専門医のための腎臓病学 第3版
“臨床志向”の専門医向けのテキスト。13年ぶりの大改訂!
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高度の知識と技術が要求される腎臓専門医と、専門医を目指す医師に向けて編集されたテキストが13年ぶりに大改訂。腎臓病学を総合的に学ぶという初版以来のコンセプトを引き継ぎつつ、最新の知見を盛り込み、内容をアップデート。腎臓病診療の第一線で活躍するエキスパートが執筆者となり、昨今、臨床医学においてさらに重要性を増している「腎臓病学」を臨床的な視点に基づいて解説する。
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序文
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第3版 序
近年,臨床医学における腎臓病学の重要性は一層高まっている.腎臓は「沈黙の臓器」といわれているように特徴的な症状が出にくく,明らかにされた時には腎機能がすでに悪化していることが多い.また,腎臓は「全身の鏡」といわれるほど全身の病態を反映する重要な臓器でもある.腎臓自体に発症する一次性腎障害のみならず,糖尿病や高血圧のような全身性疾患による二次性腎障害から末期腎不全に進展する患者が,ますます増加している.腎臓専門医を中心に腎代替療法導入の阻止に向けて努力しているが,日本透析医学会が実施した施設調査票に基づく報告では,2021年末時点で慢性透析療法を受けている患者総数は349,700人であった.この患者数を減少させるため,腎臓専門医には尿所見と腎関連症状の把握とともに,水・電解質代謝異常や酸・塩基平衡異常の理解ならびに腎病理所見や画像所見の解析による腎疾患の診断と治療,さらには透析療法,移植医療まで,極めて広範囲にわたる高度な知識と技術が求められている.
2002年に腎臓病の基本事項と最新の知見を披瀝することを目的として本書の初版が上梓された.その後,2009年に改訂第2版が上梓され,多くの皆さんにお読みいただいたと聞いている.第2版から14年たった現在,医学・医療の著しい進歩のなかで腎臓病学においても新たな知見やトピックスが集積されてきたことから,このたび改訂第3版を上梓することとなった.
今版では,腎臓病診療にすぐに役立つ実践書を目指すという初版の趣旨に沿い,臨床に密着した立場から内容の充実を図った.構成は第2版に従い,3部構成とした.すなわち,「I.症候編」では腎疾患にみられる尿所見と主要な症候を取り上げた.「II.疾患総論(疾患概念)」では,急性腎障害(AKI),慢性腎臓病(CKD),メタボリックシンドロームと腎,サルコペニア・フレイルと腎の4項目を取り上げている.また,「III.疾患各論」では,臨床の場で高頻度に経験する腎疾患を中心に,最新の知見を加筆・改訂した.成人のみならず小児にもみられる疾患については,初版・第2版と同様に「小児科の視点」を加えたので,腎臓病学を総合的に学ぶことができると思われる.
今回の改訂にあたっては,ご多忙のところ執筆にご協力いただいた諸先生にお礼申し上げる.わが国の腎臓専門医とそれを目指す先生方の座右の書として,装いを新たにした本書をご活用いただければ幸いである.最後に,本書の刊行にご尽力いただいた医学書院の皆さまに深謝する.
