臨床薬理学 第2版
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- 薬理学や基礎看護技術、成人看護学などで学んだ知識を振り返りながら、臨床につながる実践的な薬物治療の看護の基礎を学ぶテキストです。豊富な製剤写真で、より一層、看護実践をイメージできます。
- 症状・疾患ごとに、①病態→②薬物療法の方針・目的→③おもな治療薬の種類と機序→④患者への処方例→⑤服薬指導→⑥与薬前後の観察事項といった展開で、薬物治療を看護師の視点から学ぶ構成になっています。
- 第2版では、医療安全についての意識を高めるため、実際に起こった医療裁判やヒヤリハット・医療事故事例を積極的に取り上げました。(例:薬剤誤投与における看護師の刑事責任/ PTP シートの誤飲/在宅療養における輸液の混合忘れ/インスリンの単位間違え/徐放製剤の粉砕による重篤な副作用の発現/バッグ型キット製剤の隔壁未開通事例/カリウム(K)製剤の誤投与 など)
- 高齢者や在宅療養の事例・処方例を積極的に取り上げ、また、「がん薬物療法における有害事象のマネジメント」の項目を設けました。
- 「系統看護学講座/系看」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ | 系統看護学講座-別巻 |
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編集 | 井上 智子 / 窪田 哲朗 |
執筆 | 井上 智子 / 荒井 俊行 / 堀 雄史 / 川上 純一 / 大谷 典生 / 井上 泉 / 角 勇樹 / 木村 元紀 / 笹野 哲郎 / 小山 高敏 / 前北 隆雄 / 朝比奈 靖浩 / 菅野 義彦 / 土居 健太郎 / 保田 晋助 / 窪田 哲朗 / 太田 克也 / 織田 健司 / 宮島 美穂 / 原 恵子 / 赤座 実穂 / 宮内 克己 / 宮崎 哲朗 / 高須 清 / 橋本 学 / 小池 竜司 / 中根 実 |
発行 | 2024年01月判型:B5頁:312 |
ISBN | 978-4-260-05298-6 |
定価 | 2,970円 (本体2,700円+税) |
更新情報
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- 序文
- 目次
序文
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はしがき
発刊の趣旨
看護職にとって「与薬」が重要な責務の一つであることは論を俟(ま)たない。しかし,看護師のヒヤリハット事象の最多が「誤薬」であることもまた事実である。この事態に看護職はもちろんのこと,施設の安全管理者も手をこまねいているわけではなく,さまざまな医療安全対策を講じている。
一方で,教育での取り組みはどうであろうか。看護基礎教育において「与薬」は主に基礎看護学の基礎看護技術において取り扱われるが,そこで教授されるのは主として「与薬方法」,つまり「どのような手順と方法で薬剤を投与するか」であり,「与薬内容」,すなわち「どのような薬剤を投与するか」ということについては,薬理学や成人看護学などの各領域での学習に期待されているのが実情であろう。これらに昨今の医薬品の多様さと薬物治療の複雑さが相まって,「与薬」教育の難しさは増すばかりである。
ところで看護教員としてこのような物言いは不謹慎かもしれないが,現状の看護教育での「薬理学」と,臨床現場との乖離(かいり),誤解を恐れずに言えば,「薬理学」が日常の看護実践に役立ちにくいことを常々感じていた。ここで言いたいことは現在の「薬理学」教育の否定ではなく,製品化された薬剤を扱う臨床現場で通用する知識と技術の不足,つまり基礎と臨床を繋(つな)ぐ別科目,「看護臨床薬理学」の不在である。
