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レジデントのための感染症診療の鉄則

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感染症領域の実臨床では、問診や身体所見、検査情報から何を疑い、鑑別を整理し、いつ抗菌薬治療を開始し、またいかに見直すのかといった判断が常に求められる。本書では感染症診療における思考のプロセスを症例ベースで紐解くことに主眼を置いた。頻度が高く重要なテーマを厳選し、Take home messageを「鉄則」として提示。そして、その鉄則に至るまでの考え方や根拠をわかりやすく解説した。

編集 森 信好
松尾 貴公 / 石川 和宏 / 渋谷 晃子
発行 2026年04月判型:B5頁:392
ISBN 978-4-260-06252-7
定価 5,940円 (本体5,400円+税)

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  • 序文
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 今や医学生・研修医にとって必読書となった『内科レジデントの鉄則』の姉妹本として,『レジデントのための感染症診療の鉄則』を刊行できることを大変嬉しく思います.
 私が2005年に内科研修医として聖路加国際病院に入職した頃,感染症診療の面白さを教えてくださったのが,私の恩師であり当時感染症科部長であった古川恵一先生でした.古川先生はどんなに遅い時間であっても患者さんのベッドサイドへ足を運び,実際の症例から学ぶことを何より大切にされていました.カルテや検査データだけでなく,患者さんを診て考え,その症例をもとに議論する.その姿勢は,聖路加国際病院感染症科の教育の根幹として現在も受け継がれています.

 感染症領域にはこれまで多くの優れた教育書や教科書があり,多くの医療者が知識や診療の原則を学んできました.微生物学や各感染症の特徴,ガイドラインに基づく診断や治療を体系的に理解することは,感染症診療の基盤として極めて重要です.
 一方で実際の臨床では,問診や身体所見,検査情報から何を疑い,どのように鑑別を整理し,いつ抗菌薬治療を開始し,どのように見直すのかといった判断が常に求められます.感染症診療の魅力は,こうした情報を統合しながら仮説を立て,検証し,最適な診療へと結びつけていく思考過程にあります.
 本書では,感染症診療における思考のプロセスを症例ベースで紐解くことに主眼を置きました.聖路加国際病院感染症科で日々行われているカンファレンスでの議論をもとに,頻度が高く重要なテーマを厳選し,まず Take home messageを「鉄則」として提示しています.そして,その鉄則に至るまでの考え方や根拠を整理しました.また,感染症学習や教育回診のエッセンスについても紹介しています.

 今回執筆を担ったのは,私が直接指導してきた松尾貴公先生,石川和宏先生,渋谷晃子先生です.日々の臨床の中で症例について議論を重ねながら感染症診療の考え方を磨いてきた彼らが,多忙な診療の合間を縫って本書を完成させてくれました.その熱意と真摯な姿勢を,私は心から誇りに思っています.

 最後になりましたが,このような教育書が生まれるのは,教え好き,教えられ好きが集まり,屋根瓦式教育が脈々と受け継がれてきた聖路加国際病院という豊かな土壌があるからに他なりません.歴代の感染症科の先生方,日々ともに診療にあたる多職種の皆様に深く感謝申し上げます.また,本書の刊行にあたり多大なるご尽力をいただいた医学書院編集部の皆様に心より御礼申し上げます.
 本書が,日本全国で感染症診療に携わる医療者の一助となり,感染症診療のさらなる発展につながることを心から願っています.

 2026年3月
 聖路加国際病院 感染症科 管理医長
 感染管理室 室長
 森 信好

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A 感染症診療の鉄則
  1 感染症診療の原則──感染症は治る病気.感染症診療の原則に従えばどんな感染症も治療できる!

B 中枢神経感染
  2 細菌性髄膜炎──内科的emergencyの1つ! 迅速な診断と治療方針を理解しよう
  3 脳膿瘍──死亡率も高く,高次脳機能障害を残しうる怖い感染症
  4 脳炎──発熱と意識変容の重要なサインを見逃さない

C 頭頸部感染症
  5 耳鼻咽喉科領域感染症(副鼻腔炎/中耳炎/外耳道炎/乳突蜂巣炎)──耳鼻咽喉科領域の感染症は常に中枢神経感染症への波及を意識する
  6 眼窩周囲/眼窩蜂窩織炎──時に失明をきたしうる怖い感染症
  7 咽頭痛──緊急性のあるものをまずは除外しよう

D 呼吸器感染症
  8 市中肺炎──その肺炎,なんとなく治療していないか?
  9 肺炎随伴性胸水・肺膿瘍・膿胸──片側胸水をみたときに適切な感染症のマネジメントを行うことができる
  10 肺結核──日本は結核低蔓延国の仲間入り.でも注意は必要!
  11 院内呼吸器感染症──起因菌に応じた治療期間を決定することができる

E 血管内感染症
  12 感染性心内膜炎──不明熱を見たら感染性心内膜炎を疑い,必ず血液培養を採取し Duke-ISCVID Criteriaをつけよう
  13 カテーテル関連血流感染症──CRBSIとCLABSIの違いを明確に

