ジェネラリストのための
がん診療ポケットブック
がん診療は専門医だけでなく、ジェネラリストと連携しながら行っていく時代に
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2人に1人ががんになる。今やがんは国民病である。世界的にも、がん診療は専門医だけでなく、ジェネラリストと連携しながら行っていく時代になってきた。本書は、がんに強い総合診療医・総合内科医、そして総合診療に通じたがん専門医・腫瘍内科医を目指す医療者に向けて編集。がん専門医・治療医、総合医とが手に手をとって、一緒になってがん患者を支えていくことができるような医療が実現することを期待して。
シリーズ | ジェネラリストのための |
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編集 | 勝俣 範之 / 東 光久 |
発行 | 2022年04月判型:A6頁:288 |
ISBN | 978-4-260-04922-1 |
定価 | 4,180円 (本体3,800円+税) |
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- 目次
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序文
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序
現代は2人に1人が,がんになる時代であり,まさにがんは,国民病といってよいと思います.これまでがん診療はがん専門医,がん専門病院が行うものという認識がありましたが,がんの罹患数が増え,がんの治療成績が向上し,がんサバイバーが増加してきている現代では,世界的にも,がん診療はもはや専門医だけでなく,ジェネラリストと連携しながら行っていく時代になってきています.本書「ジェネラリストのための がん診療ポケットブック」は,そのようなニーズに応えて,がん診療もできる,がんに強い総合診療医・総合内科医,また,総合診療に通じたがん専門医・腫瘍内科医を目指している医療者に手に取ってもらえるような内容にしようと,作成させていただきました.
本書はがんの予防・検診から,がん薬物療法副作用の管理,オンコロジックエマージェンシー,がん患者さんとのコミュニケーション,アドバンス・ケア・プランニング(ACP),緩和ケアまでを網羅いたしました.臨床現場ですぐに実践,応用できるように,がん診療の第一線で活躍されている先生方に執筆をお願いしましたので,まさに現場で役に立つ内容になっていると思われます.遺伝性がんや,若年性がん,がんサバイバーケア,免疫チェックポイント阻害薬の副作用管理にまで触れていますので,最新の情報まで含めた情報が網羅されていると思います.
がん診療は専門的治療のみではなく,予防・検診から,終末期医療まで幅広くかかわっていく必要があります.これからのがん診療は,ジェネラリストとしてもしっかりとかかわっていってほしい,かかわらなければならない時代になっていくと思われます.そのためには,幅広くエビデンスに基づいた医療はもちろんですが,がん患者さんの苦悩や苦痛にも寄り添っていただくような「ナラティブ・ベースド・メディシン」の要素も不可欠と思います.
がんと闘っていく,うまく付き合っていくためには,強い味方が必要です.医療者が1人でも味方になることは患者さんにとっては非常に強い支えになります.私は患者さんに,「主治医は何人いてもよい」とお話しています.
是非,皆さん,お1人お1人が主治医になっていただいて,患者さんに積極的にかかわっていただければと思います.がん専門医・治療医,総合医が手に手をとって,一緒になってがん患者さんを支えていくことができるような医療が実現することを期待したいと思います.
2022年3月吉日
勝俣範之
目次
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1 オンコ・ジェネラリストのためのminimal requirements
2 がんの予防・検診
3 がんの標準治療・補完代替療法
4 病歴・身体所見のポイント,がんを疑う症状について
5 がんの診断的検査
6 腫瘍随伴症候群
7 オンコロジストへのコンサルテーションのポイント
8 原発不明がんの診断
9 オンコカルディオロジー
10 オンコネフロロジー:がん患者の急性腎障害
11 高齢者のがん診療
12 がんサバイバーのケア
13 AYA世代のがんと遺伝性腫瘍
Ⅰ AYA世代のがん
Ⅱ 遺伝性腫瘍
14 オンコロジックエマージェンシー
Ⅰ 発熱性好中球減少症
Ⅱ 脳転移
Ⅲ 腫瘍崩壊症候群
Ⅳ 脊髄圧迫
15 抗がん剤と有害事象対策
16 がん患者とのコミュニケーション,シェアード・ディシジョン・メイキング
17 抗がん剤の止めどきとアドバンス・ケア・プランニング
18 死亡直前と看取りのエビデンス・作法
19 早期からの緩和ケア
