イレウスチューブ 第2版
基本と操作テクニック

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コモンな外科疾患として日常的に遭遇する機会の多いイレウス。この非観血的な減圧治療として最適なイレウスチューブの、安全で確実な挿入・管理について懇切丁寧に解説。著者独自のテクニックやデバイスを用いた、患者さんにも術者にも優しい手技をイラストであますところなく展開。イレウスのミニテキストとしてもさらに充実した大改訂。
監修 白日 高歩
上泉 洋
発行 2011年03月判型:B5頁:144
ISBN 978-4-260-01176-1
定価 5,500円 (本体5,000円+税)

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第2版 監修者の序(白日高歩)/第2版の序(上泉 洋)

第2版 監修者の序
 上泉 洋先生の『イレウスチューブ』はイレウスチューブについてすべての知識が網羅された非常にユニークな書といえる。上泉先生は福岡大学医学部を卒業後,郷里北海道に帰り北海道大学第1外科で外科医師としての薫陶を受けた後,今日まで岩見沢市立総合病院の外科医長として幅広く活躍されている気鋭の臨床医である。
 本書の序文にも書かれているように,彼のイレウス,特にイレウスチューブにかける情熱は人一倍のものがあり,その試作品に取り組む姿勢には常々驚嘆させられるものがあった。周知のようにイレウスは古くてしかも問題の多い病態であり,難治性イレウスはいつも患者ばかりでなくベテラン医師をも悩ませるものである。上泉先生はかなり以前から新しい(先導子バルーン型)イレウスチューブの試作に取り組み,その経験を通して適応,挿入法などにつき独自の見解を構築されてきた。そのような努力が無になることが惜しく,ぜひイレウスチューブに関する種々の知見を一冊の本にまとめてみては,とお勧めしていた次第である。
 ほどなくその約束が守られて,分厚い原稿を眼にしたときの私の驚きは尋常なものではなかった。第一線病院のベテラン医師としてのハードな勤務に加えて,単行本の原稿をまとめたこれまでの努力は並大抵のものではないと考える。
 2004年に初版が世に出て,さらに7年後,この第2版では最近の知見が多く盛り込まれ,読者に有益な指針を与えるものとなっている。
 本書はイレウスについて具体的な臨床指針がわかりやすく記載されており,イレウスに遭遇する機会の多い中堅,若手医師にぜひ目を通していただきたい本である。

 2011年早春
 福岡大学名誉教授,福西会病院長
 白日高歩


第2版の序
 このたび『イレウスチューブ第2版』が出版されることになりました。初版を出版する際は正直申しまして売れ残ってしまうのではないか,世の先生方から厳しいご批判を頂いてしまうのではないか,正しい知識ではなく誤った考えを広めてしまうのではないか,など尽きることのない心配ばかりしていました。初版第2刷まで出版させていただき,多くの先生方に『イレウスチューブ』をお読みいただいたこと,感慨無量で感謝でいっぱいです。
 今回の改訂の中で私が最も力を入れたのは「経鼻内視鏡下挿入法」です。この方法が普及すれば短時間にイレウスチューブを挿入することができ,患者さんの苦痛も非常に軽減します。今まであまりイレウスチューブを用いたことのない内科の先生方も経鼻内視鏡の心得のある先生であれば容易にイレウスチューブを扱うことも可能になると思います。もう一つ力を入れて執筆した箇所は「合併症」です。イレウスチューブが普及すると,当然それにより引き起こされる問題も増えてきます。あらかじめ合併症を把握していることで,重大な問題になる前に対応可能なこともあると思います。イレウスが致命的にならないようにイレウスチューブを挿入するのと同じように,合併症が起こらないように対応していくことが重要と思います。
 残念ながら日本ではこれだけ普及しているイレウスチューブがなかなか海外では受け入れられていないようです。それでも中国の先生方が私の本を読み,イレウスチューブ挿入のテキストにしてくださっていると聞き,よりよい本にしていきたいと思っていました。昨年の夏には杭州市での学会にお招き頂きました。中国ではイレウスチューブは保険適応になっておらず高価なもので,広く普及するまでには至っていないようです。このたびの改訂で中国・韓国を中心としたアジア諸国にイレウスチューブが広まり,さらには欧米にもイレウスチューブが理解され「市民権」を獲得することを願います。
 このたびの出版の際に編集・制作にご協力いただきました伊東隼一氏,吉冨俊平氏はじめ医学書院の多くの関係諸氏,第2版の監修も快くお引き受けくださった恩師である福岡大学名誉教授・福西会病院長の白日高歩先生に深謝申し上げます。

