市場原理に揺れるアメリカの医療
もっと見る
『週刊医学界新聞』に好評の連載が一冊の本になった。マサチューセッツ総合病院に勤務する筆者が、豊富な情報と交友関係、自らの経験をもとに、市場原理による米国のマネージド・ケアの仕組みを紹介、その光と影を伝える。わが国のこれからの医療の方向を示唆するとともに、医療者はいかに行動すべきかを考えさせる好著。
著 | 李 啓充 |
---|---|
発行 | 1998年10月判型:A5頁:212 |
ISBN | 978-4-260-13846-8 |
定価 | 2,420円 (本体2,200円+税) |
- 販売終了
- 電子版を購入( 医書.jp )
更新情報
-
更新情報はありません。
お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。
- 目次
- 書評
目次
開く
I 市場の論理が医療を変える
II 医療を決定するのは誰か
III 市場原理から排除された人々への医療の保証-公的医療保険制度をめぐって
IV 急成長する医療ビジネス-悪徳業者が医療を喰う
V 営利追及医療に対する反抗
II 医療を決定するのは誰か
III 市場原理から排除された人々への医療の保証-公的医療保険制度をめぐって
IV 急成長する医療ビジネス-悪徳業者が医療を喰う
V 営利追及医療に対する反抗
書評
開く
改革の波が襲いかかる時 われわれは何をすべきか
書評者: 黒川 清 (東海大医学部長)
◆待望の単行本化
『市場原理に揺れるアメリカの医療』がついに1冊の本として出版された。「ついに」と私が言うのは,実は同名の連載が1996年から医学書院発行の「週刊医学界新聞」紙上で始まったときから大変面白く,また,その内容の正確さに感心して毎回興味深く読んでいたからである。しかもこの連載はまさにアメリカの医療の改革における一大変革期,いわゆる「マネージド・ケア」の導入から,それに対して大学あるいは病院が急速に対応を行なってきた時期に始まり,激動する医療事情を追っている。
著者の李先生はハーバード大学で研修・研鑽を積まれ,現在助教授としてご活躍の方であるが,このアメリカの医療をめぐる多くの経済的な動きやビジネスの動き,それに対する医療現場でのさまざまな問題,社会的な問題,さらに患者と医者との関係,病院との関係などについての多くの問題点や苦悩を,きわめて的確にしかも臨場感溢れるタッチで書いている。私はその都度コピーをとっていたが,出版元あるいは著者にこれは必ずいつか1冊の本として出版してもらおうと手紙を書こうと思っていたぐらいであり,今日,いよいよ刊行されたことは大歓迎である。しかも各章間に挿入された番外編には,著者のいるボストン周辺でのいろいろな医療に関する話題,例えば「ある癌患者の手記」や「ダナ・ファーバー事件」「スター選手の死」などがきわめて興味深く書かれている。日本での医療現場の人にはなかなかわからない,そして理解できないこともあるかもしれないが,私のように長年アメリカの現場にいたものにとっては誠に身にしみるような筆の進め方であり,面白い読み物になっている。
◆新しい医療のあり方を考えさせる
この本の内容が素晴らしく,時宜にかなったものである理由の1つは,いよいよ日本でも医療制度の改革が叫ばれ,行政も与党も日本医師会も改革案を示していることに表われている。急速に悪化する日本の経済状況,急速に高齢化してくる社会と医療費の増大などから昭和36年以来の国民皆保険はいよいよ行き詰まり,大きな改革を迫られている。皆さんも毎日の診療あるいは教育の現場でも,これからは従来のような教育あるいは研修から全く異なる効率のよい,しかも質の良い医療を提供しなくてはならず,これらを考える上で常に「経済」を考えなければいけないということが現実的になってきたからである。日本のいろいろなシステムは異なる文化的,歴史的背景があるにしても,世界の他の国と同じようにやはりアメリカの経験,システムを分析してそれを修正しながら取り入れてくるということが重要である。この点ではアメリカで急速に導入され,それなりの問題を含みながら現在,修正過程に入ってきているいわゆる「マネージド・ケア」が,いよいよ日本にも西暦2000年を目指して導入されつつある現在,李先生のこの本が出版されたことは誠にタイムリーであろう。われわれ医療に携わる者,また医学教育に携わる者,そして医学の研修,医療現場に携わる全ての人にとって大変参考になる面白い読み物といえる。
