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消化器内視鏡外科手術バイブル
動画で学ぶハイボリュームセンターの手技

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消化器内視鏡外科のハイボリュームセンターで活躍するエキスパートの手術手技を、よりすぐりの動画で学べる1冊。手術をスムーズに進めるセッティングやポート配置、手術器具の選びかたなども丁寧に解説。いま知りたい手術のポイントをぎっちり詰め込んだ最高のテキスト。

監修 北川 雄光
編集 宮澤 光男 / 竹内 裕也
発行 2023年03月判型:B5頁:336
ISBN 978-4-260-05052-4
定価 13,200円 (本体12,000円+税)

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発刊に寄せて(北川雄光)/序(宮澤光男、竹内裕也)

発刊に寄せて

 「エキスパートの手術を自分の目で見てみたい」「さまざまな手技を会得して手術手技の引き出しを増やしたい」「明日は,今日よりも少しでも優れた外科医に成長したい」,どの時代においても若手外科医たちはこうした気持ちを胸に抱いて研鑽を積んできました.全国津々浦々の名手の手術を見学して必死に学ぼうとする若い外科医の姿勢は今も昔も変わりません.しかし,この3年間コロナ禍のなかで,若い外科医たちのそうした思いは十分満たされない厳しい時代が経過いたしました.そのような中で,これまでの手術解説書からさらに精緻さを求め,深さ,広さを兼ね備えた本書を刊行できますことは,大変喜ばしい限りです.ハイボリュームセンターのエキスパートの皆様が,外科解剖,手順,使用する器具,すべてにこだわって執筆された珠玉の内容が,動画とともに提供される本書は,居ながらにして全国津々浦々のハイボリュームセンターを訪れて,自らを高めることのできる「バイブル」と呼べる内容に仕上がったものと自負しております.
 手術手技にはそれぞれの術者の個性があり,「理想の手術はこうあるべき」という最終的な答えはありません.また,理想の手術,最適な手技は,科学技術の進歩や集学的治療の発展により時代とともに変化するものです.しかし,その時点でのエキスパートたちが自らの信念,考え方を明示して,理想の手技を追求した軌跡は,後世においても輝きを失わない尊い意義を備えていると考えます.さらに,各章の項目もあらゆる状況を想定した内容を網羅し,若手外科医の皆様が常に手に取って道標とできる内容とすることを心がけました.
 本邦において内視鏡外科手術が導入されて30年余が経過し,今やロボット支援手術が本格的に普及する時代となっています.2023年度からは日本内視鏡外科学会による技術認定試験においてもロボット支援手術が対象となるなかで,細かなセットアップや術中の留意点まで記載し,実用性,再現性を極めた手術書を目指しました.消化器内視鏡外科手術30年の歴史の積み重ねに立脚し,最先端の器具,手技を駆使した技術を網羅した本書の企画,編集をリードしてくださった宮澤光男教授,竹内裕也教授,渾身の原稿をご執筆くださったエキスパートの皆様に厚く御礼を申し上げ,本書の発刊に際してのご挨拶とさせていただきます.

 2023年2月
 北川雄光


 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行が始まってから3年が経過している.多くの学会・研究会が開催中止や縮小を余儀なくされ,外科医療の最近の知見や技術修得の機会も極端に減少している.特に,手術は,高度で繊細な技術を要求される職人の世界と同様に,ある意味「徒弟制」である.修得のためには手技や雰囲気をその場で見て覚えることが,技術向上のためには必須の条件であり,学習の機会が奪われていることが残念である.特に,若手医師が手術見学のためハイボリュームセンターに行き,最新の手術を見学しよう,手術を学ぼうと高い意識を持っていても,それが叶わない状況にある.
 このような状況を憂い,なんとか,すべての消化器外科医に,ハイボリュームセンターではどのような手術をしているか,その場で見学しなくても,ある程度理解可能となるようにと思い,動画を多数取り入れ,本書『消化器内視鏡外科手術バイブル─動画で学ぶハイボリュームセンターの手技』を編集した.狭い日本,ハイボリュームセンターの外科医と,地方で活躍している外科医が同様の知識を持ち,同様の手術が可能となることが理想である.本書のエキスパートの手技を繰り返し見ることで,自身の手術手技を洗練させ,この理想を現実に近づけるのがねらいである.

