強みと弱みからみた
地域・在宅看護過程 第2版
+総合的機能関連図
療養者と家族の全体像がみえる! 地域・在宅看護過程を典型例から学べる1冊
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療養者と家族を総合的に捉えるために、「疾患・医療ケア」「活動」「環境」「理解・意向」の4領域からアセスメント。情報分析のポイント、強みと弱みの視点による看護課題の見出し方、関連図、看護計画の立案と実施、評価までを指南。実習でしばしば出会う健康障害のほか、在宅で特に重要となる心理・社会的課題を解説し、典型例を取り上げて看護過程の展開を解説する。各種情報のアップデートを行った、待望の第2版!
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序文
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はじめに
暮らし(生活)の場において療養する人々を支援する看護への社会の期待は大きく膨らんできています.未来の看護を担う学生の皆さんが生活の場における看護過程の基本的な考え方を修得することは大切です.それは将来にわたる看護観の礎につながると思うからです.本書は,特に,訪問看護実習や演習で活用することを想定した学習書として,2018年11月に初版が刊行され,それ以来,看護学生のためのサブテキストとして,また,訪問看護を始めたばかりの看護職への参考資料として好評を得てきました.そこで第2版でもコンセプトは大きく変えていませんが,内容の一部を改めて見直し,読者にわかりやすいように改訂に努めました.
本書の看護過程では,総合的機能をみる視点と,強みと弱みをみる視点を第一の特長として取り入れました.
生活という言葉はケアの世界ではよく使われますが,生活とは何か,どのように生活をとらえればよいのか,教育現場で学生の皆さんに伝えることが難しく思うときがあります.そこで本書では,生活を①疾患・医療ケア,②活動,③環境,④理解・意向の4領域(総合的機能)に区分してとらえることにしました.
また,疾患の治療に伴う看護では弱みを解決する視点,生活に寄り添う看護では強みを活かす視点が重視されやすいですが,本書では,敢えて両者の視点が必要という立場をとっています.訪問看護師は弱みを解決する援助と強みを活かす援助をうまく併用しており,そこに熟達した看護実践があるためです.
総合的機能関連図は,この2つの視点を意識した構図にしてあり,総合的機能の4領域にどう情報を振り分けるか,強みまたは弱みと読む解釈・判断をどう配置するかなど決まりをつくっています.決まりがあることで書きづらいと悩むかもしれませんが,これを学習のための決まりと理解して頂ければと思います.関連図を書くことで対象者の情報が整理され,看護課題を導き出した論理が明確になり,他者に説明しやすくなるでしょう.編者自身もこの関連図を実習に使用していますが,指導側と学生が看護課題を導く筋道を一緒に確認できるため,教育ツールとして使いやすいと感じています.なお,本書では第1章でこれらの訪問看護における看護過程の基本的な考え方を説明しています.
ほかに,本書の目次構成には次の特長をもたせました.在宅療養者には様々な年代の人が含まれ,その疾患は多種多様であり,その看護過程を一冊の本ですべて説明することには限界があります.本書では,読者が訪問看護を知ることを目的とし,訪問看護利用者によくみられる健康障害を取り上げました.慢性疾患,難病,老年症候群,エンドオブライフの在宅医療に必要な医学的知識とそれに伴う看護過程を第2章にて説明しています.
また,訪問看護は,健康障害とともに生活を続けるための看護ですから,時として在宅療養者の心理・社会的課題に対応することが求められます.本書では,例えば,家族の介護疲れ,生活困窮,意思決定不全,社会的孤立など,在宅療養者によくみられる心理・社会的課題について,第3章にて取り上げ,その看護過程を系統的に説明しています.これは疾患・症状ごとに看護過程を説明してきたこれまでの類書とは全く異なる試みでもあります.