2023年4月
監修・編集者一同
目次
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I 症候編
1 蛋白尿
生理的蛋白尿・微量アルブミン尿・顕性蛋白尿の鑑別
腎生検の適応・注意点・禁忌
糸球体の構造と蛋白尿の出現機序
2 血尿
尿沈渣
足細胞(ポドサイト)
肉眼的血尿を示す疾患の画像診断
3 膿尿
4 尿糖
5 乏尿,無尿,多尿
乏尿・無尿
多尿
腎機能検査──糸球体濾過量
腎機能検査──クリアランスの概念
6 浮腫
7 頻尿
8 排尿痛
9 夜間尿と尿濃縮
夜間尿
尿濃縮
10 高血圧
新診断基準,分類
レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系
11 電解質異常
高・低Na血症,高・低Cl血症
高・低K血症,高・低Mg血症
高・低Ca血症,高・低P血症
体液量調節における尿細管の生理とADH分泌過剰症(SIADH)
12 酸・塩基平衡異常
II 疾患総論(疾患概念)
1 急性腎障害(AKI)
2 慢性腎臓病(CKD)
3 メタボリックシンドロームと腎
4 サルコペニア・フレイルと腎
III 疾患各論
1 急性腎障害
急性腎障害
小児科の視点
血液浄化療法
2 慢性腎臓病
慢性腎臓病
維持血液透析療法
CAPD療法
長期透析療法の合併症
腎移植
小児科の視点
3 急性糸球体腎炎
急性糸球体腎炎
小児科の視点
4 急速進行性糸球体腎炎
管外増殖性糸球体腎炎
抗糸球体基底膜抗体型急速進行性糸球体腎炎とGoodpasture症候群
IgA-dominant IRGN(MRSA関連腎炎を含む)
ANCA関連腎炎
5 ネフローゼ症候群
ネフローゼ症候群
小児科の視点
6 メサンギウム増殖性糸球体腎炎──IgA腎症
メサンギウム増殖性糸球体腎炎──IgA腎症
小児科の視点
7 膜性腎症
8 膜性増殖性糸球体腎炎
膜性増殖性糸球体腎炎
小児科の視点
9 家族性・遺伝性疾患
Alport症候群
家族性良性血尿──菲薄基底膜病
家族性良性血尿──nutcracker現象
Fabry病
ネイルパテラ症候群
多発性囊胞腎──常染色体顕性多発囊胞腎
多発性囊胞腎──常染色体潜性多発囊胞腎
小児科の視点
10 膠原病と類縁疾患による腎障害
ループス腎炎
関節リウマチ
強皮症
Sjögren症候群
結節性多発動脈炎
多発血管炎性肉芽腫症
好酸球性多発血管炎性肉芽腫症
11 IgG4関連腎臓病
12 紫斑病性腎炎──IgA血管炎
紫斑病性腎炎──IgA血管炎
小児科の視点
13 肝疾患と腎糸球体病変
HBV関連腎症
HCV関連腎症
肝性IgA腎症
14 クリオグロブリン血症に伴う腎病変
15 アミロイド腎症
16 多発性骨髄腫に伴う腎障害
骨髄腫腎
単クローン性免疫グロブリン沈着症
17 悪性腫瘍と腎障害
18 Fibrillary glomerulonephritis/Immunotactoid glomerulopathy
19 リポ蛋白糸球体症
20 腎硬化症
良性腎硬化症
悪性腎硬化症
21 腎血管性高血圧
22 糖尿病性腎臓病
23 妊娠時の腎機能,妊娠高血圧症候群
24 痛風腎
25 溶血性尿毒症症候群
溶血性尿毒症症候群
小児科の視点
26 尿細管間質性腎炎(急性・慢性)
尿細管間質性腎炎(急性・慢性)
小児科の視点
27 尿細管機能異常
腎性糖尿
腎性尿崩症
Dent病(特発性尿細管性蛋白尿症)
Gitelman症候群
尿細管性アシドーシス
Bartter症候群
Liddle症候群
Fanconi症候群
シスチン尿症
家族性低リン(P)血症性くる病
家族性低尿酸血症(腎性低尿酸血症)
28 中毒性腎症
29 尿路感染症
尿路感染症
上部尿路感染症
小児科の視点
30 尿路結石症
索引
書評
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研究に裏打ちされた腎臓病診療のいまがわかる実践書。
書評者:松尾 清一(国立大学法人東海国立大学機構機構長)
現代日本においては少子高齢化がますます進み,2021年の段階で65歳以上人口が28.9%という超々高齢社会(評者の造語。ちなみに7%以上は高齢化社会,14%以上は高齢社会,21%以上は超高齢社会と定義されている)になっており,今後も一層高齢化が進むと予測されている。寿命の延長は世界的に進んでおり,人生百年時代の提唱者で,『ライフシフト―100年時代の人生戦略』(東洋経済新報社,2016年)の著者リンダ・グラットンさんらによると,若い世代ほど寿命は長く,2007年に日本で生まれた子供の半分は107歳まで生き,先進国では軒並み100歳を超えると予測されている。つまり,現代では人の寿命は100年が当たり前の時代になっている。
