学生のための疾病論
人間が病気になるということ

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看護婦(士)国家試験を基準に,あらゆる系統から47の疾患を厳選。実際に病気に罹った“人”のエピソードを導入部として,人間が病気になるメカニズムをわかりやすいイラストと文章で解説したサブテキスト。2色刷のイラストは,病気に罹った臓器の変化を際立たせ,大変わかりやすい。病気のなりたちを学ぼうとする学生にとって必携の1冊。
井上 泰
発行 2001年07月判型:B5頁:240
ISBN 978-4-260-33145-6
定価 2,860円 (本体2,600円+税)
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□血液疾患 
□循環器疾患 
□呼吸器疾患 
□消化器疾患 
□泌尿器疾患 
□内分泌・代謝疾患 
□中枢神経疾患 
□膠原病・自己免疫疾患

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妙味あふれる小説仕立てで疾患の病態像に迫る
書評者: 永田 文子 (静岡県立大・看護学部)
 本書は,あらゆる器官系統から選んだ47の疾患を取りあげた,いわゆる病態生理の書である。それぞれの疾患につき,まず患者の「病態像」を描き,そこから疾患の説明へとつなぐ。さらに踏み込んだ知識について,別途の項目立てで展開している。各疾患の末尾には,「~病の臨床像」としてその疾患の特徴を,さらに知識確認問題として,関連する看護婦(士)国家試験の過去問題を掲載している。

◆活写された病気のイメージ

 特筆すべきは,この「病態像」が小説仕立てとなっており,患者の様子を実によく描いていることである。一般に病態生理の書の短所として,臨床所見や検査データ,診断,治療,予後を無味乾燥に説明する傾向があり,初学者にはなかなか病気のイメージがつかめないことがあげられよう。それに対し本書では,例えばバセドウ病患者の項目を見ると,次のようなストーリーから始まる。
 「池田さんは,30歳の美容師。最近は,ちょっとしたことでもなぜかイライラしやすい。元来,陽気で些細なことにこだわらない性格なので,イライラしやすい自分を持て余している」。そして,仕事中に震えが起こり客に怪訝そうにみられるシーンから,近所のクリニックを受診するシーンへと続く。そのシーンを表す挿し絵風のイラストがストーリーを引き立てていて,これもまた妙味あふれるものである。
 学生に臨床実習の感想を聞くと,「講義で学んだ時点ではよくわからなかったが,実際に病気を持った患者さんに接するとその病気のことがよくわかった」とよく言われる。なるほど,病気は人間がかかえる1つの状態であり,身をもって学ぶことはなによりも吸収されやすい方法なのであろう。本書のサブタイトル「人間が病気になるということ」は,人間が生活していく上での側面である「病気」を実感してもらいたい,という著者からのメッセージなのかもしれない。
 看護を教える上で病気を熟知していることは,もちろん大前提である。しかし,病気だけをみるのではなく,生活している人の一部分としての病気を考えなければならないということを,私は本書を通じて再確認させられた。初学者にはもちろん,一通り学んだ人にも原点に返って読んでほしい書である。

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