解剖学用語
改訂13版
日本解剖学会監修による用語集。解剖学を学ぶすべての医療者必携の書
もっと見る
日本解剖学会監修による歴史ある用語集、20年ぶりの全面改訂。収録用語数は約8,400語。今版より日本語・ラテン語・英語を併記し、巻末には日本語・ラテン語・英語による3種類の索引を掲載。解剖学を学ぶすべての医療者必携の書。
更新情報
-
更新情報はありません。
お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。
- 序文
- 目次
- 書評
序文
開く
改訂13版の序
執筆者/坂井建雄(日本解剖学会 解剖学用語委員長)
ここに刊行された改訂13版は,我が国の『解剖学用語』の伝統を踏まえ,国際解剖学会議(International Federation of Associations of Anatomists, IFAA)の用語委員会(Federative Committee on Anatomical Terminology, FCAT)が編纂した“Terminologia Anatomica”(1998, Thieme)を尊重して,新たに編まれたものである.その第一歩にあたるものとして,1999~2002年度の解剖学用語委員会(清木勘治委員長)は2002年3月に『日本語による解剖学用語』を報告し,これは,日本解剖学会のホームページで公開された.2003~2006年度の解剖学用語委員会(坂井建雄委員長)は,廣川信隆理事長から日本語・ラテン語・英語の用語を含む新たな解剖学用語集を作成するようにとの委嘱を受けて,新しい解剖学用語集を編纂するための準備を始めた.基礎データの作成を前提に,編集作業と用語集の出版を複数の出版社に打診したところ,幸いにも医学書院に引き受けていただけることとなった.旧版の『解剖学用語』を出版していただいた丸善からも了解を得て,新たな用語集の編纂を始めることができた.
しかし『日本語による解剖学用語』の日本語の語彙と“Terminologia Anatomica”のラテン語・英語の語彙を照らし合わせて新しい用語集の語彙を確定することは,思いの外の難事業であった.用語委員は,領域を分担して新しい用語の確定作業を行ったが,2つの用語集の語彙の過不足と不一致にしばしば悩まされることとなった.これは,用語の配列が構造を持っておりその構造に依存して語彙が定められているという解剖学用語の特性を考えれば当然のことであり,またこの用語集がこれまでのものとは次元を異にするまったく新しい企画であった証左である.
我が国の『解剖学用語』はその初版以来,国際解剖学用語集の基本構造をもとに作られてきた.最初の国際解剖学用語集“Nomina Anatomica”(B.N.A.)は,1895年にバーゼルの解剖学会で制定され,各国語で書かれた用語の基準となるように,ラテン語で表記された.国際解剖学用語集はその後,1936年のイェナの解剖学会で大改訂され(J.N.A.),1955年のパリの国際解剖学会でも大改訂され(P.N.A.),それ以後小改訂を繰り返して1989年の“Nomina Anatomica”第6版に至った.この間,ラテン語で表記することと,最初の用語集以来の基本的な構造は保持された.我が国の『解剖学用語』は1987年の改訂12版まで,この国際解剖学用語集に準拠して日本語とラテン語で表記され,基本構造も変わらなかった.改訂12版では,「組織学用語」と「発生学用語」が新しく加えられ,それまでの肉眼解剖学領域の用語は「一般解剖学用語」として区別された.
しかしその後,国際解剖学用語集に大きな変化が生じた.1989年に新しく組織されたFCATのもとで,新しい国際解剖学用語集が企画され,1998年に“Terminologia Anatomica”として出版された.この用語集では,用語がラテン語と英語で併記されており,さらに用語配列の構造も大きく変化した.最も大きく変わったのは,中枢神経の領域である.これは学問の内容そのものが大きく発展した領域であり,これまでの用語集の基本構造および語彙が時代遅れになったことを意味している.同様の問題は,他の領域においても多かれ少なかれ生じていた.『解剖学用語』も時代とともに変化すべきものであることが痛感される.
