耳鼻咽喉科・頭頸部外科レジデントマニュアル 第2版
耳鼻咽喉科臨床に携わるすべての医師に向け、最新ガイドラインを踏まえて待望の改訂!
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好評を博したマニュアルの改訂第2版。初版発行後に出された耳鼻咽喉科領域の各診療ガイドライン、癌取扱い規約などを踏まえ、最新の内容に改める。新規項目には補聴器適合検査、外リンパ瘻とCTP検査、内視鏡下耳科手術、嚥下障害のリハビリテーション、頭頸部癌治療後の外来フォローアップなど。専門医をめざす専攻医にとり必要かつ十分な内容が網羅された、耳鼻咽喉科臨床に携わるすべての医師にとって待望の書、ついに刊行!
シリーズ | レジデントマニュアル |
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監修 | 伊藤 壽一 / 大森 孝一 |
編集 | 楯谷 一郎 |
発行 | 2025年05月判型:B6変頁:480 |
ISBN | 978-4-260-06012-7 |
定価 | 5,500円 (本体5,000円+税) |
更新情報
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序文
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第2版の序
京都大学大学院医学研究科耳鼻咽喉科・頭頸部外科では,約25年前から毎年4~5月の平日午前7時半~8時半にモーニングレクチャーを行い,さらにイブニングレクチャーも行ってきた.対象は耳鼻咽喉科・頭頸部外科のレジデントで,他にメディカルスタッフや医学生の参加もある.2020年にコロナ禍に入った後もオンラインで継続し,働き方改革で効率化が求められた結果,現在は2つを統合してイブニングレクチャーとして実施している.2024年には4~7月に現地+オンラインで計25回開催した.本レクチャーの趣旨は「一般的な教科書的な知識だけでなく,実地臨床の現場で役立つ知識・手技を集中的に講義すること」である.講義資料をまとめた「京都大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科レジデントマニュアル」を作成し,参加者に配布しており,これが本書の元になるマニュアルである.
本書の特徴は外来,病棟,手術について,具体的に現場目線で書かれていることである.2016年に初版が発行され,わかりやすい,まとまっている,実践的などの高い評価をいただいた.大変ありがたいことである.初版編集者の楯谷一郎教授が藤田医科大学でも同様のレクチャーを行っておられ,第2版ではこれまで取り上げてこなかった項目を追加して,全国の病院で活躍しておられる第一線の著者に執筆していただいた.さらに,巻末の付録やMemoの項目も増やしWeb付録も充実させた.
目の前に患者さんが来て不安な場合も,本書をポケットに入れておくことで自信をもって診療できる.専攻医は専門医試験のときにも知識の再確認に活用できる.また初期研修医や医学生にも実地臨床の内容を十分理解してもらえる.最新情報に基づいた「臨床現場で役立つ」本書を,自信をもってお届けする次第である.
2025年4月
監修者 伊藤壽一
大森孝一
目次
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第1章 所見のとり方
1 耳
2 鼻
3 口腔
4 咽頭・喉頭
5 頸部
第2章 主訴からみた診療の流れ
1 耳痛・耳漏・耳鳴・耳閉感・難聴
2 めまい・平衡障害
3 鼻漏・鼻閉・鼻痛
4 嗅覚障害
5 味覚障害
6 口内痛
7 咽頭痛
8 咽喉頭異常感
9 嚥下障害
10 音声障害
11 言語障害
12 呼吸困難(上気道狭窄)
13 鼻腔・口腔・咽喉頭の腫瘤
14 頸部腫脹
15 甲状腺腫脹
16 外耳道異物・鼻腔異物・咽頭異物
第3章 耳
A 検査法
1 聴覚検査・耳管機能検査
2 補聴器適合検査
3 平衡機能検査
B 疾患
1 急性感音難聴
[コラム] 外リンパ瘻とCTP検査
2 感音難聴・聴覚情報処理障害
