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保健医療福祉のためのヘルスサービスリサーチ
エビデンスに基づくより良いサービスの実現のために

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わたしたちの医療は本当に届いているのか? ヘルスサービスにかかわるすべての職種のための一冊。保健医療介護から医療行政まで、臨床と政策をつなぐ最善の方法。医療政策と現場をデータでつなぐ!


*本書は『公衆衛生』87巻10号(2023年10月)特集「エビデンスに基づく公衆衛生とヘルスサービスリサーチ──保健医療介護サービスの振り返りと向上のためのデータ利活用」、ならびに88巻7号(2024年7月)特集「公衆衛生における行政とアカデミアの連携の在り方──海外の実例とわが国の課題」、また87巻3号(2023年3月)~10号(2023年10月)連載「保健行政のためのデータサイエンス」の3つを大幅に増補改訂し、新たに編纂したものです

シリーズ 公衆衛生ブックス
編集 田宮 菜奈子 / 杉山 雄大 / 岩上 将夫
発行 2026年11月判型:B5頁:336
ISBN 978-4-260-06705-8
定価 6,600円 (本体6,000円+税)

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  • 序文
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はじめに

 医療や介護、保健の分野に関わる中で、「今やっていることは役にたてているのかな」と感じたことがあると思います。
 目の前の一人一人には最善を尽くしているものの、それでもなお、必要な人に必要なサービスが届いていないという現実に、私自身も何度も直面してきました。
 筆者がヘルスサービスリサーチ(HSR)に出会ったきっかけは、医師として初めて担当した、リハビリテーションのゴールを迎え自宅退院されるはずの脳梗塞片麻痺の患者さんが、主治医である私の知らないうちにご家族の希望で近隣の高齢者用の病院(介護保険のない当時は介護ニーズの高齢者を多くの病院がリハビリテーションや介護への対応が不十分なまま受け入れていました)へ転院されたという経験です。病院の中でご本人やスタッフが頑張って取り組んだ医療・リハビリテーションが、退院後の生活に届かなかったのです。当時、介護は個人・家庭のものであり、医療から連続する公的なサポート体制はない時代でした。
 私たちは日々、医療や介護、保健サービスを提供し、またそれらを利用しています。しかし、それらのサービスが必要な人にどの程度届き、どのような結果をもたらしているのか、実践者として、当然振り返って知りたいところですが、実はあまり把握されていないのが現状です。時間に追われる個々の臨床従事者やサービス提供者は、このように自分の提供するサービスの位置付けが把握できないまま、時に矛盾やモヤモヤを感じつつも、実践を重ねざるを得ない状況にあります。
 そして、これは一人の力ではどうにもできないことを痛感しました。医療関連サービス全体を俯瞰し、その上で自分の医療を振り返りたい、そして私が経験したような、「医療が断絶し地域につながらない状況」を解決したいという思いから、研究の道へ進みました。しかし当時、日本ではこのような考え方の研究はほぼなく、米国に留学して初めてHSRに出会いました。
 医療は大きく進歩し、新しい治療法や技術が次々と生まれ、多くの命が救われています。しかし、その成果がすべての人に等しく、かつその後の生活に届いているわけではありません。地域による差、制度による制約、情報の格差など、さまざまな要因によって、医療や介護などのサービスにばらつきが生じています。
 そこに対峙するのがHSRです。
 新しい知識や技術を生み出すことは重要です。しかし、それらは社会の中で実際に使われ、必要な人に一定以上の質で届き、生活の中で機能してはじめて、その価値を持ちます。
 HSRは、この「届ける研究」を担う学問です。医療や介護などのサービスがどのように提供され、誰に届き、どのような結果をもたらしているのかを明らかにし、それをよりよくするための仕組みを考えます。
 本書は、このHSRの考え方を、できるだけ多くの方に届けたいという思いから企画されました。医療や保健、介護などの現場で働く方々、行政に携わる方々、そしてこれからこの分野を学ぼうとする方々に向けて、基本的な概念から具体的な事例までを体系的に整理しています。
 私自身、臨床、行政、研究という異なる立場を行き来する中で、研究と実践のあいだには大きな隔たりがあることを実感してきました。現場には課題があり、研究には方法があります。しかし、それらが十分につながっていないことが、しばしば問題を複雑にしています。
 本書が、その隔たりを少しでも埋める一助となり、現場の実践と研究がよりよく結び付くきっかけになればと願っています。
 医療や介護をよりよくしたいという思いは、多くの方が共有しているものです。その思いを、データと分析、そして制度へとつなげていくことが、これからの時代には求められています。
 本書を通じて、医療を「進める」だけでなく、「届ける」ための視点が広がり、それぞれの立場での実践につながることを心から願っています。

