神経内科学 第6版

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理学療法士・作業療法士養成校向けの教科書として版を重ねる好評書。専門基礎分野のカリキュラムに沿い神経内科学に関する知識を体系的に学ぶことができる。「高次脳機能障害」に新たに「社会的行動障害(感情のコントロール障害)」を追加した。豊富でわかりやすいイラストはさらにブラッシュアップし、神経内科症候がより具体的にイメージできるようになっている。

*「標準理学療法学・作業療法学」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ 標準理学療法学・作業療法学 専門基礎分野
編集 川平 和美
編集協力 下堂薗 恵
発行 2024年12月判型:B5頁:432
ISBN 978-4-260-05667-0
定価 6,380円 (本体5,800円+税)

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第6版 序

 近年の神経疾患の診断,治療,リハビリテーション医療は大きな変貌を遂げつつある.顕著なものでは,遺伝子診断や機能画像など多くの診断技術の進歩,遺伝子治療や神経系の再生医療などの治療の進歩があった.それを受けて,リハビリテーション治療を含め,これまでの治療成績に基づいて優れた治療を推奨する治療ガイドラインが多くの疾患や障害について策定されてきている.

 本書はリハビリテーション医療の対象となる神経疾患の病態と診断,治療についての知識を提供し,さらに個々の障害に対する評価法と基本的なリハビリテーション治療への理解を深めてもらうことを目標にして,PT・OTを目指す学生諸氏が学習すべきポイントを明確にすることに努めている.

 今回の改訂にあたっては,新たに鹿児島大学リハビリテーション医学の大濵倫太郎先生,上野真先生,廣畑俊和先生に分担執筆をお願いして,これまでにない大幅な改訂となった.特に神経疾患各論の「脳血管障害」「小児神経疾患」などの章は一から内容を見直し,内容的にもアップデートされて充実している.

 各種の診療ガイドラインに沿った記述を追加しているが,国民皆保険や回復期病棟,介護保険とリハビリテーション医療の条件に恵まれ,新たなリハビリテーション治療法の開発が進んでいる日本の特殊性を配慮して,脳血管障害や小児のリハビリテーション治療については大きな追加や変更を加え,科学的で客観的評価に基づく「患者にやさしく,効果的な」治療法の選択を強調した.

 医療の高度化,専門化のなかで,リハビリテーションにかかわるスタッフに求められる知識は著しく増加し,最先端の医学・医療から社会福祉までに関する幅広い知識が求められている.

 初版の序文にもふれたが,リハビリテーションにかかわるスタッフが修得すべき知識を明確に区分することは困難であるが,病因・病態への対処よりも疾病がもたらす機能障害や活動制限とそれらに対するリハビリテーション治療であろうと考える.しかしながら,それらの治療を安全に実施するためには,疾病の病因,病態の理解も必要であるし,チーム医療における職種間の情報共有にはこれらの医学的知識が不可欠なものである.

 超高齢社会においてリハビリテーション医療はすべての領域にかかわる基盤的医療である.リハビリテーションにかかわるスタッフは,多忙ななかにあってもリハビリテーション医療が目指してきた障害の軽減という本来の目標を念頭において,積極的な姿勢で障害に対応することをお願いしたい.

 最後に,貴重な資料を提供いただいた倉津純一先生,鄭忠和先生,粟博志先生,松田幸久先生,木佐俊郎先生ほかに深く感謝を申し上げる.

 2024年9月
 川平 和美
 

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序説 PT・OT と神経内科学のかかわり

I 序論
 1 障害とリハビリテーションプログラム
  A リハビリテーションの概念
  B 障害とリハビリテーション
  C 医療的リハビリテーションと診療報酬
  D 地域リハビリテーション
  E 理学・作業療法との関連事項
 2 中枢神経系の解剖と機能
  A 神経系の構成
  B 神経の発達と加齢
  C 中枢神経の構造
  D 中枢神経を囲む構造と髄液
  E 中枢神経系の機能
  F 末梢神経
  G 神経の再生と可塑性
  H 歩行
  I 理学・作業療法との関連事項

II 神経学的診断法
 3 神経学的診断と評価
  A 神経学的診断の実際
  B 体幹・四肢の診療と検査
  C 障害の評価
  D 理学・作業療法との関連事項
 4 神経学的検査法
  A 画像診断
  B 神経生理学的検査
  C 自律神経機能検査
  D 腰椎穿刺と血液生化学検査,その他
  E 理学・作業療法との関連事項