このような改革の波が襲いかかる時に,日本は何をするのかということがいつも問題になる。日本特有の文化,今までのシステムとかなり違うなどなどいろいろな理由を言いながら,なかなか変われないといっていることが多いこの頃ではないだろうか。これはなにも医療だけではなく,金融システムの問題,官僚の腐敗の問題,官民の癒着問題等にも表われている。医療の改革にしても,しなければならないけれど何もできないという悩みの根本は,実は「決断力」と「決心」と「変わりたくない」といういろいろなファクターによって,欲求不満こそ積み上がってくるものの,なかなか決断ができないという全ての分野での共通の問題として認識できるであろう。この連載は大変参考になる読み物であり,日常の研究や診療で恐らく多忙であろう著者がその合間にこれだけわれわれの参考になるものを書いてくれたことに感謝し,これからのさらなるご活躍を心から期待したい。
混乱下の医療を「生」の言葉で伝える
書評者: 日野原 重明 (聖路加国際病院名誉院長)
◆押し寄せるマネージドケアの波
本書は「週刊医学界新聞」の連載に加筆して出版されたものである。著者,李博士は医学研究と診療のメッカの1つ,マサチューセッツ総合病院で9年にわたる研究生活を送りつつ,そこで遭遇する急激なアメリカの医療の変貌について,わかりやすく分析的に,また冷静に批判された。
序文にもあるが,アメリカでは,HMO(健康維持機構)によるマネージドケアの波にすべての医療機関が洗いさらされ,それによってどのような問題が生じているのかを理解していないと,アメリカの映画を見てもニュースを見ても,その本質が理解できないほどである。本書では,保険会社の力が巨大となり,医療経済の原則による影響を十分に考え,それに対処していかないと存在し続けることすら困難なところまできた,米国の医療機関や教育・研究機関の状況が示されている。
マネージドケアの波が日本にも襲ってくるとすれば,今の大学病院や教育病院は,もはやそれぞれの大学または病院としては立ち往生し,あるいはアメリカにおけるがごとく,企業家が大学や病院のあり方を規制するようになるかもしれないのである。
本書は,マネージドケアとは何か,HMOとは何かを説明し,それが医療現場にどのような影響を与えたのかを示す。
◆看護婦の役割・質も変容していく
まず,第1章「市場の論理が医療を変える」では,なぜマサチューセッツ総合病院とブリガム&ウィメンズ病院が,またベス・イスラエル病院とそのライバルであったディーコネス病院が合併したかなど,業界再編の動きが紹介され,その背後にあるマネージドケアの影響が示唆される。
HMOに代表されるマネージドケアの手法とは,従来型の出来高払いの医療保険とは異なり,不必要な医療行動がなされないように,保険会社が開業医や病院側が実施しようとする医療内容に制限を加えるものである。
本書によれば,その主な制限手法は以下の3つである。
(1)被保険者には主治医を決めさせ,その主治医には門番の役をさせることで,高額な医療が受けにくいようにさせる
(2)医師や病院が実施しようとする高価な診断や治療に対しては,保険会社が保険の適用・不適用を判断し,合意しなかったものについては保険料の支払いを行なわない
(3)医療費のかさむ患者のところには特別のナースを訪れさせて,手遅れになったために,高くつく救急医療を受けることのないようにするなど不必要な医療が行なわれないようにする
その結果,医師や病院へ支払う医療費が減少するため,被保険者側の払う保険料(毎月の掛け金)を安く設定できるようになった。その保険料の安さゆえに,今や多くの人々がHMOに加入するようになったのである。アメリカの大都会では大病院が合併し,入院患者のベッドを減じ,正規のナースの数を減らすことにより費用を削減し,マネージドケアに対応している。そのため看護のサービスの低下が問題とされている。
