標準産科婦人科学 第6版
自ら喰らいつき、咀嚼して呑み込み、脳で考え、腑に落ちるところまで理解を深める
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定評ある産科婦人科学教科書の改訂第6版。今改訂では、診断・治療の流れをよりクリアに記載し、生殖医療の進展,母子をめぐる社会背景に即応してアップデートした。この一冊に生殖・内分泌、婦人科腫瘍、周産期、女性ヘルスケアの“産婦人科4領域”が収められ、読者は広大な知の基盤を手に有機的な思考を養い、真の理解へと到達できる。女性診療の基本テキストであり、医師国家試験にも対応する、現時点での「標準」となる教科書。
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序文
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第6版 序
受精卵の子宮内膜への接着時には,両者間に精緻な相互連絡があると考えられている.受精卵が子宮内膜に受け入れられなければ不妊症に,着床後に拒まれれば流産に,転がりながらも何とか踏みとどまれれば前置胎盤に,さらに均衡が崩れれば妊娠高血圧症候群に,そして最後にもつれれば羊水塞栓症になるのか,と想像してしまう.
ゲノム情報に基づく癌のサブタイプ分類が提案されている.明細胞癌の予後が悪いとしても,細胞質が明るいという形態が予後を左右するのではないであろう.遺伝子の変異が腫瘍発生に関わるもので,その変異が複数の臓器に発現すれば,個々の臓器に疾病が生じ得る.臓器ごとに命名されている病名の枠を超え,患者全体を俯瞰する必要があろう.
キメラ抗原受容体を作成するよう遺伝子操作されたT細胞による治療が固形癌にも応用できれば,あるいは薬剤を目標細胞だけに作用させることができれば,配偶子への影響を考えずに治療することができる.あるいはiPS細胞による生殖細胞の作成が完成すれば,卵子の凍結保存は必要なくなるかもしれない.
内分泌系と炎症系とのcross talkなどといわれる.しかし,生体は同様なシステムを場に応じて使い分けているらしい.その深淵を窺い知る由もない人間が,現在の知識のもとでは別の系が相互に関連しているととらえているだけで,生体にしてみればcrossなどしていないのかもしれない.
本書は標準の名を冠した教科書として,読者に自ら内容に喰らいつき,咀嚼して呑み込み,脳で考え,腑に落ちるところまで理解を深める,という作業を求めている.網膜に飛び込む視覚情報は最初の掴みには適しているが,脳内にとどまる時間が短く真の理解には至り難い.本書は,単なる知識の伝達にとどまることなく,考え方を,さらには考えるということの重要性を,読者が窺い知ることができるような記述を目指している.これは初版以来の本書の理念である.
教科書である以上,認知された事柄だけに記述をとどめざるを得ない.しかしながらその枠のなかに収まり囚われていると,新しい世界へと発展することはできない.著者らが,ある意味制限された枠内で記述せざるを得ないなかでも,奥に潜む学問の魅力を読者に語りかけている情熱が必ずや伝わるはずである.読者のなかから,学問の新たな開拓者が生まれ育つことを願ってやまない.
