「考える」外傷整形外科!

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外傷整形外科治療の第一人者による、治療の理論や原則を系統的に学ぶためのテキスト。エキスパートも悩んで熟考した諸問題を、豊富な経験と膨大なエビデンス、筆者が積み重ねた症例検討会の議論をベースにQ&A形式で解説。「筆者の推奨する治療方針」では現時点での治療の最適解を提示し、「ちょっと深堀り」ではいまだ解決しないトピックスを独自の視点で読み解く。外傷にかかわるすべての整形外科医の羅針盤となる1冊。

土田 芳彦
発行 2025年05月判型:B5頁:464
ISBN 978-4-260-06024-0
定価 11,000円 (本体10,000円+税)

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「外傷整形外科」の諸問題を熟考し議論しよう!
 筆者が大学病院の救急部で外傷整形外科治療に本格的に取り組むようになったのは,医師になって10年目の頃でした.その頃は症例に遭遇するたびに論文やテキストで付け焼き刃的に学習して治療にあたっていました.それから数年が経過し,はじめて「AO Traumaコース」を受講したのですが,外傷整形外科治療の理論や原則を系統的に学ぶことで診断と治療の深みが増すことを実感しました.

 その後,いまだ不十分であった外傷整形外科治療の場を構築するために,大学病院から民間病院に場所を移して「整形外科外傷センター」を立ち上げました.そこでの治療経験は,まさに「外傷整形外科」の諸問題を熟考する毎日でした.連日開催した症例検討会に,筆者は多くの時間を費やし,他の医師とたくさんの意見を交換しました.そこでの議論を通じて,知識や理論は理解するだけではなく,いかに実症例に適用させるかが重要なのだと感じました.
 さらに,インターネットを活用した情報交換が盛んになってからは,他施設の医師と議論する機会が増え,しかも会話でのやり取りに加えて文章でも議論するようになりました.この数年間で蓄積された文章は膨大な量になり,それが本書の「土台」となりました.

「議論する外傷整形外科」の羅針盤をつくる
 筆者は,外傷整形外科の治療は個別性が高く,オーダーメイドのアプローチが必要だと考えており,それゆえテキストや論文を実際の状況に合わせて「再考」することが求められると思っています.そのためには「熟考して議論する」ことが外傷整形外科において必須であり,治療に携わる医師はこのことを認識しなければなりません.
 しかし,考える機会はあってもきちんとした「議論の機会」はあまりにも少ないのが現実です.学会のシンポジウムや各種外傷コースに参加しても,そこで深い議論が行われることはほとんどありません.しかも,日本人の「性分」とでも言うべきでしょうか,われわれは突っ込んだ議論を避けがちであり,表面的な質疑応答にとどまることが非常に多いのです.

 このような現状は変えなければなりません.そのため筆者は,これまで積極的に議論の場を設定して,その中で深い洞察が得られるように努めてきました.しかし,残念ながら「議論の重要性」は十分には伝わっていません.これは危険なことです.
 これから外傷整形外科の専門医や指導医になっていく医師は,「外傷整形外科治療」に潜む多くのテーマを熟考し,その本質に迫るために,自ら議論の場を構築していかなければなりません.

 本書は,「議論する外傷整形外科」の羅針盤とすべく執筆しました.本書をもとに,まずは議論を始めたいと思います.その議論の積み重ねが本書の内容を質・量ともに高め,治療の真実を生み出すと考えます.
 誰もが頭の中で抱える疑問や矛盾について本当の意味で語り合うことこそが治療の進歩をもたらすのです.

 最後になりますが,本書の発刊にあたり,症例資料をまとめていただいた西沢 剛先生(湘南鎌倉総合病院),そしていつも助けていただいた医学書院の石井美香氏に深く感謝申し上げます.

 2025年,春の札幌にて
 土田芳彦

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1章 四肢外傷治療の基本的事項
 1 インプラントのバイオメカニクス
 2 骨折のバイオメカニクス
 3 骨折整復の諸問題
 4 骨折の保存治療
 5 骨癒合と偽関節
 6 骨折分類
 7 骨折内固定の考え方
 8 ロッキングプレート固定
 9 最小侵襲プレート固定
 10 開放骨折
 11 創外固定
 12 コンパートメント症候群
  [Column] 手術治療は車の運転とは訳が違う