1999~2002年度の解剖学用語委員会による『日本語による解剖学用語』では,“Terminologia Anatomica”で新たに加わった語彙に対応する日本語の用語が作られ,それまでの『解剖学用語』に付け加えられた.基本構造としては旧版の『解剖学用語』を踏襲し,不足する語彙を補ったものである.日本語の用語のみを表記したために,2つの用語集の間での基本構造と語彙の相違という根本的な問題は表面化することがなかった.今回の13版で取り組んだのは,この基本構造の異なる用語集を統合させ,伝統を生かしながら学問の進歩に対応するという,地道で困難な作業であった.幸いにも関係者の献身的な努力により,日本語・ラテン語・英語を対応させた用語集を,2期4年間にわたる用語委員会の任期中に完成させることができた.また,本用語集の作成が終盤に近づいた2006年9月1日から2カ月間にわたり,日本解剖学会のホームページ上で本用語集の語彙案を公開したところ多くの方からご意見を寄せていただき,用語集の内容を改善することができた.とはいえ,厳しい時間的な制約のために,すべての語にわたって十分な検討を尽くすことはできなかった.用語集の改訂が,今後の解剖学用語委員会の課題であり,本用語集を利用される方々からご指摘とご意見をお寄せいただくことを期待している.
今回の13版には,組織学用語と発生学用語を含めていない.FCATによる『国際組織学用語集』“Terminologia Histologica”の刊行が,今回の用語集に間に合わなかったことも一因ではあるが,構造化された用語集という形が,組織学と発生学という急速に発展する学問分野に相応しいかという根本的な問題も残されている.1895年の“Nomina Anatomica”では,肉眼解剖の領域に敢えて用語を絞ったこと,『解剖学用語』の12版で採用された組織学用語,発生学用語が,解剖学者からもあまり利用されなかったことも,考慮すべき点であろう.
『解剖学用語』の今後の課題として,医学の他の領域の用語との調整,デジタル情報化への対応,といった現代的な問題がある.とはいえ,解剖学の用語は,医学のあらゆる分野の基礎であり,多くの人が安心して使える安定した用語集であることが求められる.そこにこそ,単に語彙を羅列したのではない,構造化された用語集である『解剖学用語』が生き続ける理由があると思われる.
この用語集は,解剖学用語委員会のメンバーおよび医学書院医学書籍編集部の方々の緊密な協力と献身的な努力によりできあがった.『解剖学用語』および『日本語による解剖学用語』という伝統を残していただいた諸先輩,この用語集の編纂を温かく支援していただいた廣川信隆理事長を始め日本解剖学会の常務理事会および理事会の方々,さらに用語集に関心を寄せていただいた日本解剖学会のすべての会員の方々に感謝申し上げる.
2007年1月
執筆者/坂井建雄(日本解剖学会 解剖学用語委員長)
ここに刊行された改訂13版は,我が国の『解剖学用語』の伝統を踏まえ,国際解剖学会議(International Federation of Associations of Anatomists, IFAA)の用語委員会(Federative Committee on Anatomical Terminology, FCAT)が編纂した“Terminologia Anatomica”(1998, Thieme)を尊重して,新たに編まれたものである.その第一歩にあたるものとして,1999~2002年度の解剖学用語委員会(清木勘治委員長)は2002年3月に『日本語による解剖学用語』を報告し,これは,日本解剖学会のホームページで公開された.2003~2006年度の解剖学用語委員会(坂井建雄委員長)は,廣川信隆理事長から日本語・ラテン語・英語の用語を含む新たな解剖学用語集を作成するようにとの委嘱を受けて,新しい解剖学用語集を編纂するための準備を始めた.基礎データの作成を前提に,編集作業と用語集の出版を複数の出版社に打診したところ,幸いにも医学書院に引き受けていただけることとなった.旧版の『解剖学用語』を出版していただいた丸善からも了解を得て,新たな用語集の編纂を始めることができた.
しかし『日本語による解剖学用語』の日本語の語彙と“Terminologia Anatomica”のラテン語・英語の語彙を照らし合わせて新しい用語集の語彙を確定することは,思いの外の難事業であった.用語委員は,領域を分担して新しい用語の確定作業を行ったが,2つの用語集の語彙の過不足と不一致にしばしば悩まされることとなった.これは,用語の配列が構造を持っておりその構造に依存して語彙が定められているという解剖学用語の特性を考えれば当然のことであり,またこの用語集がこれまでのものとは次元を異にするまったく新しい企画であった証左である.