3 急性中耳炎・急性外耳道炎
4 滲出性中耳炎
5 慢性中耳炎
6 真珠腫性中耳炎
7 耳硬化症・中耳奇形
8 耳管開放症
9 顔面神経麻痺
10 メニエール病
11 良性発作性頭位めまい症(BPPV)
12 その他のめまい
13 聴神経腫瘍
14 聴器・側頭骨の外傷
C 代表的な術式と周術期管理
1 めまいに対する外科的治療
2 顔面神経減荷術
3 鼓膜形成術・鼓膜再生療法
4 鼓室形成術
5 内視鏡下耳科手術
6 アブミ骨手術
7 人工内耳手術
[コラム] さまざまな人工聴覚器
8 聴神経腫瘍手術
第4章 鼻副鼻腔
A 検査法
1 アレルギー検査
2 鼻腔通気度検査
3 嗅覚検査
B 疾患
1 鼻出血
2 アレルギー性鼻炎
3 嗅覚障害
4 急性副鼻腔炎
5 慢性副鼻腔炎
6 鼻副鼻腔良性腫瘍
7 顔面外傷
C 代表的な術式と周術期管理
1 内視鏡下鼻副鼻腔手術
2 鼻中隔矯正術
3 粘膜下下鼻甲介骨切除術
4 後鼻神経切断術
5 鼻骨骨折整復術・眼窩壁骨折整復術
第5章 口腔・咽頭
A 検査法
1 嚥下内視鏡検査・嚥下造影検査
2 味覚検査
3 睡眠時呼吸検査
B 疾患
1 上気道炎
2 急性扁桃炎・伝染性単核球症
3 扁桃周囲膿瘍・咽後膿瘍
4 扁桃病巣感染
5 味覚障害
6 唇裂・口蓋裂
7 睡眠時呼吸障害
[コラム] 嚥下障害のリハビリテーション
C 代表的な術式と周術期管理
1 口蓋扁桃摘出術・アデノイド切除術
2 嚥下障害に対する外科的治療
3 睡眠時呼吸障害に対する外科的治療
第6章 喉頭
A 検査法
1 内視鏡検査・喉頭ストロボスコープ検査
2 音声機能検査
3 音響分析検査法・聴覚心理的評価法・自覚的評価法
B 疾患
1 声帯良性病変
[コラム] 音声治療
2 声帯麻痺
3 喉頭軟弱症
4 痙攣性発声障害
5 喉頭良性腫瘍・腫瘤
6 急性喉頭蓋炎
7 咽喉頭逆流症
C 代表的な術式と周術期管理
1 局所麻酔下喉頭手術
2 喉頭微細手術
3 甲状軟骨形成術・披裂軟骨内転術
4 気管切開術・緊急気道確保
第7章 頭頸部
A 検査法
1 病理学的検査
2 頭頸部の画像検査
B 疾患
1 頸部の炎症性・感染性疾患
2 頸部の先天性疾患
3 頸部の良性腫瘍
4 口腔癌
5 上咽頭癌
6 中咽頭癌
7 下咽頭癌
8 喉頭癌
9 鼻・副鼻腔癌
10 聴器癌
11 原発不明癌
12 甲状腺癌
13 良性結節性甲状腺腫
14 バセドウ病
15 橋本病
16 副甲状腺機能亢進症
17 唾液腺腫瘍
C 代表的な術式と周術期管理
1 頸部リンパ節生検
2 頸部郭清術
3 甲状腺・副甲状腺手術
4 耳下腺手術
5 顎下腺手術
6 舌部分切除術
7 喉頭全摘術
8 経口的手術(内視鏡・ロボット)
9 再建手術(遊離皮弁・有茎皮弁)
10 頭蓋底手術
D 全身管理
1 放射線治療と全身管理
2 頭頸部癌化学療法と管理
3 頭頸部支持療法・リハビリテーション
4 頭頸部癌の外来フォローアップ
5 緩和医療
第8章 耳鼻咽喉科と感染症
1 耳鼻咽喉科の感染症と薬物療法
2 周術期感染予防と術後感染症への対処
3 耳鼻咽喉科感染対策の基本
[コラム] 耳鼻咽喉科医が知っておくべき漢方薬
[コラム] 妊婦へ処方する際の注意点
付録
1 頭頸部癌,甲状腺癌のTNM分類
2 Performance Status,CTCAE
3 身体障害者障害程度等級
4 耳鼻咽喉科専門医研修プログラム
5 説明文書,医療安全
6 臨床研究,倫理委員会,治験,特定臨床研究
索引
Memo
アフタ,びらん,潰瘍
顕性誤嚥と不顕性誤嚥
頸部腫脹を伴う疾患の代表例
急性中耳炎の起炎菌
外耳疾患の鑑別診断
耳管開放症における注意すべき病態
PPPDの病態生理
NF2患者の聴覚補償
鼓室形成術に用いる用語
眼科へのコンサルト
PFAPA(アフタ性口内炎,咽頭炎,およびリンパ節炎を伴う周期熱)症候群
両側の声帯麻痺に対する治療法
甲状軟骨形成術における4つの型
気道管理のガイドライン
カニューレの種類
バセドウ病と妊娠
慢性甲状腺炎と妊娠
プレアルブミン(トランスサイレチン)
refeeding syndrome
書評
