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ウォーモルド直伝 内視鏡下鼻副鼻腔手術トレーニング[Web動画付]

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本書は内視鏡下鼻副鼻腔手術(ESS)の術式を難易度ごとに3Dプリンターモデル・ビデオ・イラストで詳説しており、姉妹書『ウォーモルド内視鏡下鼻副鼻腔・頭蓋底手術』に掲載しきれなかったコツも一挙掲載した。さらにESSの最難関とされる前頭洞手術を中心に美麗な手術イラストを多用することで、よりわかりやすく実践的な書となっている。本書と姉妹書とを併せ読むことで、ESSに対するさらに深い理解につながるだろう。

監修 本間 明宏 / 中丸 裕爾
編集 鈴木 正宣 / 中薗 彬 / 志津木 健
発行 2024年01月判型:A4頁:264
ISBN 978-4-260-05240-5
定価 15,400円 (本体14,000円+税)

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はじめに

 「理を知り数をかける」。ある武道に伝わるこの言葉は,原理・原則を理解したうえでの反復練習こそが物事を習得するための最短距離であることを端的に表しています。武道のみならず,スポーツや語学,音楽や料理まで,さまざまな技術を習得するにはトレーニングが必要です。これは手術においても然りです。

 本書は,内視鏡下鼻副鼻腔手術(ESS)のトレーニングブックです。先行書『ウォーモルド内視鏡下鼻副鼻腔・頭蓋底手術』に記載された手術理論を実践し,習得することを狙いに企画されました。内容は2021年2月に北海道大学とアデレード大学間で開催されたESSトレーニングコース“FESS seminar in Hokkaido”によるものです。コロナ禍のもとオンラインで行われたこのコースでは,副鼻腔を精巧に再現した3Dプリンターモデルを用い,日本に居ながらにして世界の最先端の手術手技を習得するトレーニングを実現しました(Suzuki M, et al. Front Surg, 2021;8:746837)。
 本書ではこの3Dモデルを使い,ESSの術式をわかりやすく解説しました。特に最難関の前頭洞手術では,CT読影→術前プランニング→手術と一連の流れを詳説しています。この3Dモデルは市販されており,手術難易度ごとにModel1からModel8まで8種類が用意されています。本書ではそのうち最も学習効果が高いModel2,Model6(右側のみ),Model8を取りあげました。本書の各章と照らし合わせていただければご自身の施設でもトレーニングを行うことができます。頭で理解するだけではなく実際に手を動かすことで,習得効果は飛躍的に高まることでしょう。このユニークな企画に賛同しサポートしてくださったアデレード大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科のWormald教授,Alkis教授,そして,医学書院の渡辺一さん,田邊祐子さんにこの場をお借りして感謝申し上げます。

 術式の解説にあたっては,熟練者だけではなくこれからESSを始める人にとっても再現可能であることを意識しました。たとえば上顎洞手術では「鼻涙管を損傷しないように注意する」と記載するのではなく,「損傷が起こり得ない戦略」を説明しました。また,全体像を把握しづらいという内視鏡写真の欠点をイラストで補いました。このイラストは志津木健先生(苫小牧市立病院耳鼻咽喉科)によるものです。イラストは必要な部分を強調することができます。たとえば,写真は見えているものをありのままに写しますが,イラストであれば見えているところをあえて描かないことも,見えていない部分を描くこともできます。日本画の流れをくみMANGAテイストを取り入れたイラストは,時に内視鏡写真や文章以上に理解を助けてくれるはずです。また,各ページの下にはWormald教授らの手術のコツを「ワンポイントアドバイス」として掲載しました。これまでオーストラリアに行かなければ知ることのできなかった実践的なTIPsが満載です。各章の最後のコラムでは解剖用語や手術器具の解説から,3Dモデルの購入方法,そして,基礎研究や海外留学にいたるまで幅広いトピックを扱っています。これからESSを学ぶ先生から熟練した指導医まで,奥行きが深い副鼻腔の魅力を味わえるよう構成しました。

 繰り返しになりますが,手術習得には原理・原則を理解したうえでの反復トレーニングが欠かせません。『ウォーモルド内視鏡下鼻副鼻腔・頭蓋底手術』で「理を知り」,この『直伝トレーニング』で「数をかけ」,安全かつ確実な手術を習得していただければと思います。

 2023年11月
 本間明宏

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第1章 最適な術野のために
 手術を簡単に──Surgery made easy
 手術前にできること
 手術中にできること

