マタニティ診断ガイドブック　第3版

第3版の序

　本書第2版が発行されてから2年半が経過しました．この間，看護診断に関連した大きなトピックスは，まず，保健師助産師看護師法に基づく看護師の国家試験出題基準の看護学に関する項目の中に看護診断が明示されたことが挙げられます．看護師の基礎教育における看護診断の必要性が公的に認められたことになります．更に，平成22年からの改正カリキュラムでは，教育内容の充実とともに学生の看護実践能力の強化がポイントとなっています．実践能力には，看護職の立場からの診断力（情報の分析・判断）と看護実践に必要な技術力（援助・支援・指導・教育・相談）が含まれます．専門職（プロフェッション）としては当然のことですが，改めてその強化を示されたことで，看護診断の重要性に対する認識が深まっていると受け止めることができます．
　しかしながら，疾病や障害をもつ対象者に用いられる看護診断（実在型）に関しては，「NANDA-I看護診断　定義と分類」をはじめとして多くの書籍に示されていますが，母性看護領域や助産で用いられる看護診断は，対象の特性から看護診断のタイプはウエルネス型であり，実在型看護診断に比し活用できる診断をまとめている書籍は少なく，本書が唯一といっても過言ではありません．
　今回の改訂にあたっては研究会に若手メンバーを加え，また，実習指導時の学生からの質問や学会のワークショップ参加者のご意見を踏まえて，ウエルネス型看護診断の構成要素である診断名・定義・診断指標について，念入りに検討いたしました．かなり，活用しやすいように整えたつもりですが，読者の皆さま，ご活用いただいた皆さまのご意見をもとに，さらなる精選に努めたいと存じます．忌憚のないご意見・ご感想をお寄せくださいますようお願い申し上げます．
　なお，本書で開発した診断をもとに，NANDAインターナショナルに下記の診断を提案しましたところ，診断開発委員会の審議を経た後，理事会の承認が得られ，日本発の初めての看護診断となり掲示されました．2009年7月1日発行の「NANDA-I看護診断　定義と分類 2009-2011」（医学書院）に掲載されています．

＊出産育児行動準備促進状態　Readiness for Enhanced Childbearing Process
＊パートナーシップ促進準備状態　Readiness for Enhanced Relationship

　2010年1月吉日
　日本助産診断・実践研究会
　代表　青木康子

妊娠期のマタニティ診断
●妊娠期の経過診断（GP）　5類型と22の診断名
　1．妊娠の確定
　2．妊娠時期・分娩予定日
　3．母体の状態
　4．胎児の状態
　5．胎児付属物の状態
●妊娠期の健康生活診断（GH）　4類型と42の診断名
　1．基本的生活行動
　2．精神・心理的生活行動
　3．社会的生活行動
　4．出産育児行動

分娩期のマタニティ診断
●分娩期の経過診断（LP）　6類型と32の診断名
　1．分娩開始
　2．分娩時期
　3．母体の状態
　4．胎児の状態
　5．胎児付属物の状態
　6．分娩予測
●分娩期の健康生活診断（LH）　4類型と26の診断名
　1．基本的生活行動
　2．精神・心理的生活行動
　3．社会的生活行動
　4．出産育児行動

産褥期のマタニティ診断
●産褥期の経過診断（PP）　2類型と10の診断名
　1．産褥日数
　2．母体の状態
●産褥期の健康生活診断（PH）　4類型と38の診断名
　1．基本的生活行動
　2．精神・心理的生活行動
　3．社会的生活行動
　4．出産育児行動

新生児期のマタニティ診断
●新生児期の経過診断（NP）　3類型と16の診断名
　1．出生直後の状態
　2．日齢
　3．新生児の状態
●新生児期の健康生活診断（NH）　2類型と12の診断名
　1．養護
　2．環境