私たちが100年間,生命を保つだけでなく,人として社会とかかわりながら生きてゆくためにはあらゆる臓器がお互いに連関しながら,しっかりとその機能を保つことが重要であり,いうまでもなく,腎臓はその要となる臓器の一つである。また,腎臓は万一その機能を失ったときでもそれを代替する治療法が発達し,日常生活を継続できる数少ない臓器でもある。このような進歩は,極めて多くの研究者による病態の解明とそれに基づく治療への応用という気の遠くなるような努力の積み重ねがあってのことである。このような努力はいまも日々続けられており,それらの新たな知見は順次,実臨床の場で応用されている。
本書はタイトルにあるとおり,腎臓専門医のために書かれたテキストブックであるとともに,実践に役立つ書となるよう編さんされている。これまで2002年に初版,2009年に第2版が発行されており,多くの腎臓専門医に活用されてきた定番の書でもある。しかし第2版発行から14年が経過し,この間,サイエンスの進歩は目覚ましく,腎臓病の研究は大きく進展し,臨床もその恩恵を受けている。このような中で待望されていた第3版は,これまでの長所は残しながらも,最先端の知見を豊富に加えて,充実した内容となっている。実践書の側面も有する本書では,最初に症候論があり,それに続いて疾患概念,そして疾患の各論があるというわかりやすい三部構成が継承されている。専門医向けには病態生理から診断,治療に至るまで,最新の研究成果や知見が簡潔に整理され,今後の課題も記されている。腎臓専門医やphysician scientistをめざす若手医師にとっても大いに刺激になる書であることは間違いがない。実際に各項はそれぞれ,日本腎臓学会を代表する専門医によって執筆されており,まさに,これ一冊で腎臓病研究に裏打ちされた腎臓病診療が一目瞭然にわかる書となっている。一人でも多くの関係者に,ぜひ活用していただきたい書である。
腎臓病診療を幅広く系統的に学びたい人への一冊。
書評者:槇野 博史(岡山大学前学長/香川県病院事業管理者)
2023年6月に13年ぶりの大改訂により『専門医のための腎臓病学 第3版』が医学書院より出版された。本書は臨床の第一線の場で,腎臓病患者を診療する臨床医はもちろん,これから腎臓専門医をめざそうという研修医・若手医師を対象として,現時点における腎臓病学に関する最新の知見を披歴することを目的として2002年に初版が刊行されたものであり,20年以上版を重ねるロングセラーである。
今回の編集者は日本腎臓学会前理事長の柏原直樹特任教授,現理事長の南学正臣教授,腎臓領域の研究をリードされている柳田素子教授,小児腎臓病領域の第一人者の金子一成教授の4人である。各項の執筆者はその領域に精通し第一線で活躍しておられる専門家が選ばれており,内科のみならず小児腎臓専門医においても本書を活用していただきたい。
本書は「I.症候編」「II.疾患総論(疾患概念)」と「III.疾患各論」の3部構成であるが,この13年間の腎臓分野における進歩を反映して疾患総論(疾患概念)の部では「急性腎障害(AKI)」と「サルコペニア・フレイルと腎」が,疾患各論の部では「IgG4関連腎臓病」と「悪性腫瘍と腎障害」が追加されている。
“人は血管とともに老いる”という言葉がある。超高齢社会を迎えたわが国において慢性腎臓病患者はサルコペニア・フレイルを保存期から高率に合併しており,慢性腎臓病患者に対して良質な医療を施す上で考慮すべき重要な項目となっている。超高齢者という項目を加えて老年医学の観点からさらなる深掘りがあれば,日常診療に役立つと思われる。
また,IgG4関連腎臓病は新しい疾患概念で,評者が日本腎臓学会の理事長を務めていた2009年にIgG4関連腎臓病ワーキンググループを立ち上げ,「IgG4関連腎臓病診療指針」を発刊し,その啓発に努めたのを懐かしく思い出した。
各項に関係する文献を,二次元バーコード(QRコード)あるいはURL参照とすることで見やすくなっているが,それでもなお総ページ数が第2版より40ページも増えている。腎臓病学の発展が著しいことの証しである。今後さらに内容が充実するようであれば,本書を持ち歩くのが重くて大変になるので,分冊化の検討が必要かもしれない。電子版も同時に発行されており,こちらでの活用も検討していただきたい。
先日,日本腎臓学会学術総会に久しぶりに出席し,現役で活躍している先生方から最近の腎臓病の進展についてお教えいただいた。日常診療に当たっては最新の知識を患者さんの診療に生かすことが必要であり,学会に出席することも重要である。しかし,そこで学べなかったことやさらに幅広く系統的に学びたいときに役立つのが本書である。
ぜひ手元に置いて総合的に腎臓病学を学んでほしい。
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