さらに,本書では34もの豊富な事例を用いて訪問看護における看護過程を説明しています.ただし,実際の在宅療養者には,本書で示しているようなシンプルな事例は少ないでしょう.例えば,認知症がありながら慢性腎不全に罹患しており,同時に生活困窮や劣悪な住環境による問題のある在宅療養者など,ほとんどのケースでは複数の健康障害と心理・社会的課題をあわせ持っています.そこで,本書では,それぞれの健康障害と心理・社会的課題に典型的な看護課題を表現するように努めました.実習で対象者に看護過程を展開する際には,本書の該当する項目をうまく組み合わせて,その療養者の個別性に応じた看護目標や看護計画の立案方法を学んで頂ければと思います.実際の対象者を一つの例を参考に考えることより,複数の例を参考に統合した合理的なモデルを自分でつくる思考を修得することもまた大切な学習内容だからです.なお,書名については,2022年度からの指定規則改正による科目名の変更に伴い,出版社の方針により『在宅看護過程』から『地域・在宅看護過程』としました.
本書の趣旨にご賛同いただき,ご尽力いただいた執筆者の方々にはこの場を借りてお礼を申し上げます.また,制作の全工程にわたって,ご支援くださった医学書院の皆様にも心より感謝申し上げます.
本書のコンセプトに何か通じるものを感じて頂き,学んで頂ければ,これほど嬉しいことはありません.そのために本書では,実習でそのまま使って頂けるよう,情報整理シート・関連図等の様式をウェブサイトからダウンロードできるようにしています.また,事前学習や学内演習等に活用できる動画教材についても初版に引き続き,ご活用頂ければ幸いです.皆様から忌憚のないご意見を頂きながら,内容を深めていき,これからもさらに発展的に変わり続ける地域・在宅看護の人材育成に寄与したいと望んでいます.
2022年11月
著者を代表して 河野あゆみ
目次
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はじめに
本書の構成と使い方
動画の閲覧方法
第1章 総論
1 地域・在宅看護の特徴
[1] 地域・在宅看護とは
地域・在宅看護の定義/地域・在宅看護の考え方
[2] 地域・在宅看護と訪問看護
地域・在宅看護の中心的実践である訪問看護/訪問看護とケアの関係
2 看護過程の基本
[1] 訪問看護において看護過程を学ぶ意義
[2] 訪問看護の看護過程で使う用語
[3] 看護過程の目的
看護過程の目的と対象/看護過程の意義
[4] 看護過程の特徴
総合的機能をみる視点/強みと弱みをみる視点
[5] 看護過程の概要
3 看護過程のステップ
[1] アセスメント
情報収集の方法/情報収集の項目/情報整理:情報整理シートの活用/情報選択,解釈・判断,看護課題の提示:総合的機能関連図の活用
[2] 看護課題の明確化
看護課題の明確化の考え方/看護課題の明確化の具体例/看護課題の優先度の指針/長期目標の明確化
[3] 看護計画
看護目標/援助内容の計画
[4] 実施
行動手順/的確な援助の提供/正確な記録
[5] 評価
評価の方法/評価の側面と指針/計画の見直し・修正
付録1~6:訪問看護指示書/訪問看護計画書/訪問看護報告書/居宅サービス計画書/週間サービス計画表/サービス提供票/サービス提供票別表
付録7~9:要介護度の目安/日常生活自立度(障害高齢者)の基準/日常生活自立度(認知機能)の基準
第2章 健康障害別看護過程
[1] 慢性疾患
1 がん慢性期
2 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
3 慢性腎不全
4 慢性心不全
5 糖尿病
6 脳梗塞
7 頸髄損傷
8 統合失調症
9 重症心身障害児
[2] 難病
10 パーキンソン病
11 筋萎縮性側索硬化症
12 多発性硬化症
13 筋ジストロフィー
[3] 老年症候群
14 フレイル
15 大腿骨頸部/転子部骨折(大腿骨近位部骨折)
16 関節拘縮
17 認知症
18 尿失禁
19 摂食・嚥下障害
20 生活不活発病(廃用症候群)
[4] エンドオブライフ
21 老衰
22 神経難病
23 がん
24 小児がん
第3章 心理・社会的課題別看護過程
[1] 環境
25 家族の介護疲れ
26 療育困難
27 家族による高齢者虐待
28 生活困窮
29 社会的孤立
30 不衛生な住環境(ごみ屋敷)
[2] 理解・意向
31 意欲低下
32 自己放任
33 意思決定不全
34 服薬管理不全
薬剤一覧
看護課題索引
事例キーワード索引
索引
NOTE
在宅酸素療法
間欠的自己導尿
人工呼吸器
CVポート