折しも5年にわたる論議の末,2015(平成27)年より特定行為研修制度がスタートした。特定行為は研修を受けた看護師が手順書に従って実施するものであるが,医師の個別・具体的指示があれば研修を受けていない看護師が実施する状況も十分にありうる。本書は,この特定行為にまつわる論議に触発されて企画されたことは事実であるが,その通底には上記のような,長年にわたる看護教育における「臨床薬理学」不在の認識があった。そして,多くの医学・薬理学の専門家が,編者のこのあやふやな概念の具現化に手を貸して下さり,執筆に挑んで下さったおかげで,2017年,本書の初版は発刊に至った。
改訂の趣旨
今改訂では,より実践的な視点を意識し,臨床看護実践に役立てるという基本方針は初版を踏襲しつつ,さらなる学びやすさを追求して,次の3つの観点において見直しを行った。
1つ目は,章構成の見直しである。「序章 臨床薬理学と看護師」「第1章 薬物治療の基礎」「第2章 対症療法薬の臨床薬理学」の構成は初版を踏襲し,情報の更新と内容の見直しを行った。初版の第3章・第4章で展開していた病態・疾患については,項目を組み直し,「第3章 主要疾患の臨床薬理学」「第4章 全身状態の管理にかかわる臨床薬理学」として再編成した。また,外来がん薬物療法の普及を鑑み,第4章に新たに「がん薬物療法における有害事象のマネジメント」を加えた。
2つ目は,医療安全対策に関する記述の強化である。インスリン製剤の単位の誤認や徐放性製剤の粉砕投与,2槽型輸液バッグの隔壁未開通といった与薬に伴う医療問題,とりわけ看護師が臨床で遭遇しやすい事象・事例について,コラム「plus」として取り上げて各所に挿入した。さらに,誤薬による医療訴訟により看護師が実際に刑事責任を問われた裁判例についても,「plus」として取り上げた。これらにより,医療安全対策についてより実践的に学ぶことが可能となり,さらに看護師として薬物療法に携わる際の義務と責任についても考えることができるテキストとした。
3つ目は,薬剤・処方例の見直しである。新薬を加え,最新のガイドラインにそった事例・処方例に差し替えた。初版同様,医薬品の写真をふんだんに取り上げ,また高齢患者や在宅医療に関する事例を積極的に取り上げた。
結果として本書は,基礎教育はもとより,卒後・継続教育にも役立つものとなったと密(ひそ)かに自負している。そして編者のさらなる願いは,看護学生から新人看護師,そしてベテラン看護師の域に達しても,本書が常に臨床看護師の側にあって繙(ひもと)いてもらえる図書となることである。それによって,「与薬」に関する看護職の役割の拡大に対応し,今以上の安全・安心な医療はもちろんのこと,患者の生活や思いにそった「与薬」,さらには患者主体の服薬行動の育成も目指していってほしい。
改訂にあたっては,看護師の与薬行為について,臨床実践とそれを裏付ける基礎的な知識の両方の習得を目指すという困難な方針について,各領域の第一人者の方々に改めてご理解いただき,「plus」のご執筆ならびに記述の改善にご尽力をいただいた。さらに,看護師の与薬行為と医療安全について,法的な視点から学べるものとなったのは,看護職の力強い援軍である荒井俊行弁護士に加わっていただけたことが大きい。最終的に患者の体内に薬剤を送り込む役割を担うのは圧倒的に看護師であることが多く,ひとたび事故が発生した際には,たとえそれが医師の指示であったとしても,看護職も責任を問われることがある。患者の安全は言うまでもないが,看護職が自身の身を守るためにも,法的知識は不可欠なのである。
本書が,「与薬」に携わる看護職の良き教材となることを願いつつ,編者を代表してここに謝意を表する次第である。
2023年11月
編者を代表して
井上智子
目次
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序章 臨床薬理学と看護師 (井上智子・荒井俊行)
1 看護師と薬理学・薬剤学・臨床薬理学
2 薬物療法における看護師の役割
3 薬物療法における看護師の役割の拡大
4 看護における臨床薬理学
第1章 薬物治療の基礎 (堀雄史・川上純一)
A 医薬品の取り扱い
1 医薬品の基礎知識
1 医薬品の定義と種類
2 医薬品の剤形(剤型)
3 医薬品の規格(含量・単位)
4 医薬品に関する法律と管理
5 医薬品の用法(服用のタイミング)
2 医薬品の体内動態と薬物相互作用
1 薬物動態の基礎
