歴史でみる不整脈
古代から現代までの不整脈診療の歩みを、貴重な図譜とともに紐解く
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いつの時代にも、心臓の病と立ち向かい、身を捧げる医師がいた——自身の静脈から心臓に尿道カテーテルを刺し、新治療を探った男。百余年前、ひとりドイツに渡った日本人医師の歴史的大発見。小型かつ、航空機・ミサイル以上の精度と品質が求められる機器開発——そのすべての原動力は、患者と医療に対する使命と情熱。古代から現代までの不整脈診療の歩みを貴重な図譜とともに紐解く——さあ、あなたも循環器をめぐる歴史の旅へ!
原著 | Berndt Lüderitz |
---|---|
監訳 | 山科 章 |
訳 | 中尾 葉子 |
発行 | 2015年08月判型:A5頁:264 |
ISBN | 978-4-260-00716-0 |
定価 | 7,150円 (本体6,500円+税) |
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序文
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監訳者のことば(山科 章)/推薦の序(ダグラス P.ザイペス)/第3版序(ベルント・リューデリッツ)
こういった不整脈診療の進歩は,一朝一夕にもたらされるものでない.当然のことながら長い歴史の中で進歩したものである.大げさに言えば,過去に学び,現在に生かし,さらに未来につなぐ作業が繰り返されて今日に至ったのである.ちなみに,本書によれば不整脈の歴史は,古代エジプトの医学パピルスに残された心拍や脈拍の記述まで遡り,約3500年の歴史があることになる.
本書はそういった不整脈学の歴史とその進化の過程を記したものである.不整脈学の歴史的発展の基礎となった脈理論,不整脈の病因および症状,不整脈の診断,不整脈薬物治療の発展,16世紀から20世紀にかけての非薬物治療,にわけて,その歴史について当時の時代背景を含めて紹介している.
本書にはさまざまな人物が登場する.代表的な人物を紹介すると,古くはHippocrates(紀元前400年頃)や,血液循環について最初に記したWilliam Harvey(1578~1657年).19世紀以降では,Adams-Stokes症候群のAdams, R.とStokes, W.,心電計を発明したEinthoven, W.,房室ブロックのWenckebach, K. F.,プルキンエ線維のPurkinje, J. E.,ヒス束のHis jr., W.,房室結節のAschoff, L.とTawara, S.,ホルター心電計のHolter, N. J.,ICDのMirowski, M.,などなど聞き慣れた人物が次々と登場し,不整脈の歴史に名を残した先達の人物像と,業績を残した背景を知ることができる.その発展に貢献した先達の努力とひらめきには強い感銘を受ける.
「不整脈薬物治療の発展の歴史」の章では,抗不整脈薬がどのような経緯で開発され,臨床応用されてきたかもよくわかる.たとえば,循環器専門医なら使いこなせなければならないアミオダロンは,1946年に偶然にケーラというハーブの一種を使って実験していたところ,アンレップという冠拡張作用のある薬剤が見つかり,これが実験を手伝っていた助手の狭心症に著効したことから開発が始まった.アンレップの類似物質として,1961年にアミオダロンが合成され,狭心症治療薬として用いられていたが,服用した患者で不整脈が消失することが観察され,その後の臨床研究を経て抗不整脈薬として使われるようになったことが紹介されている.このように,全編にわたって循環器科医としての知的好奇心がそそられる内容である.
巻末には,電気生理学・ペーシング辞典,不整脈用語集が付録として載せてあり,初学者にも読みやすくなっている.
監訳者として,不整脈専門医はもちろんのこと,すべての循環器科医,循環器の歴史,医学史に興味のある人たちに,この奥深い書の一読を勧めたい.
なお,紙幅の関係で,本文内容と重複の多い巻末付録,「不整脈学人名事典・人物素描」については,割愛させていただいたことを最後におことわりする.
2015年6月
不整脈の歴史は,脈を分析した古代中国の医師にさかのぼる.それはガレンやハーヴェイの業績へと続き,ウォーラーやアイントーフェンによる心電図の先駆的な試みを経て受け継がれた.ウォルフ,パーキンソン,ホワイト,ロマノ,ワード,ジャーベル,ランゲ─ニールセン,デッセルテンネらによる研究も,不整脈の病因と症状の理解に貢献した.また,プルキンエ,ケント,バッハマン,キースとフラック,ヒス,田原らの解剖学的発見は,心臓電気生理学の基礎を築いた.本書はこれらの臨床医や研究者の主な経歴や功績を紹介している.アイントーフェン,フランク,ホルター,シェルラグらの業績は「不整脈の診断」の章に記され,治療に関する最終章では,不整脈治療薬や電気的治療の開発者にも触れている.
