日本語版GMFM-66 & GMFM-88
脳性麻痺児のための粗大運動評価
GMFMの日本語版マニュアル最新版
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GMFM(粗大運動能力尺度)は、脳性麻痺の子どもたちの運動機能レベルを評価するためのテストとして開発されたもので、世界的に広く用いられている。臨床、研究の両面で使え、単に機能評価だけでなく、目標設定とそれに向けての進捗段階を知るうえで、極めて有用な方法である。
原著 | Dianne J Russell / Marilyn Wright / Peter L Rosenbaum / Lisa M Avery |
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監訳 | 近藤 和泉 |
訳者代表 | 楠本 泰士 |
発行 | 2025年08月判型:B5頁:320 |
ISBN | 978-4-260-06020-2 |
定価 | 16,500円 (本体15,000円+税) |
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日本語版 序/第3版の序/第3版の謝辞
日本語版 序
GMFM日本語版の最初の版が,医学書院から出版されたのは2000年でした。その時点でGMFMに対するRasch分析が行われ,GMFM-66としての使用が始まっていることを,前書きで解説しています。その後,短縮バージョンであるGMFM-66 Item Set(GMFM-66-IS)およびGMFM Basal & Ceiling(GMFM-66-B&C)が開発され,現在に至っています。また一方で,予後予測の補助となるGross Motor Function Classification System(GMFCS)の開発により,脳性麻痺児(CP児)の粗大運動能力の層別化が行われ,重症度に関する共通認識が醸成されました。さらに,2007年の改訂により,新たな年齢帯が付け加えられ,Gross Motor Function Classification System Expanded & Revised(GMFCS-E&R)として発表されています。これらの評価尺度は,現在,世界中でCP児に対して使用されています。本書の出版によって集積された知見が紹介されるとともに,GMFMの開発者の意図が正確に伝わり,さらに短縮版の適正な使用がわが国で保証されることは喜ばしい限りです。
海外で考案された評価尺度を日本に導入する場合,オリジナルを作成した開発者の意図を正確に理解し,また,言語や文化背景の違いによって生じる解釈の相違をできる限り回避して日本語版を作成する必要があります。ただ,現状では海外の多くの評価尺度が,逆翻訳や実際に使用する現場での信頼性・妥当性の検討,および尺度使用者に対する教育など,本来は実施されてしかるべき過程をたどることなく使用されています。このことは,国際的に使われているバージョンと日本語のバージョンの評価結果に食い違いを生じさせることにつながり,特に研究・調査の結果を比較しなければならない場合の支障となっています。
最初の出版の際に,日本語版のGMFMは逆翻訳によるチェックを受けており,信頼性が検討されています。また,標準的な使用のためのワークショップを開催し,評価者の資質を一定のレベルまで引き上げる努力を継続して行ってきました。そして,このワークショップで使われてきた資料も,改めて原著者のチェックを受け,本書の巻末に掲載しています。こうした活動により,日本の評価者は,GMFMの使用に関して国際的なレベルにあると言え,また,その維持を本書が下支えすることは間違いないと考えています。
原書のなかでも述べられているように,GMFM-66およびその短縮版は,CP児の評価結果に対するRasch分析によって作成されているため,それらの使用はCP児に限定されなければなりません。ダウン症候群および後天性脳損傷児での妥当性が証明されていますが,それ以外の疾患で使う場合には,GMFM-88を選択することと,事前にワークショップを受講することが推奨されます。この過程を経て,2021年に福山型先天性筋ジストロフィー患者における粗大運動能力の経時的変化の検討が行われています。また,さまざまなCP児に対する治療効果の治験においても,可能な限りGMFM-88の使用が望ましく,現在進行中の小児用ロボットの治験でも,その形での検証が進んでいます。
最後に,CPの発生率は出生児の0.2%程度とされていますが,発達障害児の有病率はその10倍以上です。粗大運動の発達遅延が,発達障害の最初の徴候になることも多く,低出生体重児など発達障害のリスクを有する2歳以下の子どもに対する粗大運動の評価が,今後ますます求められることが予想され,GMFMの新たな展開が期待されます。
2025年6月
近藤和泉
第3版の序