第2章 上顎洞手術
 上顎洞手術──体系的なアプローチ
 Mini-FESS
 Mega-antrostomy
 Prelacrimal approach
 下鼻甲介swing/鼻涙管swing

第3章 篩骨洞蝶形骨洞手術
 後部篩骨洞/蝶形骨洞

第4章 前頭洞手術──概論
 国際前頭洞解剖分類・難易度分類
 前頭洞手術分類
 前頭洞手術の進め方

第5章 Building Block Concept
 Building Block Conceptの概要
 Building blockの手順

第6章 前頭洞手術 ケース1(Model2 左)
 Building block
 手術トレーニング① axillary flap
 手術トレーニング② find the pathway──FSDPの同定・開放(各セルの同定)
 手術トレーニング③ follow the pathway──残りのセルの切除

第7章 前頭洞手術 ケース2(Model2 右)
 Building block
 手術トレーニング① axillary flap
 手術トレーニング② find the pathway──FSDPの同定・開放
 手術トレーニング③ follow the pathway──残りのセルの切除

第8章 前頭洞手術 ケース3(Model6 右)
 Building block
 手術トレーニング① axillary flap
 手術トレーニング② find the pathway──FSDPの同定・開放
 手術トレーニング③ follow the pathway──残りのセルの切除

第9章 前頭洞手術 ケース4(Model8 左)
 Building block
 手術トレーニング① axillary flap
 手術トレーニング② find the pathway──FSDPの同定・開放
 手術トレーニング③ follow the pathway──残りのセルの切除

第10章 前頭洞手術 ケース5(Model8 右)
 Building block
 手術トレーニング① axillary flap
 手術トレーニング② find the pathway──FSDPの同定・開放
 手術トレーニング③ follow the pathway──残りのセルの切除

第11章 Frontal drillout
 Frontal drilloutの適応
 Frontal drillout後の狭窄予防
 Frontal drilloutの実際

第12章 鼻中隔手術──Optimizing the nasal airway
 鼻腔内の気流と鼻閉
 鼻中隔手術
 鼻甲介手術
 術式選択

第13章 内頸動脈止血トレーニング
 内頸動脈損傷の概説
 視野の確保
 実際に出血したときの対応
 内頸動脈止血トレーニングモデル

索引

コラム
 1 本書に登場する用語
 2 When should we do what we should do?
 3 鼻洗浄
 4 道の名前,土地の名前
 5 副鼻腔シェーマ
 6 3Dモデルの紹介──購入方法
 7 3Dモデルによる手術トレーニング
 8 ESSの際に便利な手術器具
 9 アデレード大学のFESSコース
 10 排泄路を探せば解剖が見えてくる
 11 局所制御と拡大手術
 12 変わる手術
 13 留学のすゝめ

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P.J.Wormald先生の教えを追体験できる実践的な手術トレーニング指導書
書評者:小林 正佳(三重大大学院准教授・耳鼻咽喉・頭頸部外科)

 世界的に有名な鼻科手術の術者であり,かつ研究者,教育者としても第一人者であるオーストラリア・アデレード大耳鼻咽喉科のP.J.Wormald先生が著した『Endoscopic Sinus Surgery』第4版が,アデレード大へ留学し,Wormald先生から指導を受けた北大・鈴木正宣先生らによって和訳され,2020年に『ウォーモルド内視鏡下鼻副鼻腔・頭蓋底手術』として出版された。原著には副鼻腔解剖構造や内視鏡下鼻副鼻腔手術に関する多くの要点が記されており,世界標準の知識や手術手技について言語の壁を越えて理解することができる。しかし,実臨床における実践となると,原著に記されている副鼻腔構造や前頭洞への手術アプローチの理解を容易にするBuilding blockコンセプト,手術テクニックを実際の症例でどのように活用するのかが重要となる。また,Wormald先生が実践する鼻科手術において,原著には書き切れない細かなテクニックや術前CT読影による手術プラン,周術期管理における要点も存在している。そのような実践的な内容をWormald先生から直接教わるチャンスはそう多くない。そこで本書『ウォーモルド直伝 内視鏡下鼻副鼻腔手術トレーニング』が発刊された意義は大きい。

