看護倫理 第3版

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  • 現代の医療・看護における倫理的問題はますますその複雑さを増し、基礎教育で「看護倫理」を学習する重要性も高まっています。
  • 本書は、倫理学の基本的な考え方にはじまり、生命倫理、医療倫理、看護倫理の基礎、倫理的課題への実践的なアプローチ方法、事例分析の順で学ぶことで「看護倫理」を体系的に学習できるよう構成しています。
  • 学生が「看護倫理」を自分の問題としてイメージできるよう、説明にも事例を多用しています。
  • 第3版では、従来の事例分析を大幅に刷新しました。分析手法の理解に加え、領域別看護における倫理的課題を事例から学び、分析をもとにどのようなアプローチができるのかを考えられる内容となっています。
  • 臨床現場に出る前の基礎学習に、また実習のふり返りに、進度に合わせてご活用いただける構成です。
  • 「系統看護学講座/系看」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ 系統看護学講座-別巻
執筆 宮坂 道夫 / 吉田 みつ子 / 鈴木 健太 / 堀川 英起 / 東 園子 / 住谷 ゆかり / 坂井 さゆり
発行 2024年01月判型:B5頁:256
ISBN 978-4-260-05299-3
定価 2,090円 (本体1,900円+税)

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はしがき

本書のねらい
 この本を手に取ったあなたは,倫理をどんな「場」で学ぼうとしているだろうか。「看護倫理学」「医療倫理学」など,文字どおりに看護・医療の倫理そのものを学ぶ講義を受けている人もいれば,「母性看護学」「老年看護学」など,看護の専門科目のなかで倫理を学んでいる人もいるだろう。あるいは,すでに看護の現場で働いていて,「倫理」に関心をいだき,自分で学んでみようとしている人もいるかもしれない。
 こうした学習の場のうちの,どれが最も望ましいものだろうか。じつは,「これらのすべてが必要不可欠だ」というのが,その答えである。専門家になる人の倫理学習の理想とされているのは,「多段階で学ぶ」ことである。つまり,基礎教育で学び,専門教育で学び,さらに現場でも学ぶ,という多段階での学びが不可欠なのである。
 看護倫理を学ぶ人が「最終的に身につけているべき能力」は,以下の4つに集約できる。
(1)看護の現場にある倫理的課題に「気づく」ことができる。
(2)倫理的課題を分析するために「参照すべき手がかりを見つける」ことができる。
(3)倫理的課題の解決のために「なにをすべきかを考える」ことができる。
(4)倫理的課題の解決のための「対話を行う」ことができる。
 これらは,いわば看護倫理の「究極の目的」であり,1つや2つの講義をとれば,それで完遂できるというものではない。たとえば講義を通して基本的な知識を身につけることは欠かせないが,それはあくまで「参照すべき手がかり」にほかならない。実際の看護現場では,問題に「気づく」ことができ,学んだ知識などの「参照すべき手がかり」を活用して「なにをすべきか」を考え,同僚や患者などと「対話」をすることができなければならないのである。
 本書のねらいは,これらの「究極の目的」に,一歩一歩近づいていくことができるよう,倫理を学ぶ人のガイドとなることである。そのために,看護倫理を学ぶうえで必要不可欠な知識を習得できるように,国が定める「保健師助産師看護師学校養成所指定規則」「看護師等養成所の運営に関する指導ガイドライン」「看護学教育モデル・コア・カリキュラム」なども参照し,基礎的な学習事項を網羅している。あわせて,「気づく」こと,「なにをすべきか」を考えること,「対話」をすることを促すために,ケーススタディやグループワークなどを設けている。

改訂の主旨
 本書の初版は2014年に刊行された。2018年に改訂第2版を刊行し,今回さらなる改訂を行って第3版とした。「看護倫理」を基礎から順に学べるよう,3部からなる構成としている点は,初版からかえていない。「第1部生命倫理」では倫理学と生命倫理学の基礎を学び,「第2部看護倫理」では看護倫理の基礎を学ぶ。「第3部事例分析」では,第1部と第2部で学んだ内容をふまえて,事例から看護倫理の問題について考え,第2部で学んだ方法を用いて分析していく。
 第2版では,医療技術の進歩や社会の変化に伴う新しい倫理的課題に対応する内容として,再生医療,性に関する医療的介入,医療保険制度の課題など,生命倫理の内容を充実させるとともに,看護実践の現場で生じる事例を多く取り入れ,生命倫理の理論と看護現場の倫理的課題とを行き来できるような改訂を行った。
 今回の第3版では,看護倫理の最新の研究や実践の成果を取り入れ,生命倫理の理論と看護現場の倫理的課題とのつながりを,より明確に理解できるような改訂を行った。とくに,「第6章看護倫理とはなにか」「第8章倫理的課題へのアプローチ」「第10章領域別看護における倫理的課題とケーススタディ」の内容を大きく変更し,看護実践のなかで日々生じる倫理的課題にどうやって取り組んでいくべきかを,系統だてて解説した。第6章では,看護師という職種がもつ役割や責任に焦点をあて,看護倫理の発展の経緯,看護実践に固有の倫理的概念について解説した。第8章では,先に触れた4つの能力(「気づく」「参照すべき手がかりを見つける」「なにをすべきかを考える」「対話を行う」)を,実際の看護現場で発揮するための方法や,最近の看護現場でよく使われている倫理的課題を検討するためのさまざまな「ツール」をどう選び,使い分ければよいのかを解説した。第10章では,小児看護,精神看護,母性看護,高齢者看護,終末期看護の5領域での倫理的課題を概説したうえで,実際に生じている事例を題材に,「ツール」などを用いた分析方法を詳しく解説した。
 今回の改訂によって,看護倫理の幅広い内容を,一連のつながりのあるものとして理解することが容易となり,さらには看護学の各領域の学習に倫理的課題への取り組みを組み入れやすくなったのではないかと,筆者らは考えている。
 本書が,さまざまな学習環境で学ぶ人にとってのよき伴侶となることを願っている。