 本書では,主に次の1)~5)を目標とし,多数の動画とそれに対する詳細な解説を掲載した.
 1) これから消化器外科医を志す医師が,内視鏡外科手術がどのように施行されているのか概要を把握できる.
 2) すべての地域において消化器外科医が,本邦トップレベルに匹敵する消化器内視鏡外科手術が可能となる.
 3) 中堅医師が,ハイボリュームセンターではどのような手術をしているか修得可能となる.
 4) すべての消化器外科医が,標準~高難度の内視鏡外科手術を修得可能となる.
 5) ハイボリュームセンターの外科医が,他のハイボリュームセンターの手術手技を修得し,さらに各自のスキルアップが可能となる.
 以上5点を目指して工夫した.本書の読者が繰り返し動画を見て,解説を読むことにより,各臓器の標準的手術からロボット支援手術を含む高難度手術まで施行可能となることを期待している.

 内視鏡下の消化器外科手術は,本邦で腹腔鏡下胆囊摘出術から開始されて約30年が経過しているが,いまだ,すべての臓器で,安全で確実な術式が確立しているとはいえない.内視鏡外科手術が開腹手術より低侵襲であるためには,この両者を兼ね備えた術式の定型化が必要である.本書により,ハイボリュームセンターの手術手技を比較検討し,各臓器の高難度手術も,ある程度定型化の方向に進むことを望んでいる.
 今般の新型コロナウイルス感染症がもたらした厳しい医療情勢にもかかわらず,ご快諾いただいた執筆者の先生方には,深謝申し上げる.また,本書の出版に種々ご援助いただいた医学書院の大橋尚彦氏,石井美香氏に感謝の意を表する.

 本書で,読者が消化器内視鏡外科手術の高度な技術を修得し,すべての施設において,安全,確実な手術が実施される一助となれば編者らの望外の喜びである.

 2023年2月
 宮澤光男
 竹内裕也

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本書の付録Web動画について
動画一覧
略語一覧

第1章 食道
 1 標準 胸腔鏡下食道切除術──上縦隔郭清
 2 標準 ロボット支援食道切除術──上縦隔郭清
 3 標準 胸腔鏡下中下縦隔郭清
 4 標準 ロボット支援中下縦隔郭清
 5 高難度 反回神経浸潤に対する手術手技──臓器鞘切除による局所制御
 6 高難度 大血管浸潤疑い例
 7 高難度 気管浸潤食道癌に対する気管表層切除術(shaving)
 8 高難度 巨大食道裂孔ヘルニア

第2章 胃
 1 標準 噴門側胃切除術──観音開き法再建
 2 標準 モノポーラシザース法による ロボット支援噴門側胃切除術──mSOFY再建
 3 標準 デバイスと手技の工夫で進化させる 胸腔鏡下噴門側胃切除術
 4 標準 胃腫瘍に対する腹腔鏡下胃局所切除──腹腔鏡・内視鏡合同手術を中心に
 5 標準 腹腔鏡下胃局所切除──LECSを含む
 6 標準 腹腔鏡下幽門側胃切除
 7 標準 ロボット支援幽門側胃切除
 8 標準 ロボット支援腹腔鏡下胃全摘──頭側アプローチ Powered Echelon Circular 23mmを用いたEST法 Roux-en Y再建
 9 標準 腹腔鏡下胃全摘
 10 標準 低電圧バイポーラ法を用いた ロボット支援脾温存脾門部郭清
 11 標準 腹腔鏡下脾温存脾門部郭清
 12 標準 ロボット支援腹部大動脈リンパ節郭清
 13 標準 ロボット支援腹腔鏡下傍腹部大動脈リンパ節郭清

第3章 大腸
 1 標準 腹腔鏡下結腸右半切除術──頭側アプローチ
 2 標準 腹腔鏡下結腸右半切除術──後腹膜アプローチ
 3 標準 腹腔鏡下横行結腸切除術
 4 標準 横行結腸癌に対するリンパ節郭清手技
 5 標準 腹腔鏡下下行結腸切除の基本手技
 6 標準 腹腔鏡下下行結腸切除術
 7 標準 超音波凝固切開装置で行う 腹腔鏡下S状結腸切除術
 8 標準 腹腔鏡下低位前方切除術
 9 標準 ロボット支援腹腔鏡下低位前方切除術──スタンダードな症例を確実に行う手技
 10 標準 腹腔鏡下括約筋間直腸切除術
 11 標準 他臓器合併切除を必要とする腹腔鏡下直腸切除術
 12 標準 直腸癌手術の側方郭清