われわれの過去について深く掘り下げる時間のある者は少ない.しかし歴史はそれ自体が面白いばかりでなく,広く現代の臨床電気生理学の理解を整理することにも役立つ.また,本書に登場する人々が,重要な発見の多くを,非常に素朴で単純な手法で成し遂げたことを読みすすめるうちに,現代のわれわれは,もう少し謙虚でなければと感じることだろう.
リューデリッツは,興味深くかつ十分に裏づけされた心臓電気生理学の歴史をまとめあげたのである(参考文献一覧は貴重な資料である).
初版発行から6年,第2版の最新刷から3年が経ち,また版を新たにする時が来た.その理由は,これまでの2つの版が予想外の好反響であったこと,今も進行中の研究から得られた知見が増えてきたことである.『歴史でみる不整脈』は全面的に改訂を行った.本文に加えて大部分のイラストもよりよいものとなった.一貫性を保つため,今版はやはりオランダの巨匠ヤン・ステーン(1626~1679年)によるまた別の絵「恋わずらい」を表紙に飾った.
フツーラ出版社には,本書の刊行までに再び熱心に支えていただいた.この場を借りて,フツーラ社そして私の助手ヒルデガルト・シリングへ心からの感謝の意を表したいと思う.彼女なくしては本書を予定どおり出版することはできなかったであろう.
読者の皆様に,これまでの版と同様に本書に紹介する新たな「歴史」を喜んでいただければ幸いである.
ボンにて 2002年春
監訳者のことば
不整脈の診療は,この数十年で大きな変貌をとげた.特に不整脈の非薬物治療の進歩・普及は目覚ましく,突然死を予防できること,疾病を治癒せしめる可能性があること,医用工学の進歩によりもたらされる安全性の向上,技術の進歩などがあいまって大きな発展をとげた.薬物療法も進歩しており,1990年代に始まったEBMの概念の普及,CAST試験(Cardiac Arrhythmia Suppression Trial)に代表される臨床試験によるエビデンスの蓄積などにより,最適な治療法が選択できる時代になった.こういった不整脈診療の進歩は,一朝一夕にもたらされるものでない.当然のことながら長い歴史の中で進歩したものである.大げさに言えば,過去に学び,現在に生かし,さらに未来につなぐ作業が繰り返されて今日に至ったのである.ちなみに,本書によれば不整脈の歴史は,古代エジプトの医学パピルスに残された心拍や脈拍の記述まで遡り,約3500年の歴史があることになる.
本書はそういった不整脈学の歴史とその進化の過程を記したものである.不整脈学の歴史的発展の基礎となった脈理論,不整脈の病因および症状,不整脈の診断,不整脈薬物治療の発展,16世紀から20世紀にかけての非薬物治療,にわけて,その歴史について当時の時代背景を含めて紹介している.
本書にはさまざまな人物が登場する.代表的な人物を紹介すると,古くはHippocrates(紀元前400年頃)や,血液循環について最初に記したWilliam Harvey(1578~1657年).19世紀以降では,Adams-Stokes症候群のAdams, R.とStokes, W.,心電計を発明したEinthoven, W.,房室ブロックのWenckebach, K. F.,プルキンエ線維のPurkinje, J. E.,ヒス束のHis jr., W.,房室結節のAschoff, L.とTawara, S.,ホルター心電計のHolter, N. J.,ICDのMirowski, M.,などなど聞き慣れた人物が次々と登場し,不整脈の歴史に名を残した先達の人物像と,業績を残した背景を知ることができる.その発展に貢献した先達の努力とひらめきには強い感銘を受ける.
「不整脈薬物治療の発展の歴史」の章では,抗不整脈薬がどのような経緯で開発され,臨床応用されてきたかもよくわかる.たとえば,循環器専門医なら使いこなせなければならないアミオダロンは,1946年に偶然にケーラというハーブの一種を使って実験していたところ,アンレップという冠拡張作用のある薬剤が見つかり,これが実験を手伝っていた助手の狭心症に著効したことから開発が始まった.アンレップの類似物質として,1961年にアミオダロンが合成され,狭心症治療薬として用いられていたが,服用した患者で不整脈が消失することが観察され,その後の臨床研究を経て抗不整脈薬として使われるようになったことが紹介されている.このように,全編にわたって循環器科医としての知的好奇心がそそられる内容である.
巻末には,電気生理学・ペーシング辞典,不整脈用語集が付録として載せてあり,初学者にも読みやすくなっている.
