癌の2015年の予測罹患数は135,800人で全癌中第1位〔男性は第4位(77,900人),女性は第2位(57,900人)〕,また2015年の予測死亡数は50,600人で全癌中第2位〔男性は第3位(27,200人),女性は第1位(23,400人)〕を占め,日本の癌で最も多い癌になることが予想されています.このようなわけで癌治療における大腸癌治療の割合は現在著しく増え,今後もさらに増加することが予想されます.
 このように癌患者の分布が変化するなかで,大腸癌に対する治療は近年大きく変化しました.癌の診断技術の向上,内視鏡治療の進歩,手術においては腹腔鏡手術の導入や術前術後管理の向上,全身化学療法の進歩,集学的治療の普及,疼痛管理やストーマケア,緩和ケア,在宅支援を含めて,多岐にわたり,大きく変化し,進歩してきています.大腸癌の治療は単に外科的な切除だけではありません.内視鏡治療,全身化学療法,放射線治療があり,また再発癌に対する治療も外科的切除や全身化学療法,放射線治療までさまざまな分野での進歩があって,これらの集学的治療を積極的に導入することにより,近年大腸癌患者の治療成績は著しく向上しました.
 このような現状を踏まえ,さまざまな部門が連携して大腸癌治療を支えていく必要性がますます高まり,相互に大腸癌治療についての共通の理解をもって治療を行うことはきわめて重要です.しかし,これらの多岐にわたる分野の進歩を理解し,実際に活用することはなかなか難しいのが現状です.
 本書は,このような必要性から生まれました.がん・感染症センター都立駒込病院は初発大腸癌に対して,年間で内視鏡治療を約350例,外科的切除を約370例行っています.また再発癌に対しても,再発巣切除や全身化学療法および放射線治療を含めた集学的治療を積極的に行っています.本書はがん・感染症センター都立駒込病院大腸グループの総力を結集し,われわれの行っている大腸癌治療の実際について,実践的な内容を中心としてポケットブックにまとめました.医師のみならず,看護師,薬剤師,その他コメディカルの方にも役立つものと確信しています.本書を十分に活用していただき,大腸癌治療の現場で大いに役立てていただければ幸いです.
 最後に,本書の刊行にあたり惜しみないご尽力をいただいた医学書院の関係者に深謝いたします.

 2016年8月
 がん・感染症センター都立駒込病院 外科部長
 高橋慶一

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1 大腸の解剖
2 大腸癌の発生・進展
3 疫学・予防
 A 罹患・死亡
 B 予防要因とリスク要因
4 診断
 A 診断の流れ
 B 症状
 C 触診・直腸指診
 D 下部消化管内視鏡検査
 E 注腸造影検査
 F CT検査
 G MRI検査
 H PET検査
5 病理学的分類
6 Stage分類
7 予後因子
8 治療
 A 治療方針
 B 内視鏡治療
 C 外科治療
  (1)大腸癌の進行度とリンパ節郭清
  (2)開腹手術と腹腔鏡手術
  (3)結腸癌手術
  (4)直腸癌手術
  (5)自律神経温存手術
  (6)側方リンパ節郭清
  (7)術前術後管理
9 術後補助化学療法
10 進行・再発大腸癌の治療
 A 治療方針
 B 血行性転移の治療
 C 腹膜播種その他の治療
 D 肝転移治療成績
 E 肺転移治療成績
 F 直腸癌局所再発の治療成績
 G 全身化学療法
11 大腸癌治療における救急処置
 A 閉塞性大腸癌
 B 出血
 C 腹膜炎
 D 疼痛
12 全身化学療法の副作用対策
13 ストーマ管理
 A ストーマの種類
 B ストーマの治療経過
 C ストーマの管理方法
 D ストーマケア
14 排便・排尿・性機能対策
 A 排便対策
 B 排尿対策
 C 性機能対策
15 リハビリテーション
16 緩和医療
 A 疼痛コントロール
 B 外科治療
 C 緩和的放射線治療法
 D 精神症状
 E ペインクリニック
17 社会的サポート
18 大腸癌におけるチーム医療