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耳鼻咽喉科頭頸部外科領域の基本を身につけるために
書評者:中川 尚志(九大大学院教授・耳鼻咽喉科学)
本書は,京大耳鼻咽喉科において十数年にわたり毎朝継続されてきたレジデント教育の講義内容を基に編纂された,現場指向型の臨床実践マニュアルである。対象は若手医師のみならず,看護師やその他のメディカルスタッフにも広く想定されており,耳鼻咽喉科領域における診療の標準化と教育の質向上を目的として構成されている。2016年に初版が発行されたが,このたび第2版として改訂され,知見がアップデートされた。
本書の最大の特長は,従来の教科書的記述ではなく,実地診療を念頭に置いたレイアウトである。項目ごとの箇条書き,診断・対応プロセスを視覚化したフローチャート,手技の手順ごとに整理された図表などが随所にちりばめられ,現場で必要とされる情報へ瞬時にアクセスできる構造となっている。また,診療前のシミュレーションや実践的判断の訓練にも適しており,臨床現場におけるスキル獲得を強力に後押しする。
内容面でも網羅性と実用性が高く,主訴から導かれる診療の流れがチャートによって体系的に示されているため,患者対応時の迅速な意思決定が可能となる。加えて,各疾患領域においては,必要な検査法,知っておくべき疾患と鑑別の要点,代表的な術式とその周術期管理,術後のリハビリテーション,さらには頭頸部癌診療における全身管理までが詳細かつ簡潔に整理されており,知識の確認を含め,診断,対応力の向上に役に立つ。特にベッドサイドで即座に参照可能な構成となっている点が現場のニーズに深く合致している。
本書に盛り込まれた知識は,単なる情報集ではなく,現場での膨大な経験に裏打ちされた叡智の集積である。診療の勘所や注意点,トラブル回避の知見など,実際に指導医が日々の診療で伝えてきた要点が惜しみなく反映されており,若手医師の成長に欠かせない思考力・判断力・対応力の育成に資する構造となっている。
本書は,ポケットサイズに凝縮された一冊に,診療現場の熱量と教育者の思いが宿る。耳鼻咽喉科の臨床を担う医師だけでなく,あらゆる医療スタッフにとって信頼できる伴走者となるだろう。
若手医師の成長と診療の質の向上に
書評者:丹生 健一(神戸大大学院教授・耳鼻咽喉科頭頸部外科学)
このほど,好評を博した『耳鼻咽喉科・頭頸部外科レジデントマニュアル』の第2版が,内容を大幅に刷新して発刊された。医療の現場にも働き方改革が求められる中,本書は初版発刊以降の9年間に目覚ましい進歩を遂げた耳鼻咽喉科・頭頸部外科各領域の最新の知見を網羅し,耳鼻咽喉科専門医をめざすレジデントが,実際の流れに即して効率的に耳鼻咽喉科・頭頸部外科の診療を身につけることをめざした実践的なマニュアルである。
本書の初版は,京大耳鼻咽喉科・頭頸部外科においてレジデントを対象に長年実施されてきたレクチャーの講義資料集を元に作成された。今回の改訂では,初版編集者の楯谷一郎教授が藤田医科大で行なっている専攻医向けレクチャーのテーマが新たに加えられ,全国の京大関連施設で活躍しているエキスパートの面々が中心となって執筆している。
まず,第1章では耳,鼻,口腔,咽頭・喉頭,頸部の基本的な初見の取り方,第2章では主訴や症状からまずやるべきこと(問診,視診,触診,生理学的検査,組織検査,画像検査など)や想定される鑑別疾患が解説され,第3章以降では耳,鼻副鼻腔,口腔・咽頭,喉頭,頭頸部各領域の代表的な検査法,疾患,術式と周術期管理が,要点を押さえて簡潔明瞭に記載されている。さらに巻末には付録として頭頸部癌のTNM分類や身体障害者障害程度等級などの早見表が掲載され,web付録として耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域の主なガイドラインや指針の情報をQRコードで読み取れるように工夫されており,General Otolaryngologistとしての総合力と高い専門性を併せ持つ人材を全国に輩出してきた京大の教育システムのエッセンスが凝縮された専攻医に必須のバイブルとなっている。
本書が耳鼻咽喉科頭頸部外科の明日を担う若手医師の成長と診療の質の向上に寄与することを,心より期待したい。