2025年12月
綾部琢哉・板倉敦夫・髙井 泰
目次
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第1章 産婦人科診療
A 問診(医療面接)
B 診察
C その他の診療上の要領
D 主訴,主症状から想定すべき疾患一覧表
■婦人科編
第2章 性分化・女性性器の発生とその多様性
A 性分化の機構
B 非典型的な性分化
C ジェンダーと性別不合
第3章 女性性器の構造
A 外陰
B 腟
C 子宮
D 卵管
E 卵巣
F 骨盤腔
第4章 卵巣・卵子の機能と病態
A 視床下部-下垂体-卵巣系による制御
B 卵胞発育
C 排卵
D 黄体形成
E 黄体退縮
F 妊娠黄体
G 早発卵巣不全
第5章 月経とその関連する病態
A 月経とは
B 月経の異常(無月経を含む)
C 月経困難症
D 月経前症候群(月経前緊張症)
第6章 思春期
A 思春期における女性の変化
B 思春期の発現異常・婦人科疾患
C 思春期女子の診療
第7章 不妊症
A 不妊症とは
B 不妊症の検査
C 不妊症の病態と治療
D 人工授精
E 生殖補助医療
F 不妊治療のリスク
G がん・生殖医療
第8章 女性性器の類腫瘍・腫瘍
A 外陰
B 腟
C 子宮頸部
D 子宮体部
E 卵管
F 卵巣
G 子宮内膜症,子宮腺筋症,子宮筋腫
H 絨毛性疾患
第9章 乳房・乳腺と婦人科診療
A 乳房・乳腺の解剖と機能
B 乳房・乳腺の疾患
第10章 加齢と疾患
A 加齢による性機能と性器の形態の変化
B 更年期障害
C 中高年女性の健康管理
第11章 女性性器の位置異常・骨盤臓器脱
A 正常子宮の位置と骨盤臓器の支持機構
B 子宮の異常偏位
C 骨盤臓器脱
第12章 女性性器の感染症
総論
A 性感染症の定義と歴史
B 性感染症の特徴・問題点とその対策
C 性感染症の症状
各論
A 梅毒
B 淋菌感染症
C 性器クラミジア感染症
D 性器ヘルペス
E 尖圭コンジローマ
F HIV感染症/AIDS
G 腟トリコモナス症
H 性器カンジダ症
I 軟性下疳
J 鼠径リンパ肉芽腫症
K ケジラミ症
L 疥癬
第13章 避妊・ファミリープランニング
A ファミリープランニング(家族計画)
B 避妊の機序と方法
C 避妊法各論
第14章 婦人科検査
A 婦人科検査
B 画像検査
C 子宮鏡検査
第15章 ホルモン療法
A 不妊症治療に用いるホルモン療法
B 非器質性の異常子宮出血(無月経を含む)に対するホルモン療法
C 更年期障害に対するホルモン補充療法
D 月経前症候群に対するホルモン療法
E 月経周期の調節に用いるホルモン療法
F 経口避妊薬
G 器質性婦人科疾患に用いるホルモン療法
第16章 婦人科がん薬物療法・放射線療法
A 薬物療法
B 放射線療法
C コンパニオン診断,がんゲノム医療,遺伝カウンセリング
D 各論
E がん薬物療法の効果判定方法
F がんサポーティブケア(緩和ケアを含む)
第17章 婦人科手術療法
A 総論
B 各論
■産科編
第18章 妊娠の生理
A 妊娠の成立
B 妊娠の維持
C 胎児の発育
D 胎児付属物
E 胎児胎盤系の生理
F 妊娠による母体の変化
第19章 妊娠の異常
A 妊娠初期の異常
B 妊娠中期・末期の異常
C 胎児の異常
第20章 合併症妊娠・偶発合併症
A 婦人科疾患
B 心血管疾患
C 血液疾患
D 腎・泌尿器系疾患
E 消化器疾患
F 呼吸器疾患
G 代謝・内分泌疾患
H 自己免疫疾患
I 精神神経疾患
J 母子感染
第21章 妊娠の管理
A 妊娠に関する用語
B 妊娠の徴候と診断
C 妊婦健診(妊婦健康診査)
D ハイリスク妊娠
E 妊娠中の検査
F 出生前遺伝学的検査
G 出生前検査と遺伝カウンセリング
第22章 分娩の生理
A 分娩の概念
B 陣痛発来機序
C 分娩の3要素
D 分娩機転
E 正常分娩の経過
第23章 分娩の異常
A 前期破水
B 陣痛の異常
C 産道の異常
D 児頭骨盤不均衡
E 回旋・胎勢・進入の異常
F 胎位の異常
G 遷延分娩
H 胎児機能不全
I 胎盤・臍帯の異常
J 分娩時異常出血
K 弛緩出血
L 産道損傷
M 子宮内反症
N 羊水塞栓症
O 出血と産科ショック
第24章 分娩の管理
A 産婦診察と分娩監視
B 分娩の介助
C ハイリスク分娩の管理
第25章 産科処置
A 産科手術・処置
B 分娩誘発・陣痛促進
C 産科麻酔
第26章 産褥期
A 産褥期の生理
B 産褥期の異常
C 産褥期の管理
第27章 新生児
A 用語と分類
B 適応生理
C 管理法と診察法
D 在胎期間の評価
E ハイリスク新生児
F よくみられる症候とその鑑別
G 主要疾患
第28章 母子保健と医療制度
A 環境要因と胎児障害
B 日本の母子保健制度
C 母子保健統計
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