まんが やってみたくなるオープンダイアローグ
現時点で世界一わかりやすい「オープンダイアローグ入門書」です(断言!)
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オープンダイアローグってどうやるの? 6編の物語と4章の解説で、オープンダイアローグのエッセンスを2時間でつかめるよう構成しました。どうしたら対話を続けることができるのか、なぜ計画を立ててはいけないのか、調和を目指さないとはどういうことか。これらが納得できたら、まずはやってみてください。見よう見まねでも構いません。「対話さえ続けば、あとはなんとかなる」――これが本書の最大のメッセージです。
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序文
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はじめに
本書は、オープンダイアローグをテーマとした、世界でも初めての「まんが解説書」です。
おそらく、いま出版されているいかなる文献よりも、わかりやすくコンパクトに、オープンダイアローグの説明がなされていると思います。もちろん本書を読めば、すぐに完璧な対話実践ができる、とまでは言いません。なんとなく「いま話題のオープンダイアローグってどんなものかな、でも入門書とか読む時間ないし」と感じている人に、最初に気軽に手に取ってもらえる本を目指しました。
読み終えるのに二時間もかからないと思いますが、オープンダイアローグのおもしろさや素晴らしさが伝わるような内容になったと自負しています。
事例の紹介が充実している点も、本書の特徴でしょう。とりあげた事例については、もちろん細部は変更してありますが、当事者の方々の許諾を得て掲載しました。本をつくりながら痛感しましたが、事例紹介に漫画はうってつけですね。もちろん水谷緑さんの力量あってのことですが、読みやすさと伝達力が格段に違います。
さらに本書では、水谷さんご自身と、私自身の「変化」についても、事例として漫画にしていただきました。啓蒙的な本にありがちな「事例は観察対象であり、著者は観察する側である」という非対称性をできるだけなくすため、意図的にそうした構成になっています。本書のネームを読んでいただいた患者さんのご家族からは「斎藤さんもいろいろ苦労されたんですね」という、好意的なご感想をいただきました。
さて、本来なら「はじめに」では、この本の内容について簡単な紹介や解説をするのが常なのですが、なにしろ「わかりやすい」本なので、そちらは省略します。代わりに、私自身のことを少し書こうと思います。
考えてみたら、私が自分自身の来歴とか心境の変化についてくわしく記したのは本書が初めてかもしれません。もちろん事例など細部にはフェイクを交えていますが、「魂の遍歴(笑)」としてなら、ここに嘘はありません。
なぜ、この本でそれをする気になったのか。
もちろん、先述したとおり、事例の報告に協力していただいた患者さんに対して、私自身も自己開示しなければフェアではないと感じたためもあります。最初の意図はそれだけだったのですが、本書のゲラを読みながら、あらためて気づいたことがあります。この本をつくる経験は、期せずして、私がはじめて自分自身の問題と向き合うきっかけになったのではないか。そう感じたのです。
オープンダイアローグの研修では、「ファミリー・オブ・オリジン(原家族)」についての対話など、自身のルーツやアイデンティティを問われる場面がしばしばあります。そこには「自分自身を知らずして良い対話はできない」という発想が深く根づいています。じつは、私にとって最大の盲点というか弱点がこれでした。
これまで私は「自分自身についてはあんまり知りたいと思わない」「『自分が何者か』はわりとどうでもよい」「自分がこれから何をするか、何をつくるかにしか興味がない」というタイプの人間でした。ですから、この本は漫画を通じて自身を振り返るという、まことに希有な体験になったのです。
水谷さんから取材を受けて話したのはもちろん私自身ですし、私たちのチームも取材を受けて私の変化についての印象を語ってくれましたが、正直「そんなふうに思っているなんて全然知らなかった」というほどの意外性はありませんでした。水谷さんは取材内容を整理して、一人の精神科医に起きた変化を簡潔にまとめてくれました。内向的で、治療者として誠実であろうとはしつつも思い込みの激しい青年医師が、中年になってから対話実践に出会ってショックを受け、少しずつ対話に開かれていく過程が、ここに描かれています。