このような状況下では,各医療機関が個別にHMOと交渉すると,悪い条件を受け入れざるを得ない。そこで,いくつかの大病院が合併してHMO側と交渉し,有利な条件を引き出すなどの方略がとられるのである。本章には,このマネージドケアによる大きな変革の嵐が,診療現場にいったいどのような影響を与え,各医療機関はどのような戦略をもってこれを乗り切っているのかが紹介され,示唆に富んでいる。
第2章「医療を決定するのは誰か」では,経済的に生き残るために病院内で品質管理改善(QCI)が盛んに行なわれていることが報告されているとともに,保険金の値段によって受けられるサービスが大きく異なる米国医療の実態がさらけ出されている。
マネージドケアの第1目的は,医療コストの削減であるが,過剰の医療を防ぐために保険会社は利用度審査制を置き,高額医療には事前にHMO会社と医師とが電話で打ち合わせて医師が許可を得ること,その審査担当には保険会社に雇われたナースが審査担当者となるといった,ナースの新しい役が説明されている。また,ナースがマネージドケアにおける症例管理者となり,費用のかかる専門医療へのアクセスを少なくするという予防的措置も紹介されている。
第3章「市場原理から排除された人々への医療の保証」では,メディケアという65歳以上の老人に対して負担する連邦政府の公的医療保険制度,および州と連邦政府との共同負担による低所得者に対する政府の公的援助としてのメディケイドの特徴とこれらの制度をめぐる問題が紹介され,アメリカにおける公的医療保険の現況が明らかにされている。また,無保険者に対する医療の実態なども記され,興味深い。
第4章には,巨大病院・チェーンの非情ともいえる経営戦略が紹介されている。買収した病院では,真っ先にナースが人員制限の標的となり,そのような病院での看護の質の低下が問題にされていることなども指摘されている。
以上のごとき事業は医療の質を低下させる恐れがあるので全米の多くの州は営利企業による非営利病院の買収を規制する法律が次々と制定されつつある由である。
最後にマネージドケアに対して,患者を守る運動として「患者権利法」の制定の動きが報告されているが,これには多くの医療者の支持があるということでこちらの動きも目が離せない。
◆今後の医療のあり方を考えさせる
以上,本書はマネージドケアによりアメリカの医療がどのような変容を遂げたか,それにより病院はどのように集結し,または倒産したのか,非営利的病院チェーンの拡大などが,医療や研究教育その他にどのような影響を与えるのか,などにつき「生」の言葉で混乱下のアメリカ医療界の現状を伝えるものである。その内容はきわめて興味深く,これをもって21世紀日本の医療体系の方向性を示唆する情報が与えられる。看護婦・医師をはじめ多くの医療関係者が本書を読まれることを期待する。
書評者: 黒川 清 (東海大医学部長)
◆待望の単行本化
『市場原理に揺れるアメリカの医療』がついに1冊の本として出版された。「ついに」と私が言うのは,実は同名の連載が1996年から医学書院発行の「週刊医学界新聞」紙上で始まったときから大変面白く,また,その内容の正確さに感心して毎回興味深く読んでいたからである。しかもこの連載はまさにアメリカの医療の改革における一大変革期,いわゆる「マネージド・ケア」の導入から,それに対して大学あるいは病院が急速に対応を行なってきた時期に始まり,激動する医療事情を追っている。
著者の李先生はハーバード大学で研修・研鑽を積まれ,現在助教授としてご活躍の方であるが,このアメリカの医療をめぐる多くの経済的な動きやビジネスの動き,それに対する医療現場でのさまざまな問題,社会的な問題,さらに患者と医者との関係,病院との関係などについての多くの問題点や苦悩を,きわめて的確にしかも臨場感溢れるタッチで書いている。私はその都度コピーをとっていたが,出版元あるいは著者にこれは必ずいつか1冊の本として出版してもらおうと手紙を書こうと思っていたぐらいであり,今日,いよいよ刊行されたことは大歓迎である。しかも各章間に挿入された番外編には,著者のいるボストン周辺でのいろいろな医療に関する話題,例えば「ある癌患者の手記」や「ダナ・ファーバー事件」「スター選手の死」などがきわめて興味深く書かれている。日本での医療現場の人にはなかなかわからない,そして理解できないこともあるかもしれないが,私のように長年アメリカの現場にいたものにとっては誠に身にしみるような筆の進め方であり,面白い読み物になっている。
