総合内科診断メソッド
病歴と視診で捉える

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ベテラン総合内科医が、教科書やガイドラインにはあまり書かれることのない「総合内科ならではの診断メソッド」を1冊にまとめた。その中心的な内容は「病歴と視診」であり、それを支える「問診テクニック」だ。効率的に間違えずに正しい診断につなげる「引っかかる病歴と見た目」を提示し、それをいかに日常診療の中で拾い上げるかというノウハウを示す。AI時代にあっても内科医必読の臨床書。重要所見のWEB動画も多数収載!

西垂水 和隆
発行 2025年10月判型:A5頁:360
ISBN 978-4-260-06021-9
定価 5,280円 (本体4,800円+税)

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 カンファレンスで最後に画像や血液検査を提示して,「実はこういう診断でした」という勉強会を重ねてきた.また,患者のプレゼンテーションでもデータやCTを中心に話すことが多く,その結果,診断というのは画像や数値で決まるものだという“悪い癖”が付いてしまった.最近では全身CTがないと物足りなささえ感じてしまう始末だ.
 もちろん最終的にはこれらのデータで確定診断されることは少なくない.しかし,実際の現場での診断は,もっと早い段階に始まっている.患者さんに出会った瞬間の印象から鑑別疾患が浮かび,病歴を重ねて rule in,rule outを行い,さらに身体診察で確認していくはずだ.検査をする前に疾患リストを思い描き,検査前確率を意識しているからこそ,検査結果を正しく解釈できる.この過程を省略してデータに飛びつくと,診断はかえって難しくなる.
 本書は難しい疾患を診断するためのマニュアルではない.患者の語った言葉のどこを手がかりに診断へ近づくのか,詳細な病歴をどう解釈し,どう活かすのか.さらに,答えにつながる重要な病歴をどう引き出すのか.その上で,検査や画像をどう位置づけるのか──そうした臨床診断の基本過程を中心に述べている.
 また,紙面では表現しきれなかった「視診」,つまり見た目の大切さについては,写真や動画も交えて紹介した.表情や姿勢,ちょっとした動きや左右差など,患者さんに触れる前から得られる情報は意外に多い.視診はその後の病歴聴取や診察の進め方にも大きく影響してくるため,診察の最初に行うべきものである.
 自分が研修医の頃は,ベッドサイドで患者さんの話を聞き,診察を終えた時点で診断を言い当てる指導医の姿が本当に格好良く見えた.今はどうしても電子カルテのモニター越しに診断してしまうことが多くなったが,その悪い習慣を正せるのは,ひょっとすると私たちの世代が最後なのかもしれない.本書が,診断の原点を振り返る一助となり,次世代の臨床医に受け継がれることを願っている.
 結びにあたり,感謝を記しておきたい.出版にあたりご尽力くださった医学書院の滝沢英行氏,日々の診療で示唆を与えてくれた同僚や後輩,厳しく指導してくださった先輩方,そして診療を通して学ばせてくれた患者さんたち──すべての方々に,心からの感謝を捧げたい.

 2025年9月
 西垂水和隆

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I 病歴と視診で捉える診断メソッド
 1 病歴聴取と見た目の重要性について
 2 病歴があてにならないケース──対応に留意すべき患者・状況
 3 病歴・見た目の感度・特異度
 4 問題の拾い上げと代表的な Red flag signs──ベテラン医師はなぜソツなく外来をこなせるのか?

II 病歴聴取の前哨戦──診察前から始まる診断プロセス
 5 患者から情報を引き出すコミュニケーション能力──治療は病歴から
 6 最近の流行状況を知っておく
 7 問診票からわかること
 8 患者が一言目をしゃべる前にわかること

III 病歴聴取の基本を押さえる──定番の問診
 9 既往歴──過去があって今がある.その既往歴浮いてない? 本当に既往?
 10 生活歴・家族歴
 11 薬剤歴──どんな薬剤が問題になりうるのか? ……答えは「すべて」です
 12 曝露歴──どんなことを具体的に聞くべきか?
 13 解釈モデル──思い当たるきっかけや気になることはありますか?
 14 システムレビュー(review of systems:ROS)──聞いておきたいROS
 15 何日目の受診か?──日数と身体のヤラレ具合(sickさ)は釣り合うのか?
 16 O:Onset(発症様式)──発症様式は疾患のnatureに直結する
 17 P:Provocative/Palliative factor(増悪・寛解因子)──どうしたら良くなる? 悪くなる?
 18 Q:Quality(性質・性状)──それって表現するとどんな感じですか?
 19 R:Related symptoms(随伴症状),Region(部位),Radiation・Refer(放散・関連)──ほかに症状がありますか? 場所は? そこ以外に痛みを感じる場所がありますか?
 20 S:Severity(重症度)──想像できる最悪の状態を10とすると,今は10段階でいくつですか?
 21 T:Time course(経過)・Timing(タイミング)──発症後のパターンと症状の起こるタイミングを診断に活かす

IV 引っかかる病歴と見た目──診断に迫る症状の深掘りと意味づけ
 22 いつからが病気か? ──最初におかしいと思ったのはいつ,どんな症状でしたか?
 23 繰り返す疾患──このようなことは初めてですか?
 24 時系列──ことの起こった順番は?
 25 経過中に症状が消失
 26 局所性か? 左右差があるか? 移動している? どんどん増えている?
 27 本当にずっと持続している?──良いときと悪いときがあるのでは? 少しも変わらない?
 28 多彩な症状を訴える場合──病歴でどれを除外するか? 何が大事か? その判断は?
 29 主訴は何か?──いよいよ病院に行こうと思ったきっかけは?
 30 メンタルはどれくらい入ってる?
 31 バイアスを知る──誤診のパターンを知っておく
 32 病歴をまとめてstoryがつくれるか?
 33 site(病変部位)はどこか?──臓器別の特徴から考える
 34 natureは何か?──病態別の特徴から考える
 35 わからない時

V 病歴と視診で捉える──症例集
 36 症例集:病歴と視診で捉える

索引

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