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所見から考えるぶどう膜炎 第2版

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原因が多彩で鑑別診断が難しいぶどう膜炎をテーマに、“所見”をベースに評価・鑑別のプロセスと注意すべきポイントを示した好評書、待望の改訂版。初版の内容から写真を大幅に追加・変更しパワーアップ。「multiplex PCRの応用」「免疫チェックポイント阻害薬によるぶどう膜炎」など最新のトピックスもフォローするなど、臨床医が“今”知りたい内容へと生まれ変わった。

シリーズ 眼科臨床エキスパート
シリーズ編集 𠮷村 長久 / 後藤 浩 / 谷原 秀信
編集 園田 康平 / 後藤 浩
発行 2022年07月判型:B5頁:328
ISBN 978-4-260-04935-1
定価 17,600円 (本体16,000円+税)

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第2版 序

 本書が2013年に発刊されて10年近い時間が経過した.ぶどう膜炎患者の所見のとりかたにはいくつかの見るべきポイント,言い換えると診察の原則がある.例外が存在することも確かであるが,ポイント・原則を知って診察するのと,ただ漫然と診察するのとでは大きな違いがある.本書はまず総論で「所見のとりかたの原則」を説いたうえで,疾患別に豊富で良質な画像を著者の皆様の協力で集めることができた.こうしてできた本書は,発刊以来読者から多くの反響をいただいた.「ぶどう膜炎はわかりにくくて,雲をつかむような感じだ」「眼炎症の所見をとるのにどこをどのように見たらよいのかわからない」といった声に対して,本書は一定の答えを出すことができたのではないかと考える.

 この10年でぶどう膜炎領域では疾患概念が見直され,検査法・画像診断法・治療法でもさまざまな進歩があった.わが国でも「ぶどう膜炎診療ガイドライン」が整備され,診療の道筋がより明確になった.本書の改訂に当たっては初版で取り上げたコンセプトを変えることなく,診察のポイントをよりわかりやすくさらに図解も加えて再構成した.新しい疾患概念や検査法,最新の疾患画像を網羅し,診察を行ったうえで進むべき次のステップをわかりやすく示すことができたと思う.また,画像の質にこだわり,初版よりさらに良質の画像を集めることができたと思う.

 本書がぶどう膜炎診療のよき理解を助けるものとして,これからも皆様の手に取っていただけるものになれば,執筆者一同,望外の喜びである.

 2022年6月
 編集 園田康平,後藤 浩

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第1章 総説
 ぶどう膜炎の診療概論
    I. ぶどう膜の解剖・生理
    II. 定義
    III. 分類
    IV. 問診
    V. 診察
    VI. 検査・診断
    VII. 治療

第2章 総論
 I 目で見るぶどう膜の解剖・生理
    I. 発生および先天異常
    II. 解剖と組織
    III. 生理機能とその制御
    IV. 免疫機能と役割
    V. 病理
 II 目で見るぶどう膜炎の疫学
    I. わが国におけるぶどう膜炎疾患の統計
    II. わが国におけるぶどう膜炎疾患の推移
    III. アジア各国におけるぶどう膜炎疾患の割合
 III ぶどう膜炎の画像検査
    I. フルオレセイン蛍光眼底造影検査(FA)
    II. インドシアニングリーン蛍光眼底造影検査(IA)
    III. 光干渉断層計(OCT)
 IV ぶどう膜炎の機能検査
    I. 視野検査
    II. マイクロペリメータ(MP-1)
    III. 網膜電図(ERG)
 V 診断に役立つ全身検査
    I. 診断に全身検査が有用なぶどう膜炎
    II. 全身検査を必要としないぶどう膜炎
    III. 全身検査を必要とするぶどう膜炎
    IV. ステロイド治療の投与前スクリーニング
    V. ステロイド治療中のフォローアップ
 VI 眼所見からみるぶどう膜炎の診断と鑑別
  A 角膜後面沈着物
    I. 角膜後面沈着物における原則と例外
    II. 角膜後面沈着物を観察する際のポイント
    III. 角膜後面沈着物と疾患
  B 虹彩癒着,虹彩結節
    I. 眼所見の特徴
  C 前房蓄膿
    I. 前房蓄膿とは
    II. 前房蓄膿がみられた場合の鑑別診断
    III. 前房蓄膿の診察ポイント
    IV. 治療と前房水を用いた検査
  D 隅角所見
    I. 隅角鏡の使い方
    II. 隅角所見のポイント
  E 硝子体混濁
    I. 炎症の活動性の指標となる硝子体混濁
    II. 硝子体混濁の定量
    III. 部位からみた硝子体混濁
    IV. 形状からみた硝子体混濁
    V. 病状とともに変化する硝子体混濁
  F 網膜血管炎
    I. 網膜血管炎とは
    II. 網膜血管炎の検出と蛍光眼底造影検査
    III. 網膜血管炎の検出と広角眼底写真
    IV. 網膜血管炎の原因疾患
  Advanced Studies
   1 白点症候群
   2 癌関連網膜症について

