レジデントのための腎臓病診療マニュアル 第4版
腎臓病診療のスタンダードを示す、決定版マニュアル
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「まず、患者を診よう」
腎臓病診療に携わるすべての医師必携、スタンダードマニュアルの4版。腎臓病学の広範なトピックをカバーする好評のスタイルはそのままに、コンサルテーション、身体診察、急性腎臓病(AKD)、リハビリテーションなど新たなトピックも充実。「今目の前にいる患者の何を診るか」「症状とエビデンスをどう擦り合わせるか」“現場主義”の腎臓病診療の進め方がわかる1冊。
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序文
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4版の序
5年以上の間をおいて,本書の改訂版を完成させることができた.この間,新型コロナウイルスのパンデミックだけでなく,ネットやAIの進歩などで,世の中はずいぶん変わったように感じる.膨大な量の,内容も質もさまざまな情報が日々蓄積し,溢れるようになり,その中から最も真実に近く,役に立つ情報を見出すのが,重要な能力になってきている.
インターネットを通じて,新しい情報を集めるのが飛躍的に容易になったいま,本書のような紙の書籍の役割と価値は何であろうか.もう必要がなくなるのだろうか.
今後,病歴聴取が自動化し,検査の結果がより短時間に戻って来て,POCUSなどの手軽な診断法が進み,鑑別診断と治療方針をChatGPTが提案するようになっても変わらないものは,人間の考える力である.これさえ,早晩AIに追い越されると言われているが,これが人の人たる所以であり,全く新しいことを生み出す源泉であることは,疑いのない事実である.
本書はこれまで,新しい知識をもれなく積み重ねることではなく,考え方の筋道をしっかりと身につけて,未知のことにも対応できることを目標に編集してきた.今回嬉しいことに,この本で腎臓医としての最初の勉強をした人たちを,執筆陣に多数加えることができた.このことは,基本となる姿勢の価値は不変であることを示していると思う.
本書を通じて,きちんとした診療姿勢と臨床推論ができる人がさらに増えていくことを期待したい.長々と編集に付き合っていただいた,医学書院の井上岬さんに深謝したい.
2024年 次世代への期待を込めて
深川雅史,安田 隆
4版の出版にあたり──深川先生の訃報を受けて──
深川雅史先生の訃報が飛び込んできたのは2024年11月11日の日本腎臓学会広報からのメール連絡であった.あまりに突然の悲報に接し,呆然となったことを今でも鮮明に覚えている.
その少し前の10月20日,深川先生より,学会出張先から帰りにバスに乗る際に転倒し頭を強打して外傷性硬膜下血腫となり,ワーファリン服用中なので様子見に飯田橋のJCHO東京新宿メディカルセンター(以前の東京厚生年金病院)に入院したという連絡を受けた.10月25日に面会に伺った際にはリハビリも行っており,とても元気であった.10月26日には無事外出,そして10月31日には退院して下北沢に戻ったと連絡をもらっていた矢先のことであった.
深川先生は腎臓学のさまざまな分野で大活躍されており,特にCKD-MBDの分野では日本のリーダーであるとともに世界的にもリーダーシップを発揮されていた.11月12日の November 2024 issue of KDIGO Directには,“KDIGO Acknowledges Passing of Masafumi Fukagawa”と題し,深川先生の写真入りの業績とその死を悼む文が掲載された.また,日本腎臓学会誌(67巻2号)には駒場大峰先生(東海大学医学部内科学系腎内分泌代謝内科)の「深川雅史先生を偲んで」,日本透析医学会雑誌(58巻2号)には角田隆俊先生(東海大学医学部付属八王子病院腎内分泌代謝内科)の「深川雅史先生を偲んで」が掲載され,その幅広い活躍ぶりと人間性を改めて思い出すことができた.
私と深川先生は,1992年にテネシー州ナッシュビルにあるバンダービルト大学の腎臓内科に留学した際に,同時期に留学されていたのを機に知り合い,その後,勉学に,遊びにたびたびご一緒し,家族共々親しくさせていただいた.日本に戻ってからも親交は続き,いくつかの図書を一緒に執筆した.その1つが『レジデントのための腎臓病診療マニュアル』である.
これまでの腎臓の本にはない,腎臓病学の臨床の非常に幅広い分野を網羅した,腎臓学の若手医師が参照できる本を作ろうという深川先生の強い意図のもと編集を行った.そして,最新の知見に即しつつ,目の前の患者さんをどう診るか,その過程でどう考えていくのか,病態をどのように理解していくのかがわかるように記載することにより,「目の前の患者さんを診て,考える」ことができる診療への姿勢を養える内容とすることを目標として制作した.幸いなことに好評を得ることができ,第3版まで出版することができた.
