ELNEC-Jクリティカルケアカリキュラムで学ぶエンド・オブ・ライフ・ケア
すべての人々に質の高いEOLケアを届けるために
もっと見る
ELNEC-JCC看護師教育プログラムのモジュールに基づく構成で、クリティカルケア領域におけるEOLケアを体系的に解説。EOLケアに関する基本的な考え方や倫理的視点、クリティカルケア領域特有の状況を踏まえた看護実践、看取りに至るまでの患者・家族への関わり、多職種連携の考え方などについて示す。さらに、巻末の付録では、具体的な状況を設定した4つの事例を提示。EOLケアについて考え、省察するのに役立つ。
更新情報
-
更新情報はありません。
お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。
- 序文
- 目次
- 付録・特典
序文
開く
まえがき
急性期医療の発展と救急医療システムの確立により救命の可能性が広がってきました。一方で,患者に最善の治療と看護が提供されたとしても,提供できる治療の限界を迎え,「生命予後がある程度限られていると考えられる状況」に至ることがあります。また,クリティカル領域においては,集中治療室や救急の現場で患者の病状が急速に変化し,極めて短い時間に治療困難な状態となり,ご自身の意思表示ができない状態のまま最期を迎えることになってしまう場合も少なくありません。
このような状況にある人が最期まで,最善の状態で過ごすことができるように,看護師には,可能な限り患者と家族を身体的,精神的,社会的,スピリチュアルな側面から全人的に捉え,統合して支援するとともに,難しい状況の中で権利擁護をすることが求められます。そのための知識と実践スキルを身につけるには,系統的な教育プログラムに基づいた学習が効果的であるとされています。
米国ではELNEC(End-of-Life Nursing Education Consortium)がエンド・オブ・ライフ・ケア(EOLケア)に携わる看護師のための包括的な看護師教育プログラムを開発しており,その中の ELNEC-Critical Careと日本においても開発されたELNEC-Jコアカリキュラム指導者用ガイドを基に,急性・重症患者看護専門看護師・集中ケア認定看護師および大学教員で構成されたメンバーが,2015年にELNEC-Jクリティカルケアカリキュラム(ELNEC-JCC)指導者用ガイドを作成しました。翌2016年にはELNEC-JCC開発研究会が発足し,クリティカルケア領域のエンド・オブ・ライフ・ケアの質向上のための活動を継続するとともに,2016年・2018年・2020年にこの指導者用ガイドの改訂を行いました。
現在,ELNEC-JCC開発研究会を中心に「ELNEC-JCC看護師教育プログラム」が開催されています。このプログラムは8つのモジュール──「クリティカルケア領域におけるエンド・オブ・ライフ・ケア」「痛みのマネジメント」「症状マネジメント」「倫理的実践」「文化とスピリチュアリティ」「コミュニケーション」「悲嘆」「看取り」──から構成されます。
本書は,このモジュールに基づいた章立てとなっており,クリティカル領域におけるEOLケアを体系的に整理し,最新データを示しながらできるだけ具体的に解説することを目指して編まれました。EOLケアに関する基本的な考え方や倫理的視点を整理したうえで,クリティカル領域特有の状況を踏まえた看護実践,看取りに至るまでの患者・家族への関わり,多職種連携の考え方などについて具体的に示しています。また,知識の習得にとどまらず,看護師1人ひとりが自ら考え,実践を振り返ることができるように,各章末には理解を確認し思考を深めるための問いかけがあります。さらに,巻末の付録では,具体的な状況を設定した4つの事例を提示しました。事例の考え方と解答例は,医学書院のウェブサイトからダウンロードできますので,EOLケアについて考え,省察する際にお役立てください。
これまでELNEC-Jクリティカルケアカリキュラムの研修会に参加された皆さんはもちろん,EOLケアに関心のある方,各自の臨床能力と経験だけでは乗り切れない,対応困難な苦痛症状や,時間が限られた中での倫理的葛藤やコミュニケーションの難しさを抱えながら,日々のケアを実践している方々にも読んでいただければ幸いです。
最後になりましたが,本書の基となったELNEC-JCC指導者用ガイドは,2015年の初版刊行以降,3回の改訂を重ね,38名の執筆者と,レビューを担当してくださった20名の有識者のご尽力によりつくり上げられてきました。また,特定非営利活動法人日本緩和医療学会によるELNEC-Jコアカリキュラムの活動に加え,米国ELNECからも多くのご支援をいただきました。ここに改めて深く感謝申し上げます。少しでも質の高いEOLケアを実践できるよう看護師を支援したいという共通の目的があったからこそ,ここまで歩んでくることができたのだと思います。これは,本書を執筆した私たち全員の共通の思いです。