20 緩和ケアの薬剤の使い方
21 在宅緩和ケアのエッセンス
索引
書評
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がん診療「ジェネラリスト活躍の時」
書評者:渡辺 亨(浜松オンコロジーセンター院長)
二人に一人が罹患するほど,がんは「当たり前の」疾患であり,肺がん,胃がん,大腸がん,乳がん,肝臓がんは,罹患率,死亡率も高く「五大がん」と呼ばれています。他にも前立腺がん,子宮頸がん検診が公費負担されており,卵巣がん,膵臓がん,膀胱がん,食道がんなども,医療者から見て何ら特別な病気ではありません。
がん治療として,最初に発展したのは外科手術,次に放射線治療で,これらは局所治療と分類されます。一方,現在は全身治療として,抗がん剤などの薬物療法が治療の主体を担っており,がん診療を専門としている病院,診療所も全国に多数整備されています。昭和の時代,がん薬物療法を受ける患者は,副作用に苦しみながら数週間入院するのが当たり前でした。しかし,好中球増加因子(G-CSF),制吐剤,抗生剤など,各種の有効な副作用対策薬の開発とともに,モノクローナル抗体薬,ホルモン療法薬,免疫チェックポイント阻害薬など,新しい作用機序を持ち,優れた効果が得られる治療薬が導入され,「外来化学療法室」が専門病院に整備され,今やがんの薬物療法は通院で受ける時代,がんと共に生活を送り,仕事を続ける人が増えています。通院でがん薬物療法を受けている患者は,治療の間に生じる副作用の苦痛,病院を離れている不安などから,頻繁に病院受診を希望しますが,予約が取りにくい,受診しても待ち時間がすごく長い,担当医は手術中で対応できない,偉い先生は学会出張で不在,など必ずしも満足できるとは言えません。一方で,広範囲の診療能力を有する「ジェネラリスト」がかかりつけ医として21世紀の医療を支えています。
今般,医学書院より出版された『ジェネラリストのための がん診療ポケットブック』は,コモンディジーズであるがんの診療に,さらに多くのジェネラリストの参画を促す卓越した良書です。本書の第1章に「本当のがん診療とは,『がん』という疾患の診療ではなく,『がん』という疾患をもつ患者のために行われる診療である」とあります。まさに,がん治療のスペシャリストと,全人的医療を担うジェネラリストがハイレベルな連携を構築することが,全てのがん患者を最高の幸福に導く鍵となるでしょう。
この一冊だけでさまざまながんに対応できる
書評者:上田 剛士(洛和会丸太町病院救急・総合診療科部長)
ジェネラリストにとって心強い味方ができた。『ジェネラリストのためのがん診療ポケットブック』である。2人に1人はがんに罹患し,3人に1人はがんで死亡している時代において,がん診療はジェネラリストにとって避けることのできない分野である。患者・社会からのニーズも高く,この分野に臨むことはやりがいがあることは言うまでもない。その一方で,がん診療は壮大な学問であり,ジェネラリストが挑むにはいささかハードルが高かった。本書ではがん診療のメインストリームであろう薬物療法についてあえて深く踏み入らないことで,このハードルを一気に下げた。その代わりにジェネラリストが知りたい内容が盛りだくさんとなっており,がん薬物療法を普段行っていないジェネラリストのために特化した一冊である。
例えばがんの予防については患者からの質問も多く,ジェネラリストにとって知らなければならない知識の一つであるが,「がんの19.5%が喫煙による」「適度な運動はがん死亡リスクを5%下げる」などの具体的な記述は患者指導に大いに役立つであろう。また,がんのリスクとなる食品,リスクを下げる食品についても言及されている。がんを疑う徴候に関しても,例えば,Leser-Trèlat徴候は3-6か月以内の急性発症で瘙痒感を伴うことが脂漏性角化症との違いなど,臨床的に重要な知識が詰め込まれている。
コンサルテーション先が定まらず対応に困ることも多い「原発不明がん」や「高齢者のがん」「遺伝性がん・若年性がん」についても章が設けられており,この一冊だけでさまざまながんに対応できる。がん患者とのコミュニケーション,アドバンス・ケア・プランニング,緩和ケアに関してもカバーしている。がんサバイバーケアの記述も充実しており,いつ,何によってフォローすべきかを教えてくれ,ジェネラリストを「オンコ・ジェネラリスト」へと昇格させてくれる一冊と言えよう。
がん薬物療法に関してはレジメンの詳細は紹介されていないものの,免疫チェックポイント阻害薬を含む薬物療法の副作用管理についてはしっかりと記述されている。薬物療法中のがん患者であっても,併存症や合併症のためにジェネラリストあるいは臓器別専門医が診療する機会は多いからである。がん薬物療法を普段行っていないジェネラリスト/臓器別専門医はこの書籍をポケットに忍ばせておくことで自信を持ってがん患者を診療できるようになるだろう。オンコロジックエマージェンシーについても記述されているので救急や一般外来の初療を担当する医師にもお薦めだ。