東海大学腎内分泌代謝内科教授を退官される直前に,最後の仕事として『レジデントのための腎臓病診療マニュアル』の第4版を作りたいと相談を受けた.深川先生は研究のみならず教育にも非常に熱心であったが,その最後の仕上げとして本書を仕上げたいのだと話されていた.
それからだいぶ時間を要してしまったが,多数の方々の協力を得て深川先生の遺志に従って出版までこぎ着けたことを非常にうれしく思う.
2025年7月
安田 隆
目次
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1章 病態とエビデンスに基づいた論理的アプローチのために
A 腎臓病診療の特徴
B 腎臓病診断のプロセス:臨床推論
C 臨床研究の活かしかた,つくりかた
D 腎臓病診療へのビッグデータ・コホートデータの活かしかた
E エビデンスとガイドライン
F コンサルテーションのしかた
G 腎臓病診療とプロフェッショナリズム
H 治療方針決定のプロセス
I 腎疾患の遺伝カウンセリング
J 患者からみた腎臓病診療
K 腎臓病に対する社会保障制度
L 腎臓病診療におけるAIの活用
M 腎臓病診療における医療経済学の考えかた
2章 腎臓病患者への一般的アプローチ
A 腎臓病診療に有用な身体診察
B 主要症候と診断への手がかり
C 腎尿路の検査──その選択,実際と解釈
D 腎臓病患者の症候とQOL
3章 水電解質・酸塩基平衡異常患者へのアプローチ
A 水・Na代謝異常の診断と治療
B 輸液の基本
C 利尿薬の作用機序と使いかた
D K濃度異常の診断と治療
E 酸塩基平衡異常の診断と治療
F Ca・P・Mg濃度異常の診断と治療
4章 高血圧患者へのアプローチ
A 高血圧と腎臓病
B 高血圧の診断
C 高血圧を伴うCKD患者をみたら
D 高血圧の治療
E 降圧薬の特徴と腎臓病患者での使い方
5章 急性腎障害(AKI)患者へのアプローチ
A AKI患者へのアプローチ
B ICUにおけるAKIと critical care nephrology
6章 急性腎臓病(AKD)
7章 保存期CKD患者へのアプローチ
A CKDとその進展機序
B CKDの進行予防
C CKDの症候・合併症への対応
D 緊急時(災害,パンデミック)のCKD診療
8章 腎代替療法を必要とする患者へのアプローチ
A 腎代替療法の原理と選択
B 腎代替療法への導入のタイミングと管理
C 緊急時(災害・パンデミック)の腎代替療法
D 保存的腎臓療法(CKM)の実際
9章 保存期から導入後にわたり長期管理の必要な併発症へのアプローチ
A 総論:CKD患者の予後と併発症
B CKD患者の心血管イベントリスク
C CKD-MBDの管理
D 貧血の管理
10章 腎移植患者へのアプローチ
A 総論
B 移植と透析の比較
C 腎移植の適応・術前評価(レシピエントとドナー)
D 免疫抑制薬の注意点
E 入院や緊急対応を要するレシピエントの管理
F レシピエントフォローアップにおけるCKD合併症を含めた内科管理
G 生体腎ドナーの長期フォロー
11章 糸球体疾患患者へのアプローチ
A 糸球体疾患を疑うとき,疑ったら
B ネフローゼ症候群の診断と治療
C 慢性腎炎症候群の診断と治療
D 急速進行性腎炎症候群の診断と治療
E 急性腎炎症候群の診断と治療
F 遺伝性糸球体性疾患
12章 尿細管・間質疾患患者へのアプローチ
A 尿細管・間質疾患を疑うとき,疑ったら
B 尿細管機能異常をきたす疾患の診断と治療
C 尿細管間質性腎炎をきたす疾患の診断と治療
13章 よくみられる二次性腎疾患へのアプローチ
A 糖尿病に伴う腎疾患
B 膠原病に伴う腎疾患
C 動脈硬化に基づく疾患
D 血管炎に基づく疾患
E 血栓性微小血管症(TMA)に伴う腎疾患
F Monoclonal gammopathyに伴う腎疾患
G その他の腫瘍性疾患に伴う腎疾患
H 肝疾患に伴う腎疾患
I 感染症に伴う腎疾患
J 薬剤による腎障害
14章 囊胞性腎疾患患者へのアプローチ
15章 遺伝性腎疾患へのアプローチ
16章 閉塞性腎障害患者へのアプローチ
17章 尿路感染症患者へのアプローチ
18章 尿管結石患者へのアプローチ
19章 小児の腎尿路疾患患者へのアプローチ
A 総論
B 各論
C 小児への腎代替療法
D 小児腎臓病患者の長期ケア
20章 腎障害をもつ患者の妊娠出産へのアプローチ
21章 腎障害をもつ患者への薬物投与
22章 CKD患者の栄養管理
23章 腎臓病患者のリハビリテーション
索引