2章 肩──上腕の外傷
 1 鎖骨骨幹部骨折
 2 鎖骨遠位部骨折
  (ちょっと深掘り) Non-bridging plate固定の限界はどこにあるのか? フックプレートの適応は?
  (ちょっと深掘り) 烏口鎖骨靱帯の再建方法の選択は?
  (ちょっと深掘り) 術後の肩鎖関節脱臼を防ぐためには?
  [Column] コースやセミナーなるものをどのように開催するのか?
 3 鎖骨内側部骨折
 4 肩鎖関節脱臼
 5 肩甲骨体部骨折
  (ちょっと深掘り) 手術か保存かの考え方
 6 肩甲骨関節窩骨折
 7 肩甲骨烏口突起骨折
  (ちょっと深掘り) 烏口突起基部骨折の手術適応とその方法は?
 8 上腕骨近位部骨折
  (ちょっと深掘り) 肩関節後方脱臼骨折の治療方法は?
 9 上腕骨骨幹部骨折
  (ちょっと深掘り) 上腕骨骨幹部骨折AO分類 Type12Bにおける外側第3骨片をどう取り扱うか?
  (ちょっと深掘り) 上腕骨骨幹部骨折に対するfunctional brace固定はなくなったのか
  [Column] 手術治療は,実はマイナスの作業である
 10 上腕骨遠位部骨折
  (ちょっと深掘り) 高齢者の上腕骨通顆骨折に対するダブルプレート固定
  (ちょっと深掘り) Dubberley分類 Type3Bに対する拡大Kocherアプローチとolecranon osteotomyアプローチの選択はどのようにして考えるか?
  [Column] 深い経験がなければ論文の内容を正しく理解できない

3章 肘──前腕の外傷
 11 尺骨肘頭骨折
  (ちょっと深掘り) 高齢者の転位型肘頭骨折に対する保存治療か手術かの考え方
  (ちょっと深掘り) 肘頭骨折に対するsalvage手術
 12 肘関節脱臼後不安定症
  (ちょっと深掘り) 不安定肘関節におけるMRIの位置づけ
  [Column] 大学や公的病院に関わる人間に求められるもの
 13 肘関節脱臼骨折
  (ちょっと深掘り) 肘頭脱臼骨折における亜分類の必要性
  (ちょっと深掘り) 尺骨鉤状突起骨折(AMF骨片)に対するアプローチ方法はFCU splitか,over-the-topか?
 14 橈骨頭骨折
 15 前腕骨骨幹部骨折
  (ちょっと深掘り) 成人Monteggia骨折における輪状靱帯の損傷形態は「関節包の断裂」なのか,「靱帯の断裂」なのか?
  (ちょっと深掘り) Essex-Lopresti骨折の治療戦略
  (ちょっと深掘り) 急性期DRUJ不安定性に対する治療

4章 手関節・手の外傷
 16 橈骨遠位端骨折
  (ちょっと深掘り) 予想以上に結果のよいspanningプレート固定
  (ちょっと深掘り) 掌側転位型橈骨遠位端骨折の固定には遠位設置型プレートで必要十分か? その被覆率は?
  (ちょっと深掘り) Volar tiltの過整復は必要か?
  (ちょっと深掘り) 橈骨遠位端骨折に合併する尺骨遠位端骨折は手術か,保存か?
  (ちょっと深掘り) 尺骨遠位部骨折の固定方法は,プレート固定か,髄内固定か?
  [Column] 予習と復習の大切さ
 17 遠位橈尺関節脱臼
  [Column] 質問力
 18 舟状骨骨折
 19 中手骨骨折
 20 手指骨骨折

5章 骨盤の外傷
 21 骨盤輪損傷の急性期マネジメント
  [Column] 学ぶこととその対策は真剣でなくてはならない
 22 青壮年骨盤骨折
 23 高齢者脆弱性骨盤骨折

6章 股関節──大腿の外傷
 24 寛骨臼骨折(前方系)
  (ちょっと深掘り) 高齢者の寛骨臼脆弱性骨折の治療をどう考える?
  (ちょっと深掘り) 高齢者の寛骨臼脆弱性骨折におけるacute THAの方法は?
 25 寛骨臼骨折(後方系)
  [Column] 討論訓練の機会を増やす!
 26 大腿骨骨頭骨折
  (ちょっと深掘り) 骨頭骨折の治療,骨切除と骨接合,そしてそのアプローチ
  [Column] 外傷整形外科教育におけるコネクティビズム
 27 青壮年大腿骨頚部骨折
  (ちょっと深掘り) 若年者大腿骨頚部骨折 手術時期は緊急か,準緊急か?
  (ちょっと深掘り) 整復法は観血的か,閉鎖的か?
  (ちょっと深掘り) 観血的整復のアプローチはSmith-Petersenか,Watson-Jonesか?
 28 高齢者大腿骨頚部骨折
 29 大腿骨転子部骨折
 30 大腿骨転子下骨折
  [Column] シンポジウム(討論)は小出しに,頻回に行うべき
 31 非定型大腿骨骨折
  (ちょっと深掘り) 非定型大腿骨転子下骨折の整復許容範囲とは?
  (ちょっと深掘り) 初回手術から骨移植,additional plateは必要? 有効?
 32 大腿骨骨幹部骨折
 33 インプラント周囲骨折(THA)