2 投与経路の違いによる血中濃度の変化と初回通過効果
3 代謝と排泄
4 薬物の相互作用とハイリスク患者
3 医薬品の処方と調剤
1 処方箋の記載内容
2 診療の流れと調剤
4 医薬品の適正使用
1 医薬品の適正使用の定義
2 必ず確認すべき情報
B 薬物治療の実際
1 患者と薬物治療
1 薬物治療の流れ
2 薬物治療の開始前に看護師がとくに確認すべき項目
3 薬剤投与の際に看護師が注意すべき項目
2 薬物治療の評価
1 服薬状況の確認
2 薬物治療の効果の判定
3 副作用の早期発見と適切な対応
3 安全管理
1 薬剤の誤投与を防ぐための確認事項
2 病院内でおこりやすい医薬品によるインシデントとその対策
3 外来・在宅における医薬品の安全管理
4 医療安全対策
第2章 対症療法薬の臨床薬理学 (大谷典生・井上泉・角勇樹・木村元紀)
A 解熱鎮痛薬,副腎皮質ステロイド薬
1 鎮痛薬と抗炎症薬
2 解熱鎮痛薬
1 疼痛の病態生理
2 解熱鎮痛薬の種類
3 薬物療法の基本
4 薬物療法における看護師の役割
3 副腎皮質ステロイド薬
1 副腎皮質ステロイドホルモンの機能
2 副腎皮質ステロイド薬の臨床薬理学
3 副腎皮質ステロイド薬の使用上の注意
B 制吐薬
1 悪心・嘔吐の病態と分類
2 薬物療法の基本
3 薬物療法における看護師の役割
C 便秘治療薬
1 便秘の病態と分類
2 薬物療法の基本
3 薬物療法における看護師の役割
D 下痢治療薬
1 下痢の病態と分類
2 薬物療法の基本
3 薬物療法における看護師の役割
E 鎮咳・去痰薬
1 咳・喀痰の病態と分類
2 薬物療法の基本
3 薬物療法における看護師の役割
F 鎮静薬
1 鎮静薬を必要とする病態
2 薬物療法の基本
3 薬物療法における看護師の役割
G 睡眠薬
1 睡眠障害の病態と症状
2 薬物療法の基本
3 薬物療法における看護師の役割
第3章 主要疾患の臨床薬理学 (笹野哲郎・小山高敏・角勇樹・前北隆雄・朝比奈靖浩・菅野義彦・土居健太郎・保田晋助・窪田哲朗・太田克也・織田健司・宮島美穂・原恵子・赤座実穂)
A 循環器系・血液疾患の薬物療法
1 高血圧症
1 病態と症状
2 薬物療法の基本
3 薬物療法における看護師の役割
2 急性冠症候群
1 病態と症状
2 薬物療法の基本
3 薬物療法における看護師の役割
3 心不全
1 病態と症状
2 薬物療法の基本
3 薬物療法における看護師の役割
4 不整脈
1 病態と症状
2 薬物療法の基本
3 薬物療法における看護師の役割
5 抗血小板療法・抗凝固療法
1 病態と症状
2 薬物療法の基本
3 薬物療法における看護師の役割
B 呼吸器疾患の薬物療法
1 気管支喘息
1 病態と症状
2 薬物療法の基本
3 薬物療法における看護師の役割
2 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
1 病態と症状
2 薬物療法の基本
3 薬物療法における看護師の役割
C 消化器疾患の薬物療法
1 胃・十二指腸潰瘍
1 病態と症状
2 薬物療法の基本
3 薬物療法における看護師の役割
2 胃食道逆流症
1 病態と症状
2 薬物療法の基本
3 薬物療法における看護師の役割
3 慢性肝炎
1 病態と症状
2 薬物療法の基本
3 薬物療法における看護師の役割
D 腎疾患の薬物療法
1 慢性腎臓病(CKD)
1 病態と症状
2 薬物療法の基本
3 薬物療法における看護師の役割
2 透析患者における薬剤管理
1 腎機能と薬物
2 薬物療法の基本
3 代表的な処方例
4 薬物療法における看護師の役割
E 代謝疾患・膠原病の薬物療法
1 糖尿病
a 糖尿病の一般的な薬物治療
1 病態と症状
2 薬物療法の基本
3 治療薬の種類と作用機序
4 薬物療法における看護師の役割
b インスリンの投与量の調整
1 病態に応じた対応とインスリン投与量の調整
2 病態に応じたインスリンの投与量の調整
2 脂質異常症
1 病態と症状
2 薬物療法の基本
3 薬物療法における看護師の役割
3 骨粗鬆症
1 病態と症状
2 薬物療法の基本
3 薬物療法における看護師の役割