◆新しい医療のあり方を考えさせる
この本の内容が素晴らしく,時宜にかなったものである理由の1つは,いよいよ日本でも医療制度の改革が叫ばれ,行政も与党も日本医師会も改革案を示していることに表われている。急速に悪化する日本の経済状況,急速に高齢化してくる社会と医療費の増大などから昭和36年以来の国民皆保険はいよいよ行き詰まり,大きな改革を迫られている。皆さんも毎日の診療あるいは教育の現場でも,これからは従来のような教育あるいは研修から全く異なる効率のよい,しかも質の良い医療を提供しなくてはならず,これらを考える上で常に「経済」を考えなければいけないということが現実的になってきたからである。日本のいろいろなシステムは異なる文化的,歴史的背景があるにしても,世界の他の国と同じようにやはりアメリカの経験,システムを分析してそれを修正しながら取り入れてくるということが重要である。この点ではアメリカで急速に導入され,それなりの問題を含みながら現在,修正過程に入ってきているいわゆる「マネージド・ケア」が,いよいよ日本にも西暦2000年を目指して導入されつつある現在,李先生のこの本が出版されたことは誠にタイムリーであろう。われわれ医療に携わる者,また医学教育に携わる者,そして医学の研修,医療現場に携わる全ての人にとって大変参考になる面白い読み物といえる。
このような改革の波が襲いかかる時に,日本は何をするのかということがいつも問題になる。日本特有の文化,今までのシステムとかなり違うなどなどいろいろな理由を言いながら,なかなか変われないといっていることが多いこの頃ではないだろうか。これはなにも医療だけではなく,金融システムの問題,官僚の腐敗の問題,官民の癒着問題等にも表われている。医療の改革にしても,しなければならないけれど何もできないという悩みの根本は,実は「決断力」と「決心」と「変わりたくない」といういろいろなファクターによって,欲求不満こそ積み上がってくるものの,なかなか決断ができないという全ての分野での共通の問題として認識できるであろう。この連載は大変参考になる読み物であり,日常の研究や診療で恐らく多忙であろう著者がその合間にこれだけわれわれの参考になるものを書いてくれたことに感謝し,これからのさらなるご活躍を心から期待したい。
混乱下の医療を「生」の言葉で伝える
書評者: 日野原 重明 (聖路加国際病院名誉院長)
◆押し寄せるマネージドケアの波
本書は「週刊医学界新聞」の連載に加筆して出版されたものである。著者,李博士は医学研究と診療のメッカの1つ,マサチューセッツ総合病院で9年にわたる研究生活を送りつつ,そこで遭遇する急激なアメリカの医療の変貌について,わかりやすく分析的に,また冷静に批判された。
序文にもあるが,アメリカでは,HMO(健康維持機構)によるマネージドケアの波にすべての医療機関が洗いさらされ,それによってどのような問題が生じているのかを理解していないと,アメリカの映画を見てもニュースを見ても,その本質が理解できないほどである。本書では,保険会社の力が巨大となり,医療経済の原則による影響を十分に考え,それに対処していかないと存在し続けることすら困難なところまできた,米国の医療機関や教育・研究機関の状況が示されている。
マネージドケアの波が日本にも襲ってくるとすれば,今の大学病院や教育病院は,もはやそれぞれの大学または病院としては立ち往生し,あるいはアメリカにおけるがごとく,企業家が大学や病院のあり方を規制するようになるかもしれないのである。
本書は,マネージドケアとは何か,HMOとは何かを説明し,それが医療現場にどのような影響を与えたのかを示す。
◆看護婦の役割・質も変容していく
まず,第1章「市場の論理が医療を変える」では,なぜマサチューセッツ総合病院とブリガム&ウィメンズ病院が,またベス・イスラエル病院とそのライバルであったディーコネス病院が合併したかなど,業界再編の動きが紹介され,その背後にあるマネージドケアの影響が示唆される。
