現場で使える
クリニカルパス実践テキスト 第2版
学会のオフィシャルテキスト第2版 進化し続けるパスの最新情報を収載
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まさに“現場で活かす”パス実践のノウハウを、詳細かつわかりやすく解説。
クリニカルパス学会主催の過去の教育セミナーから好評だったテーマを中心に、多くの地域・医療機関で明日から即検討できる手法をまとめた。また、パスの教育や組織作り、電子パスや連携パスの最新の活用法、そして今後期待される新たなパスの領域も盛り込んだ。現場での秘策や情報は「匠のコツ」「Topics」として開示。パスに関わる多くの医療者必読書。
監修 | 日本クリニカルパス学会 学術・出版委員会 |
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発行 | 2021年07月判型:B5頁:180 |
ISBN | 978-4-260-04641-1 |
定価 | 3,850円 (本体3,500円+税) |
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第2版の序
本邦でクリニカルパス(パス)が臨床現場に導入されるようになって早くも約25年,四半世紀を迎えようとしています.導入初期の頃,米国から来たパスは,各々の医療機関でその形式や運用方法に様々なアレンジが施され,使用されていました.1999年に日本クリニカルパス学会が設立され,学術的検討に加えその利点,欠点,成功例,失敗例の情報共有を重ねるうち,クリニカルパスの運用には押さえておくべき一定の鉄則があることがわかってきました.学会ではこれらを整理し,基本的概念や理論,パスの用語,実践応用法についてクリニカルパスの祖カレン・ザンダーの著書と照らしながら,2002年から毎年「教育セミナー」を企画してきました.また,2009年にはクリニカルパスの関連用語を解説した「クリニカルパス用語解説集」を作成しました.
本書の初版である「基礎から学ぶクリニカルパス実践テキスト」は,パスの基本的な概念と構成,現場での運用方法をまとめたテキストとして,2012年に発刊されました.当時はパスの教科書として確立されたものがまだなかったため,この実践テキストには学術的解説も盛り込み,「理論」と「実践」をあわせた組み立てになったのです.その後,学会ではパスに関する正しい教育と啓発を目的に資格認定制度の創設を決定し,3年にわたる準備ののち2016年から書類審査と試験を軸とした認定を開始しました.これに合わせてパスを体系的に学習するための初の教科書となる「クリニカルパス概論」を2015年に発行,「クリニカルパス用語解説集」の増補改訂を行い,資格認定に必要な教材を揃えました.
用語集,体系的教科書を揃えたうえでの本書「現場で使えるクリニカルパス実践テキスト第2版」は,その枕詞通り“現場で活かす”実践ノウハウを詳細かつわかりやすく具体的に解説することをコンセプトとしました.過去6年間に開催された教育セミナーの内容から好評だった実践ノウハウの項目を中心に,多くの医療機関,多くの地域で明日からでも即検討できるものをまとめています.また,初版やほかの書籍で取り上げていないパスの教育や組織づくり,電子パスや連携パスの最新の活用法,そして近い将来一般化するであろう新しいパスの領域についてもふんだんに盛り込みました.現場での様々な秘策や情報も「匠のコツ」「トピックス」として取り上げています.他院との交流や学会でのディスカッション,電子カルテベンダーとの交渉の場で大いに活用して下さい.なお,2019年には本学会監修の「クリニカルパス用語解説集」も記述を一新し,用語集としての役割を鮮明にしました.この実践テキストを読み進む際に傍らに置いていただければ,一層理解が深まると思います.
20年前,「パスが医療の効率化・質向上ツールとして一定の完成形を確立できれば,学会・パス啓発活動も完了できるであろう」と考えていた同志も多かったはずです.しかし,医療ICT の進化や急速な普及から,電子カルテ・電子パスはあっという間に一般化し,「質向上と効率化・安全化ツール」から「ビッグデータの情報分析をも担うツール」へと変貌を遂げ,今も更なる進化が続いています.一方,医療の環境は病院や地域連携から社会連携・地域包括ケアへと転換し,遠隔医療にも大きく参画しようとしています.つまり,まだまだ「クリニカルパス」のバトンはつながるのです.
2021年現在,本書は,パスに携わるすべてのスタッフにとって最高の玉手箱になっていると自負します.本書が次の新たな医療介護現場ツールの発展・発明の1つの礎になることを願ってやみません.