付録
 A 大腸癌取扱い規約とTNM分類の相違点
 B CVポート

索引

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レジデントだけでなく,経験ある先生,看護師にも有用な1冊
書評者: 杉原 健一 (東京医科歯科大特任教授/光仁会第一病院院長)
 本書は大腸癌診療の経験が豊富な駒込病院の大腸外科の高橋先生を中心とする大腸外科スタッフによって,消化器内科や腫瘍内科,放射線診療科,麻酔科,緩和ケア科,看護部と共に,大腸癌の診療に関連する全ての領域,つまり,診断,治療ばかりではなく,大腸の解剖や,大腸癌の発癌機序,疫学からストーマ管理や大腸癌手術後の生活まで解説しています。本当に大腸癌の診療に関する事項全てが網羅されています。

 本来これらの内容の本を作成するとなるとA4判で1,000ページを超える分厚い書物となり,机に向かって腰を落ち着けて読む本となります。ところが本書はそれらの膨大な内容を,そのエッセンスの部分だけを簡潔にまとめ,箇条書きに,または図表として一瞬で理解できる体裁をとっています。しかも片手で持って読める大きさであり,白衣のポケットに入れて持ち運びができることから,日常診療の合間に時間ができたときに読むことができ,また,患者さんとの面談の際に患者さんに本書に記載されている図を示しながら説明を進めることもできます。

 もう一つ医療者にとって便利な点は,データに具体的な数値が記載されていることから,数値に不安を覚えたときに参照することができ,また,データの出典が明記されているので,確認のためにまたはより深く理解するために出典に当たることができます。

 本書は大腸癌の患者さんを受け持つようになった研修医やレジデントばかりでなく,大腸癌の診療の経験を十分に持った先生方,さらには看護師さんたちも手元に置いておくべき書物だと思います。利用価値の高い本です。
日常診療で活用してほしい一冊
書評者: 藤田 力也 (昭和大名誉教授・三喜会顧問)
 大腸癌の罹患患者数が胃癌を超える勢いで増加している。特に男性・女性の総計では癌死亡率のトップになって久しいが,大腸癌診療に当たっては整理しなければならない,あるいは知っておくべき問題点は多い。

 大腸癌の効率的な検診はどうすべきか,受けたくない大腸内視鏡検査は本当に楽にできるのだろうか,手術は開腹が良いのか,腹腔鏡手術が良いのか,手術前に化学療法を受けるほうが良いと聞いたがそうだろうかなどなど,患者からの質問も多いこの頃である。また,血便,腹痛などの自覚症状に頼る診療では手遅れになることもしばしばである。特に右側結腸(上行結腸)では手遅れになりがちで,左側(下行結腸・S字状結腸・直腸)では症状も出やすいので,予後が良いとも言われている。

 こういった疑問や質問に答えるだけでなく,例えば症例検討会カンファレンスでチョット見て知識を得るにはポケットガイドは便利である。大きい雑誌や本は持ち歩けない。これがタブレットで見ることができればさらにうれしい。

 この診療ガイドは都立駒込病院の大腸診療班内科・外科の総力を挙げて,医師やナース,ケアワーカーが執筆に当たっているので,カバーする範囲が幅広いのはありがたい。ポケットガイドでこれほど守備範囲が広いのは驚異的である。特にストーマケアの写真は具体的で説得力が感じられる。

 目次を見ると,解剖の基本から始まり,最後の章では社会ニーズに応えて,介護のあり方,緩和医療からチーム医療としてキャンサーボードのあり方まで記述されている。高橋・小泉両部長の高い見識がうかがえる項目立てである。

 駒込病院で行われている診療が中心となっているため,病院によっては使用する薬剤や,前処置の方法,化学療法などに個性が出ているのかもしれない。

 大腸検査の前処置も病院によっては異なる工夫もあるかもしれないので,ここに記載されていることが全てではないと思う。病期の記載も最近のガイドラインを取り入れて,あるいは,それを訂正して使用することが大切であろう。また,何かと最近,話題が多い術前・術後の化学療法も日進月歩の状態であり,記載漏れの薬剤もありうると思うので,最新の情報は補給・補助をしていけばよかろうと思う。評価が一定していない新しい試みは採用していないので,かえって安心してお薦めができると思う。

 必要事項を要領よくまとめてあるので,ひと昔前の試験勉強を思い出した。

 このポケットガイドを小生の関連病院消化器センターの内科・外科の医師・ナースメンバーに回覧したところ,ベッドサイド・症例検討会・外来・キャンサーボード,その他に新人研修にも有用と要望があった。知識の再整理にも,もちろん有用であった。

 「山椒は小粒でもピリリと辛い」のたとえ通りの小冊子である。日常の診療の場で活用してほしい小冊子であると推奨したい。

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