我が国の『解剖学用語』はその初版以来,国際解剖学用語集の基本構造をもとに作られてきた.最初の国際解剖学用語集“Nomina Anatomica”(B.N.A.)は,1895年にバーゼルの解剖学会で制定され,各国語で書かれた用語の基準となるように,ラテン語で表記された.国際解剖学用語集はその後,1936年のイェナの解剖学会で大改訂され(J.N.A.),1955年のパリの国際解剖学会でも大改訂され(P.N.A.),それ以後小改訂を繰り返して1989年の“Nomina Anatomica”第6版に至った.この間,ラテン語で表記することと,最初の用語集以来の基本的な構造は保持された.我が国の『解剖学用語』は1987年の改訂12版まで,この国際解剖学用語集に準拠して日本語とラテン語で表記され,基本構造も変わらなかった.改訂12版では,「組織学用語」と「発生学用語」が新しく加えられ,それまでの肉眼解剖学領域の用語は「一般解剖学用語」として区別された.
しかしその後,国際解剖学用語集に大きな変化が生じた.1989年に新しく組織されたFCATのもとで,新しい国際解剖学用語集が企画され,1998年に“Terminologia Anatomica”として出版された.この用語集では,用語がラテン語と英語で併記されており,さらに用語配列の構造も大きく変化した.最も大きく変わったのは,中枢神経の領域である.これは学問の内容そのものが大きく発展した領域であり,これまでの用語集の基本構造および語彙が時代遅れになったことを意味している.同様の問題は,他の領域においても多かれ少なかれ生じていた.『解剖学用語』も時代とともに変化すべきものであることが痛感される.
1999~2002年度の解剖学用語委員会による『日本語による解剖学用語』では,“Terminologia Anatomica”で新たに加わった語彙に対応する日本語の用語が作られ,それまでの『解剖学用語』に付け加えられた.基本構造としては旧版の『解剖学用語』を踏襲し,不足する語彙を補ったものである.日本語の用語のみを表記したために,2つの用語集の間での基本構造と語彙の相違という根本的な問題は表面化することがなかった.今回の13版で取り組んだのは,この基本構造の異なる用語集を統合させ,伝統を生かしながら学問の進歩に対応するという,地道で困難な作業であった.幸いにも関係者の献身的な努力により,日本語・ラテン語・英語を対応させた用語集を,2期4年間にわたる用語委員会の任期中に完成させることができた.また,本用語集の作成が終盤に近づいた2006年9月1日から2カ月間にわたり,日本解剖学会のホームページ上で本用語集の語彙案を公開したところ多くの方からご意見を寄せていただき,用語集の内容を改善することができた.とはいえ,厳しい時間的な制約のために,すべての語にわたって十分な検討を尽くすことはできなかった.用語集の改訂が,今後の解剖学用語委員会の課題であり,本用語集を利用される方々からご指摘とご意見をお寄せいただくことを期待している.
今回の13版には,組織学用語と発生学用語を含めていない.FCATによる『国際組織学用語集』“Terminologia Histologica”の刊行が,今回の用語集に間に合わなかったことも一因ではあるが,構造化された用語集という形が,組織学と発生学という急速に発展する学問分野に相応しいかという根本的な問題も残されている.1895年の“Nomina Anatomica”では,肉眼解剖の領域に敢えて用語を絞ったこと,『解剖学用語』の12版で採用された組織学用語,発生学用語が,解剖学者からもあまり利用されなかったことも,考慮すべき点であろう.
『解剖学用語』の今後の課題として,医学の他の領域の用語との調整,デジタル情報化への対応,といった現代的な問題がある.とはいえ,解剖学の用語は,医学のあらゆる分野の基礎であり,多くの人が安心して使える安定した用語集であることが求められる.そこにこそ,単に語彙を羅列したのではない,構造化された用語集である『解剖学用語』が生き続ける理由があると思われる.