本書の第3版は,GMFMをコンピュータベースの現代的な形で使用するために欠かせない,常に変化するテクノロジーをユーザーが理解し,応用できるようにするために作成されました。初版(2002年)から第2版(2013年)への主な変更点は,GMAE(Gross Motor Ability Estimator)のデータ管理と採点プログラムの再開発です。オリジナルのGMAEとそれに続くGMAE-2は,GMFMのユーザーに88項目または66項目版の評価データを入力し,採点する簡単な方法を提供するために作成されました。GMAEと同様,GMAE-2も当初はうまく機能しました。しかし,コンピュータソフトウェアの進化に伴い,多くの新しいコンピュータシステムではプログラムを実行できなくなったため,プログラムの更新が必要となりました。
GMAE-3とGMFM App+は,デスクトップコンピュータとタブレット用に作成されました。GMAE-3はGMFM-66のスコアを計算するために最新のコンピュータアルゴリズムを使用しています。したがって,GMAE-3のアルゴリズムは,特に機能のより高い子どもやより低い子どもに対して,以前のアルゴリズムと比べて運動機能のさらに正確な値を提供します。今後,GMAEを使用する際には,このバージョンの使用を推奨します。GMAE-2で算出されたGMFM-66スコアは,GMFM App+に項目の値を再入力することで,GMAE-3スコアに変換することが可能です。
GMAE-2プログラムへのリンクはCanChildのWebサイトから入手できますが,より新しいコンピュータのオペレーティングシステム(OS)とは互換性がありません。もし以前にダウンロードしているならコンピュータでの利用も可能です。GMAE-3プログラムは,GMFM App+を購入することによってのみ利用可能となります。GMAE-3およびGMFM App+の詳細はAppendix3およびAppendix14に含まれています。
GMFM App+はCanChildのショップで購入できます。
第3版の謝辞
改訂はMarilyn Wright, Dianne J Russell, Peter L Rosenbaumによって完成され,Lisa M Averyは採点プログラムとともに更新されたGMAE-3アルゴリズムを開発しました。
GMFM App+は,モホーク・カレッジのmHealth and eHealth Development and Innovation Centre(MEDIC)のJustin Backwell, Peter Szhur, Robert Zeni, Mike Zheng,およびCan-ChildチームのメンバーであるDayle McCauley, Nathan Nash, Sonya Strohm, Marilyn Wright, Dianne Russellによって開発されました。オンタリオ州脳研究所(Ontario Brain Institure)の助成による脳性麻痺ネットワーク(CP-NET)から資金提供を受けました。
目次
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Chapter1 粗大運動能力尺度(GMFM)の概要
Chapter2 概念的背景
Chapter3 GMFM-88の開発と妥当性検証
Chapter4 GMFM-66の開発と妥当性検証
Chapter5 GMFM-66の2つの短縮版の運用
Chapter6-1 GMFM-88およびGMFM-66の運用および採点のガイドライン
Chapter6-2 GMFM-88とGMFM-66の項目採点ガイドライン
Chapter7 GMFM-88とGMFM-66の解釈と使用法
Chapter8 GMFMの応用:われわれが,世界中の研究者たちと学んだこと,そして,これからの展望
文献
用語集
Appendix1 項目の難易度表示方法
Appendix2 Thurstone閾値を用いた項目の難易度の表示
Appendix3 GMFM App+チュートリアル(マルチユーザー版・シングルユーザー版)
Appendix4 GMFM-66の項目難易度モデルに当てはまらない2人の子どものケースシナリオ
Appendix5 GMFM-66 Item Setスコアシート
Appendix6 GMFM-66 Basal & Ceilingスコアシート
Appendix7 粗大運動能力分類システム──拡張・改訂版(GMFCS-E&R)
Appendix8 GMFM-88とGMFM-66の採点用紙
Appendix9 GMFM-66とGMFM-88の横断的スコアと変化スコア
Appendix10 測定の標準誤差
Appendix11 Trevorのケースシナリオ
Appendix12 脳性麻痺児の理学療法における運動尺度の使用例
Appendix13 オンタリオ運動成長曲線
Appendix14 GMAE-3とGMFM App+
《日本語版付録》
GMFMの採点における各項目の注意事項について(補足説明)
索引