内科救急 好手と悪手

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雑誌「medicina」で好評を博した増刊号「救急診療 好手と悪手」が待望の書籍化。救急外来で遭遇するさまざまな疾患の診療について、陥りがちなミスを「悪手」として提示し、適切な対応を「好手」として解説。書籍化にあたっては各項目を全面アップデートしたほか、産婦人科、小児科の章を追加し、救急外来でおさえておくべき主要な疾患を網羅した。

編集 坂本 壮
発行 2025年08月判型:B5頁:392
ISBN 978-4-260-06175-9
定価 6,270円 (本体5,700円+税)
  • 8月中旬発売予定

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 「世の中には“絶対”はないかもな でもダイジョウブ 俺ん中にあるから」
 (#60 ロケットロード, 『宇宙兄弟』 7巻, 講談社刊)

 救急医となって15年以上が経ちました.それでも,日々の救急外来診療において「不安がない」ことなど一度もありません.
 救急外来では,研修医をはじめ若手医師たちが奮闘し,悪戦苦闘しながら患者さんと向き合っています.そして,そんな彼らを指導する立場にある私たちもまた,日々悩み,揺れながら診療にあたっているのではないでしょうか.ともに切磋琢磨し,成長を見届けられることは喜びです.しかし一方で,患者数は減る気配を見せず,高齢者の割合は年々増加.いまや診断推論だけでなく,患者さんの背景を踏まえたマネジメントが求められ,一人ひとりにかかる時間も増し,現場の負担は大きくなる一方です.
 近年では,ChatGPTやOpenEvidenceといった強力なサポーターがスマートフォンの中に存在します.けれども,それらを活かすためには,そもそも必要な情報を患者さんから引き出す力が不可欠であり,そこを飛ばしては適切な診療にはつながりません.
 本書は,2021年に刊行されたmedicina増刊号「救急診療 好手と悪手」の内容を全面的にアップデートし,小児科や産婦人科などの領域も加えて,救急外来で把握しておくべき主要な疾患を網羅しました.各領域で頭に入れておきたい疾患のポイントや,見落としやすいピットフォールを,「好手」と「悪手」という形で端的にまとめています.
 「絶対大丈夫」とは,なかなか言えるものではありません.けれども,自らの対応に責任をもち,「自分としてはダイジョウブだった」と思える診療を積み重ねていくしかない.本書には,現場で日々全力で向き合い,“本気の失敗”を経て培われた,珠玉のエッセンスが詰まっています.
 冒頭の言葉は,私が愛してやまない『宇宙兄弟』のなかで,兄に先立って宇宙へ旅立った南波日々人のセリフです.
 「俺ん中にあるから」.
 この本を読み終えたとき,あなたがそう言えるようになっていることを,心から願っています.

 2025年7月
 坂本 壮

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中枢神経系
くも膜下出血──いつもと違う頭痛を見逃すな!
脳梗塞──脳梗塞mimicsを見逃さない!
一過性脳虚血発作──アンダートリアージを防ぎ,適切な一手を!
可逆性脳血管攣縮症候群──時間軸を味方につけた診療を!
静脈洞血栓症,椎骨・内頸動脈解離──疑って,みつけ出せ!
髄膜炎,脳炎──腰椎穿刺をためらうな!
軽症頭部外傷──頭部CT を撮影して安心するな!
慢性硬膜下血腫──頻度は高いがつかみどころがなく,意外に診断が難しい疾患
てんかん──発作時は,迅速な鎮火と丁寧な現場検証を行う
Guillain-Barré症候群──GBSを否定する際はご用心!
片頭痛──らしさを正しく見積もり,トリプタンの適正使用を!

循環器系
急性冠症候群──鑑別診断を考えながら,予後を改善する治療を優先する
急性大動脈解離──胸痛がないから否定的? 非典型例を見逃すな!
肺血栓塞栓症──ガイドラインに則り,適切に診断しよう
失神──心原性失神のリスク層別化を怠るな!
心房細動,上室性頻拍──救急外来から患者に寄り添う不整脈治療を始めよう
急性心不全──適切に初期評価,迅速に治療開始,タイムリミットは1時間!
腹部大動脈瘤切迫破裂──困ったときの三日月探し
急性下肢虚血──5Pのみに固執しないで早期診断,早期治療を!

呼吸器系
市中肺炎──過不足ない感染対策を実施しつつ,適切な検査で診断精度を高めよう
誤嚥性肺臓炎,誤嚥性肺炎──誤嚥性肺炎に絶食,抗菌薬だけで終わらせない!
気管支喘息──アクションプランで救急外来受診を減らそう!
気胸──「気胸→ドレナージチューブ挿入」の手順にもピットフォールが…
COPD増悪──心不全がまぎれているかもしれない!
急性喉頭蓋炎──喉を激しく痛がっていたら非常事態!