この用語集は,解剖学用語委員会のメンバーおよび医学書院医学書籍編集部の方々の緊密な協力と献身的な努力によりできあがった.『解剖学用語』および『日本語による解剖学用語』という伝統を残していただいた諸先輩,この用語集の編纂を温かく支援していただいた廣川信隆理事長を始め日本解剖学会の常務理事会および理事会の方々,さらに用語集に関心を寄せていただいた日本解剖学会のすべての会員の方々に感謝申し上げる.
2007年1月
目次
開く
一般用語
人体についての用語
骨学
関節学;靱帯学
筋学
内臓学
消化器系
呼吸器系
泌尿器系
生殖器系
腹腔と骨盤腔
内分泌腺
脈管学
心脈管系
心臓
動脈
静脈
リンパ系
神経系
中枢神経系
末梢神経系
感覚器
索引
日本語索引
ラテン語-日本語索引
英語-日本語索引
人体についての用語
骨学
関節学;靱帯学
筋学
内臓学
消化器系
呼吸器系
泌尿器系
生殖器系
腹腔と骨盤腔
内分泌腺
脈管学
心脈管系
心臓
動脈
静脈
リンパ系
神経系
中枢神経系
末梢神経系
感覚器
索引
日本語索引
ラテン語-日本語索引
英語-日本語索引
書評
開く
英語併記によって進化した解剖学用語集
書評者: 柴田 洋三郎 (九州大副学長/日本解剖学会理事長)
『解剖学用語改訂13版』が,医学書院の全面的なご協力により出版された。この13版は,これまで『解剖学用語』として,過去12版を重ねた日本解剖学会用語集とは内容と性格を異にする。その意味では,改訂版と呼ぶのは不適切で,新版とみなすにふさわしい。まず大きな相違点として,従来はラテン語のNomina Anatomicaに準拠して,日本語の解剖学名を定めていたのに対し,今回13版からは,国際解剖学会連合(IFAA)の用語委員会(FCAT)において編纂された英語学名とラテン語によるTerminologia Anatomica(1998,Thieme)を尊重し,日本解剖学会の解剖学用語委員会においてあらたに編集された点が挙げられる。すなわち,これまでの正式な解剖学名はラテン語という不文律にとらわれず,英語の解剖学名も同等に扱い併記した点で,画期的なものとなっている。従来,特に臨床の先生方から,英語の解剖学名が教科書によってもまちまちで困る,何とか統一できないものかという苦情を承り,苦慮していた。これからは自信を持って,本書記載の英文解剖学名をお薦めできる。
これは,単にラテン語から英語と日本語に翻訳するという機械的な単純作業では決してない。解体新書の発刊にまつわる苦辛譚「蘭学事始」に比すべくもないが,「日本語による解剖学用語」(2002年)の編纂作業を含めると,足掛け7年本書の編纂にあたった解剖学用語委員会は,「思いの外難事業であった」由,それは「用語の配列が構造を持っており,その構造に依存して語彙が定められているという解剖学用語の特性を考えれば当然のことであり,またこの用語集がこれまでのものとは次元を異にするまったく新しい企画であった証左である」と坂井建雄委員長が序文に披瀝しておられる。すなわち従来の12版までは,先述の如くラテン語のみのNomina Anatomicaに準拠し,その基本構造に基づいて日本語解剖学名を定めていた。ところが,今回国際的に新たに採択されたTerminologia Anatomicaの用語体系に則り,自ずと配列の構造も大きく変化した。一見してもっとも変化の大きいのは,中枢神経の領域である。これは学問の発展により,これまでの用語集の基本構造および語彙が時代にあわなくなったことを意味している。したがって,従来の解剖学用語との継続性と整合をとりつつも,最近の研究成果に基づきあらたな用語構造を構築する作業となった。解剖学用語も進化するのである。