 2011年早春 雪深い岩見沢市にて
 上泉 洋

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1 イレウス(腸閉塞)とは?
2 イレウスチューブについて
 1.long tube vs. short tube,歴史的背景
 2.歴史
 3.岩見沢におけるデータ
3 イレウスチューブの適応・禁忌と絞扼性イレウス
 1.絞扼性イレウスの腹部所見
 2.絞扼性イレウスの超音波造影所見
 3.絞扼性イレウスのCT所見
 4.絞扼性イレウスのMRI所見(MR intestinography)
4 インフォームド・コンセント(informed consent:説明と同意)について
5 イレウスチューブ挿入に必要な物品
6 イレウスチューブの構造
7 市販されているイレウスチューブ
 1.従来のイレウスチューブ
 2.特殊タイプのイレウスチューブ
8 イレウスチューブの太さについて
9 イレウスチューブの挿入方法
 1.X線透視下挿入法
 2.内視鏡下挿入法
 3.経肛門的挿入法
 4.術中挿入法(intestinal splinting法)
 5.イレウスチューブ以外の方法(術中)
10 先導子バルーン型イレウスチューブの開発の経緯・使用経験
 1.従来のイレウスチューブの問題点と新イレウスチューブの開発
 2.新イレウスチューブの使用経験
 3.特殊な症例の経験(I型イレウスに対する先導子バルーン型チューブによる
   手術時期延長)
11 X線透視下挿入法の実際(従来法および上泉法)
 1.入室までの準備
 2.鼻の鎮痛の仕方
 3.イレウスチューブの準備
 4.鼻腔~咽頭・食道への挿入
 5.胃内での操作
 6.十二指腸~空腸での操作
 7-A.チューブ挿入操作終了後─バルーンの膨張・ガイドワイヤーの抜去
 7-B.チューブ挿入操作終了後─チューブの固定
 8.イレウスチューブの管理・抜去のタイミング・手術への移行
12 経口内視鏡下挿入法─チューブ把持法(鉗子法)の実際
13 経口内視鏡下ガイドワイヤー法の実際
14 経鼻内視鏡下ガイドワイヤー法の実際
 1.経鼻内視鏡の準備(前処置)
 2.経鼻内視鏡の実施
 3.経鼻内視鏡下ガイドワイヤー法の施行
15 イレウスエイド法の実際
16 intestinal splinting法の実際
17 合併症とその対策
 1.挿入時合併症
 2.挿入後合併症
 3.抜去時・抜去後合併症
18 イレウスチューブ以外の治療法(併用療法)
 1.一般的治療
 2.抗生物質などの投与
 3.保存的補助療法
 4.高圧酸素療法

参考文献
索引

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若手医師に必須の,イレウスの診断と保存的治療のすべてを学べるバイブル
書評者: 山下 裕一 (福岡大教授・消化器外科学)
 今般,好評の『イレウスチューブ―基本と操作テクニック』が大改訂された。本書は,イレウスチューブの挿入方法から管理,抜去のタイミング,合併症まで実践的知識が満載されている“イレウスチューブ治療の実践書”である。臨床の現場では,多くの若手医師は単純性(閉塞性)イレウスのイレウスチューブによる治療方法を,先輩医師の治療をつぶさに見ることでそのコツを体得している。系統だったイレウスチューブ治療法を学べる教科書が必要であり,本書はまさにその代表格である。本書にはイレウスチューブを使用した単純性イレウスの治療法がすべて網羅され,日常臨床でのバイブルとなっている。

 外科医が診る急性腹症の3大疾患は,急性虫垂炎,急性胆嚢炎そしてイレウスである。プライマリ・ケアを担当する外科医,それに救急医や総合診療医,そしてそれを学ぶ若手医師においてイレウスの診断と治療は必須である。イレウスには機械的イレウスと機能的イレウスがあり,前者は単純性(閉塞性)イレウスと複雑性(絞扼性)イレウスに分類される。本書は,単純性イレウスの初期対応や保存的治療としての胃―腸管内の減圧を目的としたイレウスチューブによる治療を中心に各種チューブの特徴,各種のデバイスを用いた挿入法と治療法,合併症,併用療法などまで,きめ細かく紹介している。