最後になりましたが,本書の作成は,地球規模のCovid-19の歴史的危機状況の中,完遂されたものです.自らも現場医療者として昼夜なく奔走されている執筆者の方々が,医療介護ケア現場のスタッフの現状改善と明るい未来に資するよう祈りを込めて,渾身の力で過去の講演内容,多くの文献・資料を素晴らしい文章にまとめてくださったことと思います.また,業務が困難な状況でありながら,長年のパス同志としてご参画いただき,奔放な編集委員を取りまとめ,原稿の緻密な校正と構成の組み立てをいただくとともに多くのアイデアをご提供くださいました医学書院医学書籍編集部の安藤恵氏,制作部の宮下敦司氏に深く感謝申し上げます.
2021年5月
日本クリニカルパス学会学術・出版委員長
今田光一
目次
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第1章 クリニカルパス導入の意義と本質
1 クリニカルパスの定義と用語
A クリニカルパスの歴史と定義
B アウトカムとバリアンス
2 クリニカルパス導入の意義
A 医療の質向上活動
B 質管理とPDCAサイクル
C クリニカルパス導入効果
3 クリニカルパス医療の本質
A アウトカム志向
B 標準化
C クリニカルパス活動
Topics
パスからの波及効果
第2章 クリニカルパスの作成
1 アウトカム志向パスとは
A アウトカム志向の考え方
2 アウトカム志向パス作成の実際(医療者用パス)
A 患者アウトカムと医療者アウトカム(タスク)の設定
B 適応基準と除外基準の設定
3 クリニカルパスと標準化
A パスにおける標準化
B アウトカムの標準化
C 用語の標準化(統一)
4 患者用クリニカルパスの作成
A 患者用クリニカルパス作成時の留意事項
B 患者参加型医療のための患者用パスの工夫
C 入院診療計画書としての患者用クリニカルパス
5 パスの作成・審査・認可
A パスの作成
B パスの審査・認可
C パスの管理
匠のコツ
こんなパスもあります
医師から協力を得る秘訣
第3章 クリニカルパスの使用と記録
1 パスの使用
A パスを適用するか適用しないか
B パス適用の流れ
C 個別性への対応
D こんなときでも使っていいのか
E どうして使わなかったのか
2 日々の評価,バリアンス登録
A パスのケアプロセス
B アウトカム評価とバリアンス
C バリアンス登録
3 看護記録とパス
A 看護記録の目的
B 看護記録の法的意義
C 看護記録の構成要素とパス
D 看護過程と記録
E 患者用クリニカルパスの使用,活用法
4 パスの記録の実際
A 全職種で患者情報を共有するための記録
B リハビリ進捗状況の記録
C 教育入院における記録
第4章 クリニカルパスの見直し
1 バリアンス分析
A バリアンスの定義と収集方法
B 退院時バリアンス方式
C センチネル方式
D ゲートウェイ方式
E オールバリアンス方式
F 発生要因分類から見たバリアンス収集方法
2 アウトカム評価とクリティカルインディケーター
A 解析方法
B クリティカルインディケーター
3 ベンチマーキング
A 他施設パスの情報収集
B 見直し方法
4 診療ガイドラインの活用
A ガイドラインの収集
B 見直し方法
5 DPCデータの活用
A データの入手方法
B 実例紹介
6 原価計算
A 病院における原価計算とは
B 実例紹介
解説 パス見直しに必要な統計の知識
A 基本統計量
B 仮説検定
C 定量的データの2群間比較
D 定性的データの2群間比較
E 相関分析
匠のコツ
初心者でもできる! パスの学会発表
第5章 クリニカルパス活動と委員会・パス大会
1 パス委員会と役割
A パス委員会の組織構成
B パス委員会の役割
2 パス教育と啓発
A パスにおける教育体系の構築
B 教育を円滑に進めるためのポイント
C 実践を兼ねた教育カリキュラムの一例
D 啓発への取り組み
3 パス大会の実際
A パス推進とパス大会
B パス大会運営のコツ
C 済生会熊本病院でのパス大会の実例
D 全国のクリニカルパス大会の実例
4 パススタッフのための認定制度
A 日本クリニカルパス学会資格認定制度
B 病院内でのパス資格認定制度(青森県立中央病院の例)
匠のコツ
パス大会・学会における座長の秘訣
パス大会が開けないとき
第6章 電子クリニカルパス
1 電子パスの経緯と定義
2 電子パスと紙パスの比較
A 電子パスの利点
B 電子パスの欠点
3 電子パスの標準的機能・確認項目
A パスの作成
B パスの登録