本の体裁も,英語の解剖学名が加わった分,大振りとなったが,それ以上に楽しいことに,総計259頁に及ぶ日本語,ラテン語―日本語,英語―日本語と3種類の索引欄が巻末に新設され,本文の総頁数を凌駕している。特にこの3言語は品詞の語配列などそれぞれに特徴があるので,思いがけないことに気付かされたりする。一例を挙げれば,英語索引ではanteriorとposteriorの項目数はほぼ同じだが,日本語では,前が最初に来る項目は450程なのに対して,後が最初の項目は350程とずっと少ない。なぜでしょう。世に辞書マニアという趣味の人々がいるそうだ。解剖学用語集というと,とかく無味乾燥,人によっては学生時代の悪夢がよみがえるかもしれない。しかし解剖学名集という言葉の海を漂いつつ,改めて索引など眺め回していると,誠に楽しく人体用語マニアとなってしまいそうだ。
書評者: 柴田 洋三郎 (九州大副学長/日本解剖学会理事長)
『解剖学用語改訂13版』が,医学書院の全面的なご協力により出版された。この13版は,これまで『解剖学用語』として,過去12版を重ねた日本解剖学会用語集とは内容と性格を異にする。その意味では,改訂版と呼ぶのは不適切で,新版とみなすにふさわしい。まず大きな相違点として,従来はラテン語のNomina Anatomicaに準拠して,日本語の解剖学名を定めていたのに対し,今回13版からは,国際解剖学会連合(IFAA)の用語委員会(FCAT)において編纂された英語学名とラテン語によるTerminologia Anatomica(1998,Thieme)を尊重し,日本解剖学会の解剖学用語委員会においてあらたに編集された点が挙げられる。すなわち,これまでの正式な解剖学名はラテン語という不文律にとらわれず,英語の解剖学名も同等に扱い併記した点で,画期的なものとなっている。従来,特に臨床の先生方から,英語の解剖学名が教科書によってもまちまちで困る,何とか統一できないものかという苦情を承り,苦慮していた。これからは自信を持って,本書記載の英文解剖学名をお薦めできる。
これは,単にラテン語から英語と日本語に翻訳するという機械的な単純作業では決してない。解体新書の発刊にまつわる苦辛譚「蘭学事始」に比すべくもないが,「日本語による解剖学用語」(2002年)の編纂作業を含めると,足掛け7年本書の編纂にあたった解剖学用語委員会は,「思いの外難事業であった」由,それは「用語の配列が構造を持っており,その構造に依存して語彙が定められているという解剖学用語の特性を考えれば当然のことであり,またこの用語集がこれまでのものとは次元を異にするまったく新しい企画であった証左である」と坂井建雄委員長が序文に披瀝しておられる。すなわち従来の12版までは,先述の如くラテン語のみのNomina Anatomicaに準拠し,その基本構造に基づいて日本語解剖学名を定めていた。ところが,今回国際的に新たに採択されたTerminologia Anatomicaの用語体系に則り,自ずと配列の構造も大きく変化した。一見してもっとも変化の大きいのは,中枢神経の領域である。これは学問の発展により,これまでの用語集の基本構造および語彙が時代にあわなくなったことを意味している。したがって,従来の解剖学用語との継続性と整合をとりつつも,最近の研究成果に基づきあらたな用語構造を構築する作業となった。解剖学用語も進化するのである。
本の体裁も,英語の解剖学名が加わった分,大振りとなったが,それ以上に楽しいことに,総計259頁に及ぶ日本語,ラテン語―日本語,英語―日本語と3種類の索引欄が巻末に新設され,本文の総頁数を凌駕している。特にこの3言語は品詞の語配列などそれぞれに特徴があるので,思いがけないことに気付かされたりする。一例を挙げれば,英語索引ではanteriorとposteriorの項目数はほぼ同じだが,日本語では,前が最初に来る項目は450程なのに対して,後が最初の項目は350程とずっと少ない。なぜでしょう。世に辞書マニアという趣味の人々がいるそうだ。解剖学用語集というと,とかく無味乾燥,人によっては学生時代の悪夢がよみがえるかもしれない。しかし解剖学名集という言葉の海を漂いつつ,改めて索引など眺め回していると,誠に楽しく人体用語マニアとなってしまいそうだ。