 実際にページをめくると,最初にイレウスの定義と分類,病態生理が簡潔に述べられている。この項ではまず,イレウス治療でピットフォールとして忘れてはならないBacterial translocationを取り上げ,その注意点について目立つ青色の網かけで要点を箇条書きして明確に記載し,注意を喚起している。この青色コラムは,他項でも随所で読者の注意の喚起に役立っている。次に,適応・禁忌と画像診断のポイント,インフォームド・コンセントの項と続き,そしていよいよ本書のタイトルであるイレウスチューブに関する項である。イレウスチューブ挿入に必要な物品からチューブの構造と各種製品の特徴,挿入方法と詳しく続く。本書の特徴はあくまでも実戦的教科書であり,X線透視下挿入法,経鼻も含む内視鏡下挿入法,経肛門的挿入法,術中挿入法が経験豊富な著者ならではのタッチでシェーマ,実際の写真,X線写真をふんだんに使い,イメージに焼きつく手法でわかりやすく解説され,本文を熟読すればさらに詳しい情報が得られるようになっている。

 今回改訂された本書があれば,イレウスチューブを用いたイレウスの基本的な治療法から最新の知見まですべてを知ることができる。経験の浅い人が,親切に教えてくれる先輩医師がいない場面に遭遇しても,治療の基本と最先端の治療法を理解し,直ちに診療に役立てられることは間違いない。そして,随所の“Tea Time”などのコラムには著者の所感やOne Point Adviceを散りばめて読者を飽きさせない配慮がなされている。その内容は著者の人柄が滲み出た一服の清涼剤となって味わい深い。

 実地臨床に役立つ優れたテキストとして,ぜひ手元に置いておきたい一冊である。
優れた臨床医による,患者さん本位のノウハウを分かりやすく図解
書評者: 神山 俊哉 (北大大学院准教授・消化器外科・一般外科学)
 旧北海道大学医学部第一外科講座,現北海道大学大学院消化器外科・一般外科学講座の1年先輩である上泉洋先生により『イレウスチューブ-基本と操作テクニック』の第2版が出版されました。内容は,本文は第1章から第18章におよび,途中にTeaTimeとして上泉先生の豊富な臨床経験によるエピソードや,研修医制度への意見なども述べられています。

 上泉先生は,教室に入局後,岩見沢市立総合病院をはじめとして北海道内の基幹病院で活躍され,その臨床医としての能力は非常に高く評価されています。この著書はその優れた臨床医としての経験から生まれた多くのノウハウを盛り込んだ一冊です。

 「先導子バルーン型イレウスチューブの開発の経緯・使用経験」の章では,初心者の医師が最初につまずく,胃内でのとぐろ,たわみを解消するための工夫を,図示しながら分かりやすく解説しています。この章に引き続く,「X線透視下挿入法の実際」では,鼻腔からの挿入法,ガイドワイヤーの操作法,先端がKerckring皺襞などに引っ掛かった場合のトラブルシューティングが図解されています。これらのことは,日常,イレウス管を挿入する際に,困っていた点ではありますが,実際にはこのような点は,術者自身がイレウス管を挿入する際に,失敗を繰り返しながら身につけ感覚的にしか理解していなかった点です。今回,こうして図解と文章で解説していただくと,そんなに多くの経験を必要とせず,研修医でも,理論的にそのコツを理解でき,苦労することなく挿入できるようになると思います。特にこれらの解説が,単にテクニックに終わらず,常に患者さん本位で,その苦痛を少なくすることを視点にして書かれている点が優れています。

 今回の第2版では,経鼻内視鏡下での挿入法が詳細に記載されています。最近では,経鼻内視鏡が行われる施設が多くなってきていることから,この方法を応用できるようになれば,患者さんへの苦痛軽減だけでなく,医師にとっても,挿入時のイライラの解消となることは間違いなさそうです。

 イレウスチューブは,欧米ではあまり評価されていないのが現状ですが,実際の診療では,イレウス管での減圧により,開腹手術を受けずに済んだ症例も多く経験してきています。この書で学んだことを生かして,イレウスチューブが広く臨床の場で使用されるようになり,いずれはインターナショナルにも受け入れられることを祈っております。

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