HMOに代表されるマネージドケアの手法とは,従来型の出来高払いの医療保険とは異なり,不必要な医療行動がなされないように,保険会社が開業医や病院側が実施しようとする医療内容に制限を加えるものである。
本書によれば,その主な制限手法は以下の3つである。
(1)被保険者には主治医を決めさせ,その主治医には門番の役をさせることで,高額な医療が受けにくいようにさせる
(2)医師や病院が実施しようとする高価な診断や治療に対しては,保険会社が保険の適用・不適用を判断し,合意しなかったものについては保険料の支払いを行なわない
(3)医療費のかさむ患者のところには特別のナースを訪れさせて,手遅れになったために,高くつく救急医療を受けることのないようにするなど不必要な医療が行なわれないようにする
その結果,医師や病院へ支払う医療費が減少するため,被保険者側の払う保険料(毎月の掛け金)を安く設定できるようになった。その保険料の安さゆえに,今や多くの人々がHMOに加入するようになったのである。アメリカの大都会では大病院が合併し,入院患者のベッドを減じ,正規のナースの数を減らすことにより費用を削減し,マネージドケアに対応している。そのため看護のサービスの低下が問題とされている。
このような状況下では,各医療機関が個別にHMOと交渉すると,悪い条件を受け入れざるを得ない。そこで,いくつかの大病院が合併してHMO側と交渉し,有利な条件を引き出すなどの方略がとられるのである。本章には,このマネージドケアによる大きな変革の嵐が,診療現場にいったいどのような影響を与え,各医療機関はどのような戦略をもってこれを乗り切っているのかが紹介され,示唆に富んでいる。
第2章「医療を決定するのは誰か」では,経済的に生き残るために病院内で品質管理改善(QCI)が盛んに行なわれていることが報告されているとともに,保険金の値段によって受けられるサービスが大きく異なる米国医療の実態がさらけ出されている。
マネージドケアの第1目的は,医療コストの削減であるが,過剰の医療を防ぐために保険会社は利用度審査制を置き,高額医療には事前にHMO会社と医師とが電話で打ち合わせて医師が許可を得ること,その審査担当には保険会社に雇われたナースが審査担当者となるといった,ナースの新しい役が説明されている。また,ナースがマネージドケアにおける症例管理者となり,費用のかかる専門医療へのアクセスを少なくするという予防的措置も紹介されている。
第3章「市場原理から排除された人々への医療の保証」では,メディケアという65歳以上の老人に対して負担する連邦政府の公的医療保険制度,および州と連邦政府との共同負担による低所得者に対する政府の公的援助としてのメディケイドの特徴とこれらの制度をめぐる問題が紹介され,アメリカにおける公的医療保険の現況が明らかにされている。また,無保険者に対する医療の実態なども記され,興味深い。
第4章には,巨大病院・チェーンの非情ともいえる経営戦略が紹介されている。買収した病院では,真っ先にナースが人員制限の標的となり,そのような病院での看護の質の低下が問題にされていることなども指摘されている。
以上のごとき事業は医療の質を低下させる恐れがあるので全米の多くの州は営利企業による非営利病院の買収を規制する法律が次々と制定されつつある由である。
最後にマネージドケアに対して,患者を守る運動として「患者権利法」の制定の動きが報告されているが,これには多くの医療者の支持があるということでこちらの動きも目が離せない。
◆今後の医療のあり方を考えさせる
以上,本書はマネージドケアによりアメリカの医療がどのような変容を遂げたか,それにより病院はどのように集結し,または倒産したのか,非営利的病院チェーンの拡大などが,医療や研究教育その他にどのような影響を与えるのか,などにつき「生」の言葉で混乱下のアメリカ医療界の現状を伝えるものである。その内容はきわめて興味深く,これをもって21世紀日本の医療体系の方向性を示唆する情報が与えられる。看護婦・医師をはじめ多くの医療関係者が本書を読まれることを期待する。
更新情報
-
更新情報はありません。
お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。