第3章 各論
 I 内因性ぶどう膜炎
  A Behçet病
    I. Behçet 病の眼病変
    II. Behçet 病の眼所見
    III. 治療 .124
  B サルコイドーシス
    I. 眼所見の特徴
    II. 続発症・合併症
    III. 眼外症状
  C Vogt-小柳-原田病
    I. 眼所見の特徴
    II. 画像検査
    III. 眼外症状
    IV. 治療と経過・予後
  D 急性前部ぶどう膜炎
    I. 疾患の特徴
    II. 眼所見の特徴
    III. 鑑別診断
    IV. 脊椎関節炎(HLA-B27関連全身疾患)
  E Fuchs 虹彩異色性虹彩毛様体炎
    I. 眼所見の特徴
    II. 診断および治療上の注意
  F Posner-Schlossman 症候群
    I. 眼所見の特徴
    II. 鑑別疾患
    III. 治療と予後
  G 尿細管間質性腎炎ぶどう膜炎症候群
    I. 眼所見の特徴
    II. 全身検査所見
    III. 診断
    IV. 治療と予後
  H 若年性特発性関節炎に伴うぶどう膜炎
    I. 眼所見の特徴
    II. 検査所見
    III. 続発症・合併症
    IV. 全身所見
  I 糖尿病虹彩炎
    I. 疾患の特徴
    II. 眼所見の特徴
    III. 診断と鑑別診断
    IV. 治療
    V. 予後
  J 水晶体起因性眼内炎
    I. 眼所見の特徴
    II. 診断と鑑別診断
    III. 治療
 II ウイルス感染によるぶどう膜炎
  A ヘルペス性虹彩毛様体炎
    I. 眼所見の特徴
    II. 検査所見および鑑別診断
    III. 起炎ウイルスによる特徴
  B 急性網膜壊死
    I. 眼所見の特徴
    II. 続発症・合併症
  C サイトメガロウイルス網膜炎
    I. 臨床所見
    II. 重症度
    III. 診断
    IV. 治療
    V. 合併症
    VI. 予後
  Advanced Studies
   3 サイトメガロウイルス慢性網膜壊死
   4 免疫回復ぶどう膜炎
  D サイトメガロウイルス虹彩炎・角膜内皮炎
   A:CMV 虹彩炎
    I. 眼所見の特徴
    II. 続発症・合併症
   B:CMV 角膜内皮炎
    I. 眼所見の特徴
    II. 続発症・合併症
    III. 診断
    IV. 治療
  E HTLV-1関連ぶどう膜炎
    I. 眼所見の特徴
    II. 診断
    III. 続発症・合併症
    IV. 眼外症状
  Advanced Studies
   5 マルチプレックスPCR(多項目PCR)の応用
 III 原虫・寄生虫感染によるぶどう膜炎
  トキソプラズマ眼感染症
    I. 臨床所見の特徴
    II. 検査所見
    III. 治療方法
 IV 細菌感染によるぶどう膜炎
  A 結核性ぶどう膜炎
    I. 概念
    II. 眼所見の特徴
    III. 診断・検査
    IV. 鑑別診断
    V. 治療
    VI. 続発症・合併症
  B 梅毒性ぶどう膜炎
    I. 眼所見
    II. 眼外所見
    III. 検査所見
    IV. 治療
  C 猫ひっかき病
    I. 病態
    II. 眼所見
    III. 診断
    IV. 治療と予後
  D 内因性細菌性眼内炎
    I. 臨床像
    II. 治療
 V 真菌によるぶどう膜炎
  内因性真菌性眼内炎
    I. 臨床像
    II. 治療
 VI 仮面症候群
  A 眼内リンパ腫(硝子体網膜リンパ腫)
    I. 眼所見の特徴
    II. 画像検査
    III. 中枢神経系リンパ腫について
  B 白血病に伴う眼病変
    I. 眼所見の特徴
    II. 診断と治療
  C 転移性ぶどう膜腫瘍
    I. 原発巣
    II. 眼所見の特徴
    III. 腫瘍生検
    IV. 治療
    V. 生命予後
  Advanced Studies
   6 免疫チェックポイント阻害薬によるぶどう膜炎
 VII 強膜ぶどう膜炎
  A 前部強膜ぶどう膜炎
    I. 眼所見の特徴
    II. 原因
    III. 続発症・合併症
  B 後部強膜ぶどう膜炎
    I. 眼所見の特徴
    II. 鑑別診断
    III. 続発症・合併症
  C 再発性多発軟骨炎
    I. 疫学
    II. 病態
    III. 所見
 VIII 神経炎を伴うぶどう膜炎
    I. 特発性視神経炎との鑑別
    II. 視神経所見を生じる三大ぶどう膜炎
    III. 感染による網膜視神経炎
    IV. 小児ぶどう膜炎
    V. 眼窩内炎症
  Advanced Studies
   7 実験的ぶどう膜炎
   8 マスサイトメトリーとヒト免疫学