7章 膝関節──下腿の外傷
 34 インプラント周囲骨折(TKA)
 35 大腿骨遠位部骨折
  (ちょっと深掘り) 短断端骨折症例に対する逆行性髄内釘
  (ちょっと深掘り) 短断端粉砕骨折症例に対して髄内釘プレートとダブルプレートのどちらを選択?
 36 膝蓋骨骨折
  [Column] 討論なくして何の意味があるのか?
 37 脛骨近位部骨折
  (ちょっと深掘り) 脛骨プラトー骨折の治療目標は,解剖学的整復か,関節安定性か?
 38 脛骨骨幹部骨折
 39 脛骨遠位部骨折
  (ちょっと深掘り) アプローチに対する考察,「前方系+(後)内側」か,「前方系+後外側」か?
  (ちょっと深掘り) 前方系アプローチはanteromedialか,direct lateralか,Kesagakeか?
  (ちょっと深掘り) 転位している後外側骨片の最適な整復・固定法は? その場合のアプローチは?
  (ちょっと深掘り) 脛骨遠位部骨折における髄内釘固定,遠位スクリューは3本必要か,2本で十分か?
  (ちょっと深掘り) 遠位スクリューが2本以下の場合,補助プレート固定は有用な方法か?

8章 足の外傷
 40 足関節骨折
  (ちょっと深掘り) 足関節後果骨折の手術適応は? Syndesmosis安定化に有効か?
  (ちょっと深掘り) Haraguchi分類 Type2の後内側骨片は固定すべき?
  (ちょっと深掘り) 足関節骨折に伴うTillaux-Chaput骨折は固定する?
  (ちょっと深掘り) 足関節 TypeC骨折における腓骨骨折の固定方法は?
  (ちょっと深掘り) 足関節骨折においてdeltoid ligamentを修復すべき症例とは?
 41 踵骨骨折
  (ちょっと深掘り) 踵骨骨折はどのようなときにプレート固定を選択するべき?
  [Column] AIとシンポジウムをしたい
 42 距骨骨折
  (ちょっと深掘り) 距骨頚部骨折に対する固定法はスクリュー固定か,プレート固定か?
  (ちょっと深掘り) スクリュー固定の際の方向,アプローチは? APか,PAか,3皮切か?
 43 Lisfranc関節損傷
  (ちょっと深掘り) Lisfranc脱臼骨折とLisfranc靱帯損傷の相違,そしてその固定法は?
  [Column] 失われたままの数十年
 44 中足骨骨折

9章 病的な外傷
 45 病的骨折
  [Column] 「まだわかっていない」というのは世の中ではなく,あなたです

10章 小児の外傷
 46 小児鎖骨骨幹部骨折
 47 小児上腕骨近位部骨折
  [Column] 独り立ちする気概
 48 小児上腕骨骨幹部骨折
 49 小児上腕骨顆上骨折
 50 小児上腕骨外顆骨折
  [Column] 系統的に学ぶ意義
 51 小児上腕骨内上顆骨折
 52 小児前腕骨骨幹部骨折
  (ちょっと深掘り) 思春期の前腕骨骨幹部骨折に対するTEN
 53 小児橈骨遠位部骨折
  (ちょっと深掘り) 小児橈骨遠位骨幹部骨折における外固定の適応症例と限界
  (ちょっと深掘り) 鋼線固定の適応症例と限界,プレートで固定すべき症例とは?
 54 小児大腿骨近位部骨折
 55 小児大腿骨骨幹部骨折
 56 小児大腿骨遠位部骨折
 57 小児脛骨骨幹部骨折
  [Column] 之を知る者は之を好む者に如かず.之を好む者は之を楽しむ者に如かず
 58 小児足関節周囲骨折

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