監訳者として,不整脈専門医はもちろんのこと,すべての循環器科医,循環器の歴史,医学史に興味のある人たちに,この奥深い書の一読を勧めたい.
なお,紙幅の関係で,本文内容と重複の多い巻末付録,「不整脈学人名事典・人物素描」については,割愛させていただいたことを最後におことわりする.
2015年6月
山科 章
推薦の序
医学の歴史は魅力的なテーマである.まして自分の専門分野における偉人らに書物を通して触れることはさらに刺激的である.Aに始まるアダムスからZのツォールまで,ベルント・リューデリッツが電気生理学の歴史をみごとにまとめた本書のなかであまねく紹介されている.不整脈の歴史は,脈を分析した古代中国の医師にさかのぼる.それはガレンやハーヴェイの業績へと続き,ウォーラーやアイントーフェンによる心電図の先駆的な試みを経て受け継がれた.ウォルフ,パーキンソン,ホワイト,ロマノ,ワード,ジャーベル,ランゲ─ニールセン,デッセルテンネらによる研究も,不整脈の病因と症状の理解に貢献した.また,プルキンエ,ケント,バッハマン,キースとフラック,ヒス,田原らの解剖学的発見は,心臓電気生理学の基礎を築いた.本書はこれらの臨床医や研究者の主な経歴や功績を紹介している.アイントーフェン,フランク,ホルター,シェルラグらの業績は「不整脈の診断」の章に記され,治療に関する最終章では,不整脈治療薬や電気的治療の開発者にも触れている.
われわれの過去について深く掘り下げる時間のある者は少ない.しかし歴史はそれ自体が面白いばかりでなく,広く現代の臨床電気生理学の理解を整理することにも役立つ.また,本書に登場する人々が,重要な発見の多くを,非常に素朴で単純な手法で成し遂げたことを読みすすめるうちに,現代のわれわれは,もう少し謙虚でなければと感じることだろう.
リューデリッツは,興味深くかつ十分に裏づけされた心臓電気生理学の歴史をまとめあげたのである(参考文献一覧は貴重な資料である).
ダグラス P.ザイペス 医学博士
インディアナ大学医学部教授/クラナート心臓病研究所
第3版序インディアナ大学医学部教授/クラナート心臓病研究所
病気を治療する際,常に2つのことを考慮すべきである.それは,患者を助けること,そして少なくとも害になることはしないことである.医術には3つの要素がある.病気,患者,そして医師である.医師は医術のしもべであり,患者は医師の助けをうけ病気と戦わなければならない.
ヒポクラテス 伝染病Ⅰ,11
初版発行から6年,第2版の最新刷から3年が経ち,また版を新たにする時が来た.その理由は,これまでの2つの版が予想外の好反響であったこと,今も進行中の研究から得られた知見が増えてきたことである.『歴史でみる不整脈』は全面的に改訂を行った.本文に加えて大部分のイラストもよりよいものとなった.一貫性を保つため,今版はやはりオランダの巨匠ヤン・ステーン(1626~1679年)によるまた別の絵「恋わずらい」を表紙に飾った.
フツーラ出版社には,本書の刊行までに再び熱心に支えていただいた.この場を借りて,フツーラ社そして私の助手ヒルデガルト・シリングへ心からの感謝の意を表したいと思う.彼女なくしては本書を予定どおり出版することはできなかったであろう.
読者の皆様に,これまでの版と同様に本書に紹介する新たな「歴史」を喜んでいただければ幸いである.