あらためてこの物語を読んでみて、私は自分自身の限界に気づきました。それは「私自身には精神療法の才能がない」ということです。その理由はおそらく「他者に共感してしまうことへの恐れ」があったためです。「中立性」をポーカーフェイスと誤解して「斎藤ロボ」になってしまったのもこれが原因だと思います。
これは謙遜でも自己卑下でもありません。ただ、そういう人間であってもチームによる対話実践で成果を出せた、という事実は大切にしたい。副業である文筆業では「精神分析」が強力なブースターでしたが、本業ではオープンダイアローグがそれでした。149頁に「やっと精神科医になれた」とあるのは、そういう意味でもあります。
「自分自身を知る」とは「自分はこういう人間だった、わかった!」という理解ではありません。自分自身もまた「汲み尽くすことのできない他者」として理解することです。対話実践とはその意味で、自分自身との対話でもあるのです。
本書を手に取っている方、オープンダイアローグに関心をお持ちの方に、ひとつお願いがあります。とくに「オープンダイアローグを受けてみたい」とお考えの方に。
現時点で、公式な形でオープンダイアローグによるケアや治療をおこなっている治療機関は、残念ながらまだありません。私たちの実践も、慎重に事例を選んで試験的になされているものですが、もちろん保険診療は適用されません。この手法による治療を受けたいというご要望には応えられないのが現状です。
ただ、本書を読まれれば理解されると思いますが、対話実践の特徴は「誰でもできる」という点です。実施に際して特別な資格はいりませんし、オープンダイアローグの基本的な思想を理解されている人ならば、精神科医や心理士と同等の、あるいはそれ以上に質の高い対話を実践することも不可能ではありません。
タイトルに「やってみたくなる」とあるのは、専門家ばかりではなく、どなたでも対話に関心がある人ならば、まずはご自身で取り組んでみてほしい、という意味を込めてのことです。まずは身近な人と、やってみてください。見よう見まねでも構いません。もう少し本格的に試みたい方には、オープンダイアローグ・ネットワーク・ジャパンが作成した「対話実践のガイドライン[★]」に目を通されることをお勧めします。
本書に触れて、「自分でもやってみたいな」と感じていただけたなら、本書のもくろみはひとまず成功と言えます。
[★]「対話実践のガイドライン」は次の方法で読むことができます。
・オープンダイアローグ・ネットワーク・ジャパンのホームページからダウンロードできます(https://www.opendialogue.jp)
・『開かれた対話と未来―今この瞬間に他者を思いやる』(ヤーコ・セイックラ+トム・アーンキル著、斎藤環監訳、医学書院、二〇一九年)の巻末に掲載されています。
・『精神看護』(医学書院)二〇一八年三月号巻頭にオールカラーで掲載されています。
目次
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はじめに
まんが編
第1章 会話が成立しないひきこもりの人とのかかわり
第2章 オープンダイアローグを受けて分かったこと――ガチ夫婦の悩み
第3章 夫が浮気してる!
解説編
第4章 オープンダイアローグの5つの柱
第1の柱 対話を続けるだけでいい
第2の柱 計画は立てない
第3の柱 個人でなくチームで行う
第4の柱 リフレクティング――患者に治療者を観察してもらう
第5の柱 ハーモニーではなくポリフォニー
第5章 こうすればオープンダイアローグはできる
1 始め方
2 聞くことと話すこと
3 リフレクティング
4 しめくくり
第6章 オープンダイアローグべからず集
1 説得、議論、説明、尋問、アドバイスはしない
2 体験を否定しない
3 わかったつもりにならない
第7章 よくある質問と答え
まんが編
第8章 鬼女に求婚された!
第9章 タマキ先生のビフォーアフター
第10章 オープンダイアローグを見にフィンランドに行ってきました
あとがき
コラム
オープンダイアローグの7原則
これが「なんちゃってオープンダイアローグ」だ!
訪問看護でやってみました――ひとりオープンダイアローグ(仮)
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