C 患者へのパスの適用操作,パスの選択
D パスの適用前修正
E 適用中パスの画面構成
F 適用中パス画面の機能
G パスの終了操作
H パス集計
I 電子パスのその他の機能
4 電子パス導入時・更新時のポイント
A パスに関連する多くのマスターの作成・見直しが必要になる
B 自院のパス業務フローの変更を再検討する必要がある
C 電子パス稼働直後から正しいデータを取ろうとは思わない
D すべてのアウトカム評価,バリアンス関連の評価を登録機能で使う必要はない
E ベンダー間の用語の相違を知る
F 組み込んだ電子パスは,他のベンダーに引き継げない
5 標準アウトカムマスター(BOM)導入の実際
A BOM導入までの準備
B BOMの導入
C BOMを用いた分析
6 BOMの運用分析
1 運用
A BOM3.0を用いたクリニカルパスの作成
B パスの審査
C 短期間でBOMパスをたくさん作成する方法
2 分析
A パス記録監査の実施
B バリアンス分析からパスをベンチマーキングで改訂
C 他施設との比較とガイドラインを用いたパス改訂
D DPCの出来高比較で赤字パスをベンチマーキング
E 原価比較と出来高比較を用いた赤字パス・黒字パスの検討およびその対応
F BOMパス使用病院のビッグデータでバリアンス分析
Topics
電子クリニカルパスの代行入力の留意点
これからの電子クリニカルパス
第7章 地域連携クリニカルパス
1 地域連携パスの組織づくりと運用方法
A 地域連携パスの基本的な考え方
B 地域連携パスを作る・動かす
C これからの地域連携パス
2 地域連携パスの実際
1 大腿骨頸部骨折・脳卒中などリハビリテーションの地域連携パス
A 大腿骨頸部骨折地域連携パス
B 脳卒中地域連携パス
2 病診連携のパス
A 定義
B 連携パスに関する診療報酬
C 学会アンケートに見る連携パス活動
D 連携パスの種類
E 慢性腎臓病地域連携パス(CKD連携パス)
3 がん地域連携パス
A がん地域連携パスとは
B 大阪府のがん地域連携統一パス
C がん地域連携パスの導入手順
D がん地域連携パスの今後
4 医科歯科地域連携パス
A 医科歯科地域連携パスとは
B 医科歯科地域連携パス運用の実際
5 在宅医療の連携パス
A 在宅医療連携パスとは
B 在宅医療連携パスの実際
C 地域包括ケアシステム構築のための情報共有
6 ICTを用いた地域連携パスの運用
A 運用組織の設立
B ICTパスのしくみ
C 脳卒中地域連携ICTパス:運用の実際
D データ分析と疾病管理
Topics
精神科領域の連携パス
索引
書評
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これからの医療に必須となる患者中心のパス!
書評者:真田 弘美(東大大学院教授・老年看護・創傷看護学)
本書『現場で使える クリニカルパス実践テキスト 第2版』では,クリニカルパス(以下,パス)の持つ意義を最大限引き出しながら,活用するための基本的ノウハウから実例を踏まえたヒントまで,実践ポイントがふんだんに盛り込まれている。初版と比べるとパスの組織づくりや運用の実例などの内容がさらに充実しており,これからパスを学びたい人はもちろんのこと,すでにパスにかかわっている医療職にもぜひ手にとっていただきたい一冊である。
パスで重要な点は“患者中心”のアウトカム達成にある。最近入院した友人が見せてくれた入院時の説明の中に,患者用パスが含まれていた。友人は,退院後の予定をあれこれと話し,手術に対する大きな期待を語ってくれた。その話を聞きながら,パスは不安の除去ばかりでなく将来への希望をつなぐ大切な手引きであることを実感した。医療者にとってパスは,最適効率で患者目標を達成し,在院日数短縮をめざすために非常に合理的な方法であることは違いない。ただ,われわれが忘れていけないことを著者らは何度も強調している。誰のためのパスなのか,業務の効率性を優先するのでなく,あらためて患者中心のパスであるという極めて大事なマインドを思い出させてくれる。