F 腹腔内感染症
  14 腹部感染症──腹部感染症の起因菌を想定し治療につなげる
  15 肝膿瘍──特異的な症状がなく,播種性感染にも注意が必要な感染症
  16 CD腸炎──CD腸炎は何度も繰り返し再発する感染症である
  17 胆管炎・胆囊炎──発熱をきたす上腹部痛では急性胆囊炎や急性胆管炎を診断し,消化器外科や内科にコンサルトできるようになろう

G 尿路感染症
  18 膀胱炎・腎盂腎炎・カテーテル関連尿路感染症──尿路感染症の起因菌を想定し最適な経験的抗菌薬選択を行う
  19 前立腺炎──前立腺炎は奥が深い! 診断と治療に自信をつけよう!

H 皮膚軟部組織感染
  20 丹毒・蜂窩織炎──見た目から起因菌は黄色ブドウ球菌? それともβ溶血性レンサ球菌?
  21 壊死性筋膜炎──壊死性筋膜炎を疑ったらLRINECスコアが低くても筋膜切開を考慮しよう
  22 手術後創部感染症(SSI)──定義を押さえて正しくSSIを評価しよう!

I 骨関節感染症
  23 化膿性椎体炎──背中の痛みに潜む感染症を見逃さない!
  24 化膿性関節炎──早期診断と適切な治療で関節破壊を阻止する
  25 人工関節関連感染症──一度理解すれば簡単! 増加の一途をたどるPJIを早い段階で極めよう
  26 糖尿病性足壊疽──複数の診療科との連携が必要不可欠な感染症

J がんと感染症
  27 好中球減少性発熱──好中球減少患者の発熱に対して適切な抗菌薬を選択できる
  28 固形がん患者の感染症──固形がん患者特有の解剖学的異常を知る
  29 造血幹細胞移植後感染症──移植後の時期ごとの免疫不全の種類を知り,感染リスクを見極める
  30 サイトメガロウイルス感染症──サイトメガロウイルス再活性化のリスクと予防戦略を理解する
  31 HSV/VZV感染症──口唇から陰部,皮膚を中心に全身に広がる症状を見逃さない
  32 ウイルス性肝炎──B型肝炎のマネジメントを適切に行える

K HIV/STI
  33 急性HIV感染(acute HIV)問診から急性HIV感染を確実に拾い上げよう!
  34 梅毒──Great masqueraderの異名を持つ梅毒は,日常診療で潜在的に遭遇しうる!?
  35 尿道炎/骨盤内炎症性疾患──性交渉後の尿道痛,骨盤痛を極める
  36 アメーバ赤痢──性感染症としての側面も持つアメーバ感染症

L 旅行医学
  37 渡航後発熱──見逃してはいけない熱帯感染症を,なんとなく対症療法で帰していないか?
  38 ワクチン/トラベルワクチン──防ぎうる感染症をワクチンで予防しよう!

M 抗菌薬耐性とアレルギー
  39 多剤耐性グラム陰性腸内細菌──多剤耐性グラム陰性腸内細菌の特徴と有効なマネジメントが行えるようになる
  40 抗菌薬アレルギー──適切に抗菌薬アレルギーを問診し,適切に使用できる抗菌薬を増やすことができる

N 菌血症
  41 黄色ブドウ球菌菌血症──エビデンスベースでしっかり黄色ブドウ球菌菌血症をマネジメントできるか?
  42 腸球菌感染症──苦手意識を持ちがちな腸球菌感染症,しっかりワークアップをしないと足をすくわれる!?
  43 カンジダ血症──反射的に動く! あなたの初期治療が患者を救う

O 血液培養陽性シリーズ
  44 血液培養からグラム陽性球菌(GPC)が検出されたら──形態学から臨床診断にせまる! その1
  45 血液培養からグラム陽性桿菌(GPR)が検出されたら──コンタミネーションと真の菌血症を区別して考えよう
  46 血液培養からグラム陰性桿菌(GNR)が検出されたら──形態学から臨床診断にせまる! その2
  47 血液培養から酵母様真菌が検出されたら──頻度は多くないが命取りの病態! 迅速な判断を

P 感染症学習
  48 オンラインでの感染症学習に有用なサイト・アプリの紹介──感染症サイトやアプリを活用して自己学習を進めよう
  49 おすすめの感染症学会一覧──学会に積極的に参加してネットワークを広げよう
  50 おすすめの感染症セミナー・短期研修──院外のセミナーを積極的に活用し自施設では学べない分野にも強くなろう
  51 コンサルテーションを依頼する時の心得──相手への思いやりプレゼンテーションが鍵
  52 コンサルテーションを受ける時の心得──コンサルタントとしての重要な7つのポイントとは
  53 ケースレポートの書き方──1本の報告で世界に貢献できるケースレポートを発表しよう

Q 聖路加国際病院感染症科の取り組みの紹介
  54 ポケットカード,感染症シートの活用──“Teaching is learning”で,知識を定着させよう!
  55 マイクロラウンド・プレートカンファレンスの紹介──微生物検査室を研修医との教育の場に充てることができる
  56 ICUカンファレンスの取り組み──集中治療室のチームと協議することで,感染症の重症患者の適切なマネジメントを行うことと抗菌薬適正化および教育の機会を実践することができる
  57 ジャーナルクラブ──最新情報のアップデートの機会を逃すな!

