言語聴覚障害学概論

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ことばはコミュニケーションの道具であるとともに、私たちの思考・記憶などに深く関わり、人間のアイデンティティにも密接に関わる。病気や発達上の問題でことばが損なわれた方に、専門的に対応し機能回復や獲得を図り、コミュニケーション、認知、嚥下の側面から支援するのが言語聴覚療法である。初学者のために、第一線の臨床家、研究家が総力をかけて作り上げた教科書。
*「標準言語聴覚障害学」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ 標準言語聴覚障害学
シリーズ監修 藤田 郁代
編集 藤田 郁代
発行 2010年03月判型:B5頁:320
ISBN 978-4-260-00658-3
定価 5,500円 (本体5,000円+税)
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 ことばは,コミュニケーションの道具としての働きをするとともに,私たちが思考し,記憶し,世界を認識することに深くかかわっている.このように,人間のアイデンティティと密接に関係することばが,病気や発達上の問題などによって損なわれた場合,多彩な言語聴覚障害が生じる.言語聴覚療法では,このような障害に専門的に対応して機能の回復や獲得をはかり,コミュニケーション,認知,嚥下の側面から言語聴覚障害がある人々のQOLを支援する.
 これまで,言語聴覚障害に関する書物としては,失語症,聴覚障害,言語発達障害といった各種の障害を個別に取り立てて解説したものが多く,言語聴覚障害学の成り立ちと基本となる理論・技法を総体的に解説した概論書は意外と少なかった.その原因の1つは,本分野は20世紀初頭から隆盛してきた新しい分野であり,わが国ではまだその歴史が50年に満たず,学問体系の骨格がみえてくるのに時間を要したからであろう.
 本書は,言語聴覚障害学の本格的な概論書であり,現時点で標準的と考えられる基本事項がすべて網羅されている.執筆者には草創期から本分野をリードしてこられた先生がたを始め,現在,臨床・研究の第一線で活躍されている先生がたに加わっていただいた.まさに,本書は本分野の総力をあげて出版されたといっても過言ではない.
 言語聴覚障害学(Speech-Language Pathology and Audiology)は,健常な言語・コミュニケーション過程および嚥下機能の解明を基盤とし,各種言語聴覚障害の病態と発生メカニズム,評価・診断・治療法などを科学的に究明する学問分野である.分野名に「障害学」という語が含まれているが,本分野は言語聴覚障害およびその専門的対応についての理論や技法を探求するにとどまらず,基礎となる理論,すなわち健常なコミュニケーション・認知過程,嚥下機能の解明も目指しており,この意味においては「言語聴覚学」と呼ぶのがより適切であるかもしれない.
 本書を編集するにあたっては,まず言語聴覚障害学の成り立ちについて説明し,その体系をできるだけ浮き彫りにするよう努めた.よって,内容は学問領域とその歴史,言語とコミュニケーションに関する基礎理論,言語聴覚療法の基本概念,各種言語聴覚障害の病態と評価・治療法,研究法までが体系的に著されている.本書では,わが国の言語聴覚障害学領域の歴史が相当数のページを割いて解説されており,このように詳しい歴史の記述はこれまでに例がない.1つの分野が確立するには,それに至る歴史があり,歴史を知ることは新しい知と技の創造につながる.歴史の章は,すべての読者にじっくりと読んでいただきたい内容となっている.
 本書は,次のような読者を想定している.まず,言語聴覚士を志す学生であり,初めて本分野に興味をもったかたがたが理解しやすいように,要点を押さえたわかりやすい内容となっている.次には,言語聴覚士国家試験に臨む学生であり,本分野の知識のエッセンスが網羅されているので,受験対策に活用できるであろう.さらに,関連職種および近接領域の学生や研究者にとっては,言語聴覚障害およびその専門的対応への理解が深まるものと考えられる.
 最後に,言語聴覚臨床への科学的な眼差しと,熱い思いをもってご執筆いただいた先生がた並びに本書の刊行にご尽力いただいた医学書院編集部のかたがたに深謝申しあげる.

 2010年2月
 編集
 藤田郁代

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第1章 言語聴覚障害学領域
第2章 言語とコミュニケーション
 1 言語とコミュニケーション
 2 言語音と産出機構
 3 言語と脳
 4 聞こえと聴覚機構
第3章 言語聴覚障害の種類
第4章 話しことばの障害
 1 音声障害
 2 構音障害
 3 吃音
第5章 言語機能の障害
 1 言語発達障害
 2 失語症
第6章 高次脳機能障害
第7章 聴覚障害
第8章 摂食・嚥下障害
第9章 言語聴覚障害への専門的対応
 1 一般原則
 2 評価・診断
 3 訓練・指導・援助
 4 臨床記録・報告書作成
 5 言語聴覚療法の提供システム
第10章 言語聴覚障害学領域がたどってきた道
 1 世界の流れ
 2 わが国における発展
 3 歴史のトピックス
第11章 言語聴覚士の職務
 1 職業倫理と倫理綱領
 2 リスクマネジメント
 3 臨床業務の進め方
 4 関連職種間連携
 5 言語聴覚療法の法的基盤
第12章 言語聴覚障害学研究法

付録
 1.言語聴覚療法で使用する主な書式
 2.言語聴覚士法(抄)

参考図書
索引

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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