本書が,クリティカルケアの現場でEOLケアに向き合う看護師の皆さんの支えとなり,日々の実践を後押しする一助となることを心より願っています。
2026年1月
任 和子
宇都宮明美
目次
開く
まえがき
序論
ELNEC-Jクリティカルケアカリキュラムの活用と継続教育の重要性
1 クリティカルケア領域におけるエンド・オブ・ライフ・ケア
A エンド・オブ・ライフ・ケア(EOLケア)とは
1.EOLケアの基本的な考え方
2.近接概念の理解
3.死の軌跡から考えるEOL
B クリティカルケア領域における死を取り巻く現状
1.社会状況の変化
2.疾患の複雑性
3.死を取り巻く社会状況の変化とICUの状況
4.脳死下臓器提供の推移と意思表示
5.死を取り巻く社会状況の変化による影響
C クリティカルケア領域のEOLケアにおける課題
1.課題①──患者・家族のニーズへの対応
2.課題②──クリティカルケア領域におけるアドバンス・ケア・プランニング
3.課題③──クリティカルケア領域における代理意思決定
4.課題④──DNARとその誤解
5.課題⑤──PICS,PICS-F
6.課題⑥──脳死と臓器提供
7.課題⑦──医療者の課題
D EOLケアにおけるアセスメントとケアのあり方
1.QOLのアセスメントの視点
2.全身状態・生命予後の評価
3.ケアのあり方
E EOLケアにおける多職種チームアプローチ
1.多職種チームアプローチの必要性
2.多職種チームアプローチの考え方
3.患者中心の医療のあり方
4.活用できるEOLケアのリソース
F EOLケアを提供する看護師に求められる基本的態度
1.EOLケアを提供する看護師に求められる基本的態度
2.患者と共にいること
2 痛みのマネジメント
A クリティカルケア領域におけるEOLケアと苦痛緩和
1.クリティカルケア領域においてEOLにある患者が抱える苦痛
2.苦痛が患者に与える影響(トータルペイン)
3.苦痛緩和の考え方
B クリティカルケア領域における患者の痛み
1.痛みの定義と分類
2.クリティカルケア領域における痛みの原因
3.クリティカルケア領域における患者の痛みの現状
C 痛みのマネジメント
1.クリティカルケア領域における痛みのマネジメントに対する障壁
2.不十分な痛みのマネジメントが患者に及ぼす影響
3.痛みのマネジメントの目標
4.痛みのアセスメント
5.薬物療法
6.薬物療法以外の介入
D 痛みのマネジメントにおける看護師の役割と今後の課題
1.痛みのマネジメントにおける看護師の役割
2.痛みのマネジメントにおける今後の課題
3 症状マネジメント
A クリティカルケア領域のEOLにおける症状マネジメントの考え方
1.クリティカルケア領域のEOLにおける症状の特徴
2.クリティカルケア領域のEOLにおける症状が患者に与える苦痛
3.クリティカルケア領域のEOLにおける患者の特徴
4.クリティカルケア領域のEOLにおける症状マネジメント
B 呼吸困難
1.定義,原因
2.アセスメントの視点
3.治療・ケア
C 全身倦怠感
1.定義,原因
2.アセスメントの視点
3.治療・ケア
D 浮腫
1.定義,原因
2.アセスメントの視点
3.治療・ケア
E 口渇・口腔内乾燥
1.定義,原因
2.アセスメントの視点
3.治療・ケア
F 腹部膨満感
1.定義,原因
2.アセスメントの視点
3.治療・ケア
G 悪心・嘔吐
1.定義,原因
2.アセスメントの視点
3.治療・ケア
H 痙攣
1.定義,原因
2.アセスメントの視点
3.治療・ケア
I 睡眠障害
1.定義,原因
2.アセスメントの視点
3.治療・ケア
J 不安・抑うつ
1.定義,原因
2.アセスメントの視点
3.治療・ケア
K せん妄
1.定義
2.せん妄が患者・家族に与える苦痛
3.せん妄の発症要因
4.重症患者のせん妄の発症要因
5.アセスメントの視点
6.治療・ケア
L 集中治療後症候群(PICS)
1.定義,原因
2.アセスメントの視点
3.治療・ケア
4 倫理的実践
A 倫理の基本と倫理的問題
1.倫理とは
2.倫理的問題と看護師の果たすべき倫理的責任
3.生命医療倫理の4原則
4.倫理原則の臨床への適用と限界
B クリティカルケア領域における倫理的問題
1.倫理的問題が発生する場面
2.医学的無益性の検討と判断
3.延命措置についての選択
4.尊厳死と安楽死