和文索引
欧文・数字索引

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質の高い写真や図が豊富に掲載された贅沢な実践書
書評者:安藤 伸朗(長岡眼科医院)

 ぶどう膜炎というと45年前の鮮烈な記憶がよみがえる。

 医学部を卒業して新入医局員として大学の眼科に入局し,最初に受け持った患者さんがベーチェット病から生じた続発性緑内障の患者さんだった。入院前から治療方針は疼痛除去のための片眼の抜眼と決まっていた。入院時に一生懸命患者さんとお話しして,現病歴,家族歴,身体所見,眼所見を取り,カルテを作成した。時間は要したが,患者さんも快く応じてくれた。手術日は入院2日後と決まっていたが,手術前日,すなわち入院翌日に患者さんが行方不明となった。あちこち探しまわったが,見つからない。警察に捜索依頼を出そうかと話し合っているうちに,家人から静岡県で見つかったと連絡があった。後でご本人に聞いてみると,まだ目があるうちに友人と会っておきたいとのことだった。経験の少ない私は,問診をすること,所見を取ることに必死で,眼球摘出を控えた患者さんへの配慮が足りなかったことを思い知らされた。ぶどう膜炎にはこんな苦い経験がある。

 私は,卒後45年の長きにわたって眼科臨床に携わってきたが,ぶどう膜炎は専門外である。そんな私がぶどう膜炎の最新のことを学ぼうとすると,ガイドラインだけでも膨大な量を学ばなければならない。日本眼科学会のホームページでぶどう膜炎に関連したガイドラインを調べてみると,2007年から2019年の13年間に5つのガイドラインがある。

・サルコイドーシスの診断基準と診断の手引き―2006(2007/02/10)
・Behçet病(ベーチェット病)眼病変診療ガイドライン(2012/04/10)
・急性帯状潜在性網膜外層症(AZOOR)の診断ガイドライン(2019/04/10)
・ぶどう膜炎診療ガイドライン(2019/06/10)
・非感染性ぶどう膜炎に対するTNF阻害薬使用指針および安全対策マニュアル(改訂第2版,2019年版)(2019/06/10)

 専門外の私が,ぶどう膜炎患者の診療を行う場合,これらのことを全て理解して行うことは至難の業である。

 この度,医学書院の眼科臨床エキスパートシリーズ『所見から考えるぶどう膜炎』の第2版が出版された。これは,研修医でも,そして卒後年月を経た私のようなものの再教育にももってこいだ。なぜなら,質の高い,豊富な写真や図が豊富に掲載されている,とても贅沢な教科書であるからである。そして構成が,第1章「総説」,第2章「総論」,第3章「各論」とスマートな配列になっている。