20年以上も前,褥瘡ケアのパスをつくる企画を担当していたことを思い出した。何をゴールにパスをつくるのか,その時ほど悩んだことはない。褥瘡治癒をゴールとするなら,その期間はもちろん重症度で異なり,その基礎疾患で大きく異なる。また,少なくとも治癒には半年単位で考える必要があり,入院中の患者に対してはパスでは解決できない状況にあった。この20年間の大きな変化は,病院中心の治す医療から治し支える医療へと,地域に住み続ける療養者支援に大きく舵をきったことにある。つまり地域包括ケアシステムの導入により,療養場所が病院から,施設,在宅などへと変わっていく。さらには長期に渡ってフォローアップが必要であることを常に想定した医療体制が必要となる。だからこそ,チームの共通理解のもとに,地域連携クリニカルパスの実装が求められる。この2版には初版では詳しく触れていなかった連携パスの組織づくりや実装部分がフォーカスされている。
この書を参考に,電子化パスを踏まえて,再度褥瘡クリニカルパスの作成を関連学会に提案しようと思う。
常にパスを実践しながら,質の高い医療を提供してほしい
書評者:原澤 茂(済生会川口総合病院名誉院長)
約25年前に日本で用いられたクリニカルパスは,現在の医療現場(病院)においては,大中小の規模に関係なく必要不可欠となっている。
2012年に『クリニカルパス実践テキスト』初版が,日本クリニカルパス学会の学術委員会から発刊された。以降,同学会の学術集会ではクリニカルパス教育セミナー(約6時間)が毎回開催され,ついに2021年にこの書『現場で使える クリニカルパス実践テキスト 第2版』が医学書院から上梓された。
私は現在同学会の名誉会員であり,第9回の同学会学術集会の会長を務めさせていただいたことから本書についての書評を述べたいと思う。
医療現場では,正に「チーム医療」であり,医師,看護師,薬剤師,栄養士,理学療法士,臨床検査技師,作業療法士,放射線技師,介護福祉士,病院管理者,医療事務担当者などの医療側と,当事者である患者など全ての医療にかかわる人々がチーム一体として,PDCAサイクルを回して質の高い医療が提供されている。
多くの医療機関である病院では,質向上のために日本医療機能評価機構やISO9001,JCIなどの第三者機構から評価を受けており,病院の医療の質改善,質向上に常に努力が傾注されてきている。
内科系疾患や外科系疾患など,医療が必要とされる多くの疾患にはこのクリニカルパスが該当となっているし,近年では電子カルテの導入になってからもe-パスといわれる電子クリニカルパスが臨床現場では常態化し,信頼性,透明性からも有用性が高いものである。医療者と患者の間での情報の共有化においても,このクリニカルパスはその力を発揮している。
今回出版された『現場で使える クリニカルパス実践テキスト 第2版』は現在の同学会理事長を務めている山中英治先生をはじめ,同学会の学術・出版委員長である今田光一先生,副委員長の勝尾信一先生,同委員の岡本泰岳先生方の編集により,前述の先生方を含むベテラン先生方(22名)のup-dateな内容と,正に実践に即した内容の深い書籍になっている。「匠のコツ」「トピックス」で秘技や最新情報満載であり,ナースセンターのみならず,種々の検査室にぜひ一冊を置いて,常にパスを実践しながら,質の高い医療を提供していただきたい。
1999年に済生会熊本病院の須古博信先生(初代理事長)が日本クリニカルパス学会の第1回学術集会を熊本市で開催され,当時はパスから逸脱するとバリアンス症例となり,パス終了になったが,現在ではPDCAサイクルを用いたクリニカルパスが医療の本質になっている。二代目理事長の副島秀久先生がクリニカルパスを学問的に発展させ,P→Dは当たり前で,C→Aになってバリアンスが発生してもオールバリアンス方式を採用してパス自身は「改善する手法」となり,Aで臨床・財務・患者満足度などのアウトカム向上,質の向上を導き出すこととした。
2003年,入院医療にDPC包括支払い制度が導入され,2年ごとに行われている診療報酬改定によって,このDPC制度は進化し,精緻化されてきている。このDPC制度を導入している急性期病院には,クリニカルパスは切っても切れない関係にある。前述した財務の向上につながることによって,病院経営を有効にするにはこのクリニカルパスの導入は必須である。
最後に,本書を出版した医学書院は,医学・医療に特化した出版社であり,緻密な編集能力を有した質の高い会社であり,この第2版の発信力を期待したい。また,同学会の理事・評議員の多くの先生が協力し,お互いに協議して本書が作成されたことと,同学会が2009年に発刊した『クリニカルパス用語解説集』を同学術委員会が基本にしていたことは想像に難くない。
ぜひ,本書が臨床現場で活用され,質の高い医療が提供され,患者にとって満足度の高い医療になることを御祈念申し上げる。
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