消化器系
消化管出血──全身管理とともに,適切なタイミングでの内視鏡治療を!
麻痺性イレウス,腸閉塞──日暮れまで待つな! 朝まで待つな!
憩室炎,憩室出血──軽症に適切に対応し,隠れている重症を見逃さない
虚血性腸炎──絶対に原因検索を忘れてはいけない!
虫垂炎──救急で見逃さないための戦略
感染性腸炎──「急性胃腸炎」の診断は誤診の王様
非閉塞性腸管虚血(NOMI),上腸間膜動脈(SMA)閉塞──腸間膜虚血の病態把握と即座の画像検査を!
急性胆囊炎──速やかな重症度判定と外科医へのコンサルトが要!
急性胆管炎──胆道ドレナージに関するコンサルトのタイミングを逃すな!
急性膵炎──初期輸液……急ぐべからず!
腹膜炎(消化管穿孔)──原因の見極めを怠るな!

内分泌系
低血糖──血糖補正だけで終わりじゃない!
高血糖緊急症──インスリン投与の前に必ず輸液! K check!
甲状腺緊急症──稀な病態に適切に対応し,専門医に引き継げるように!
副腎不全──原因不明のショックを診たら積極的に疑う!

腎・泌尿器系
急性腎障害──救急外来で「疑って,みつけて,初期治療!」
尿管結石──「痛みの王様」を診断から予防まで正しくマネジメント!
高K血症──疑うサインを知り,迅速に対応しよう!
低K血症──放っておくと大惨事! 補正のタイミングを見逃すな!
低Na血症──生理食塩水を投与する意味,理解していますか?
高Ca血症──探せ,みつけろ,高Ca!
横紋筋融解症──腎障害を予防せよ!
尿閉──対症療法で終わらせない!

感染症
敗血症──qSOFAよりも大切なこと
尿路感染症──診断・治療には総合力が試される!
皮膚軟部組織感染症──皮膚所見だけでは診断できない!?
急性中耳炎──適切な診断と抗菌薬選択をせよ!
急性副鼻腔炎──適切な抗菌薬を選択せよ!
HIV感染症,伝染性単核球症──性交渉歴と先を見据えた診療を大切に!
結核──結核は否定がとても難しい疾患…….正しく疑い,否定は慎重に行う
インフルエンザ──「疑ったら,全員に迅速抗原検査をして抗インフルエンザ薬…」はダメ!
COVID-19──感染防御の手を緩めるな!
破傷風──誤認・誤解されやすいvaccine-preventable disease

精神科
パニック症──適切に診断し,精神科に紹介するタイミングを逃さない!
うつ病──適切に診断・治療し,精神科と連携しよう!

産婦人科
異所性妊娠──妊娠の可能性だけではなく,最終月経も確認しよう!
切迫早産──妊婦のレッドフラッグとリスク因子を確認しよう
配偶者暴力(DV)──救急外来でDV を見逃さない
PID(性感染症)──疑ったら性交歴と過去の性感染症治療歴を確認
子宮留膿腫──高齢者の帯下異常や不明熱ではエコーで子宮を確認!
卵巣囊腫茎捻転──経腹エコーで腫瘤を探そう
妊婦のA群溶血性連鎖球菌感染症──接触歴・職業・バイタルを必ず確認する

小児科
熱性けいれん──コモンな疾患だからこそ基本を大切に
クループ症候群──小児の吸気性喘鳴,犬吠様咳嗽は必ずしもクループ症候群ではない!
腸重積──消化器症状が軽度,またはなかったとしても腸重積は除外しない!
川崎病──乳幼児の発熱は川崎病を鑑別に挙げて,川崎病の早期診断・早期治療に努めよう!
精巣捻転──思春期男子の腹痛は常に陰囊の診察も行おう!
小児の頭部打撲──頭部打撲はCT 検査をして帰宅! ではありません
肘内障──肘周囲の骨折ではないことを必ず確認しよう!
虐待──どんなときも疑わずにはみつからない,些細な違和感を見逃さない!
周期性嘔吐──繰り返す嘔吐,その原因は本当に胃腸炎?

その他
アナフィラキシー──アドレナリンのタイミングを逃すな!
急性アルコール中毒,アルコール関連疾患──100人に1人の重症患者を見逃さない!
一酸化炭素中毒──意外と知らない診断プロセスと治療法を見直そう
熱中症──疾患の鑑別よりも救急対応を優先せよ! 重症例には深部体温測定とActive Coolingを
怠るな!
偶発性低体温症──患者を動かすときは愛護的に,そして先手を打つ!
異物誤飲──いつ,何を誤飲したかが重要!
蕁麻疹──点滴1本で帰していませんか?
急性薬物中毒──対応はABCDE!
過換気症候群──ペーパーバッグ法での低酸素に注意!

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