 こうしたシリーズものは1ページ目から通読するのではなく,実際の症例に遭遇した場合,関連した事項をつまみ食いすることが多い。しかし,新しいぶどう膜炎の概念から学びたい方には,第1章の園田康平先生の総説を精読することをお勧めする。余裕のある方は,第2章の後藤浩先生らの総論を通読していただきたい。知っているようで知らないことをここでブラッシュアップしてみるのも一考かと思う。その上で,遭遇した症例について,各論で学ぶことができれば,鬼に金棒である。

 ここ10年の免疫学の進歩と生物学的製剤の進歩により,ぶどう膜炎の診断治療の進歩は著しい。この一冊をマスターして臨床に生かしたいと思う。


所見から考えることにより日常診療でここまで見えてくる!
書評者:平野 耕治(トヨタ記念病院眼科部長)

 眼球は,大ざっぱに言えば膠原線維の膜(角膜・強膜),血管の膜(虹彩・毛様体・脈絡膜),神経の膜(網膜)の3枚で構成されている。血管の膜は暗紫色を呈しているため,眼球から膠原線維の膜を取り去った際の外観から,虹彩・毛様体・脈絡膜を合わせて「ぶどう膜」と呼ぶ。このぶどう膜は血管が豊富な故,炎症を起こしやすく,膠原病や自己免疫疾患,がん,感染症などの全身疾患に由来した異常所見を見ることも多い。

 眼科医師として,このぶどう膜の炎症を苦手と感じるのは,何だかよくわからないこと,治療に終わりが見えないこと,最近話題の生物学的製剤は高価で安易に使えないこと,眼科医だけでは解決できない疾患が多い,といった高いハードルを感じるからである。

 本書は,読者のぶどう膜炎への苦手意識に応え,実際に目に見える眼所見にこだわって,そこから診療につながる系統的な考え方を身につけられるようにという目的で編集されている。その初版は2013年4月に出版されているが,この間に画像診断法を含む検査法の進歩,生物学的製剤など新たな治療法が加わり,Behçet病が減ってヘルペスウイルス前部ぶどう膜炎が増加してきたなど,わが国でのぶどう膜炎診療にも大きな変化があった。そのため,約10年を経てバージョンアップされた第2版として2022年7月に発行されている。

 本書は「総説」「総論」「各論」の3章で構成されており,総説では,園田康平教授が,ぶどう膜炎の分類と診断から治療に至るプロセスを概括しておられる。ことに「表1 問診の予備知識」(p.6)は秀逸で,ぶどう膜炎を大枠でとらえるのに役立つ。

 総論では,ぶどう膜の解剖・生理,ぶどう膜炎の疫学,画像診断という,疾患の病態をとらえるのに必要な情報が示された上で,角膜後面沈着物,虹彩癒着・虹彩結節,前房蓄膿,硝子体混濁など,一般的な眼科診療で見えてきた所見からぶどう膜炎を疑った場合,どう考えてどう鑑別を進めていくかのコツが述べられている。すなわち,これが本当にぶどう膜炎なのかどうか,緊急度の高い病態なのか,感染性か非感染性か,非感染性なら3大ぶどう膜炎(Behçet病,Vogt-小柳-原田病,サルコイドーシス)なのかそれ以外なのか,という考えで鑑別を進めていくことが大切で,その考えで観察すれば,普通の眼科診察室で十分できることなのである。

 各論では,原因のわかっているぶどう膜炎についてそれぞれの病態と診断,治療を解説しているが,大きく分ければ3大ぶどう膜炎に代表される内因性のもの,ヘルペス属のウイルスや真菌,原虫などによる感染性のもの,そして悪性リンパ腫や白血病に伴う仮面症候群の3つだろうか。一般の眼科医としては,感染性ぶどう膜炎,仮面症候群はなかなか手に負えるものではなく,内因性ぶどう膜炎にしても,サルコイドーシスなど患者の生命にかかわる疾患が含まれているため,ぶどう膜炎診療については専門家や他診療科の医師に診察を依頼するタイミングが重要である。各論ではそうした線引きについても学ぶことができる。

 本書を通して読んでみると,ぶどう膜炎は決して謎めいたものではなく,タイトルの通り「所見で考える」ことで見えてくるものがあることがわかる。したがって,日常の診療に携わる眼科医師だけでなく,ぶどう膜炎の患者さんにかかわる可能性のある診療科の医師にも本書をお薦めしたい。

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