 2023年12月
 著者ら

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 序章 看護倫理を学ぶために (宮坂道夫)
  A なぜ倫理を学ぶのか
   1 倫理の本質
   2 事例から考える「倫理を学ぶ意味」
  B 本書で学ぶこと

第1部 生命倫理
 第1章 倫理学の基本的な考え方 (宮坂道夫)
  A 倫理・倫理学とはなにか
  B 倫理理論
   1 義務論
   2 帰結主義
   3 倫理理論の看護倫理への応用
  C 他者理解と対話のための理論
   ▪ ナラティブ倫理

 第2章 生命倫理 (宮坂道夫)
  A 生命倫理とはなにか
   1 生命倫理の特徴
   2 生命倫理の歴史
  B 生命倫理の理論
   1 生命倫理の4原則
   2 生命倫理の4原則を用いた倫理問題の検討
   3 ヨーロッパの倫理原則
  C 生命倫理の進展で生まれた看護職の責務
   1 インフォームドコンセント
   2 守秘義務と個人情報保護

 第3章 生殖の生命倫理 (宮坂道夫)
  A 性の生命倫理
   1 性に関するさまざまな概念
   2 性に対する医療的介入の課題
    a 性分化疾患・性同一性障害に対する医療的介入
    b 生命倫理の観点からの整理
  B 生殖の生命倫理
   1 生殖をめぐる概念
   2 生殖に対する医療的介入の課題
    a 不妊治療に対する医療的介入
    b 障害を理由とする人工妊娠中絶に対する医療的介入

 第4章 死の生命倫理 (宮坂道夫)
  A 死について
   1 死の人称性と看護
   2 現代人の死生観
   3 死を前にした人の心理
  B 死と医療
   1 医療による死の確定と死亡確認制度の問題点
   2 ホスピス・緩和ケア
   3 自分らしく死ぬ権利
  C 死についての生命倫理の課題
   1 告知についての課題
   2 終末期の治療方針についての課題

 第5章 先端医療と制度をめぐる生命倫理 (宮坂道夫)
  A 移植医療
   1 移植医療の歴史と現状
   2 移植医療をめぐる生命倫理の課題
  B 再生医療
   1 再生医療の歴史と現状
   2 再生医療をめぐる生命倫理の課題
  C 遺伝子医療
   1 遺伝子医療の歴史と現状
   2 遺伝子医療をめぐる生命倫理の課題
  D 医療資源と医療保険制度
   1 医療資源と医療保険制度の現状
   2 医療資源と医療保険制度をめぐる生命倫理の課題
  E 薬害問題
   1 薬害とはなにか
   2 薬害の歴史
   3 薬害事件と患者の権利

第2部 看護倫理
 第6章 看護倫理とはなにか (吉田みつ子)
  A 看護倫理を学ぶ意義
   1 看護実践と看護倫理
   2 看護倫理を学ぶということ
  B 看護倫理の発展と変遷
   1 看護師が担うべき社会的責任
   2 看護学とともに発展してきた看護倫理
   3 現代における看護倫理
  C 看護実践上の倫理に関する主要概念
   1 ケア(ケアリング)
   2 責任
   3 アドボカシー
   4 協力・連携・協働
  D 看護倫理をふまえた看護実践の特徴
   1 行動と思考を同時に行う
   2 日常的葛藤(エブリディ-エシックス)を解決する

 第7章 専門職の倫理 (吉田みつ子)
  A 看護・看護師にいだく社会のイメージ
  B 専門職に求められる倫理
  C 専門職の倫理綱領
   1 看護師の倫理綱領の歩み
   2 ICN看護師の倫理綱領(2021年版)
   3 看護職の倫理綱領
  D 看護業務基準と倫理
  E 保健師助産師看護師法と倫理

 第8章 倫理的課題へのアプローチ (宮坂道夫)
  A 看護実践のなかでの倫理的課題
   ▪ 倫理的課題へのアプローチ
  B ツールを用いたアプローチ
   1 看護職が倫理的課題を検討するためのツール
   2 多職種間で倫理的課題を検討するためのツール
   3 かかわり合う人たちの価値観や意見の不一致を分析するためのツール
  C ツールの活用
   1 ツールの選択
   2 事例で学ぶ検討ツールの選び方

 第9章 看護研究の倫理 (宮坂道夫)
  A 看護職と研究倫理
  B 研究における倫理的課題
  C 研究における倫理的配慮
   1 法律・指針,倫理審査
   2 倫理的配慮の要点
  D 看護研究に必要な倫理的配慮
   1 参照すべき指針
   2 倫理的配慮の要点

第3部 事例分析
 第10章 領域別看護における倫理的課題とケーススタディ (鈴木健太・堀川英起・東園子・住谷ゆかり・坂井さゆり)
  A 小児看護における事例分析
   1 小児看護における倫理的看護実践
   2 事例
   3 4分割法による分析
  B 精神看護における事例分析
   1 精神看護における倫理的看護実践
   2 事例
   3 ナラティブ検討シートによる分析
  C 母性看護における事例分析
   1 母性看護における倫理的看護実践
   2 事例
   3 4分割法とナラティブ検討シートを併用した分析
  D 高齢者看護における事例分析
   1 高齢者看護における倫理的看護実践
   2 事例
   3 ナラティブ検討シートによる分析
  E 終末期看護における事例分析
   1 終末期看護における倫理的看護実践
   2 事例
   3 4分割法とナラティブ検討シートを併用した分析

巻末資料 医療倫理に関する宣言・綱領
索引

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