4 関節リウマチ
1 病態と症状
2 薬物療法の基本
3 薬物療法における看護師の役割
F 精神疾患の薬物療法
1 精神および神経症状にかかわる薬物
1 向精神薬の分類
2 向精神薬の副作用
3 アドヒアランスの重要性
2 うつ病・うつ状態
1 病態と症状
2 薬物療法の基本
3 薬物療法における看護師の役割
3 抗精神病薬の臨時投与
1 抗精神病薬の臨時投与が必要となる病態
2 臨時投与に用いられる抗精神病薬の種類と作用機序
3 病態に応じた抗精神病薬の臨時投与とその判断基準
4 抗精神病薬による重大な副作用とその対応
4 抗不安薬の臨時投与
1 抗不安薬の臨時投与が必要となる病態
2 臨時投与に用いられる抗不安薬の種類
3 病態に応じた抗不安薬の臨時投与とその判断基準
4 抗不安薬による重大な副作用とその対応
G 神経疾患の薬物療法
1 てんかん
1 病態・症状と分類
2 薬物療法の基本
3 薬物療法における看護師の役割
2 パーキンソン病・パーキンソン症候群
1 病態と症状
2 薬物療法の基本
3 薬物療法における看護師の役割
3 アルツハイマー型認知症
1 病態と症状
2 薬物療法の基本
3 薬物療法における看護師の役割
第4章 全身状態の管理にかかわる臨床薬理学 (宮内克己・宮﨑哲朗・高須清・前北隆雄・橋本学・大谷典生・小池竜司・中根実)
A 持続点滴中の薬剤の投与と調整
1 循環動態にかかわる持続点滴が必要な病態
2 持続点滴中のカテコールアミンの投与量の調整
1 カテコールアミンの投与を要する主要疾患と病態
2 カテコールアミンの種類・投与量とその調整の方法
3 病態に応じたカテコールアミンの投与量の調整
4 カテコールアミンの投与に伴う重大な副作用とその対応
3 持続点滴中の降圧薬の投与量の調整
1 降圧薬の持続点滴を要する主要疾患と病態
2 降圧薬の種類・投与量とその調整の方法
3 病態に応じた降圧薬の投与量の調整
4 降圧薬の投与に伴う重大な副作用とその対応
4 持続点滴中の利尿薬の投与量の調整
1 利尿薬の持続点滴を要する主要疾患と病態
2 利尿薬の種類・投与量とその調整の方法
3 病態に応じた利尿薬の投与量の調整
4 利尿薬の投与に伴う重大な副作用とその対応
5 持続点滴中の糖質・電解質輸液の投与量の調整
1 体液の浸透圧と輸液
2 輸液製剤の種類・投与量とその調整方法
3 病態に応じた糖質・電解質輸液の投与量の調整
4 糖質・電解質輸液の投与に伴う重大な副作用とその対応
6 脱水症状に対する輸液による補正
1 脱水の病態生理と対応
2 脱水に使用される輸液製剤の種類・投与量とその調整の方法
3 病態に応じた輸液の投与量の調整
4 脱水時の輸液に伴う重大な副作用とその対応
7 持続点滴中の高カロリー輸液の投与量の調整
1 持続点滴による高カロリー輸液の投与を要するおもな疾患
2 高カロリー輸液製剤の種類
3 病態に応じた高カロリー輸液の投与
4 高カロリー輸液の投与に伴う重大な副作用とその対応
B 術後ならびに呼吸管理にかかわる薬物の投与と調整
1 硬膜外カテーテルによる鎮痛薬の投与と投与量の調整
1 硬膜外麻酔の目的
2 硬膜外麻酔薬の種類・投与量とその調整の方法
3 病態に応じた硬膜外麻酔薬の投与と投与量の調整
4 硬膜外鎮痛に伴う重大な副作用とその対応
2 人工呼吸管理中の患者に対する鎮静薬の投与量の調整
1 人工呼吸管理中の鎮静
2 人工呼吸管理中に使用する鎮静薬の種類・投与量とその調整の方法
3 病態に応じた鎮静薬の投与と投与量の調整
C 感染徴候がある者に対する薬物の臨時投与
1 細菌感染症
2 臨時投与に用いられる抗菌薬の種類
3 病態に応じた抗菌薬の臨時投与とその判断基準
4 抗菌薬による重大な副作用とその対応
D がん薬物療法における有害事象のマネジメント
1 がん薬物療法と有害事象
2 がん薬物療法に伴う悪心・嘔吐(CINV)
3 発熱性好中球減少症(FN)
4 皮膚障害
5 抗がん薬の血管外漏出
6 免疫関連有害事象(irAE)
索引
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