 本書ではBuilding blockを実臨床に応用する過程が豊富な画像やイラストを用いて詳細に著されている。術前CT読影から副鼻腔構造を症例ごとに詳しく理解し,前頭洞排泄路の最拡大に向けて手術プランを立て,それを実践するというプロセスがわかりやすく図示されている。特にこの600点を超える手術イラストは単なる内視鏡映像の模写ではなく,術者の視点から意識して見えている,あるいは見るべき術野が描かれているのが特徴であり,とても理解しやすい。また副鼻腔3Dモデルごとに副鼻腔構造の違いや術中におけるポイントが丁寧に解説されており,本書を見ながら実際に同じ副鼻腔3Dモデルを用いて手術トレーニングを行うことでWormald先生の指導を追体験することができる。数学を学ぶときに公式を覚えた後で実践的な演習問題を繰り返し解いて実力を培うのと同じように,本書で学んだ後に繰り返し実践をすることで,鼻科手術に必要な知識や手技を身につけられる。

 最後に,本書が初学者にとってわかりやすい実践的な手術トレーニングの教科書として,専門医にとっては自身が習得してきた手術手技をさらにレベルアップさせる参考書として,そして後進を育成する指導医にとっては豊富なイラストや手術動画を活用できる効果的な教育ツールとして,それぞれに活用されることを期待している。


豊富なイラストと手術動画でP.J. Wormaldの教えが体系的に理解できる優れた一冊
書評者:近藤 健二(東大教授・耳鼻咽喉科・頭頸部外科)

 内視鏡下鼻副鼻腔手術を学ぶ手法として,手術書を読む,手術に入って指導医に教わる,洗練された手術の動画を視聴する,などがある。いずれも手術修練の重要な要素であるが,手術書は通常「仮想的・理想的」な解剖の症例に対する手順が示されており,実際の症例の解剖の多様性に遭遇したときに,はたと行き詰まってしまう場合がある。手術の助手や洗練された手術動画の視聴から得られるものは大きいが,次々とモニターに現れて瞬時に処理される個々の構造物に対する系統的な知識がなければ,教育効果を最適化することは難しい。

 本書は内視鏡下経鼻手術の第一人者であるアデレード大学のWormald教授と北大耳鼻咽喉科の先生方により企画された,内視鏡下鼻副鼻腔手術の症例問題を論理的に解く力を身につけるためのユニークなトレーニングブックである。もちろん単独で読んでも学習効果が上がるが,Wormald教授の原著『ウォーモルド内視鏡下鼻副鼻腔・頭蓋底手術』をよりよく理解するための傍用の参考書にもなり,また原著から得られた知識や手術手技をさらに飛躍させ自分のものとするための実践のための書ともなる。加えて本書は用語の解説が豊富で,自分で鼻科学の原著論文を読むための基礎知識の習得にも役立つ。

 本文で述べられている通り,本書ではまず「手術を簡単にする」ための工夫,なぜそれを行うのか,その理論的根拠となる研究結果は何か,という点が詳しく解説されている。続いて副鼻腔手術の各論へと進むが,特に鼻科手術の難関である前頭洞の操作については多くのページが割かれている。術前CT読影による個々の症例の蜂巣と排泄路の解剖,術前プランニングの解説に続いて,600枚を超える豊富なイラストによって手術の流れがコマ送りのように順を追って図解されている。問題演習と答え合わせを行いながら学習が進んでいくイメージである。本書を読みながら副鼻腔3Dモデルを用いた手術トレーニングを行えば,まるでWormald教授が傍らに寄り添って指導してくれているかのような感覚になるだろう。

 また,本書には13にも及ぶコラムが掲載されており,アデレード留学を通じて得られた海外でのリアルな経験や知識,副鼻腔シェーマなど北大で実践されている試みが紹介されており,楽しく読み進めることができる。さらに,各ページの下欄にはワンポイントアドバイスが載っている。それぞれほんの数行のコメントであるが,いずれもある程度の鼻科手術の経験がある医師であれば一度は立ち止まって考えたことがある疑問にエキスパートの意見が示されており,思わず見入ってしまう。

 このような読み応えのある本が完成したのは,もちろんWormald教授の豊富な経験と手術を科学するマインドが出発点ではあるが,さらに北大の執筆者の先生方がWormald教授の手術コンセプトと体系をいったん消化した上で伝道師として読者にわかりやすい形で書き下してくれていることが大きい。

 本書は内視鏡下鼻副鼻腔手術に関する副鼻腔解剖の知識や手術手技を実臨床へと活用するために非常に適した書である。Wormald教授直伝の鼻科手術に関するテクニックや心得を学べる一冊として,初学者から熟練者まで全ての鼻科手術に携わる医師にお薦めする。

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