巻末付録(GPC map/GNR map)
あとがき
索引

もっと知りたい!
 AmpC産生菌とは?
 腰椎穿刺前の頭部CT検査の適応は?
 リステリア髄膜炎のリスクファクター
 細菌性髄膜炎に対するステロイドの適応は?
 HIV患者の脳病変の鑑別疾患
 FilmArray®髄膜炎・脳炎(ME)パネルの臨床への有用性は?
 自己免疫性脳炎とウイルス性脳炎を区別するための予測スコア
 海綿静脈洞血栓症
 Milian's ear sign
 市中感染MRSA(community associated MRSA:CA-MRSA)のリスク
 真菌性の眼窩蜂窩織炎(orbital cellulitis)
 肺炎に対してステロイドは有用?
 二次性の細菌性肺炎や侵襲性肺アスペルギルス症にご用心!
 尿中抗原の感度・特異度,レジオネラはニューモフィラだけ
 アデノシンデアミナーゼ検査
 潜在性結核とその治療適応は?
 T-SPOTにも偽陽性がある
 インフルエンザ後,重症COVID-19後では侵襲性肺アスペルギルス症を考える
 CLABSIの予防にはどのようなものが推奨されているか
 カテーテルロック療法とバイオフィルム移行性のよい抗菌薬に関して
 繰り返す患者での治療戦略
 無症候性細菌尿の治療適応
 尿路感染症に対する抗菌薬の内服は何がよい?
 IDSAの新しいガイドラインでは,複雑性尿路感染症に対する経験的抗菌薬選択を最適化するために,4段階アプローチを提案している
 前立腺炎の分類にはどのようなものがあるか?
 水曝露の皮膚軟部組織感染症
 免疫不全者での皮膚軟部組織感染症
 侵襲性β溶血性レンサ球菌感染症における免疫グロブリン静注療法,クリンダマイシン投与のエビデンス
 SSI予防の術前抗菌薬投与について
 黄色ブドウ球菌のde-colonization(除菌)について
 化膿性椎体炎の治療後にフォローのMRIは必要か?
 椎体炎を疑った際の針生検の適応は?
 椎体炎の治療失敗はいつ起こりやすいか?
 化膿性関節炎の治療期間はどのくらい必要か?
 淋菌性関節炎を疑った際には?
 化膿性関節炎の外科的介入はいつ行うべきか?
 PJIはどの時期に最もよく起こりやすいか?
 骨髄炎の有無の評価
 緑膿菌をカバーすべきかどうか
 好中球減少性発熱の治療期間は?
 侵襲性アスペルギルスの中枢神経感染症?
 がん患者とClostridioides difficile(CD)腸炎
 リンパ囊胞とは
 膀胱がんに対するintravesical BCG治療後のBCGosis
 免疫チェックポイント阻害薬と感染症
 難治性CMV感染および臓器障害の定義とは?
 難治性CMV感染症に対する新機序の経口薬とは?
 妊婦におけるHSVによる急性肝不全
 シングリックス®による再発予防と帯状疱疹後神経痛(PHN)の予防
 HSV/VZV治療薬の使い分け
 再発性HSV感染症に対するファムシクロビルのPIT(patient-initiated therapy)療法
 HIV感染リスクの問診事項
 神経梅毒で,ペニシリンGとセフトリアキソン,どちらの治療でもいいのか?
 近年増加傾向の先天梅毒に注意
 Doxy-PEP
 キノロンへの耐性化に注意
 旅行者のcommon disease,旅行者下痢症
 重症型デング熱に注意
 人工内耳患者のワクチン
 耐性機序とAmbler分類
 抗菌薬アレルギーのデラベリング
 化学物質過敏症の定義
 βラクタム系抗菌薬でアレルギーが出たら?
 S. aureus 菌血症における感染性心内膜炎の予測スコアの比較
 デバイス関連のE. faecalis の感染性心内膜炎
 カンジダ血症で眼科診察はルーチンに行うべきか?
 カンジダ血症において感染症科コンサルテーションは必要か?
 血液培養のフォローは必要?
 L. monocytogenes のリスク
 GNR菌血症の治療期間
 BALANCE trial
 丸投げとは
 コンサルテーションの「モヤモヤ」の原因:認識やクオリティのずれと「べき」を見直す
 聖路加国際病院の取り組み:Willing CONSULTカード
 ジャーナル選び