C クリティカルケア領域で意思決定を支える
1.クリティカルケア領域における意思決定の特徴
2.意思決定のモデルとSDMの実現において有用なアプローチ
3.意思決定にまつわる概念
4.代理意思決定者のアセスメントと支援
D 看護倫理に基づくクリティカルケア領域におけるEOLケアの実践
1.看護倫理とは
2.看護倫理に基づくケアの実践
3.看護倫理に基づくクリティカルケア領域におけるEOLケアの実践
4.倫理的問題を未然に防ぐ
5.倫理的問題への組織的な対応
5 文化とスピリチュアリティ
A EOLと文化
1.文化について
2.スピリチュアリティについて
B 医療における文化
1.日本の文化と医療
2.日本に在留する外国人と医療
C 文化とスピリチュアリティに配慮したEOLケアを行うためのアセスメント
1.文化に配慮したEOLケアを行うためのアセスメント
2.スピリチュアルペインのアセスメント
D 文化とスピリチュアリティに配慮したEOLケアの実際
1.文化に配慮したEOLケア
2.スピリチュアルケア
[COLUMN] 医療スタッフの言葉がどのような意味で捉えられているか
E 医療スタッフ自身の文化のアセスメント
1.看護師自身の文化を理解する
2.チームメンバーの文化的背景を理解する
6 コミュニケーション
A コミュニケーションの基本
1.コミュニケーションとは
2.コミュニケーションの種類
[COLUMN] コミュニケーションにおける非言語的な要素の重要性
B コミュニケーションに影響を及ぼす要因
1.一般的な要因
2.クリティカルケア領域特有のコミュニケーションを妨げる要因
C コミュニケーションニーズ
1.患者のニーズ
2.家族のニーズ
3.家族のニーズで特に順位が高いもの
D コミュニケーションスキル
1.基本的なスキル
E 意思決定と配慮
1.クリティカルケア領域における意思決定の特徴
2.意思決定支援
3.意思決定における看護師の役割
4.悪い知らせを告知されるにあたって患者・家族が望むこと
5.面談における配慮
[COLUMN] 家族との話し合いの際の言葉の提案
F チームコミュニケーション
1.チーム内で良好なコミュニケーションをとるためのコツ
2.チームの衝突やコミュニケーション不足を解消するために
7 悲嘆
A 喪失・悲嘆・危機・死別
1.それぞれの用語の定義
2.喪失・悲嘆・危機・死別の関係性
3.悲嘆や死別を経験する人へのケア
4.クリティカルケア領域における死別の特徴と看護師の役割
B 悲嘆のアセスメントとケア
1.悲嘆の種類
2.悲嘆のプロセス
3.悲嘆のプロセスに影響する因子
4.悲嘆をアセスメントする際の視点
5.悲嘆・死別に対するケア
C 看護師自身の悲嘆とケア
1.看護師自身の悲嘆
2.看護師の悲嘆に影響すること
3.看護師自身の悲嘆のケア
8 看取り
A 終末期の患者とその家族が死を迎える準備を整えるために看護師がすべきこと
1.予後予測をチームで共有する
2.オープンで誠実なコミュニケーションを心がける
3.患者・家族の死への不安が最小限になるように配慮する
B 死が差し迫っている時期とは
1.死にゆく患者の最期の数時間
2.疾病と死の軌跡
C 「突然死」の特徴とケア
1.突然死の特徴
2.蘇生行為中の家族の立ち会い
3.蘇生場面における看護師の役割
D 「多臓器不全による死」の特徴とケア
1.多臓器不全による死の特徴
2.終末期の浮腫に対するケア
3.終末期の栄養療法の考え方;
“患者の「食べたい」” “家族の「食べさせてあげたい」”を共に考える
4.イメージしていた終末期との乖離に対する苦悩
E 「慢性疾患の急性増悪による死」の特徴とケア
1.慢性疾患の急性増悪における身体的特徴とケア
2.終末期患者の「治療抵抗性の苦痛」への対応
3.終末期患者の精神的・スピリチュアルな側面へのケア
[COLUMN] palliative sedation therapy(緩和的鎮静療法)とは
4.患者の意思に寄り添う蘇生行為について
5.大事な人の死が差し迫った時期の家族のニーズとケア
[COLUMN] slow codeと tailored codeとは
F 死亡時のケア
1.看取りと看取り後の対応
2.臓器および組織提供について
[COLUMN] Gift of Lifeとは
付録 クリティカルケア領域におけるエンド・オブ・ライフ・ケアを考えるための4事例
事例1 重症肺炎によって呼吸困難を訴える患者の症状マネジメント
事例2 本人の意向が不明瞭なためEOLケアにおいて生じた葛藤
事例3 治療の効果が得られず bad newsを伝えられる家族へのケア
事例4 予期せぬ死別を経験する家族への悲嘆ケア
索引