ボンにて 2002年春
ベルント・リューデリッツ
目次
開く
脈理論:不整脈学の歴史的発展
古代中国の脈理論
扁鵲
王叔和
古代エジプトの脈理論
心拍と脈拍の関連性
古代ギリシャの脈理論
ヘロフィロスによる脈拍測定
古代後期の脈理論
ガレンの脈理論
アヴィケンナ
16~17世紀の脈理論
血液循環
脈拍計
17~18世紀の脈理論
極東地域における不整脈に対する治療と脈理論
ヴァレンティニの脈譜
19~20世紀の脈理論
最初のヒト心電図から四肢双極伝導へ
近代的不整脈診断の基盤となったウェンケバッハの研究
不整脈の病因および症状に関する歴史
心原性および神経性失神
徐脈と失神発作
心原性失神
スタニウスの結紮
房室ブロック
頻脈誘発性心筋症
発作性頻拍
ウォルフ・パーキンソン・ホワイト症候群
ラウン・ギャノン・レバイン症候群
ロマノ・ワード症候群
ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群
洞不全症候群
トルサードドポアン
心伝導系発見の歴史
プルキンエ線維
ヒス束
ケント・パラディノ束
房室結節
洞結節
バッハマン束
ジェイムス束
心室内伝導障害
不整脈の診断
非侵襲的手法
心臓カテーテル法
侵襲的電気生理学的研究
リエントリー
不整脈薬物治療の発展の歴史
強心配糖体
抗不整脈薬
カルシウムチャネル拮抗薬
16~20世紀にかけての電気的治療の歴史
植込み型ペースメーカ
オルソリズミックペースメーカ
重症心不全に対するペーシング戦略
近代電気生理学の進歩
心房細動の歴史
付録
文献
電気生理学・ペーシング辞典
不整脈用語集
著者紹介
事項索引
人名索引
Historical Pages
コス島のヒポクラテス(紀元前466年頃~377年頃)とヒポクラテスの誓い
心電図の95年
マルクス・ゲルベチウス(1658~1718年)
頻脈誘発性心筋症
ウォルフ・パーキンソン・ホワイト症候群
ポール・ダドリー・ホワイト(1886~1973年)
アグスティン・カステラノス
ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群
ロマノ・ワード症候群
トルサードドポアン
ジャン・エヴァンゲリスタ・プルキンエ(1787~1869年)
ヒト心臓の左心室
経食道ペーシング
ダーク・デューラー(1918~1984年)
ヘンリック・ジョアン・ユースト・ウェレンス
パラケルスス-医学界の厄介者
植込み型心ペースメーカの40年
ペースメーカ症候群
不整脈基質の人工的早期興奮のための多点ペーシングに関する初期の報告
心房細動と心房粗動に対するカテーテルアブレーション
房室結節-ヒス束のクライオ(凍結)アブレーション
房室副伝導路のクライオ(凍結)アブレーション
古代中国の脈理論
扁鵲
王叔和
古代エジプトの脈理論
心拍と脈拍の関連性
古代ギリシャの脈理論
ヘロフィロスによる脈拍測定
古代後期の脈理論
ガレンの脈理論
アヴィケンナ
16~17世紀の脈理論
血液循環
脈拍計
17~18世紀の脈理論
極東地域における不整脈に対する治療と脈理論
ヴァレンティニの脈譜
19~20世紀の脈理論
最初のヒト心電図から四肢双極伝導へ
近代的不整脈診断の基盤となったウェンケバッハの研究
不整脈の病因および症状に関する歴史
心原性および神経性失神
徐脈と失神発作
心原性失神
スタニウスの結紮
房室ブロック
頻脈誘発性心筋症
発作性頻拍
ウォルフ・パーキンソン・ホワイト症候群
ラウン・ギャノン・レバイン症候群
ロマノ・ワード症候群
ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群
洞不全症候群
トルサードドポアン
心伝導系発見の歴史
プルキンエ線維
ヒス束
ケント・パラディノ束
房室結節
洞結節
バッハマン束
ジェイムス束
心室内伝導障害
不整脈の診断
非侵襲的手法
心臓カテーテル法
侵襲的電気生理学的研究
リエントリー
不整脈薬物治療の発展の歴史
強心配糖体
抗不整脈薬
カルシウムチャネル拮抗薬
16~20世紀にかけての電気的治療の歴史
植込み型ペースメーカ
オルソリズミックペースメーカ
重症心不全に対するペーシング戦略
近代電気生理学の進歩
心房細動の歴史
付録
文献
電気生理学・ペーシング辞典
不整脈用語集
著者紹介
事項索引
人名索引
Historical Pages
コス島のヒポクラテス(紀元前466年頃~377年頃)とヒポクラテスの誓い
心電図の95年
マルクス・ゲルベチウス(1658~1718年)
頻脈誘発性心筋症
ウォルフ・パーキンソン・ホワイト症候群
ポール・ダドリー・ホワイト(1886~1973年)
アグスティン・カステラノス
ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群
ロマノ・ワード症候群
トルサードドポアン
ジャン・エヴァンゲリスタ・プルキンエ(1787~1869年)
ヒト心臓の左心室
経食道ペーシング
ダーク・デューラー(1918~1984年)
ヘンリック・ジョアン・ユースト・ウェレンス
パラケルスス-医学界の厄介者
植込み型心ペースメーカの40年
ペースメーカ症候群
不整脈基質の人工的早期興奮のための多点ペーシングに関する初期の報告
心房細動と心房粗動に対するカテーテルアブレーション
房室結節-ヒス束のクライオ(凍結)アブレーション
房室副伝導路のクライオ(凍結)アブレーション
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