第4章 肝臓
 1 標準 モノポーラソフト凝固を駆使した肝部分切除術──術中出血量を最小限とする手技
 2 標準 腹腔鏡下肝部分(右葉)切除──CUSAを用いて
 3 標準 腹腔鏡下肝部分切除──超音波凝固切開装置を用いて
 4 標準 腹腔鏡下肝右葉切除
 5 標準 前方アプローチによる腹腔鏡下肝右葉切除術
 6 標準 腹腔鏡下肝S7亜区域切除
 7 標準 腹腔鏡下肝S8亜区域切除
 8 標準 腹腔鏡下肝S4亜区域切除
 9 標準 腹腔鏡下肝S3亜区域切除
 10 標準 尾状葉を温存した 腹腔鏡下肝左葉切除
 11 標準 腹腔鏡下肝左葉切除
 12 標準 腹腔鏡下肝外側区域切除
 13 標準 腹腔鏡下肝外側区域切除──ステープラーによる一括脈管処理を用いて
 14 高難度 腹腔鏡下肝尾状葉部分切除──尾状葉病変に対する腹腔鏡下アプローチ

第5章 胆囊
 1 標準 単孔式腹腔鏡下胆囊摘出術──Single Incision Multichannel法
 2 標準 腹腔鏡下胆囊摘除術──フック型電気メスを用いて
 3 標準 腹腔鏡下胆囊摘出術──超音波凝固切開装置など(フック以外)を用いて
 4 標準 腹腔鏡下胆囊摘出術──LigaSure Marylandを用いた胆囊炎に対する安全な手術手技
 5 標準 腹腔鏡下急性胆囊炎手術──THUNDERBEATを用いて
 6 標準 腹腔鏡下胆囊摘出術──状況に応じた適切なデバイス選択,および術中胆道造影のコツ
 7 標準 総胆管結石に対する腹腔鏡下手術
 8 困難例 腹腔鏡下胆囊摘出術困難例に対する手技
 9 高難度 炎症に起因しない腹腔内因子による手術困難症例に対する腹腔鏡下胆囊摘出術

第6章 膵臓
 1 標準 腹腔鏡下膵核出術
 2 標準 脾動脈血流遮断を先行した腹腔鏡下膵体尾部切除術
 3 標準 ロボット支援尾側膵切除術──Gerota筋膜を意識した膵上縁からのアプローチ
 4 標準 ロボット支援膵頭十二指腸切除術
 5 標準 腹腔鏡下膵頭十二指腸切除術

第7章 虫垂
 1 標準 腹腔鏡下虫垂切除術

第8章 ヘルニア
 1 標準 Trans-Abdominal Pre-Peritoneal Repair──超音波凝固切開装置による剝離と自己接着性メッシュによる修復を主軸としたTAPP法
 2 標準 腹腔鏡下鼠径ヘルニア根治術──腹膜高位切開アプローチTAPP法(経腹的腹膜前修復法)
 3 標準 下腹部単孔式Totally Extraperitoneal(TEP法)

索引

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数多くの動画とわかりやすい解説で学べる手術書
書評者:袴田 健一(弘前大病院長/弘前大大学院教授・消化器外科学・小児外科学)

 北川雄光先生監修,宮澤光男先生,竹内裕也先生編集による本書は,わが国を代表するハイボリュームセンターにおける消化器外科内視鏡手術の実際を,数多くの手術動画とわかりやすい解説で学ぶことのできるぜいたくな手術書である。ほぼ全ての消化器領域の手術を網羅し,エキスパートチームで培われたノウハウが惜しげもなく記載されており,どの世代の外科医にとっても,日頃の疑問に答え,より良い手術に導いてくれる,真にバイブルと呼ぶにふさわしい待望の一冊である。