 田宮 菜奈子
 筑波大学 医学医療系 特任教授/同ヘルスサービス開発研究センター長

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はじめに

chapter1 保健医療サービスを良くしたいと思うあなたへ──ヘルスサービスリサーチへのいざない
 1 イントロダクション
 2 臨床医学とHSR
 3 自治体保健医療福祉行政とHSR
 4 政策とHSR
 5 HSRの基本概念──その定義と見方
 6 HSRの方法論──絵に描いた餅にしないために
 7 HSRにとっての疫学と統計
 8 HSRと臨床疫学の差異

chapter2 HSRの研究から政策へ
 1 医療レセプトを用いたHSR研究──臨床医学のケース
 2 医療レセプトを用いたHSR研究──リハビリテーションのケース
 3 HSRから政策・社会への展開──実際のケースから

chapter3 HSRで活用できるさまざまなデータ
 1 HSRにおいて日本で活用できる主な二次データとその特徴
 2 日本の医療レセプトの整備状況と活用事例──NDBの最新動向
 3 NDBオープンデータによる研究例
 4 地域医療構想の実現に向けた医療データの有効活用
 5 日本における介護福祉データの整備状況・活用方法と事例──医療介護の連結データの意義・民間での活用の可能性を含めて
 6 LIFE情報を用いた研究例
 7 要支援・介護高齢者におけるポリファーマシー──介護レセプトと医療レセプトの連結データからみえてきたもの
 8 在宅療養における医療と介護の連携──介護レセプトを用いた研究でみえてきたもの
 9 KDBシステムの概要と最近の動向
 10 高齢者の健康把握におけるKDBシステム帳票データの活用
 11 公的統計の活用の実態と可能性──国民生活基礎調査、中高年者縦断調査、21世紀出生児縦断調査、人口動態調査など
 12 現場行政における既存資料の活用──e-Stat、NDBオープンデータなど

chapter4 行政におけるHSRとそのデータ活用
 1 つくば市における筑波大学と協働したデータ活用の取り組み──ニーズ調査から在宅医療・介護連携推進事業との連動まで
 2 EBPMの推進と保健事業の立案・評価──行政データの活用方法と例
 3 地方行政におけるアカデミアとの連携の取り組み例1:東京都におけるリスクガバナンスとリスクコミュニケーション──東京iCDCによるリスクの共考と協働
 4 地方行政におけるアカデミアとの連携の取り組み例2:EBPM実現に向けた神奈川県との協働の成果と課題──県立大学と県・市町村との連携事例
 5 地域包括ケアシステムの実現に向けたHSR
 6 地域における循環器疾患予防対策とその評価としてのHSR
 7 保健師活動とHSR

chapter5 HSRにかかわる人材の活かし方、育て方、そのキャリアパス
 1 「中間人材」を生かしてデータサイエンスを保健活動に生かす
 2 保健所等行政職員が大学院で学び研究する現状と課題──そのハードルは何か
 3 行政における保健師の活動とHSR──八尾市健康まちづくり科学センターでの活動経験を踏まえて
 4 大学・アカデミアにおけるHSR人材教育

chapter6 HSRにおける行政とアカデミアの連携
 1 公衆衛生における行政とアカデミアの連携──現状と課題
 2 米国における行政とアカデミアの連携
 3 欧州連合諸国のEBPMにおける行政とアカデミアの連携
 4 英国の健康医療ケアのEBPMの現状──アカデミアと実務機関の連携

chapter7 HSRをより深く学びたい、仕事に役立てたいと思ったら
 1 日本のHSRの最近の動向
 2 欧米諸国におけるHSRの動向と日本への示唆
 3 米国におけるHSR人材育成とポスト
 4 海外の経緯に学ぶ保健医療介護データ利活用の推進
 5 日本のデータ構築の在り方──欧州との比較を通じて
 6 米国、欧州でHSRをより深く学びたいと思ったら
 7 日本国内でHSRをより深く学びたいと思ったら

おわりに

索引

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