みるトレ リウマチ・膠原病 [WEB版付] 第2版
視診・観察能力を鍛えてリウマチ・膠原病診療に強くなる!
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リウマチ・膠原病の診療では、身体所見と病歴を組み合わせて診断を考えることが重要である。本書はすぐれた診断医、内科医として知られる著者が、一般内科医の診断力アップのためにまとめた臨床問題集である。診断のカギとなる身体所見を学べると同時に、身体所見と病歴を組み合わせ、どんな鑑別疾患を挙げ、診断を絞っていくかを学ぶことができる。学習管理システム「WEB内科塾」を使用し、ブラウザでの閲覧・学習が可能。
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序文
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第2版 はじめに
われわれ臨床に携わる者の医学知識は,性質を異にする二つの知識から成り立っています.一つは座学や教科書から学ぶ理論的知識(sophia)であり,もう一つは臨床における実際の経験から習得する実践知(phronesis)です.これら二つはわれわれが患者を診断し,治療する行為において必須です.
一方,診察における視診という分野はいつも興味深いものだと感じます.分かる人には見えて,分からない人にはいつまでも見えません.身体診察に長けた存在になるには理論的知識を基礎として,正常所見を正常であると認識できることから始め,異常所見を探して見いだすことを繰り返し,実践知として身につけることが必要です.日々,意識してこれを繰り返していると,いずれは意識しなくとも所見に気づくようになります.おかしなことに診療を離れていても,目が勝手に所見を探し気づいてしまうということが起こります.
本書は私の日常診療における経験をある視点から実践知として整理し,まとめてみたものです.また,稀なテーマを幾つか載せています.かつてパスツールは“Discovery favors prepared mind.”と述べました.稀な所見も知っていれば,役立つ日もいずれは訪れます.
今回は医学書院の企画により初版からは設定を変え,病歴と画像をご覧になっていただいた後,5つの選択肢から成る問題を解く形式としています.読者の皆様の日々の実践において,お役に立てれば幸いです.
2021年4月
松村正巳
目次
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〈イントロダクション〉視診からわかること
第1章 視診でわかる症例
CASE 01 手の歴史
CASE 02 硬い腫脹
CASE 03 指の付け根が痛い
CASE 04 黄疸?
CASE 05 指が伸びない
CASE 06 傾き
CASE 07 変形
CASE 08 複数の変形
CASE 09 亜脱臼
CASE 10 皮下結節
CASE 11 指が伸展できない
CASE 12 足底の痛み
CASE 13 副作用
CASE 14 白色の爪
CASE 15 明瞭なコントラスト
CASE 16 重篤な病態の証拠
CASE 17 経過日数
CASE 18 2本の白線
CASE 19 緑色の爪
CASE 20 黒の縦縞
CASE 21 黒色の爪
CASE 22 多彩な変化
CASE 23 炎症による爪の変化
CASE 24 無数の溝
CASE 25 多発する腫瘤
CASE 26 左右差
CASE 27 鑑別が重要
CASE 28 紫色の手
CASE 29 爪の生え際に注意する
CASE 30 毛細血管の拡張
CASE 31 合併症に注意する
CASE 32 指先の短縮
第2章 視診,病歴,身体診察でわかる症例
CASE 33 指先の形が変わったら
CASE 34 ギリシャ時代から
CASE 35 赤い半月
CASE 36 爪がない
CASE 37 縦走する溝
CASE 38 しびれと紫斑
CASE 39 ふくらはぎの腫れ
CASE 40 つらい朝
CASE 41 リウマチかね?
記述問題 乾癬と関節
CASE 42 グローブのような手
CASE 43 手背の浮腫
第3章 視診,病歴,身体診察,検査でわかる症例
CASE 44 診断の鍵
CASE 45 手,腕の腫脹
CASE 46 多彩な鑑別診断
CASE 47 下肢の紫斑
CASE 48 皮疹と筋力低下
CASE 49 行うべき検査
CASE 50 表と裏
CASE 51 4つの鑑別診断
CASE 52 萎縮
CASE 53 腰痛
CASE 54 末梢神経障害の徴候
CASE 55 全身性エリテマトーデスの関節炎
CASE 56 診断のヒント
CASE 57 複数の所見
記述問題 外傷?
CASE 58 指先での鑑別診断
疾患(診断名)・所見目次
索引
閑話
1.シャーロック・ホームズ
2.ホームズのモデル
3.ルノワール
4.Snap Diagnosis ①
5.Snap Diagnosis ②
6.Snap Diagnosis ③
7.知っておくとよい所見:爪のReil線i
書評
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それぞれの読者に合った楽しみ方で“名医の業”を学修
書評者:鋪野 紀好(千葉大病院特任助教・総合診療科)
視診は臨床医の究極の業(わざ)だ。診察室に入室し,瞬く間に病名を突き止められれば,それはまさに名医だろう。ただこの名医の業は時に“職人芸”ともやゆされ,凡庸な人には真似できないと評されることがある。その業が名医であっても言語化して明示するのが難しい暗黙知(tacit knowledge)であることがそのゆえんだろう。しかしながら,そこを単なる名人芸にとどめず,言語化された形式知(explicit knowledge)に落とし込んでいるのが,本書の特徴の一つである。
さらに,その形式知を効果的に学べるように,本書では症例問題形式が採用されている。問題形式であるがゆえに,われわれは能動的に問題解決力を養えるとともに,実際の臨床医の思考プロセスを追体験することが可能だ。臨床問題の数も60問と非常に多くのバリエーションがある。問題の設問名も秀逸で,目次一覧から鑑別疾患に思いをはせる玄人的な楽しみ方もできるだろう。
また,本書はWEBアプリとも連動していることが非常にありがたい。電子媒体を活用することで,さまざまな端末から学修できるようになった。WEB版の強みは,学修履歴が自動で記録される仕組みが取り入れられ,その進捗状況も可視化されていることである。アダプティブ・ラーニングと言い,個々の学修進捗や回答の正誤情報などを蓄積・分析することで,個々に合わせてより効果的かつ効率的に学修する,昨今のトレンドとなっている方略である。本書のWEBシステムは,医学教育のトレンドを突いた取り組みであると考える。
本書に散りばめられている閑話も,著者の豊富な経験からなるパールが散りばめられており,うれしい気遣いである。小生も著者と同じくシャーロック・ホームズの洞察力に感銘を受けた一人だ。ホームズは,ジョン・H・ワトソンとの初めての出会いのときに,鋭い洞察力からその素性を見事に言い当ててしまう。まさに“視診”と共通する点も多く,その例えも秀逸である。加えて,「診断の達人」「鑑別診断の神様」と例えられる,ローレンス・ティアニー氏と著者とのヒストリーも非常に興味深い。わが国で診断学を広めたいという,著者の熱意を垣間見ることができるとともに,その思いが脈々と受け継がれていることをあらためて感じた。“閑話”と表現するには控えめだろう。
医学生や研修医のみならず,ジェネラルをめざす専攻医や,今後の医療人の育成に当たる指導医まで,それぞれのレベルに合わせた楽しみ方ができる一冊であり,少しでも多くの方にお手に取っていただけることを切に願う。
最後に,著者の松村正巳教授は,ジェネラリストとしても教育者としても尊敬してやまない先生であり,その書評に筆を執らせていただけたことに,一医師として深く御礼申し上げる。
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