 ページを開いてまず驚かされるのは,動画の多さである。手術操作ごとに細かく区分され,簡潔明瞭な解説文と連動して配置されている。さすがハイボリュームセンターで練られた動画だけあって,映像の精緻さ,撮像の角度,カメラワーク,尺の長さ,いずれも申し分ない。動画を見るだけで,手術手技のコツと技術習熟の到達点をイメージすることができる。また,動画視聴だけではわからないポート配置などはイラストで具体的に表現されているため,型通りの冗長な解説が不要となり,内容の濃さとは裏腹に紙面構成がすっきりしている。質の高い動画とイラストが簡潔な解説文とリンクして配置され,記載分量や紙面構成が統一されているため,とても見やすく,読みやすい。おそらくは,左手で本を開き,右手でスマホを操作して動画視聴しながら利用することを想定されているのであろう。読者の目線や利用法への編者の配慮が強く感じられる。

 もちろん,手術手技の細かい部分や使用する機器は施設により異なる。本書では,施設別,術式別に術者,助手,機器の配置とポート配置,準備する器具などの詳細が記載されている。ロボット手術についても,ポート配置や使用する鉗子がここまで詳細に書かれている教科書はこれまでにない。読者は,いながらにして全国のハイボリューム施設の手術を見学し,手術手技,手術室の人と機器の配置,さらにはチームプレーの実際を学ぶのと同様の経験を積むことができる。このことは,まさに監修者,編集者の意図するところである。

 コロナ禍にあって,技能向上をめざす多くの外科医はハイボリュームセンターでの手術見学の機会を希望しながらも,困難な状況が続いた。本書は,そのような外科医の渇望に呼応して,手術見学で得られる以上の解説や動画を付加した手術書を提供することで,新たなスタイルの手術研鑽法を提案したと言っても過言ではない。コロナが明けて自由な交流が実現した暁であっても,むしろ本書の手術解説書としての意義は大きくなるものと期待される。多様な利用者層に対して,多様な環境で変わらず真価を発揮できる点においても,真のバイブルである。


全ての消化器内視鏡外科医に高いレベルの手術を
書評者:平野 聡(北大大学院教授・消化器外科学/北大病院副病院長・消化器外科II科長)

 「手術は手術室に行って覚えよ」とは,外科医にとって絶対的な教えであった。あえて術野に入らない立場で,術者や助手の一挙手一投足を目に焼き付け,その手術室の雰囲気を含めて肌で感じることは,「手術が上手くなりたい外科医」にとって必須の行いと目されていた。しかし本書は,その不文律を塗り替えるかのごとき大著である。

 「コロナ禍」により移動が制限された数年間を経験し,さらに働き方改革で外科医の時間の使い方に変化が生じる中,多くの修練医がエキスパートによる手術映像を渇望している。確かに,昨今,外科系学会では多くの手術動画が供覧されるようになったが,短時間の口演では繰り返し学習は困難であり,エキスパートの考え方やデバイス選択の理由など,詳細情報を欠くことが常である。そのような背景を的確に認識し出版されたのが本書であり,消化器内視鏡手術全般を,実に368本を数える動画と豊富な紙面情報により読者にオンデマンドで提供してくれる点において他に比肩するものがない。

 現在,臨床現場では腹腔鏡・胸腔鏡手術とロボット支援手術が各領域でさまざまな比率で選択されているが,本書はそれぞれのアプローチ法を実施の頻度によって適切に選択して掲載している。その関連情報として,ポート位置や使用デバイスはもちろん,術者のポジションやナースと器械台の位置まで,はたまた,ロボットのペイシェントカートの方向に至るまでが全編を通して同じイラストで示されている点で,読者への細かな気配りを感じる。さらに,本書の最大の売りである手術動画も,誌面の中にQRコードが適切に配置され,収録時間も数分程度に集約してあり,本文の文字情報との相性もさることながら,スマホ片手に動画を連続して閲覧することで,術前の手術イメージ作りにも絶好である。

 本書編さんの目的として「全ての消化器内視鏡外科医に高いレベルの手術を」という命題が掲げられているとおり,対象となる読者層は極めて広い。手術のセッティングやエキスパートの手さばき一つひとつは初学者や技術認定をめざす者にとって珠玉であり,デバイス選択やテクニックの詳細は自施設の方法を進化させようとしている指導者にも格好の情報である。また,食道癌における反回神経・大動脈・気管浸潤例などが「高難度」手技と明示して独立掲載されており,熟練者といえども思わず本書を手に取り,動画を開きたくなるはずである。

 紀元前から人は老若男女にかかわらず,何か悩みがあるたびに「聖書(バイブル)」をめくっていたと言われる。本書は若手からベテランまで,その技術の成長を導くものとして,現代における真の「手術バイブル」である。

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