III 神経症候学
 5 意識障害,脳死,植物状態
  A 意識障害
  B 脳死,植物状態
  C 理学・作業療法との関連事項
 6 頭痛,めまい,失神
  A 頭痛
  B めまい
  C 失神
  D 理学・作業療法との関連事項
 7 運動麻痺,錐体路徴候,筋萎縮
  A 運動麻痺と錐体路徴候
  B 筋萎縮
  C 理学・作業療法との関連事項
 8 錐体外路徴候,不随意運動
  A 錐体外路徴候
  B 錐体外路の障害
  C 理学・作業療法との関連事項
 9 運動失調
  A 運動失調とは
  B 評価法
  C リハビリテーション
  D 理学・作業療法との関連事項
 10 感覚障害
  A 分布と特徴
  B 理学・作業療法との関連事項
 11 高次脳機能障害:総論/失語症
  A 高次脳機能障害──総論
  B 失語症の特徴
  C 言語中枢の発達と機能
  D 失語症の診断
  E 失語症の評価
  F 失語症のリハビリテーション
  G 理学・作業療法との関連事項
 12 高次脳機能障害:失認
  A 概念と分類
  B リハビリテーション
  C 理学・作業療法との関連事項
 13 高次脳機能障害:失行
  A 概念と分類
  B 高次運動障害
  C 理学・作業療法との関連事項
 14 高次脳機能障害:記憶障害
  A 記憶とは
  B 記憶障害
  C リハビリテーション
  D 理学・作業療法との関連事項
 15 高次脳機能障害:注意障害
  A 概念と分類
  B 検査法
  C リハビリテーション
  D 対応法
  E 理学・作業療法との関連事項
 16 高次脳機能障害:遂行機能障害
  A 概念と分類
  B 検査法
  C リハビリテーション
  D 理学・作業療法との関連事項
 17 高次脳機能障害:社会的行動障害(感情・行動のコントロール障害)
  A 概念
  B 症状
  C 検査法
  D 対応
  E 理学・作業療法との関連事項
 18 構音障害
  A 構音のメカニズム
  B 原因
  C 診断と治療
  D 理学・作業療法との関連事項
 19 嚥下障害
  A 嚥下のメカニズム
  B 診断と治療
  C 理学・作業療法との関連事項
 20 脳神経外科領域疾患の代表的症候
  A 頭蓋内圧亢進
  B 脳浮腫
  C 脳ヘルニア
  D 髄膜刺激症状
  E 理学・作業療法との関連事項

IV 神経疾患各論
 21 脳血管障害
  A 脳血管障害とは
  B 症状と分類
  C 診断と治療
  D リハビリテーション治療の実際
  E 理学・作業療法との関連事項
 22 脳腫瘍
  A 脳腫瘍──総論
  B 脳腫瘍──各論
  C 理学・作業療法との関連事項
 23 外傷性脳損傷(軸索障害を含む)
  A 概要
  B 症状と治療
  C 理学・作業療法との関連事項
 24 脊髄疾患
  A 脊髄損傷
  B 脊髄損傷の随伴症状と合併症
  C 脊髄損傷の心理的問題,訓練,日常生活
  D 脊髄腫瘍
  E 理学・作業療法との関連事項
 25 認知症
  A 認知症とは
  B 認知症の鑑別診断
  C 治療可能な認知症
  D 理学・作業療法との関連事項
 26 錐体外路の変性疾患
  A 定義
  B 錐体外路疾患各論
  C 理学・作業療法との関連事項
 27 変性疾患(錐体外路系を除く),脱髄疾患
  A 変性疾患
  B 脱髄疾患
  C 理学・作業療法との関連事項
 28 末梢神経障害
  A 分類
  B 末梢神経損傷
  C 末梢性ニューロパチー
  D 理学・作業療法との関連事項
 29 てんかん
  A てんかんとは
  B てんかんの診断と治療
  C 理学・作業療法との関連事項
 30 筋疾患
  A ミオパチーとは
  B 進行性筋ジストロフィー
  C ミトコンドリア病
  D 先天性ミオパチー
  E 多発性筋炎(皮膚筋炎)
  F 周期性四肢麻痺
  G 内分泌代謝性筋疾患
  H 筋無力症
  I 理学・作業療法との関連事項
 31 感染性疾患
  A 神経系の感染
  B 感染性疾患各論
  C 理学・作業療法との関連事項
 32 中毒性疾患,栄養欠乏による神経疾患
  A 中毒性疾患
  B 栄養欠乏による神経疾患
  C 理学・作業療法との関連事項
 33 小児神経疾患
  A 小児の診方
  B 脳性麻痺
  C 二分脊椎
  D Down症候群
  E 神経発達症(発達障害)
  F 先天性代謝異常
  G 理学・作業療法との関連事項

V 神経疾患に多い合併症
 34 廃用症候群と誤用症候群,合併症
  A リハビリテーションにおける合併症
  B 廃用症候群と誤用症候群
  C 合併症(廃用症候群と誤用症候群以外)
  D 理学・作業療法との関連事項
 35 排尿障害
  A 概要
  B 排尿のメカニズム
  C 神経因性膀胱
  D 理学・作業療法との関連事項
 36 性機能障害
  A 性機能の概要
  B 性機能障害の症状と治療
  C 理学・作業療法との関連事項

VI 付録
 資料1 評価法の一覧
 資料2 セルフアセスメント

索引

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